モニター越しのヤマト様
すげぇ……
かなり気合入ってんな
あー! 参加したかった!
人がゴミのようだぁ!
開場前集会を見たリスナーたちは、各々の感想をコメント欄に書いていった。
素直な感想を書く人もいれば、冗談半分のコメントを飛ばす人もいる。
『みんな、この程度で驚いてたらダメだよ。本番はこれからなんだから!』
確かにw
サークル参加者の勢いがありすぎて勘違いしてしまったわ
あ、まだ始まってなかったんだ……
お、画面切り替わった?
ステージ画面はこのくらいにして、次にドーム入り口玄関のカメラをメインモニターの方に移す。
あと一分で開く扉の前にはたくさんの人影が写っていた。
人多すぎだろ!
これ、なだれ込んだりしないよな。
夏場なのに外にいる人絶対に熱いだろ……
『う~ん。ここからじゃ外で列の整備をしている警備員さんは見えないね。因みにドアの外がどうなっているかというと、何列化に並んで外で警備員さんが列の整備をしているって感じかな』
解説助かる!
じゃあ外にいる人たちの中で一番暑いは警備員さんだ!
列の整備お疲れ様です!
リスナーさんたちに解説をしていると、時間は10時を回りお客さんたちが中に入ってきた。
スタッフさんたちは挨拶をしながらパンフレットを渡す。
昨日は見ることができなかったが、ブース列の整備よりも入り口玄関でパンフレットを配る方が大変だと気づいた。
お客さんたちが中に入り、まず最初に向かう場所は……僕たちの見ているカメラ映像の前。
あれ? なんかお客さんこっちによってね?
気のせい……じゃないな。
どういうこと?
あ、カメラ向けてる。
『皆にはまだ話してなかったけど、実は僕の映像が玄関入り口のモニターに流れているの。みんなのコメントとかは流れてないから安心してね』
マジか!
なら寄ってくるのにも納得できるな
え、外のヤマト様はどんな格好なんですか?
『モニターに移っているヤマトは……どんな感じなんだろう。僕自身聞かされているだけでどの姿で写っているか聞いてないから分からないや。実際に見た人のみぞ知るって感じだね』
うわっ! モヤモヤする言い方!
あー、どんな姿で写っているか気になってモヤモヤする~
ロリヤマトは俺たちだけなのか!?
めっちゃ気になるw
モヤモヤ
そんなに気になるようなことでもないと思うが、コメントには【モヤモヤ】という単語じゃんじゃん流れていく。
『もしかしたらトリッターに載ってるかもしれないから、気になる人はそっち見てね。それじゃあこっちは画面変えるね』
玄関入り口の画面から、配信を開始した時の真っ暗な画面へと切り替える。
『早速今日の予定を発表するね。まずこの後は【1234+0】のブースに手販売の手伝い、30分後になり切り大会の審査員、後に1時間おきにサークル紹介があって、最後に抽選会があるんだけど、今回の配信は抽選会の前で終了するね。だから最後のサークル紹介が終わった後に配信終了かな』
なんかてんこ盛りのように聞こえて、イベントの数少ない?
え、抽選会は見れないの?
【1234】のブースとか絶対に行列だろ
ヤマトと絡める時間あるの?
『あ、今コメントにもあったけど僕と絡める時間はちゃんとあるよ。ブースの手伝いとなりきり大会、サークル紹介、あと昼食の時はコメント読むことできないけど、それ以外では映る画面を変えながらリスナーのみんなと雑談したりする感じかな』
ならオケ!
イベントを見せてくれるだけでも嬉しい
そこまで気にしないかな。
少ないように見えて、もしかしてヤマト様との時間ってかなり多い?
『あと、抽選会に関して当選した特定の人が映っちゃうからね。モニターには【配信中です】って言うテロップが流れてるから、それでもかまわない人は近づいてくるけど、映りたくない人もいるかもしれないから』
なら仕方ない。
勝手に配信で映されるのは嫌だもんな。
俺も勝手に映らされるのは恥ずかしくていやだな。
これに関しては文句なんて言えない。
ナイス判断!
コメント欄には反対の意見が一切流れてこない。
リスナーがいい人たちでよかった。
『流れの説明も終わったことで、早速【1234+0】のブースの方に移動するよ! ここから僕はスタッフモードに変わるからみんなは、【1234+0】のブースの影響力を楽しんでね!』
第3モニターの画面をメインモニターの方に移動させ、配信画面の映像を切り替える。
配信画面に映ったのは3列に並ぶお客さんの列。
「お、あれヤマトじゃね?」
「え、どれ?」
「そこのモニター。配信中って書いてるやつ」
「は、嘘! マジじゃん!」
1人の男性の言葉で一気に僕の方に注目が集まる。
当然この声は配信の方にも載っており、リスナーさんたちにも聞こえている。
コメント欄では早速【即バレw】【バレるの早くて草】などといいたい放題。
僕に気づいた人たちはカメラを構え、早速列を乱しながら僕の映っているモニターの方によって来る。
『はい皆さん、列を崩さない様にね!』
「え、ヤマトの声!?」
「これリアルのやつ?」
「あれ、なんかいつもと口調違くない?」
『今日の僕のしゃべり方が知りたい人は是非僕のメンバーシップに加入して、配信アーカイブで経緯を確認してね。そんなことより、僕の写真を撮るのはいいけど列はみ出さないように! お客さんの邪魔にならないようにしっかり並ぼうね!』
列を乱していた人たちは自分の今いる場所を確認して元の場所へと戻り、撮影を再開した。
しっかりとお約束を守ったみんなのためにファンサービスとして笑顔を振りまいていく。
その姿をとるために皆がスマホやカメラを取り出し写真を撮り始める。
このように周りの反応を実際に見ることが基本出来ないのでとても新鮮に感じる。
調子に乗り、少し顔をカメラに近づけてモニターに僕の顔だけが映るようにする。
ガチ恋距離来た!!
急な急接近心臓に悪い……
列に並んでいる人達もヤマトに釘付けじゃん
あ、ホントだ……
横目でちらと見えるコメント欄。
それだけ僕の魅力にみんなが注目してくれているという良いことのように思えたけど、カメラが近い僕にはメインモニターの様子を見ることができていなかった。
釘付けになってしまった事に対する問題に気づいたのはそれから1分もたたずにスタッフさんたちが来た頃。
「お客様! お止まりにならずに先へお進みくださーい! 後が閊えております!」
『え?』
カメラから離れてメインモニターを見てみると、僕の方に注目していた人たちの前にはすでに人はいなかった。
そのことに気づいたお客さんたちもスマホやカメラを仕舞、前の方へと進んでいく。
気づくとモニターの前で写真を撮り始めたお客さんは先ほどとは全く顔触れが変わっていた。
「ヤマトさん。列が乱れてしまうのでガチ恋距離はやらないように気を付けてください!」
『う、すみませんでした』
列を乱す原因の僕は当然モニターの前に来たスタッフさんに怒られてしまった。
怒られてるww
そりゃそうよ
お手伝いが邪魔になったらなー
ヤマトが大きなポンをするなんて珍しい……のか?
コメント欄では言いたい放題。
流石に今回のことは何も言い返せない。
『みんな~、列を乱さないようにしっかり並んでねー。僕は神無月ヤマト。Vtuberをしています。チャンネル登録、トリッターのフォローお願いします!』
これ以上調子に乗らないように宣伝をしながら気を紛らす。
写真を撮っている人は完全に僕に夢中。
今度は迷惑にならないようにしっかり呼びかける。
『僕を撮ってくれるのは嬉しいけど、しっかり前を見て列を乱さないよにね~』
僕の呼びかけを聞いてくれた人は、スマホを直し開いた空間を詰めるために前に進んでくれた。
その人につられるように、列は徐々に進んでいく。
「ヤマト様、そろそろ時間ですよ」
しばらく列の整備をしているとモニターの前にコスプレをした紅葉さんが呼びに来てくれた。
気づけばすでになりきり大会開始数分前。
『紅葉さん。今日のコスプレも似合ってますね。では皆さん。この後ステージの方でなりきり大会があります。皆さんがいろいろなキャラになり切られるので、ぜひ見ていってください! では失礼!』




