お題小説【図書室の妖精?】
お題
・図書室
・妖精
・初恋
・お弁当
・放課後
わたしの通う国立魔法学園の第2校舎の図書室には、小さいな願い事なら叶えてくれる妖精が住んでいるという噂がある。
もう何年も前からその噂はあり、調査もされたけどそんなものはいなかった。でも願いを叶えてくれたって言う人はちらほらいたのだ。
わたしは自分の中の淡い想いを叶えてもらう為に、放課後の第2校舎の図書室へと訪れた。その妖精は放課後に主に現れるようで前日のうちからお弁当をお供えして、翌日の朝に空になっていれば妖精との契約が成立するらしい。
そうして放課後の図書室の中を歩いていると…いきなり後ろから話しかけられた。私以外誰もいないはずなのに…。
「おい。お前もアレか?願いを叶えてくださいってやつか?まぁ、弁当はなかなか美味かったぞ。」
私の目の前に現れたのは、妖精…?というより柄の悪い男って感じだった。髪がチリチリしてて格好も妖精っぽくない。どちらかと言うと騎士?なんか鎧着てるし。
「んで?お前の用件はなんだ?可能な範囲で叶えてやる。」
「…その。私好きな人がいるんです。生まれて初めて好きな人が出来て……その……初恋ってやつです。
もちろん初恋なんてくだらないって思ってるでしょうけど、でも初恋が成就したっていいと思うんです!」
「はぁ〜。なるほどな。そーいう系ね。だとしたらだいぶ困ったもんだ。恨みつらみの類なら得意だったんだが…。色恋沙汰か…。まぁ、暇だからやってやるよ。ただ、毎日弁当は備えてくれよな?タダ働きはごめんだ。」
妖精さんは心底嫌な顔をしながらも、わたしの初恋を叶えるための手伝いをしてくれるようだ。
「ありがとう!妖精さん。妖精さんって言うのは他人行儀だし、お名前を教えて!わたしはミリーっていうの。」
「名前?……うーん、まぁライとでも呼んでくれ。」
「よろしくね!ライさん!」
その日からわたしとライさんは初恋成就をさせるためにペアを組んだ。
ライさんは普段図書室の本の中に憑依?しているらしく昔気紛れに願い事を叶えてあげたら、噂が広まって弁当にありつくことが出来たから、それ以来力を蓄えるためにこうして生徒達の悩みを解決することをしているらしい。
「ライさんはここから出られないの?」
「あー、そうだ。学園の周りに魔法の力が張り巡らされてて出られないんだよ。だから力を蓄えて何とかいつか出ようと思ってる。」
「何年くらいここにいるの?」
「……そんな野暮なことは聞くな。それより初恋のロンド君の情報を集めてきたぞ。どうやら毎日昼頃に旧校舎の屋根で昼寝をするのが日課らしいな。そこを弁当を持ってアタックしたらどうだ?まぁそいつが興味を持つかはお前の話術しだいだ。」
ライさんは、そうしてわたしの部屋から扉を開けて出ていく。わたしは作り置きしていた弁当を持って彼の元へと行く。
「あ、あの。そんなところにいて寒くないですか…?」
「ん?君なんでここが分かったの?誰にも教えてないのに…。」
「え?いや…その、たまたま見えちゃって…。ダメでしたか?」
わたしが困った顔をして言うと、ロンド君は微笑んでくれて傍においでよ?って言ってくれた。喜んで彼の隣に行って色んなお話をした。
毎日お話をしていたら、ある日どこから嗅ぎつけたのか他の女がロンド君と話していて、すごくすごくムカッとした。
だからライさんにロンド君と会っている間の人払いを頼んだ。
「まぁ、いいけどな。それとお供えの弁当昨日忘れただろ?今日のと含めて2日分作れよな。」
分かってるよ…。ほんとに水を差してくるわよね。嫌になっちゃう。
あーあ、願いも叶ったし、いつまでも粘着されるのも嫌だからライさんにはいなくなってもらおう。
元々分かってたけど、どうせ妖精じゃないし。浮遊霊かなんかでしょ。アレ
わたしは弁当のおかずを湯掻く時に、水じゃなくて聖水を使ったから、これであの霊は成仏する…筈。
しないにしても大ダメージだろう。
とある日、いつものようにロンド君に逢いに行くために、旧校舎の屋根に登ると、そこにロンド君の姿はなかった。
「ロンド君…?あれ…ロンド君にわたしが貸してあげた本?」
屋根に落ちている本を拾い上げて、ふと下を見ると……
ロンド君が地面に赤い液体を撒き散らして落下していた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!?」
急いで駆け下りてロンド君の元へ駆けつける。
わたしの叫び声を聞いた人達が様子を見に来ると、事態に気づいたようで、ロンド君だったものを処理するために先生たちがやってくる。
わたしは茫然自失となって、しばらくその場から動けなかった。
茫然自失になっているわたしを見て誰も助けてはくれなかった…。なんならわたしが犯人だと言う心無い人もいた。
だけどそんな中ただ1人わたしを庇ってくれた人がいた。
わたしに最初に妖精の噂を教えてくれたシェルくんだ。わたしはシェルくんに前に告白されたことがあったけど、それを好きな人がいるからっていう理由で振って、あんな噂に縋ったのに…。彼はわたしをまだ好いて、こうして守ってくれている。
ほんとに大事にしないといけない人の存在に気づいたわたしは今更ながら都合がいいかもしれないけど、彼にお姫様抱っこされながら医務室へと向かった。
初恋は敗れたけど、やっぱり初恋なんてそんなもんだろう。
敗れて当然、叶わなくて当然。中には叶うこともあるんだろうけどね。
今わたしを大切にしてくれる人を大切にしよう。
そう思ったのでした!
〜〜
〜〜
「ライ。ありがとう。邪魔な奴を葬ってくれて感謝してるよ。ミリーの延滞してた分も合わせてお供えするからね。」
「なんのなんの。こーいうやつなら大得意だ。まぁお前の初恋を叶えてあげることもできたわけだ?
願いの妖精ってのも悪くないな。」
「また頼むよ。」
シェルの自室で今回の1件についての謝礼をライに手渡す。
ミリーに告白したが、ロンドが好きなことを理由に断られた。そのためロンドを亡き者にしようとライに頼んでいた。
ミリーも妖精にこの件を依頼するだろうと思っていたら、案の定頼んでくれた。飽きっぽくて恩知らずのミリーなら途中でお供えしなくなることも見越して、ロンドの死因は自分がお供えを怠ったせいだと思い込んでくれてるのも全て計画通りだった。
「ミリー…僕の初恋…。これからずっとずっとずっとずっと大切にしてあげるからね…僕だけのプリンセス♡」
なんかさーホンワカした話にしようと思ったら、
想像以上にすごいことになったね。
甘酸っぱい恋愛ものなんて俺には書けないことがわかりました。
いや…でも異世界舞台の恋愛作品自体はよく読んでるんだけどなー。どうにもこうにも上手くいかないもんだ。