道すがら、窓より
蒸し蒸しとした雨後の
蛙も飛び行く軒先で
傘を回してクルリと畳む
蛞蝓が
影に帰って行く頃
出掛ける二人が鍵をかける
乾き始めたアスファルト模様は
ウネリと飛び地の斑であり
飛びながら避けては
視線だけは彼方此方を見ている
車、人、自転車
看板、人、バイク
安全を確認するのは
続きがあるからだろうか
散策というには重い荷物で
旅行というには軽い荷物を
二人は持って
声を出しながら
軽やかに歩いて行く
振り返らないように
後ろを付いて
振り返るように
前を見て
忘れてもいいことをゴミ箱に入れ
忘れたくないことを思い出にする
蒸し暑さが肌に張り付き
一番不快な空間を
切り裂いて歩くことが
今の二人には特別なことである
後悔をするだろう
元には戻らないだろう
単純に裏切りでもある
罪悪感を捨てることが
選択肢に浮かぶなら
他人に対して傲慢になる時なのだ
傲慢さは使い方を間違えれば
自滅を呼び込む道具に
勝手になってしまうものである
二人には
それすらも気にしない
確固たる自信がある
今だからある自信だろう
脳内に自分達だけの世界を作って
遊んでいるのである
その浮遊感と高揚感に
騙されているのだ
判断は
もっと上の方でしなければ
上手くは行かない
だが
二人は歩いている
姿が見えなくなった頃
走り回る人達が
喫茶店の窓越しに見えた
顔を見ると必死の形相である
あの二人のことだろうか
店内に入って来た人は
店主と一人だけ座っていた客に
声をかけた
二人とも首を横に振る
残念そうに出て行くと
隣の店へ入って行くのが
客からは見えた
あの背中には
一体、何が乗っているのだろう
客は分からなかった