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強襲!

 今日は町の東南にある採取場所から、もう少し南側にも行ってみる。ここから南に行くと岩場があり、地形が変わるので採れる薬草や魔物も変わるとのこと。Cランクの魔物であるサンドリザードもいるらしく、注意が必要だ。


「二人とも森を抜けないようにしようね」


「そうだね。岩場の依頼は取ってきてないしね」


「今度武器が揃ったらみんなで行こうぜ!」


「揃ったらね」


 私たちは今後の目標を話しながら、少しずつ南へと進んでいく。するとガサガサッと草むらから音がしたので、すぐに歩みを止める。


「二人とも!」


 こくりと二人が頷き、私たちはそのままじっと待つ。予想通り草むらからオークが出てきた。ここからでも剣を振り回しているのが見えた。血が付いているが見た感じ人の血ではない。ゴブリンから奪ったのだろうか? ともあれ四体ぐらいの集団だ。ゴブリンとの戦いに勝っていい気分なら、注意力は散漫しているはず。


「ウィンドカッター」


 小さくつぶやき一気に空へと刃を飛ばす。……よし、まだ気づかれてはいないな。そのまま空に舞った三つの刃を一気にオークの頭上に放つ。


《ウッ?》


 オークは音に気付いたけど、狙った三体中一体は避けきれず頭に致命傷を受ける。もう一体は左腕を、最後の一体はお腹に傷を受けながらも下がって致命傷を避けた。あの体で避けられるなんて……。オークたちは突然の攻撃に驚いた様子だったけど、すぐに切り替えて私に襲いかかろうとする。


「ウィンド!!」


 私へと向かってくるオークに風の塊をぶつける。その衝撃で剣を持っていない二体のオークは吹っ飛んだけど、剣を持っているオークはなんと剣で風を切り裂き、そのまま私に向かってきた。


「させるか!」


 すかさずノヴァが躍り出て、剣を持ったオークの前に立ちはだかる。リュートも傷ついたオークに向かって行った。勢いに乗った私も弓を取り出して、さっきのウィンドで吹き飛んだオークに向かって矢を放つ。


《ブモ!》


 一度目はお腹に、二度目で心臓に命中し、そのままそのオークは倒れた。すぐに私はノヴァの相手のオークに視線を移す。やはりこのオークがリーダー格のようだ。先日のガーダーに似た感じを受ける。援軍を呼ばないところを見ると、実際には上位種ではなくてちょっと強い兄貴分的な存在なのだろうか?


「ノヴァ、大丈夫?」


「おう! 魔法で攻撃を頼む! 三,二,一だ」


「了解!」


 それからノヴァが何度か剣を打ち合いながらタイミングを探す。


「……三,二,一、今だ!」


「エアカッター!」


 ノヴァの掛け声とともに私は魔法で攻撃する。オークはいきなり斜め後ろからの攻撃に体が動かせず、そのまま切り裂かれる。

 お腹の辺りからオークの体が斬り裂かれ崩れ落ちる。増援が来ないところを見ると、いったんオークの集団との戦いには決着がついたようだ。


「ふ~、本当にこの辺りだとオークの集団に出くわすことが多いな。アスカ、助かったぜ!」


「こっちこそ。ノヴァのお陰で楽に勝てたよ」


「二人とも僕の方は?」


「リュートならあの程度は簡単だと思って、ごめん」


「そうそう、傷ついたオークになんて負けやしないぜ」


「信頼してくれるのは嬉しいけど、釈然としないなあ」


「それより、さっきのオークの剣が気になるし、さっさと解体してこの場から離れよう」


「そう? じゃあ、とりあえず解体を始めるよ」


「アスカどうしたんだ? その剣って」


「最初にオークが持っていた剣には血がついていたんだけど、どうもゴブリンのみたいなの。後を追ってきたりしないかと思って……」


「なるほど。僕もなるべく早くするよ」


「お願い。私もちょっと警戒しておくから」


 私は一人の時に使っていたウィンドバリアを全員に張って様子を見る。司令塔のオークがいる集団に挑むのならきっと、強いゴブリンが紛れているはずだ。警戒するに越したことはない。

 その間にもリュートとノヴァが解体を行ってくれる。ノヴァも最近では部位ごとに切り分けるぐらいなら、結構できるようになってきたから、こうやってリュートを手伝っている。


「あっ、斜めに切っちゃったな」


 ノヴァ……せっかく褒めたのに。


「もう何やってるんだよ。仕方ないからもう一体の分を使おう」


 すかさずリュートがもう一体のオークの部位を使うことを提案している。残念ながら今の私たちにはマジックバッグが一つしかないから、こうやって三体以上の部分については余りになる。それがノヴァのいい練習になるというわけだ。

 その時、カンっと甲高い音がリュートの近くでした。今の音はウィンドバリアに何かがぶつかった音だ!


「ん?」


「二人とも木の後ろに隠れて!」


「う、うん」


 鋭く指示を出す。二人にはバリアのことは言っていなかったから、びっくりしただろう。でも、すぐに木の後ろに隠れてくれた。


「魔物の襲撃みたい。すぐに場所を確認する!」


 私は自分の分のバリアを強化して、少しだけ木から身を乗り出す。

 ガンっとさっきより勢いよく矢がバリアに弾かれる。


「よしっ! 左側三十度だよ!」


「オッケー」


「分かった!」


「すぐに、相手をいぶり出すね。ウィンドカッター!」


 手前に生えている木を二本ほど切り倒し、これに驚いたゴブリンらしき影が動く。


「見えた?」


「十分!」


「数は分からないから気を付けて!」


「アスカも!」


 私たちはノヴァ・リュートと私の二チームに別れて行動する。私は風の魔法で跳んで空中から敵を探しつつ、矢を構えて反撃に入る。


「いた!」


 ヒュン


 敵の後ろに大きく跳んで回り込んでから矢を放つ。矢は見事ゴブリンの後頭部を射抜いた。だけど、さっき跳んだ時に見えただけでも、七、八匹はいるみたいだ。


「ノヴァ、リュート聞こえる? 敵は八匹ぐらい!」


「了解!」


 二人の姿をよく確認できないけど、今は信じるしかない。次の相手は……。


 ガン


 再び、私の近くで音がする。また弓の攻撃のようだ。さっきも姿は見えなかったし、移動しながらなのだろう。一瞬でも姿をとらえられれば……。

 何度も跳んで先にそいつを捜す。なかなか見つからないけど、こっちも矢を撃ちながら捜し続ける。


 ヒュン


 二体分の矢が私の横を通り過ぎる。今のは右を通り過ぎた? 視線を矢の飛んできた先にやる。……あいつだ! 矢を持ったゴブリンは逃げようとするが、逃がすつもりはない。


「炎よ、ファイア!」


 逃げる先に火を放つ。魔物も動物と変わらない習性を持つものが多い。すなわち火を極端に恐れるのだ。びくりと火を見てゴブリンの動きが止まる。


「貰った!」


 私は何度目かの矢を放ち、とうとう弓を持ったゴブリンを倒したのだった。


「よし、すぐにノヴァたちの救援に向かわないと!」


 ゴブリン一匹に時間を食ってしまった。早く行かないと。


「はあっ!」


「やあ!」


 ノヴァたちの元に着くと、ほぼ互角の戦いだった。ゴブリンを二匹ほど倒してはいるものの、残りの三匹が強いのか距離を取っていた。


「二人とも大丈夫?」


「おう! 大丈夫だ、助かったぜ」


「僕もだよ。連携がきつくてあまり倒せていないんだ」


 やはりこのゴブリンたちはオークを倒すためにチームを組んで来たんだろう。連携がうまいらしく二人でもかなりてこずっている。よく見るとところどころに怪我も見えた。


「よしっ! ここから反撃だよ」


 まずは遠距離攻撃ができる私の優位性を生かすために、風の魔法で相手との距離を取る。


「せえの!」


 ヒュヒュン


 当たらずとも良いという形で二本の矢を同時に放つ。ゴブリンたちは遠距離からの攻撃に身構えて姿勢が固定される。


「よ~し、そのまま。ウィンドカッター!」


 私は魔法で一気に決めにかかる。だけど二人が言うように三匹のうち二匹には避けられてしまった。当たった一匹も致命傷ではない。

 しかも、私を脅威と感じたのか、三匹がまとまってこっちにやってこようとする。


「勢いさえ何とかすれば……」


 三匹の士気が高いことが戦いづらい原因にも繋がっているだろうと考えて、私はまずその士気をなくそうとする。


「ウィンド!」


 向かってくるゴブリンたちの手前の地面に向かって風の魔法を放つ。その衝撃で巻き上げられた土がゴブリンたちの目に入った。たまらずゴブリンたちはその場に立ち止まり、勢いを失った。


「今だ、エアカッター!」


 私の魔法とともにノヴァとリュートも駆け出してそれぞれのターゲットを倒す。結局、倒した後に周りを確認すると八匹のゴブリンがいたみたいだ。あれだけの連携ができて、なおかつオークの倍の戦力を投入してくるなんて、おそらくリーダー格の弓使いは優秀だったんだろう。


「さあ、それはそうと解体の続きだね」


「そうだった。ノヴァやろうか?」


「ええ~、少しぐらい休もうぜ!」


「そのためにやらないと。それとも二人ともオーク肉が手に入らなくてもいいの?」


「……分かったよ。親方にも仕事は手を抜くなって言われてるからな」


「じゃあ、今回は一体当たり手間賃大銅貨二枚でどう?」


「やるぜ!」


 急にやる気を出したノヴァとあきれ顔のリュートが解体を再開する。私はこの間も何も起こらないように警戒を続ける。幸いというかさすがにというか、何も起きることはなかった。




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