採取リベンジ
感想、誤字報告いただきましてありがとうございます。
ある程度まとめて確認しているので、直ぐとはいきませんが確認させていただいております。
またこの場を借りて、閲覧・ブックマーク・評価いただいた皆様にもお礼申し上げます。
日付が変わって、今日はアラシェル様の像を作り終える日だ。昨日の時点で残っているのは、通常が五体。ちょっと単調な作業になると思うけど、頑張って作らないと。アラシェル様のことを広めるチャンスなんだから!
「おはようございます! 今日はちょっと時間空いたら休憩貰えますか?」
「おはようアスカちゃん。構わないわよ」
ミーシャさんの許可も取れたし、洗濯物をさっと洗って、第二陣が来る前に部屋へ戻って細工をする。少し作業をして戻るとシーツがまた置かれていたので、魔法も使っててきぱきと洗い乾燥までを行う。
「よし! 後はお昼の時間まで時間が使える」
魔法を使えば洗濯も簡単だ。再び部屋へと戻った私は、お昼の仕事へ入る前に通常の像を一体作り上げた。それからお昼の仕事を終え、ご飯を食べたら作業再開。
「ふぅ~、あれから二体。残りは二体だ~」
少し日も落ちてきたけど、私はめげずに作り続ける。今日中に後二体を作り上げるんだから。それからも魔道具を使いながら頑張って作った結果、ようやく完成させることができた。
「終わった~……ってもう夜だ! 暗くなっちゃってる」
急いで夕食を食べに食堂へ下りる。
「おはようおねえちゃん。やっと終わったの?」
「あれエレンちゃん、もう今日はお仕事おしまい?」
「時間が時間だよ」
食堂の時間のところには二十時の鐘の音がかけられている。そんなに時間が経っていたんだ。
「ほら一緒に食べよう?」
「そうだね」
エレンちゃんと一緒に夕食を食べて、今日はお風呂に入る。ここのところ疲れていたから、ここでリセットしないとね。
「う~ん、いつ入ってもこのお風呂はいいなぁ~。木の香りもするし魔石で疲れも取れるし、今度入浴剤の話でもしてみようかな?」
正直、今の段階ではこの木の香りが好きだから別にいらないけど、他の香りもリラックスするのにはいいかもしれない。でも、私が知ってるのはゆず湯ぐらいだし、食材を使うのはもったいないよね。もっと経済的なものを選ばないと。
「それはそうと、ゆっくりしたいな~」
身体をぷかぷかと魔法で浮かせながらゆったりとお風呂を楽しむ。
「とりあえず明後日から二日かけて、バルドーさんの依頼をすれば落ち着くかな?」
その間はちょっとだけお休みするってノヴァやリュートにも言ってみよう。息抜きだって必要だしね。
「予定も決めたし、のぼせないうちに上がろう」
私はお風呂から上がり、室内着へ着替える。この間、ドルドへ行って買ってきたものだ。やっぱり仕事をしてると汗もかくし、洗濯もするので追加で部屋着が必要になったのだ。
この季節はみんな汗をかくから順番待ちや、洗える枚数の関係で翌日への持ち越しが多いこともある。これは鳥の巣だけじゃなくて、他の宿でも変わらない。むしろこの宿だと私が魔法で洗濯する分、まだいい方なのだ。
「さあ、明日も冒険だし早く寝なきゃ。う〜ん、でも行き先を考えないとな」
私は地図を広げて、どこへ行くべきか考える。一度は東側の南かなと思ったけど、他の場所も考えてみる。西側でも薬草を採れそうな気がするんだけど、東の危険度が増した今、西へ行くと良い採取場所を探そうと後をつけられる可能性がある。
「今のところシェルオークやルーン草が生えてる場所は見つかってないっぽいし、ばれると収入に響くよねぇ……」
私は何通りか考えた結果、やっぱり東側の南へ行くことにした。
「頼むから明日は何も出ませんように……アラシェル様のお導きを」
翌日、目が覚めた私はいそいそと冒険の準備をする。今日の冒険が終わったら、一度買い出しに行かないと。保存食の期限もだけど、前の戦闘で結構矢も消費したから補充が必要だ。
矢は回収しながら使っているけど、魔物に命中したものは状態も悪くなるし、岩とかに当たると矢じりの部分も欠けてしまう。
「元がウルフの牙とかの削り出しだから、一本でも結構するんだよね……」
普通の矢は十本で大銅貨一枚ぐらいが相場だ。ただし、ウルフの矢だとその十倍以上する。普通の矢は石でできていて、鉄の矢が銀貨一枚と大銅貨四枚ぐらいだ。
でも、鉄の矢よりウルフの矢の方が魔法を付与しやすいため、付与や属性が付くとこの値段も変わってきちゃうけど。
「弓使いの人もここがネックなんだよね」
剣や魔法と違って、買ってからも常に消費をし続けるので、清算の時に経費とみるか職業としての宿命として扱われるか、結構揉める案件らしい。
フロートでは私の方がノヴァやリュートよりランクが高いので、経費ではなく自分で補充している。もっと収入が安定して、二人の装備も整ったら考えるかもしれないけど、まだまだ先かな。
「とにもかくにも出発しないとね」
杖を取ってローブに着替えたら食堂へ下りる。
「ミーシャさん、おはようございます。依頼を受けに行ってきます!」
「気を付けてね」
「はい!」
元気よく挨拶をして、ギルドへ向かう。
「おはようございます」
「おはようアスカちゃん。今日は私が見る日なの」
ギルドに着いたら受付にホルンさんはいなかった。その代わりライラさんが声をかけてくれた。
「今日はライラさんなんですね。すぐに依頼持ってきます」
ライラさんは可愛くて口調も穏やかだから、結構男性に人気がある。早く討伐依頼を取って並ばないと。私は直ぐにゴブリンとオークの討伐依頼を取って持っていく。
「あら、いつもの採取依頼は取らないの?」
「前は魔物がいっぱい出てきて、採取が全く進まなかったんです。それで、採取は残っちゃって……」
「そう? 珍しいわね。それじゃあ、受付しちゃうから」
ガチャンとカードを通して受付を済ませる。
「じゃあ、アスカちゃん行ってらっしゃい!」
「ライラさんも頑張ってね!」
挨拶は済ませたものの、ノヴァとリュートがまだ来ていないので、奥のテーブルで待たせてもらう。それから十分ほどして二人が入ってきた。最近は二人とも私に気を使ってくれているのか、ちょっと早めに来てくれる。
私は待つ時間も嫌いではないから別に良かったんだけど、二人にとってもいいことだと思うからそのままにしている。
「おはよう二人とも。もうゴブリンとオークの討伐依頼を取ったから行こう」
「おっ! さすがアスカは早いな」
「それじゃあ、内容は行きながら話そうか」
ギルドを出て目的地へ向かいながら、三人で依頼の話をする。
「結局、今日はどこに行くんだ?」
「考えたんだけど、やっぱり東側の南だね。あそこなら薬草も採れるし、魔物とも出会う可能性が高いから」
「やっぱりそうなんだね。それじゃあ、無駄にならなくてよかったよ」
「リュートは何か買ってきたの?」
「うん。さすがにメインの武器が頼りなさすぎるから、匂い玉と使い捨ての魔石をね。さすがにオーガ相手だと見向きもされないんじゃ、ノヴァが危険だから」
「リュート……ま、まあ、俺もすぐに剣を買うから大丈夫だって!」
「ノヴァはどんなやつを買うのかもう決めたの?」
「それがまだなんだよ。やっぱり、手に馴染むのとか考えると決めきれないんだよな」
「じゃあ、この依頼が終わったらジャネットさんに聞こう」
「そうだな」
私たちは東門を出て、まずはちょっと南に下がって薬草が生えているところを進んでいく。さすがに最初の方は採られているけど、進んでいくと次第に採られていないところが出てくる。
「ここは素通りして、その先に行って採ろう」
「何でなの?」
「そうすれば、この手前と先で別の人が取ってるって分かるから。そしたらもうこの先は何も無いんだって思うでしょ?」
「なるほどなぁ」
私の言葉にノヴァも納得し、さらに進んで薬草を探していく。最初に薬草を探すのはノヴァとリュートだ。
「この辺はどう?」
「ちょっとだけどあるみたいだね。ルーン草みたいだよ」
最初のポイントではノヴァが六本、リュートが九本、私が七本のルーン草を見つけた。そんなに群生してないけど、これぐらい採れるなら悪くないだろう。
「とりあえず、ルーン草の依頼は完了だね」
「そうだけど、前がゼロだからね。私としてはもうちょっと採りたいかな?」
さすがに二回分とは言わないけど、それなりには多く採って帰りたい。採れた分だけ次の依頼までの間隔を空けられるし。
「アスカの言いたいことも分かるけど、これは自然のことだからね」
「まあ、進んでみようぜ」
「そうだね」
ノヴァの言う通り新たなポイントを目指して、私たちは進んでいく。その先にはムーン草が以前、木々で隠れていたはずだ。
「ようし、ここのムーン草は残ってるかな。あった! ここはまだ発見されてないみたい」
「じゃあ、このムーン草を採ったら採取依頼の方は完了だね」
「いよっし。それじゃあ採るか」
今度は採取順を交代して私から採る。三人で順番に採った結果、私がムーン草を十三本、リュートが十本、ノヴァが九本だ。前よりは本数が少ないものの、ここは安定して採れている。これはいいことだ。
「願わくは他の人に見つかりませんように」
何て言っても街道から近いところにあるから難しいとは思うけどね。私たちは残ったムーン草の株を木々に隠れるよう元に戻して、その場を離れた。