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シェルオークの特性

「じゃあ、残るはシェルオークだが、アスカは依頼料に上乗せで女神像の材料にするとして、二人はどうするんだ?」


「僕は売ります。使い方が見つからないので……」


 そう言ってリュートがシェルオークをホルンさんに見せる。


「これは状態もいいわね。枝ごとなら銀貨……いえ金貨一枚ね」


「いいな~、リュートは。俺なんか枯れ枝だぜ!」


「ちょっと見せてみろ!」


 すごい勢いでジュールさんがノヴァの出した枝をひったくる。


「な、なんだよ!」


「ホルン見てみろ」


「はい……これは魔力が宿ってますね」


「やっぱりか……」


「この古臭い枝がどうしたんだよ?」


「シェルオークの葉や枝は神聖な力を宿すと言われているわ。枝に関していえば癒やしの力は新しい枝の方が強いから、主に教会などではこちらが重視されるの。反対に古い枝は魔力を溜め込む性質があって、小さい枝でも魔法使いに重宝されてるの。このぐらいの枝でも金貨二枚ぐらいにはなるでしょうね」


「そうだな。もう少し大きくて小振りなロッドになるぐらいならその倍は堅いな」


「そんなにするのかよ! すげーな」


「そんな木を傷つけようとしたんだから、反省しないとね、ノヴァ」


 てっきりシェルオークはノヴァに怒って悪い枝を渡したと思ったら、励ましてくれたみたいだ。


「ああ、今度あそこに行くことがあったら何か供えるよ」


「きちんと魔物たちが寄ってこないものにするんだよ」


「えっ、あ、そっか。だけど、どうしようかな? 俺には使い道がないし」


「加工するにもどうしたらいいのかよくわからないしね」


「売っちまったらどうだ? こういうのはアンティークな飾りとしても売れるし、アスカが持つには小さすぎる。その杖だって結構いいものだろ?」


「はい、そうですね」


 これでもアラシェル様からの贈り物だし、効果付きだから良いものだと思う。


「なら決まりね。ノヴァもそれでいい?」


「俺は元々使えないし、金欠だからいいぜ!」


「じゃあ、追加でリュートが金貨一枚、ノヴァが金貨二枚ね。ただし、ノヴァに関しては後日また報告するわ」


「なんでだ?」


「リュートの分は葉と枝だから素材買取だけど、あなたの分は工芸品買取かもしれないから。その場合は素材にプラスした値段で売れることもあるのよ。心配しないでも今以下の値段になることはないから」


「ふ~ん、よくわかんないけどお得だってことだな」


「ありていに言えばそうね。にしても、これであなた達も変わり者の仲間入りね。アスカちゃんだけだと思っていたのに」


「私変わってるの……」


「まあ、いい方にだけどね。魔力の扱いも上手いし、これまで依頼を丁寧かつ確実にできてることといい素晴らしいわ。そうそう、後二回の依頼達成でDランクの試験が受けられるから覚えておいてね」


 Dランクかぁ~、一応Cランクは目指すつもりだし職業も取りたいから頑張らなきゃ。


「ちなみにそのうちの一つは教会の細工依頼だから実際は後一つだけね。ここでも依頼を受注できるから済ませましょう。教会の依頼期限は一か月あるから急がなくてもいいわよ」


「教会の人って急ぐのかと思いましたけど、案外ゆっくりなんですね」


「女神様の声が聞こえるって言われてる巫女様がわざわざギルドに来て、神託があるって言い出した依頼だもの。その女神様から急がせないようにとでも言われたのじゃないかしら?」


「神託って結構あるんですか?」


「どうかしら? 少なくとも教会の女神様。つまりシェルレーネ様は年に何度か神託を出しているわ。他の女神様や神様はほとんど聞かないから、教会は信心深いものの集まりとか、加護を他の人たちより受けているって言われてるわね」


「そうなんですね」


 神様も普通に居る世界だけど、神託まみれとか多くの神様が言葉を発してるわけじゃないんだね。


「でも、まれに加護を受けた人間はいるな。鍛冶の加護を受けた奴なんかはとてつもない武器を作ったという伝承がある。今でも貴族の邸や王家の秘宝と言われるものはその鍛冶師のものが多いらしい」


「やっぱり神様の加護って強いんですね」


「姿は見せないけど、私たちとは比べ物にならないでしょうね。ギルドのカードに関する魔道具も神の加護を受けた人が作ったらしいの。最も昔すぎて誰もどうやって作ったのか分からないのだけれどね」


「俺も加護があればな~」


「そんなこと言ってノヴァったら。さっきのシェルオークの古木の件だけでも普通の人にはないことだよ」


「そうそう、頑張って努力しないとね」


 何て言ってる私自身がアラシェル様に色々してもらってるんだけど。


「じゃあ、買い取るけれど追加の分もいったんはカードに入れておくから確認しておいてね。アスカちゃんはもう一度貸してくれる?」


「はい」


 ホルンさんにカードを渡して処理を済ませてもらう。


「はい、これで教会からの指名依頼が受注できたわ。急がなくていいからお願いね。教会も冒険者ギルドや商人ギルドもお互い国を越えた組織だから、中々こういうことは断りづらくて……」


「大丈夫です。出来上がったら持ってきますね」


 とは言ってもいつ持ってこようか。待たせるのも悪いけど早すぎても良くないだろうし……。次の依頼を受けるのが三日後、その次が六日後か。よし! 六日後に渡そう。そうと決まればデザイン画をもらわないと。


「それじゃあ、デザイン画をください」


「一般人向けに描かれたものしかこっちでは用意できなかったけれどそれでもいい?」


「はい。教会のイメージではなく冒険者や一般人として作るのでそれで構いません」


 渡されたシェルレーネ様の絵姿は美しく微笑んでいるものだった。何て言うか公園にいる子どもを見守る感じかな? 教会に行けない人でも身近に感じられるようにこうなってるんだろうか?


「じゃあ、お預かりしますね」


「別に持っていっていいわよ。高いものでもないし、今後依頼が来るかもしれないでしょ?」


「じゃあ、ありがたくいただきます。また来ますね!」


「ええ、待ってるわ」


 私たちはホルンさんとジュールさんに別れを告げ、解体場へと向かう。


「後はオークだけだね」


「そういや、そういうのもあったな。枝の件で忘れてた」


「駄目だよ、ノヴァ。臨時の収入ばかりに浮かれてちゃ。こっちは継続して儲かるんだからね」


「そうだな。前の肉もちょっと残ってるけど、今回はどうしようか迷うぜ」


 ノヴァたちは前みたいに安いところを持って帰るのかな?


「そうだ! リュートもキノコの料理法をライギルさんに聞くんだったら、一緒に干し肉の作り方を聞けば? その方が売ってる肉より安くなるし、オークの肉って結構大きかったよね?」


「そうだね。孤児院に持って行ったんだけど、中々食べきれなくてね。保存が効くなら助かるよ。それにちょっとだけ飽きてきちゃってて……」


「大体、エステルの奴も悪いんだよ! あんないい肉を持ってくるのがいけないんだ。翌日以降ガキたちの手が止まるようになっちまってさ〜」


「あ~」


 これに関しては私が悪いので何も言わないでおこう。やっぱりライギルさんの言う通りのことになってしまったみたいだ。


「でも、宿の人も優しいよな。あんなにいいところの肉と調味料まで持たせてくれて。あの調味料を使ったら俺たちの肉でも結構美味く食べられたぞ」


「そうだね。できたらその味に近いのを再現したいけど難しいよ」


「どうしてだ?」


「僕らが作るんだったら少しずつ色々な調味料を買わないといけないけど、宿の方は食堂もやってるから大量に買い込むでしょ? 材料を揃えるだけでもかなりかかっちゃうよ」


「そっか~、せめて商人ギルドで完成したやつを売ってもらえればな~」


「まあ、登録するとどこでも食べられるってなるから難しいかもね。あそこは昼の人の入りも多いから」


「そうそう、リュートも働くようになるんだったら覚悟しておかないとね。値段とメニューを間違えないように!」


「そうだよね。混んでるのに間違えでもしたらどんどん混んじゃうよね」


「でも、昼はメニューも少ないの。だから間違えにくいし、材料も量を発注して良い物になってて美味しいんだよ」


「そうなのか。じゃあ、今度また行こうぜ、リュート。たまにはいいだろ?」


「たまにはだよ。あそこは安い方だけどいつもの倍はかかるんだから」


「おっし! じゃあ、今日はもう終わりだけど明日ぐらいにまた何か受けようぜ!」


「無茶はダメだよ?」


「おう、昼飯代を稼ぐぐらいだ」


「もう、仕方ないな。アスカ、ノヴァは僕が見てるよ」


「お願いリュート」


 二人とも危なっかしいし、帰ったらちょっと魔石を加工して魔道具を作ろうかな?


「さあ、あとはオークの解体だね」


「そうだった。早く行こうぜ」


 解体場に着くと今日は他の冒険者の素材を解体している途中だった。でも、量は少ないみたいで受け付けてもらえそう。


「クラウスさん、解体頼めますか?」


「おう、アスカだったか。見せてみろ」


 私は解体台にオークを二体乗せる。


「ふむ、普通だな。きちんと血抜きはされてるがそれだけだ。一体、作業代を差し引いて大銅貨八枚だ」


「じゃあ、希少部分を一体の半分だけ下さい」


「なら、一体は大銅貨六枚だな」


「僕らはまた通常の部位の半分をもらいます」


「お前らの分も大銅貨二枚だ。合計銀貨一枚と大銅貨二枚になるが、どう分けるんだ?」


 私が大銅貨六枚をカードに。二人はそれぞれのカードに大銅貨三枚ずつを入れた。


「解体は普通といったが、それ以下の奴もたくさんいる。このままちゃんと続けろよ」


「はい、クラウスさん」


 用事も終わり私たちは解体場を後にして、その後も少しだけ三人で話して私たちは別れた。



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― 新着の感想 ―
しかし、これだけ冒険者達が連日狩り続けているのにオークが絶滅しないんだなぁ それだけ繁殖能力が高いって事だろうか
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