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パーティー行動

 今日はノヴァたちと約束した冒険の日だ。こういっては何だけど私も楽しみなんだよね。ミーシャさんたちに頼まれていたお部屋改修セットも二セット作ってちょっと稼げているし、マジックバッグを買ってお金を使っちゃったから、どんどんお金も貯めて行かないとね。


「おはようございます」


「おはよう、アスカちゃん」


「おはよう、おねえちゃん。今日は頑張ってきてね!」


「ほどほどにだけどね。今日は西側に行こうと思ってるんだ」


「そうなんだ」


「あっちの方が安全だし、何もないわけじゃないってことをリュートたちにも知って欲しくて」


 エレンちゃんと少しだけ話して宿を出る。今日は採取の依頼しか受けないから、もう少し遅くてもいいんだけど、早く起きる練習にもなると思って設定時間も早めなんだよね。


「おはようございます」


「おう、おはようさん」


 ギルドに入って挨拶をする。最近はギルドの職員さんだけでなく冒険者の人からも挨拶をしてもらえるようになった。私が冒険者だということを分かってくれたみたいだ。


「おはようアスカちゃん。今日は何を受けるの?」


「採取依頼です」


 私は依頼票のところに行き、リラ草とルーン草とムーン草の依頼を持ってくる。この三つで今日は大丈夫だと思うんだけど……。早い時間だからかホルンさんのところはまだ空いていたので、そのまま受付に持って行く。


「これをお願いします」


 私は依頼票を三枚渡す。


「今日は一人で受けるの?」


「いいえ、ノヴァとリュートも一緒に受けます。二人には薬草採取の練習をしてもらえたらって」


「まあ、上手い人だけ摘むのも悪くはないのだけれど。ずっと一緒に居られるならね」


「なのでちょっと練習してもらおうと思って」


「なるほどね。じゃあちょっと待たないといけないのね」


「そうですね」


 ホルンさんにカードを渡して依頼の受付を済ませる。私がちょっと早めに来たんだけど、本当に二人はぎりぎりの時間だなぁ。今後、トラブルに巻き込まれないといいけど。


「おはよう」


「おはようリュート。今日もノヴァを待ってたの?」


「違うぞ。こいつが忘れ物をしたからだ!」


「そもそも、起きなかったのはノヴァだけどね」


「それは、ははは……」


「おいお前ら。アスカが優しいからって甘えるなよ。せめて、年下の奴に気を遣われないようにしろ」


「はい……」


 最近よく声をかけてくれるおじさんが私を心配してくれたみたいだ。


「大丈夫だよ二人とも。私が早く来てただけだし。だけど、あんまり時間ちょうどだと、トラブルに巻き込まれちゃうよ?」


「そうだぞ。チョイと早く来るのがいいんだ。たまにいい情報が手に入ったりするしな」


「わかったよ」


 ノヴァも時間ぎりぎりなのは気にしていたみたいで、反省している様だ。こういうところがノヴァのいいところだ。もちろんそんなノヴァを見捨てずに助けてあげるリュートはもっといい子だけど。


「それで今日の依頼は?」


「もう受けたんだけど採取を取ったの!」


「そうなんだね。でも、採取だと三人で行く意味あるのかな?」


「前にも言ったと思うけど、ノヴァやリュートにも綺麗に採る方法を覚えて欲しいから、練習がてら西の方に行こうと思って」


「西の方って魔物もすごく少ないよな」


「僕らも孤児院にいた頃は門を出たところに行ってたよね」


「あっちにもちゃんと金になるのがあるのか?」


「まあ、練習が主だからね。行きながら話そう」


 私たちはギルドを出発し、西門側へと歩き出す。


「ノヴァ~、あんまり儲かるとかお金のことは言っちゃだめだよ」


「あっ、いけね」


 私も結構言ってきた気もするけどね。


「西側でも場所によってはそこそこ良いのが生えてるんだよ」


「森の奥とかじゃなくて?」


「それがね。林を少し入ったところとか、ちょっと周りを歩くと手に入るの。まあ、毎回行っても取り尽くすだけだから、間を置かないといけないんだけど」


「なるほどな~。アスカってボケッとしてることも多いけど、やっぱりしっかりしてるんだな」


「ノヴァひどい!」


「宿で働いている時は明るくてかわいい店員って感じだけど、こうして話を聞くと熟練の冒険者みたい」


「そ、そんなことはないよ。薬草は見慣れてるだけだってば」


 三人で話しながら街道を進んでいく。この辺りはまだ一般の人も採りに来ている様だ。まずは林のところの状態を見たいから、そこまで進んでいく。


「結構歩くんだね」


「やっぱりみんなが採るところはどうしても数は少ないし、質も悪いみたいなんだ」


「質?」


「そう。見たら大体分かるんだけど、みずみずしいとかちゃんと立ってるとかそういうの。それを採ったら大体Aランクだったりするよ。もちろん、変に採ったら折角のものでもBランクとかになっちゃうけど」


「だから、アスカのは高く売れるんだな」


「多分ね。私も言うほど採取の経験はないから自信をもっては言えないけど」


「だけど、俺たちよりは間違いなくできるよな」


 話しながら歩いて林へ到着する。


「とりあえずこの周辺でリラ草が、林の中にルーン草が生えてるはずだからみんなで取ろう!」


「ほんとにこんな林にあるのかよ……」


「まあまあ、僕らは教えてもらう立場なんだから」


 まずは警戒しつつ林に入る。以前来たところに行くと未だにこの場所は見つけられていないみたいで、あれから新しく生えたルーン草があった。ただしやはり数が少ない、これぐらいなら一人分ってところだろう。


「ここにルーン草が生えてるの。間違えて他のを採らないようにね。それと全部採らないように」


「うん」


「先を持って、そ~っと」


 リュートは丁寧に私の言った通りに作業をしている。一方のノヴァはというと前のことを忘れているのか、引きちぎる勢いだ。


「ノヴァ! 前言ったこと覚えてる?」


「何か前に聞いたっけ? リラ草は勢いよく引けと言われたけどな……」


「他の薬草は基本的に根に近いところを優しく採るって言ったでしょ! またリュートに金額で差を開けられちゃうよ」


 せっかくのルーン草が傷んじゃう。私も採りたいのを我慢してるのに……。


「えっ、リュート。お前だけずるいぞ!」


「いや、ノヴァも一緒に聞いてたじゃないか」


「俺がそういうの覚えられないって知ってるだろ」


「あの……二人とも今日は冒険者冊子は持ってきてる?」


「一応……」


「俺は置いてきてるぜ。荷物は減らすようにって覚えてるからな!」


「ノヴァ、きちんと一通りのことができるまではあの冊子は荷物じゃなくて、必需品。必ず持ってきてね」


「リュートが持ってるじゃん」


「いなかったら、どれが薬草とか判るの?」


「うっ」


「分かったらちゃんと今度は持ってきてね。薬草だと思ってたのが実際は毒草だったら大変なんだから」


 こういうところは薬師の娘として強く言っておかないと。これからの彼らに大きく影響することだし。後、私は採ったことがないけど、毒草だけは採らないでほしい。処理にも困るしね。


「分かったよ。それでどうやって取るんだ?」


「まずはしゃがんでこう。それで根に手を持って行って、さっと採るの。ナイフとかでもいいと思う」


「なるほどな」


「それじゃあ、二人とももう一度やってみて」


 ノヴァも落ち着いてやれば中々さまになっている。この調子なら他の薬草も大丈夫だろう。最初はリラ草で試そうと思ったんだけど、冒険者としてお金に大きく関わる方が真剣になると思ったのだ。

 逆にリュートは最初からとても熱心だ。商才もあるのかもしれない。私が実年齢と離れているからお姉さん気分だけど、そういうところは一番しっかりしていると思う。


「さあ、残りも採るよ!」


 採れそうなのはあと八本だけ。合計で私が三本、ノヴァが五本、リュートが四本採った。


「こんだけかぁ。今回もあんまりお金になりそうにないな」


「そう思うんだったら一つ一つを大切にしないとね」


「一つ一つか……」


 遅まきながらノヴァにも自覚が出てきたところで、今度はリラ草の採取だ。


「次はリラ草だね。こっちは周辺に生えてるから一人が中央で休憩して、残り二人が探すってことで」


「この周辺なら安全じゃないの?」


「背の高い草も周りにあるから。ああいうところを隠れて襲って来るらしいよ、ウルフとかは」


「それは嫌だ。あいつらに一度、防具つぶされたからな」


「そうだったね。あの時は生活もいっぱいいっぱいで本当に苦労したよ」


「食事を抜いてぼろい中古を買うかって話をしたもんな」


 二人とも私より冒険者生活が長いだけあって苦労したんだな。それに私と違って装備も全部自前だしね。


「じゃあ、警戒は大丈夫そうだね。最初は私とリュートが採るから、ノヴァが見ててね」


「おう! でも、俺の分を残しといてくれよ!」


「それは個人の努力かな?」


「ええ~」


「あはは」


 ノヴァを中央に残し、私たちは周辺の草むらをかき分けてリラ草を探していく。見つかるには見つかるけど、品質でいうと頑張っても元がBランクのものばかりだ。背の高い草に邪魔されて生育にも支障が出ているのかもしれない。


「見つけやすい場所だけどいまいちだから、地図にも書いておこう」


 こうして私たちは交代や休憩を取りつつ、リラ草を採取した。やはり最初に集め出したアドバンテージは大きく、私が二十三本、リュートが十五本、ノヴァが九本だった。


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