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加工依頼発生

 うまいと言ってお酒を飲んでいるバルドーさんと食堂で別れて、私は自分の部屋に戻る。とりあえずは現段階で途中になっていることを書き出してみようかな?


 一、お風呂 これは切実なんだけど、まだ材料が揃いきらないらしくて、もう少し待つみたいだ。

 二、細工屋のおじさんの依頼 十個作ったけど、一気に出せないから明日は五個だけ持って行く

 三、バルドーさんからの依頼 女神グリディア様の木像二体と銅像数体と銀の像一体(ミニ版)

 四、宿の各部屋の改修 物干棒と収納箱二個とハンガー

 五、三日後にまたリュートたちと冒険


 ……書き出したら結構あるんだな。私はのんびりしようと思ってるけど、これだと忙しい人みたいだ。でも、一と四はもう少しでなくなるから、そうなったら三つだし大丈夫でしょ!

 ひとまず冒険前日になる明後日は魔力節約のため、宿の改修用の製作に充てよう。そして、明日は女神グリディア様の像とかを作っておこう。作って隠しておけば、その後はのんびりできるしね。


「予定も決まったたことだし、おやすみなさい」


 私は冒険の疲れを癒すため、少しだけ仮眠を取るのだった。



「ん? 音がする……」


 あれからどれぐらい経ったのだろうか。何やらドアをコンコンとノックする音が聞こえる。


「おねえちゃん起きてる~?」


「あれ……」


 今何時だろうと思い外を見ると辺りは暗くなっていた。慌てて部屋の明かりをつけて着替え、部屋の外へ。


「おはよ~」


「おねえちゃん、まだ夜だから。ほら、ご飯取ってあるから下に行こう!」


 エレンちゃんに食堂まで案内されると、とってもいい匂いがした。


「いいにおい~」


「おっ、ようやく起きてきたね」


「あっ、ジャネットさん!」


「今日はここに差し入れすると思ってね。食べに来たんだよ」


「バルドーといいお前ら寄ってたかって……」


「いいじゃないかライギルさん。店も助かってるんだろ?」


「……まあな」


「あはは、これが私の分ですね。いただきま~す」


 お腹が空いていた私は二人の会話に相槌を打つと、ぱくっとお肉を口に含んだ。


「ん~、美味しい。匂いも味もサイコーです!」


「そ、そうか。よかったな」


「お父さん何照れてるの?」


「エレンうるさいぞ」


「あっ、起きてきたのね。お土産ありがとうアスカ」


 エステルさんは帰るところだったみたいで、お土産のオーク肉を手に持っていた。


「いいえ、エステルさんには頑張ってもらってますから。栄養取って下さい」


「本当にありがとう。そういえばノヴァたちも、持って帰ったの?」


「そうですけど、あまりお金に余裕がないみたいで、安い部分を持って帰ってました。でも量は私の倍以上ありましたけど」


「なら、二人の分は大丈夫ね。孤児院の子たちへいいお土産になるわ」


 エステルさんがウキウキしているところへライギルさんが近づいて行った。どうしたんだろ?


「エステル。さっき調味料も持たせたけどな、絶対先に差し入れるなよ!」


「どうしてですか?」


「それ食べた後にあいつらの肉じゃあ、流石に値段も味も違う。ましてや俺の調味料入りだしな」


 自信たっぷりに調味料を自慢するライギルさん。でも、今食べてる私が大満足だから大袈裟でもないだろうな。


「そうですね、注意します。それじゃあ失礼します」


 エステルさんはライギルさんにもお礼を言って帰っていった。エステルさんはこの先の安宿に泊まっているらしい。一応女性でも泊まれるぐらいギリギリ安全な宿だそうだ。

 本当は借家に住みたいんだけど、身元の保証が弱くて借りられないんだって。来月位になると鳥の巣が保証できるぐらいになって、入れるかもって少し前に喜んでいた。


「それにしてもオークの肉は美味しいねぇ。持って帰る苦労さえなければだけど」


「確かにそうですね。あの巨体を担ぐなんて私には無理です」


「担ぐと視界も悪くなるしいいことないからね。だからマジックバッグも高いんだけどねぇ」


「そういえばおねえちゃん、使いこなしてるよねマジックバッグ」


「昨日、練習したからね。今まで取り出すのは採取依頼の報告をする時だけで急に出すこともなかったから」


「アスカはこういうところ、しっかりしてるよね。ああ、そうだ。この前のオークの売却代金忘れてたよ。はい」


 代金だよとジャネットさんから銀貨一枚を受け取る。


「あれ? ちょっと高くないですか?」


「解体場のおっさんも言ってただろ? 小さいと値段が下がるけど、逆にちょっと大きめの奴は値段が上がるんだよ。それに前回のは綺麗だったろ?」


 そういえば今日倒したのもそれほど傷はつけてないけど、前のに比べれば傷もあったな。

 にぎやかな夕食を終えると、ジャネットさんとも別れて部屋に戻る。ちょっと汗をかいていたので、タオルセットを頼み体を拭いた。


「アラシェル様、本日も安全に過ごせました。ありがとうございました」


 毎日のお祈りも済ませ眠りにつく。一度眠ったから心配だったけど、まだ疲れはあったみたいでちゃんと眠れた。




「ん~、寝た」


 よいしょと体を起こす。昨日は長い時間眠ったせいか体の調子がいい。


「今日は女神像を作成する日だし頑張ろう。その前に材料を買いにおじさんのところへ行かないと」


 食堂に下りて挨拶を済ますと朝食を食べる。


「今日もスープが美味しい!」


「何言ってるのおねえちゃん。昨日の肉が入ってるからだよ」


 そう言えば朝のスープって夕食の端材とか余りを使ってるんだった。魚が余れば魚介系のスープだし、昨日はオーク肉の端材が出たからそっちが入っているんだろう。


「さて、今日もお仕事頑張らないと」


 とはいえ今日はエステルさんもいる日だ。昨日は私がいなかったけど、ほとんど仕事も残っていないし、大丈夫だろう。


「それじゃあ、私は掃除に行ってくるから洗濯はお願いね」


「エステルさん、分かりました」


 私の予想通り、午前中は時間に余裕ができた。エステルさんは洗濯の途中で掃除を教わりに私と替わる。これはもっと仕事が楽になるかも。エステルさんは二十時までいるし、今までやっていた作業の時間もずらせそうだ。


「でも、ライギルさんも新メニュー作成で忙しそうだし、お休みも取りやすくしたいんだよね」


 それにはもう一人雇うのがいいんだろうけど、私が言えることじゃない。ただ、客足も伸びてきてるからちょっと心配なところもあるんだよね。まあ、今はエステルさんの教育中で難しいだろうけど。


「どうしたのおねえちゃん?」


「ん~、ちょっと今は余裕ができたなって」


「そうだよね~。エステルさんがいてくれて助かるよ」


「そう? そう言ってもらえると嬉しいわ」


「うんうん。私が休んでも慌てたりしないしね」


「前はシーツが残ったり、片付けが中途半端な時もあったからね。おねえちゃんが作ったやつで評判も上がってきてるし」


「そうなの?」


「そうよアスカ。ここに泊まったお客さんが便利だねって、また泊まってくれてるのよ」


 そんなことになってたのか。まあ、別にオリジナリティがあるわけでもないし、どこでも採用出来るからすぐに落ち着くだろう。


「もうそろそろお昼よ」


「は~い」


 私たちはお昼の仕事に向けて準備を始める。受付を含めて四人いれば、混んでいるお昼の対応もかなり楽になった。座席をもう少し増やせばパンのおかげで増えた人も座れるし、何とかなるだろう。こっちは今度親方さんに頼むと言っていた。


「今日も終了だね」


「うん」



 お昼の休憩も順番に取り、私は自由時間だ。


「それじゃあ、出かけてきます!」


「行ってらっしゃい」


 遅いお昼を食べるミーシャさんとライギルさんに挨拶をして宿を出て行く。目指すは細工屋だ。


「おじさんいる~?」


「おう、よく来たな。依頼してた分は出来たか?」


「はい。それなんですけど相談があって……」


「何だ、出来が悪いのか?」


「そこは大丈夫だと思うんですけど」


 返事をしながら私はバッグから作った細工品を五つ取り出す。


「これはベル草か?」


「はい。可愛いと思ったんですけど、作りすぎちゃって。実は作りかけのがもう五個……」


「う~ん。細工は一点物が多いからなぁ。最初の二個ぐらいまでは売れるかもしれんが全部となると……」


 やっぱりおじさんも私と同じ意見のようだ。なので、もう一つの案を話してみる。


「それなんですけど、このベルの部分に加工した宝石とか魔石を入れて、自分の気に入った色にするのはどうですか?」


「なるほど、この溝にはめ込むのか。だが、この細工で宝石となると……いや、たまに立ち寄る貴族や商人なら同じデザインという事が逆にいいかもしれんな」


「おじさんぶつぶつ言ってどうしたの? やっぱりだめかなぁ」


「いや、これぐらいの数ならはける当てがある。だがちょっと頼まれてくれないか? ここに宝石と魔石が一つずつあるからこれを加工してこいつにはめ込んでくれ。この二つを見本にして今後の分を売り込むようにする。きちんと加工費も払うからな」


「本当ですか!? じゃあ、やります!」


「なら一旦は五個分の依頼料だな。金貨一枚と銀貨二枚だ」


 う~ん。前に買った銀はまだ半分近く残ってるけど、あれが金貨一枚だったから言う程の儲けにならないなぁ。雑なデザインだとすぐに赤字になりそうだ。


「ううむ、分かったから色を付けて引き取る。金貨一枚と銀貨五枚だ」


 あれ? 考えごとをしてたら不満だって思われたのかな? まあ、買取価格が上がるのはいいことだし、ラッキーだ。


「おじさんありがとう。じゃあ、後は材料を買いますね。オーク材と銅の大きいのが二つと銀の中が一つで」


「あいよ。銀貨七枚と大銅貨七枚だ」


「そうだ! おじさん、魔石ってまだ持ってますか?」


「前に言ってたグリーンスライムか? 小さいのは大銅貨二枚で売ってるぞ。他のは結構かかるが……」


「魔力だけ通せば効果がでるのはありますか?」


「そういうのは基本的に金貨が必要なぐらい高いんだ。数回で使い捨てなら水と火が銀貨二枚、他は大銅貨四枚前後だな」


「そうなんだ。でも、オークとかは持ってなかったんだけど……」


「あいつらは魔力が低いからなぁ。魔力が凝縮したものって言われてるから、基本的にはそこそこ魔力のある魔物からしか獲れないぞ」


「そうなんですね。どうしようかな? ん〜、グリーンスライムのを二つと火の属性のを一つください」


「ああ、分かったよ」


 代金を支払って魔石を受け取る。これで思ったものができるかもしれない。


「さあ、帰って細工を頑張ろう!」



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― 新着の感想 ―
アスカちゃん、おじさんには少し容赦なくて草 まぁ加工細工でこれから一番儲ける人だからか
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