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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカのスキル活用

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細工依頼の完了

 食堂へ戻った私は、ライギルさんたちと今後について話をする。


「後は何時からオーブンを使うかだな。今日にでも使いたいんだが……」


「それですよね。私もパンを早く食べたいんですけど……」


「え~、すぐに使い始めないの? できてるのに」


「そりゃ俺も使いたいけど、普通は業者に頼んでも丸一日はかかるからな。音はしてたから今日の作業は怪しまれないと思うけど、さすがにこの短時間でできたとなったら、アスカに迷惑がかかるだろ?」


「そっか~、残念だね」


「でも、私も早く食べたいんだけどな~」


「じゃあ、今から焼いちゃえば良いんじゃないかしら?」


「え?」


「ちょっと時間が経っても柔らかいのでしょう? なら、あなたがどうしても我慢できずに改装途中で作り始めたってことにして、今日と明日は宿泊者限定にするのよ。それならアスカちゃんも食べられるし数もそこまで作らなくていいわ」


「なるほどな。宿泊者には明日以降メニューとして作りますって言えばいいのか。まあ別料金だけど」


「え、別料金なんですか?」


「そりゃ、売り上げの一部はフィアルさんに渡さないといけないからな。まあ、アスカは紹介してくれたからこれまで通りの金額でいいぞ。それにこの改築も色々迷惑かけてるからな」


「分かりました。じゃあ、本格的に色々なパン作りを手伝いますね」


「そりゃ助かるよ。だけど、そうなったらうちはパン屋になっちまいそうだな」


「何かそういうコーナーがあっても面白いかもしれないわね」


 新しいパンに取り掛かりたいライギルさんと、商機を感じで笑顔で応えるミーシャさん。う〜ん、これぞ夫婦って感じだ。


「それはそうとアスカ。今回の依頼料だが、悪いが受けた時と一緒でギルドに行ってもらうんだが、日を空けて行ってくれ」


「じゃあ、明日からはちょっと別のことしてますね」


「それと、商人ギルドから店員募集の結果が返ってきてな。ようやくうちに一人、新規の従業員が入ることになったからよろしくな。名前は確か……エステルだ。多分、明日にでも顔見せに来ると思うから、あまり派手なことをしないでくれ」


「分かりました」


「うそ!? お父さんありがとう~」


「まあ、お前にも苦労を掛けたし、これから少しは楽になるだろう」


 ライギルさんは料理人で、私がパン好きだと思って侮っているけど、きっとあのパンが広まればそんな風にはならないと思うんだけどな。嬉しそうにするエレンちゃんには悪いけど、ニヤリと微笑みながら部屋に戻った。


「う~ん、今日はもう時間も遅いし、細工の本を読むぐらいかな? 一応、髪飾りのデザインは決まってるし」


 ゴロンとベッドに寝転がりながら私は細工の本を広げる。円形もふちの内側を彫っていくのか外に線を彫っていくのかで結構印象が変わるんだな。ん~、この彫り方はちょっと難しそうかな?

 透かしや穴での表現もあるんだ……いつかやってみたいかも。私が熱中して読んでいると、エレンちゃんが夕食の時間を知らせに来てくれた。


「夕食はいい匂いだ〜」


 これぞパンといういい匂いがする。食堂のお客さんたちもこそこそ数人が話をしているみたいだ。だけど、そこはミーシャさんが追及をかわしてる。作戦通りに行ってるみたいで良かった。


「いただきま~す。……これ、この味。確かにフィアルさんの店とはちょっと違うけど、この素朴な味もいいな~。マーガリンとか塗ればちょうどじゃないかな?」


 少し、外がカサッとしているのでジャムにはこっちの方が合うかもしれない。でも、何だかパンの表面が変に硬いなぁ。ちょっとここは後で話し合おう。そんなわけで、食後は身の回りのことをして時間を使い、ライギルさんとお話だ。


「大量に作るならこんな感じで長細く作って、切っていくのはどうです?」


「だが、表面がボロボロ崩れないか?」


 パン切り包丁とかないのかな? そういえばどこも売ってるパンの形って似てたな。いらない包丁をもらって刃の部分を魔道具で加工して説明すると、実際に明日の夕方にやってくれるそうだ。これはますます楽しみだな~。


「それじゃあ、アラシェル様。今日も一日ありがとうございました」


 お祈りを済ませ今日も一日を終える。明日もいい日でありますように。




「ふわぁ~。おはようございます、アラシェル様」


 挨拶をして簡単に着替えを済ませる。一応、今日は新人さんが来るらしいけどいつ来るんだろう?


「おはよう、エレンちゃん」


「おはよう、おねえちゃん」


「アスカ、おはよう」


「ジャネットさん、おはようございます。どうしたんですか? 朝はこの時間にあまり食べないのに」


「ああ、昨日宿に泊まったやつに夕食で出たパンが美味かったと聞いてね。朝も出るならと思って食べに来たんだよ」


「そうだったんですか、美味しいですよ。フィアルさんのところとはちょっと違いますけど」


「そうなのかい? まあ、期待しとくよ」


「二人ともはいど~ぞ」


 エレンちゃんが朝食を持ってきてくれたので、ジャネットさんと一緒のテーブルに座り食べ始める。


「ふぅん。確かに味はあっちの方がいいけど、普段食べたり、冒険中に食べたりならこっちかな」


「本当ですか?」


「ああ、冒険中にあいつのすました顔を思い浮かべながら、上品な料理なんて食ってられないからね」


「「ぷっ」」


 二人で夜にほらと出来たてのパンを出すフィアルさんを思い浮かべる。確かにそれはないなと私も思った。


「だけど残念だねぇ。未完成だから、今日の夕方から本格的に焼き始めるんだってさ。今日の冒険には間に合わないよ」


「まぁまぁ、明日からは簡単に食べられますよ」


「だといいんだけど。あっ、もし時間があったらでいいから、あたしが明日の夜まで宿にいないから、その間に例のやつ、作っといてくれないか?」


「例の……ああ、木箱とかですね。やっておきますよ」


「済まないね。宿の暮らしも長くなるとどうしても荷物が増えてきてね」


「分かります。じゃあ、私は仕事に行きますね」


「あたしもがんばってくるよ。じゃあね」


 ジャネットさんと別れていつも通りにシーツを回収に行こうとすると女の人が入ってきた。旅人さんかな?


「ミーシャさんお客さんですよ」


「あら、いらっしゃい。今日はお泊り?」


「あ、いえ、商人ギルドから派遣されてきました、エステルと言います。よ、よろしくお願いします」


 そういうと女性はこちらに頭を下げる。


「あなたが主人の雇った子ね。こんにちは、私が宿の女将のミーシャ。こっちは宿の客でよく手伝ってくれるアスカちゃんよ。それと、奥にいるのが私の子どものエレン。宿の手伝いをしてるから、あの子からも色々聞くことになると思うけど大丈夫?」


「あ、はい。ミーシャさんにアスカさんにエレンさんですね」


「あっ、私はアスカでいいですよ。エステルさんの方が年上だし、宿の従業員でもないので」


「じゃあアスカ。これからよろしくね」


「はい!」


 エステルさんを改めて見る。目元はややつり上がっているものの、険しいとまでは言えない。髪はグレーで作業をするためか、後ろで一纏めにしていた。


「そうだわ。朝の時間は宿泊客しか来ないから、今のうちに主人とエレンにも挨拶をしましょう。ここは私が見ているからアスカちゃん、悪いけどあっちで紹介を頼めるかしら?」


「は~い」


 ミーシャさんに言われてエステルさんをエレンちゃんとライギルさんに紹介する。二人からの感触もいいようだ。紹介も済んだら早速、スキル確認のため後をついてもらう。


「それじゃあ、まずはシーツ交換からだね。私についてきて!」


「はい!」


 ああ、なんだか少し前の私を思い出すなぁ。それから三人でシーツの回収に向かって、私だけはすぐに洗濯へ。お昼はさすがに初日から入れたらかわいそうということで、カウンター目の前の二テーブルだけを担当してもらった。


「二人ともすごいです! あんなに多くの注文を取れるなんて。私より小さいのに」


「まあね。私は手伝い始めて結構経つし、おねえちゃんはすごいから」


「お姉ちゃん?」


「あっ、私が呼びやすいからそう呼んでるの。別に血はつながってないよ」


「そ、そうなんですね。私、孤児院にいたので、何か特殊な境遇なのかと……」


 エステルさんは私たちを見比べながらそう答える。まぁ、外見は全く似てないもんね。


「最初はびっくりしたけど、今はうれしいですよ」


 お昼ご飯の間も三人で談笑して過ごした。エステルさんの就業時間は十時から二十時ぐらいまでの予定らしい。きっと出会うことも多いし、これから楽しみかも。



「さて、それはそうと今日は細工だね。まずは絵を取りだしてと」


 二人と別れて部屋に戻った私は、温めておいたデザイン画を開くと、預かっていた銀を用意する。後は着替えをして準備完了。


「今回は魔石も使わないし一気にできるね」


 まず大胆にカットして必要なサイズを塊から切り離す。次は大まかに削ったら一度手を止めデザイン画とにらめっこだ。


「ここはこっちの花で、この交差部分はこっちの花か。よし、覚えた。発動!」


 魔道具を起動させ、イメージ通りに細かく削っていく。少しずつ削れて形になっていく銀の塊。今回もいい感触だ。


「……ふぅ。できた!」


 出来上がったのは八分の一の月をバックに下向きで小さい花と大きい花が寄り添う銀細工。少し強度に心配はあるけど大丈夫だと信じよう。後はこれに留め具をくっつけて……完了!


「よし、これでバルドーさんとおじさんの依頼が完了したけど、バルドーさんは明日の夜ぐらい。おじさんのは三日後ぐらいに報告がいいかな? ちょうど月替わりの時だし」


 出来上がったものにはちょっと親心があるけど、いい人に巡り合えたらいいねとひと撫でして机に置く。


「そうだ! せめて入れ物を用意しよう」


 以前の残ったオーク材で簡単ながらも丈夫な箱を作り、髪飾りを固定する。これで、使わない時も大事にしてもらえるだろう。



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