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狩りと実力

湖の景色を堪能した後はこっそり部屋に戻った。早く寝ないと明日は朝早くから狩りだからね。もうちょっと居たかったけどこればっかりは仕方ない。


「アルナもお留守番ありがとう」


ピィ


「それじゃ、おやすみ~」



---


そして翌日、今日は狩りに同行する日だ。早めに起きて狩りに向かう。食事もあまり匂いのしないものだ。朝からそういったものを口にすると、不意を突く時にばれてしまうからだ。


「たまにはうまいものを景気づけに食ってから出たいよな~」


「カシウスってばこの前からそればっかりだね」


「そりゃそうだろ。一応俺も何度か獲物は獲って帰ってるし、その日の食事は豪華になるんだ。たまには朝もって思うのが当然だろ」


「お前らつまらん話をして。嬢ちゃんが退屈しちまうだろ。もっと狩人らしき話はないのか」


「といってもこの人も冒険者なんだろ?いちいち俺たちが何か言う必要があるか?」


「冒険者は危険を遠ざけて終わりだ。倒すにせよ逃げるにせよな。その後で食事はと言えば自分たちの食い扶持だけだ。村で家族の待つ俺たちとは考え方が根本的に違う」


「そんなの精神論だろ?」


「いや、実際に俺たちが罠を使うのも確実性を上げるのと、狩りに失敗しても食べ物にあり付けるという考えからだ


「ホクスは真面目だなぁ」


「こういう話をしてるだけでも私は楽しいですよ。それに狩りについて行くのは新鮮です。私は討伐依頼といっても行く先で出会いそうな魔物のものを受けたりするのがほとんどで、特定の魔物を狙うことは滅多にないですから」


「そうか。だが、俺たちも魔物は選ばんぞ。ゴブリンやウルフも村にとっては危険だし、オークやボアは良い食料になる。出て来て欲しい、欲しくないというのはあるがな」


「やっぱり、そこはみんな一緒なんですね。私もアルバの東でオークメイジばっかりに遭った時は残念でしたもん。アーチャーや普通のなら食べられますからね」


「へぇ~、そっちにはメイジも出るんだな。村の近くじゃ精々、数年に一度アーチャーが出るぐらいだ」


「村の人にはその方がいいかもですね。メイジは賢いから罠とかも使いますし、弓以外の遠距離攻撃を使われると結構対処も面倒なんですよ」


「それは僕たちも分かるよアスカ。ゴブリン相手でもアーチャーが1体混ざってるだけで、戦い方を変えないといけないからね」


「そう言えばロビン君もだけど、みんな装備がというより防具が地味だね」


どう見ても他の狩人の装備もウルフの毛皮とかその辺の革を使ったものばかりだ。今も数人で動いてるんだから一人ぐらいサンドリザードの革を付けているかと思ったけど、そんな人もいない。


「俺たちも数年前までは滅多に街に出なかったからな。自分たちで直せるものや作れるものが基準になってるんだ」


「へ~、またなんで出るようになったんですか?」


「俺たちの上の世代が狩りが下手だからだよ」


「カシウス!」


「ほんとのことじゃんか。グレートボアもろくに狩れないし、獲物の取れ高も悪くなったから街に出て必要なものと交換し始めたんだよ」


「おかげでいい弓とかも買えるようになったし、矢だって街の人に教えてもらったんだから良かったじゃないか」


「ロビンはそういうけどどうにも情けないだろ?いつか俺が村長になったら村をもっと大きくしてやるぜ!」


「村長さんって同じ家の人が成るんじゃないの?」


「昔はそうだったけど、今は違うんだ。さっきカシウスが言ったけど、街に行くようになったのも仕方なかったからなんだ。だから今、あんまり支持する人がいなくて、今度からは相談して決めようって話が進んでるんだ」


「田舎でのんびりできるって思ってたけど、大変なんだね」


「まあ、どこかでつながってるから、全体のことを考えないといけないのはあるかな?」


「にしても、あんたも冒険者なんだろ。強いのか?」


「う~ん。そこそこではあると思うんだけど…」


「なんだよ。ロビンが連れてくるから勝負しようと思ったのにさ」


「カシウス。それだけはやめた方がいいよ。するなら僕と勝負した方がまだましだよ」


「なんだと!決めた!お前勝負しろ!!」


「ええっ!?いきなり言われても、私は狩人のルールとか知らないし…」


「ならお前に合わせてやるよ。魔法でも何でも使っていいぞ!」


「えっ!ほんとに!?」


それならまだやりようはある。話をしている間にも森を進んでいるし、魔法で探知すれば獲物の位置ぐらいわかるもんね。その時の私は勝機が見えたので、ロビン君の加減してよって目線には気が付かなかった。


「それじゃ、弓を用意してと…。矢はウルフの牙を使った魔法の通りのいいやつで、後は探知の魔法で…おっ!いいところに1匹見っけ。これは何だろう?ボアかな?それじゃ、遠慮なく…」


「なっ!?いきなりこいつ弓取り出して何してんだ?」


「カシウス。だから言ったでしょ。アスカに勝負なんて挑まないで僕にしておけばいいって」


ヒュン


矢を放つ。角度も勢いも計算したけど、流石に目の前に木があって当たらないかもしれないので結果を確認する。再び探知の魔法を使うと相手が動いていない。とどめがさせたかは分からないけど、動かないから何らかの成果はあっただろう。


「さあ、ロビン君。確かめに行こう」


「分かった。もう、アスカはこういう常識だけはないんだから…」


「何か言った?」


「ううん。カシウスも付いて来てよ」


「お、おう」


いまだによくわかっていない他の人も連れて現場に向かった。


「これは…ボアだな」


「見事に脳天に矢が刺さってるな」


「う、嘘だろ?気配もなかったし、ドンだけ遠くから射ってるんだ」


「そんなに難しいことじゃないよ。みんなだって遠くからでも目標が見えてれば当てられるでしょ?私は目の代わりに魔法で知覚してるから出来ただけだよ」


アスカはたまにすごく鈍感になる。さっきも出来る人は出来るよって言いたいんだろうけど、そんなことが出来るのは一握りなのだ。僕のスキルの連撃も矢を射るのに補正がかかる。だけど、撃ち続けられるわけではない。結局、1分間に打てる本数はアスカと変わりがない。それをアスカは努力で補ってるというけど、全盛期の父さんでさえ僕の速度で射れるかは分からないと言っていたのだ。


「はぁ…。まずはアスカ。そもそも見えていないところから射るということがどれだけ常識外れか分かってる?」


「だから、私は目の代わりに魔力で…」


「そ、そんなん知らねーよ!絶対まぐれだろ!!」


「そんなことないよ!ちゃんと狙ったもん」


「じゃあ、まぐれじゃないって証明して見せろよ。もう一回やって見せたら信じてやる」


「あ~あ、カシウス。知らないよ僕」


「うるさいロビン。こんな偶然、続くはずがないんだよ」


「まあ、偶然じゃないけど偶然だと思いたい気持ちはわかるよ。僕もまさかここまでできるとは思ってなかったし」


「えっ!?ロビン君もさっきのこと疑ってるの?」


「いや、疑ってはないけど。ここまでできるのは予想外だったよ」


「今回のは魔法を使ってるからね。弓だけじゃ流石に出来ないよ」


「そ、そうか!流石に弓の腕はそんなじゃないよな。さっきも魔法使ったんだし」


違うよカシウス。アスカは弓以外でも色々出来るけど、弓ならこれぐらいかなっていうのを見せてくれたんだよ。弓が彼女を構成する力の一部とは思わないよね。それだけでもかなりのものなんだから。


「それじゃ、今度は弓だけだよ。見ててよ…」


そういうとアスカは集中して矢をつがえる。そして、わずかに先の方で音がしたと思うと即座に狙いを定めて射った。


「今度は何なんだよ」


「魔法は使わずに倒したよ。多分だけど…」


自信がないのは相手が動いているからだろう。さっきは多分魔法で何か居たのが分かってたみたいだったし。恐る恐る近づいてみると、ホーンラビットが倒れていた。角に気を付ければおいしい魔物だ。サイズも小さくあまり荷物にもならないから獲物をしとめた後でも持って帰られるいい魔物だ。


「よしよし。幸先よくこれで2連勝だね!」


アスカはすでに何の勝負か忘れていて、単純に倒した獲物の数で勝ち負けを決めている様だ。こういうところだけ年相応なのは卑怯だと思う。大体、狩人といっても毎回獲物を獲って来れるとは限らない。それを当然かのように言う時点でカシウスには勝ち目がないのだ。結局、狩りの見学のはずが終わってみればアスカが4体仕留め、僕がもう1体を仕留めて体裁を整える感じで終わったのだった。


「ロビン、俺が悪かったよ。でも、アスカも悪いと思うんだ」


「うん。まあ、4体目を仕留めたところで気付いてくれたのが良かったよ。これ以上は村で説明しづらいからね」


「というか、あれを努力の結果ですっていうのも違うよな」


「本人は気づいてないからあまり言わないであげてね」


「はぁ、真面目に練習するか」


狩人の自信を無くさせるかのような見学になってしまったけど、カシウスはやる気が出たらしい。将来のことを考えたらアスカが見学に参加してよかったのかな?


「これで今日の夜はごちそうだね!」


前言撤回だ。アスカが村にずっといると森の獲物が一掃されるかもしれない。たまに訪れる天の恵みのようだと思っておこう。


「今回はお世話になりました」


「どうしたのアスカちゃん。改まっちゃって」


豪勢な夕食を終え、くつろいでいるとふいにアスカが話し出した。


「いえ、やっぱり狩りに同行するっていうのは生活に関わることですし、みんな真剣なんだなって思いました。獲物だってたまたま今日はいっぱい獲れましたけど、そうじゃない時とかに備えて保存に回しましたし、そんなに単純じゃないんだなって思いました」


「まあ、腕がいいってのも色々だからな。獲物が必要な時に獲れる。それが出来ることが大事なんだってことだけ覚えとけばいい。もちろん、必要な時ってのが毎回訪れない方がいいんだがな。定期的に取れりゃ、別にいいってことだからな」


「はい!ただ獲れればいいってことでもないって分かりました」


うんうん、その調子で常識も身につけて欲しい。街じゃあんな冒険者が溢れかえってるのか?って、買い物に出かけない狩人が勘違いしないぐらいにね。



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