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ワインツ村の狩人

細工が順調に進み、今日はワインツ村に行く日だ。


「準備よし。みんなにも連絡はしたし、早速行かないとな~」


ジャネットさんは王都行きの依頼で、リュートはそれについて行った。ノヴァはといえばまだ中央神殿のお風呂作りから帰ってきていないので、珍しく1人での行動になる。


「リュートはともかく、ジャネットさんも最近は忙しそうなんだよね」


なんでも、そこそこ高い剣を作ったからお金が無いとのことだ。あの黒い刀身の魔法を切り裂いてた剣かな?確かにあんな効果を持った剣なんて見たことないし高そうだよ。私はメインの杖と弓が1つずつで、あとは矢の料金だけだけど、ジャネットさんは剣を何本も持ってるし、金策は大変そうだよね。


ピィ


「あれ?アルナも行くの。子どもたちの相手はいいの?」


大丈夫、ちゃんとついてくよと返事をするアルナ。最近ようやくミネルの子どもたちと触れ合えるようになってそっちにつきっきりだったのに、冒険好きなんだから。


「それじゃ、エミール。ミネルのこともだけどミーシャさんのこともよろしくね」


ピッ


レダは子どもたちのことでまだまだ頭がいっぱいだし、ミーシャさんのことはしっかり者のエミールに頼む。特に最初の出産の時にミネルが体調を崩したので、まだまだ心配してるみたいなんだよね。


「さて、そろそろ出発だね。お土産は持ったし、装備もちゃんとしたし準備完了だ」


最後にマジックバッグを持って宿を出る。


「そうだ。せっかくだからお魚もお土産にしようかな?急げばお昼には間に合うだろうし、そうと決まれば…アルナ急ぐよ」


ピィ


私は門を出ると、風魔法で一気に浮き上がり進んでいく。普段はみんなと一緒に行動するからホバーの魔法なんかで距離が開いた時だけ魔法を使うけど、1人ならそういう心配もない。アルナもサンダーバードたちとの追いかけっこで魔法での移動は慣れっこなので、ぐんぐん湖の横を過ぎていく。


「新鮮さとかを考えたら村に近い方がいいよね。よ~し、対岸まで一気に行こうアルナ!」


私は船着き場があるところまで進むとそこからやや村の方へと進路を変えて一気に湖を横断していく。


「それにしてもこの湖って広いよね。ここがアルバの主な水源だけどいつ見ても水がいっぱいだよ」


おかげで水の税がないのも大きい。水道料金ならぬ飲料税なんてものを課している街もあるらしいのだ。まあ、浄水設備と言っても水魔法とか聖魔法の浄化を使ったり、水を生み出す魔法を使ったりしてやってるから単価も高いんだよね。ちいさいプール一杯の水で大銅貨2枚程度かかるらしい。それを大きい貯水池に溜めてそこから各家に配るんだけど、結構大変みたい。細工の街とか鍛冶が盛んな町は水を大量に消費するので、こういう税がかかるらしい。


「そろそろ対岸だね。アルナ、準備はいい?」


ピィ


アルナの準備もばっちりなので私は湖面に風魔法を打つ。すると、風の勢いで水が竜巻のように持ち上がってどんどん湖の底が見えていく。その過程でその場所にいた魚が巻き上げられていく。


「アルナ。小さいのは見逃して大きいのだけだよ」


私はアルナに指示を出して水とともに巻き上がった魚の内、サイズが大きいものだけを仕留めるように伝える。たちまち、数分で5匹ほどの良いサイズの魚が手に入った。


「よ~し、これでお土産も持ったし、出発だ!」


今日は10時近くに出発してのんびり歩いて13時過ぎに向こうに着くつもりだったけど、風魔法での移動のおかげでまだ11時ぐらいだ。ここから村までは20分ほどだからすぐだろう。こういう時にマジックバッグは便利だ。なんせびくとか持ってなくてもいいからね。


「それにお魚5匹も20分持って歩くの大変だし」


私はルンルン気分で村に向かう。途中で薬草が生えているとこもあったけど、まずは魚を渡してからだ。この辺はそこまで人がいる気配もないし、あとでロビン君にも教えてあげよう。ちょっと獣道が多かったので、途中からホバーの魔法を使って私は村に着いた。


「こんにちわ~」


「おっ、あんたはいつかの冒険者だね。ようこそ!」


「そうだ!門番さんはいつ休憩ですか?」


「休憩か?昼で交代だ」


「なら、これお土産です。どうぞ」


私はマジックバッグから魚を取りだして渡す。ちょっと小振りなものが1匹混ざっていたのでそれを門番さんにあげる。もう1匹の小さいのはアルナ用だ。


「いいのか?見た感じとれたてのようだが…」


「はい。5匹のつもりだったんですけどちょっと多くなっちゃって」


「悪いな。早速昼飯にさせてもらうよ」


「じゃあ、村に入りますね」


私は門番さんに挨拶をして宿に向かう。


「こんにちわ~、誰かいますか?」


「あら、アスカちゃんじゃない。久しぶりね」


「ヘレンさん!今日は宿にいたんですね。空いてますか?」


「空いてるけど、今泊まりの客はいないからうちに来てもらえる?」


「いいんですか?」


「ええ。でも、昼の用意の途中だろうから昼ごはんはあんまり期待しないでね」


「あっ、それなら私もお土産に魚を持ってきたので大丈夫ですよ」


「そうなの?なら案内するわね」


一応宿に記帳だけしてヘレンさんの家に向かう。


「お邪魔します」


「あら?前にもきてくれた子ね。アスカちゃんだったかしら?」


「はい。今日はロビン君が狩人になって腕前を見せてくれるというので来ました。これお土産です」


そういって私はさっき獲ったばかりの魚を渡す。


「あら、こんな立派な魚を5匹も。それじゃ昼の用意も途中だったし、メニューを変更させてもらうわね。ロビンは今日は朝だけ狩りだからもうすぐ戻ってくるわ」


「狩りって結構時間かかるものなんですか?」


「それなりにね。でも、この村自体が森近くにあるからまだましな方よ。ちょっと離れている村なら泊まりがけのこともあるし、そうなるとどっちも気が気じゃないらしいわよ」


「そうね。前に旅人も言ってたけど、狩りに行く方も待ってる方も魔物に襲われる危険があるから心配と不安だらけだって」


「その点、この村はその日に家に帰ってきてくれるから安心ね。主人の作った罠もあるし」


「デレクさんは罠も得意なんですか?」


「元々は苦手だったんだけど、ケガをしてからこれなら自分でもできるって頑張ってるのよ。やっぱり、狩りに行けないのが負い目になってたんでしょうね」


そういいながらもパネトーネさんもヘレンさんも包丁を動かしてお昼の準備だ。流ちょうにしゃべりながら料理もできるなんてさすがだね。


「お母さんそっちはどう?」


「大丈夫よ。でも、スープとかは間に合うけど、火が足りないわね。魚は2人ずつかしら?」


「あっ、それなら乗せるものだけあれば私が焼きますよ」


「アスカちゃん料理得意なの?」


「得意じゃないですけど、火の扱いは慣れてますから」


そういって鉄板を用意してもらうと、下処理を終えた魚を乗せてもらって外で火を起こす。火の調整とかはできるけど焼き加減だけはできないのでヘレンさんに時々見に来てもらって調整する。そんなことをしていると、村の奥の方から声がしてきた。


「なんだよ、またロビンが仕留めるなんてな。今月もう5体目だろ?ちょっとはこっちにもくれよな」


「肉とかは別にいいけど、あのままじゃカシウス逃がしてたでしょ?」


「そうだぞ。お前は弓の威力はあるが的を外しすぎだ。矢も無限じゃないしちょっとは練習しろよ」


「練習ならしてますよ。ちゃんと修練所では当たってますから」


「なら、もうちょっと角度を変えたり、今日みたいな姿勢でも撃つ練習だな。ベックがまた休みなしになっちまうぞ」


「あいつは弓と矢を作るだけでしょ?俺たちがいないと話にならないんだから大丈夫でしょ」


「だめだよカシウス。ベックが作ってくれる矢のおかげで僕らは狩りができるんだから。他の矢だと斜めに飛んじゃうし、貴重なんだからね」


「へ~へ~。なあさっきからいい匂いだな。今日は何かあったか?」


「そういえばそうだな。ロビンは何か知らないのか?」


「僕ですか?なにも今日はなかったと思いますけど…」


話し声がどんどん近づいてくる。どうやら狩りが終わった人たちが村に戻ってきたみたいだ。


「ロビン君こんにちわ。お邪魔してるよ。今お魚焼いてるからもうちょっと待っててね」


「アスカさん!来てくれたんですね。でも、なんで魚を?」


「お土産に持ってきたのを焼いてるんだよ。私が住んでる宿の人が作った調味料を使ってるから楽しみにしててね」


「本当ですか!すぐに道具を置いてきますね」


「お、おいロビン!誰だあの美人は?」


「あれ?カシウスも祭りの時見たよね?僕の弓の師匠だよ」


「あ、あんなに美人だったか?前は暗がりでよく顔を見てなかったんだよ」


「あんまり大声で言いふらさないでよ」


「へぇ~、ま、こいつ次第だな」


カシウスが獲物を指さすので、ちょっとだけ多く分けてあげた。基本的には獲物はみんなで分けるのだけど、仕留めた人が3割、残りを頭分けでさらに残りが村の人だ。大体5,6人ぐらいで狩りに行くことが多いので1割とちょっとぐらいになる。部位も仕留めた人から取るので、この村では狩りの腕前はそのまま取り分になってしまうのだ。


「じゃあ、この部分をちょっと分けてあげるよ。その代わり、解体は任せるよ」


「よっしゃ!じゃあな~」


カシウスや他の狩人と別れてアスカさんのところに向かう。


「こんにちは、ロビン君は狩りの帰りだったんだよね」


「はい。アスカさんは何で外で焼いてるんですか?それぐらいならうちの家でできますけど…」


「一杯獲ってきたからね。火が足りないんだよ。焼き加減は調節できるから好きな焼き加減を言ってくれたらそうするよ」


じゃあと魚が焼けるまでロビン君が私と一緒に火の番をすることになった。




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