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銀細工に挑戦と課題

 昨日は気づいたらぐっすり寝てたし、とりあえずアラシェル様像にお祈りをして、久しぶりのステータス確認から始めようかな。


「ステータス!」


 名前:アスカ

 年齢:13歳

 職業:Eランク冒険者/なし

 HP:80

 MP:280/280(783/1280)

 腕力:26

 体力:30

 速さ:35

 器用さ:80

 魔力:97(307)

 運:60

 スキル:魔力操作、火魔法LV2、風魔法LV3、薬学LV2、細工LV2、魔道具LV1、(隠ぺい)


 解放状態じゃないからMPが完全回復してる。それよりも魔道具使用が魔道具になってる。一体何だろう?


 魔道具LV1:魔道具使用を効率的に行える。また、簡単な魔法を付与しやすくなる。


 なるほど、作成にも使用にも補正がかかるんだ。これはいいスキルだな。そういえばジャネットさんの剣にも一時的に付与できたみたいだし、使っていったらもっといいものになりそうだ。

 細工のLVも上がってるし、これまでの作業が報われるなぁ。腕力も伸びがいいみたいだし、今後も洗濯物の洗い方はあのままでいこう。


「おはよう、エレンちゃん。朝ごはんお願い」


「は~い」


「昨日も集中してたみたいだったけど、何してたのおねえちゃん?」


「バルドーさんから依頼を受けた女神像を仕上げたくて。もうちょっとかかりそうだけど」


「そうなんだ。そういえば前に作ってたのは?」


「あっ、まだ見てもらってなかったんだった。今日にでもミーシャさんに見てもらおうかな?」


「あら、どうしたのアスカちゃん?」


「ミーシャさん。前に言ってた部屋の改造なんですけど、できたので見てもらいたくて。穴とか開けたら大変そうなんでそういうのは無い形ですけど」


「もうできていたのね。ひょっとして手伝ってもらった時にはできていたの?」


「まあ……」


「ごめんなさい、あの日は忙しかったから。それじゃあ、今日の午後から見に行くわ。主人も今日は早く帰れるって言っていたし」


「そうなんですか?」


「ええ、もうそろそろ作れるようになりそうだって」


「嬉しいなぁ~。あのパンが食べられる日がついに……」


「でも、期待はしないでね。あっちの店程にはならないって言っていたから」


「いいですいいです。それに、具を挟めば負けないぐらいになると思いますし」


「じゃあ、また感想聞かせてね」


「はい!」


 それからはいつも通りに仕事をして、お昼の接客も頑張って午後になった。



「お疲れ様。もう少ししたら私もいけると思うから」


 ライギルさんは昼以降に通っているけど、もう少しということで今日は朝から行ってるから、結構対応もぎりぎりなのだ。今日のお昼も結局、スープ作りを手伝ったし。

 お昼も終わり、私たちはライギルさんが手すきになるのを待つ。今回焼いているパンの出来が良ければ、晴れてこちらで出せるということなんだけど……。


「厨房の仕事は終わったよ」


「片付いたみたいね」


「お昼は忙しくて聞けなかったけど、修行の成果はどうだった? お父さん」


「ああ、オッケーはもらってきた。ただ、うちにはちゃんとした設備がないから、キッチンを拡張してオーブンを入れないといけないんだ」


 ちらりとライギルさんから私に視線が来る。手伝って欲しいのかな?


「裏はちょっと空いてるし、思い切って切り取ってスペースを開けたいんだが、大工がすぐには手配できなくてな。オーブンは手配できるんだが……」


「ちゃんと依頼をもらえればいいですよ」


「おおっ! 流石アスカ、分かってくれたか!」


「あなたねぇ。もう少し、きちんと話してからにしなさいよ。依頼料もケチらないようにね」


「もちろんだ。あのパンがあれば、まだまだ色々な料理に挑戦できるからな。冒険者ギルドに指名で出しとくよ」


「ギルドに? 私は別にいいですけど……」


「ギルド経由だと、実績の一つになって役立つわよ。宿の改装なんて信頼する冒険者にしか依頼しないんだから」


 そう言われたら悪い気はしないな。二つ返事で了解しておく。


「それじゃあ、あなたはここをお願い。私はアスカちゃんが言っていた部屋の改装について見てくるから」


「なんだ。もうできてたのか? 言ってくれたらよかったのに」


「あなたが遅れて帰ってきた日よ。反省しなさい!」


「あ、悪かったよ」


 しゅんとしたライギルさんを置いて私とミーシャさんとエレンちゃんは部屋へ行く。


「一つ目は……ああ、あれね。物干し台みたいなのね」


「本当は壁同士で固定したかったんですけど、穴とか設計が関係するのでああしてます」


「服はハンガーにかけているのね。服屋でも使ってるけれど、わざわざ買ってきてくれたの?」


「あっ、それも作りました。ちょうど細工のスキル上げによかったので」


「服をかけるだけなのにきれいにできてるね。さすがおねえちゃん!」


「何タイプかあるから宿に良さそうなものを選んでもらえれば。ちょっと手間のかかるのもありますから」


「ふぅ~ん。これなら丈夫そうだし良いわね。良すぎて、盗難を考えないといけないかもしれないわ」


 そんな、ハンガー一つで盗難なんて大げさだなぁ。一つと言わず一部屋に四つぐらいは置きたいんだけど。


「後は木箱だったかしら?」


「はい。これはベッドの下にあります。よいしょっと」


 ベッドの下から大小二つの木箱を取りだす。


「手前に穴が空いているのね」


「そこに手を入れて開けるんです」


「なるほど。大きい方は中に服が三枚ほど、小さい方も二枚は入るわね。場所的にも問題はないし良い案ね」


「収納スペースも増えるけど、掃除の手間は増えないので良いと思います。本当は小さい棚も欲しかったんですけどやめました」


「え~どうして? あったら便利なのに……」


「じゃあ、エレンちゃん。シーツ交換の時に一緒に棚の掃除やる?」


「いらな~い」


 そうなのだ。今この宿の掃除はミーシャさんとエレンちゃんの仕事。空き部屋をミーシャさんが、シーツ交換の時に依頼を受けてエレンちゃんが部屋の掃除をやっている。

 当然別料金は取っているけど、もらえれば良いってものでもない。疲れるし、エレンちゃんに直接お金は入ってこないしでうまみがない。


「そうね。便利だとは思うけれど、この宿で棚掃除となったら手間がね」


「それに置き場所が増えたら、きっと冒険者の人もそこにお酒を置いてこぼしたりすると思うんです。床とか机周りなら気付きやすいですけど、棚の中となってきたら……」


 掃除も大変だし、重いものを置かれて底が抜けたなんて笑い話にもならない。


「お客さんは喜んでくれそうだけど、もうちょっと余裕ができてからね」


「さんせい~」


「それでこの二つはどうでしょうか?」


「どっちもいいと思うわ。私個人としては壁に直接くっつけた方がいいと思うわね。変に動かされたり、つまずいてこけたりして壊されても困るし。後は主人次第ね」


「私も、足元を気にしないでいいから壁に直接の方がいいなぁ」


「じゃあ、二人とも説得お願いしますね」


「後は料金ね。長期の人にはサービスで、一週間以内の人には三日で銅貨三枚ってことかしら?」


「えっ、お金取るんですか?」


 今までの流れならサービスかなと思ってたんだけど……。


「もちろんよ。アスカちゃんに作ってもらう訳だし、予備も考えたらきちんとお金を取って維持できるようにしないと」


 笑顔でいうミーシャさんにはこれが必要とされるという未来が見えている様だ。とりあえず、受け入れてもらえたということでこの場は解散となり、私も次の目的のために本を開く。


「おじさんの依頼もこなさないといけないし、花図鑑、花図鑑っと」


 色々な花が載っているので、題材を一つに決めてしまうのも惜しいなと思い、いくつか候補を選ぶ。

 その中で最初に作るのは小さい花と少し大きめの花の合わさったものに決めた。


「作るものが決まればきちんと図案を書かないとね」


 ちゃんとした依頼だから、気を引き締めないと。まずは小さい花の方がちょっとくたっと曲がってて、大きめの花がそれを支えながら咲き誇ってる感じかな?


「ん~、後は向きだよね。上向きだと花が見えづらいし、やっぱり下向きだね。交差するところも弱くならないように工夫して、茎の先も削るのを忘れないようにして後は……」


 アイデアを次々にスケッチブックへ描き込んでいく。この調子ならデザインだけは今日中にできそうだ。


「おねえちゃ~ん。ご飯だよ~」


 今日もエレンちゃんが迎えに来てくれる。その声に誘われて今日も夕食を食べに行く。



「ん~、昨日はよく寝たなぁ」


 あれから食事を取って、すぐにベッドにもぐりこんだら朝まで眠ってしまったみたいだ。


「アラシェル様、昨日もすみません。今日はお祈り済ませて寝ますから」


 お祈りを済ませて食堂に下りるとなんだかいい匂いがする。


「おはようアスカ。約束通り作ったぞ」


 そこにはライギルさんがここ数日、頑張っていたパンが置かれていた。


「どうして? まだオーブンはないのに」


「これまでだってちゃんとしたのはなかっただろ。頑張って色々やってみたから、味はいまいちかもしれんがな」


「ううん、ありがとうございます」


 がぶっとパンにかぶりつく。


「パンだ~! ライギルさんありがとう!」


「そんなに喜ばれるとちょっと複雑だけどな。次に作る時はもっとうまいのを作ってやるよ。それと、これは他の奴には内緒だぞ」


「うん!」


 私は久しぶりのパンを食べた。キッチンの改装とオーブンの搬入を頑張ろうと胸に誓いながら。


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