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レディトでの打ち合わせに向けて

「さあ、今日はレディトに行く日だ。準備しなきゃ」


いつものように武器などの手入れを確認し、服を着替えて食堂に降りる。


「あっ、おねえちゃんおはよう」


「おはようエレンちゃん」


「今日は冒険の日なんだね。どこまで行くの?」


「今回はレディトまで。ちょっと用事があるんだ」


「用事って昨日言ってた大きな依頼のこと?」


「ううん。そっちじゃないよ」


待ち合わせの時間があるので、朝食を取ってギルドに向かう。


ピィ


「アルナ、またついて来たの?ほんとに冒険が好きなんだね。誰に似たんだろ?」


まあ、レディトまでぐらいならそこまで危険もないしいっか。前もついて来たことだし。ギルドに着くと、まだみんなは来ていなかった。その空き時間を使って依頼を探す。


「うう~ん。これって言うのはないなぁ。護衛依頼も残ってるのは出発まで長いのばっかりだし、当日受けられるっていったら採取ぐらいか」


でも採取依頼を受けたところでこのままならレディトのギルドに渡しちゃうしな~。別にそれでもいいんだけど、ものがジェーンさんのところに行くわけでもないし、何だかなぁ。でも、時間がかかると品質が落ちるし、それならレディトに到着してから採れた薬草の分だけ受ければいいもんね。


「はぁ…」


「何だいアスカ。行く前からため息なんかついて」


「ジャネットさん!」


私はやって来たジャネットさんに依頼がないことを話す。


「う~ん。確かにこの依頼の内容じゃ当日受けるに値するものは無いね。しょうがない、今日は受けずに行くか」


「受けなくてもいいんですか?」


「そうはいってもねぇ。このゴブリン種の討伐でも受けるのかい?」


アルバでは最近ゴブリンの討伐依頼が消え、ゴブリン種の討伐依頼になった。東側での魔物の生息が変わり、通常のゴブリンが珍しくなったからだ。アーチャーなんかの変異種と等倍かさらに少ないぐらいなので、種族でまとめられたのだ。遭うのも北側限定で探さないといけないからかなり不味い依頼になった。まあ、元々肉も取れないので不味かったのだが…。


「おう、アスカ!相変わらず早いな」


「ノヴァ、リュートも。一緒になるなんて珍しいね」


「昨日は久しぶりに2人で孤児院に泊まったんだよ」


「そうなんだ。楽しかった?」


「楽しいっつーか、大変だったぜ」


「?」


大変って2人とも子どもの面倒を見るの上手いし、なんでなんだろうと思っているとリュートが説明してくれた。


「ほら、新年が過ぎたから今年孤児院を出る子が働き始めて1か月経ったでしょ?それで色々と相談を受けてたんだよ。やっぱり、孤児院から行くのと、部屋を借りて過ごすのは別物だしね」


「そっか。今年の子は3人とも住み込みだっけ?」


「そうなんだよ。だから、俺にばっかり質問が来てさぁ。まぁ、頼ってくれるのはうれしいけど大変だったんだぜ」


「僕も仕事のことならある程度は答えられるし、接客の部分だと今年の子はドルドと青果市場だから、話はできるんだけど、住み込みで気を付けることはね…」


「ノヴァは意外にそういうところ結構気を遣うもんね」


「まあな。特にうちは兄貴がいたから大人だけでなくて、子どもがいる奴に色々聞かれちゃってさ。話しかけてくれるのはうれしいけど、距離感っていうのか?中々難しいって、気にするなって言ってもやっぱり気になるしな」


「いいお兄さんだね」


「そういえば依頼はどうしたの?手ぶらみたいだけど」


「それが良いのがなくって。ジャネットさんと話をしたんだけど、採取依頼を向こうで受けるぐらいしかなさそうなの」


「う~ん、岩場の依頼がまだあまり戻ってないからしょうがないのかな?往復に時間をかけたくないしね」


「まあ、面倒も無くていんじゃねえの?」


「ノヴァにしちゃ珍しいね。前はもっと腕を上げたいとかお金が欲しいって言ってたのに」


「俺だって成長するぜ。実力だって別にジャネットとかリュートと戦えばわかるし、金に困るぐらいでもないしな」


「孤児院の子たちに色々言われたからじゃなくて?」


「うっ、うっせーな!そんなんじゃねぇよ」


「何か言われたの?」


「ほら、僕よりノヴァの方がマメに行ってるでしょ?新しい子もいてまだ小さいから、お兄さん危ないことしないでって泣かれてたんだよ」


アルバは治安がいいけど、孤児がいないわけではない。理由も様々で、経済的に育てられないからせめて治安の良いアルバでということもあれば、親である商人や冒険者が魔物に襲われて死んだということもある。年に数人は入り、引き取り手が現れたり、卒院して巣だって行く。小さい子がたまに来るお兄さんが危険なことをしていると知れば当然の反応だろう。


「そりゃあ、気になっちゃうよね」


「だから違うんだって!ジャネットもなんか言ってくれよ」


「あたしは良いと思うけどねぇ。こんな商売してると腹を探る癖がついちまってそういうところに中々行きづらくなるってもんさ。しかし、ノヴァがお兄さんね」


「それよか依頼だろ依頼」


「依頼は受けないよ。行きに採取だけして、帰りに期待しよ」


「それならさっさと行こうぜ!」


恥ずかしいのか真っ先にギルドを飛び出すノヴァ。別にいいお兄さんでいいと思うんだけどね。


「はぁ、ちょっとからかいすぎたかな?ノヴァは結構迷惑もかけてたから、余計孤児院に思い入れがあるんだよ」


「まあ、出会ったころの感覚だとそうだよね」


今思い返せば、考えなしの短気な少年って感じだ。今と違って実力もなかったしね。


「ほら、あたしたちも行くよ。せめて採取はきちんとしたいだろ?」


「そうですね」


私たちもノヴァの後を追って街の東に出る。


「結局依頼を受けてないけど、こうなるんだよね」


街の東から北側を抜けてレディトに行こうと進んだ私たちだったが、1時間ほど進むとオーガに出くわした。


「まあ、今更3体ぐらいのオーガであわてるあたしらじゃないけど、1年前を思えば変わったもんだね」


「そうですよね。あの頃は出て来てもゴブリンでしたし」


それも歩いて1時間程度であれば、街の東とはいえ滅多に出会わなかったのだ。それが今やオーガが単体ではなく、3体も出現するなんて。


「俺たちも強くなったからな。今や正面切って戦えるしな!」


「僕らは最初は逃げてばっかりだったもんね」


「リュートは仕方ないよ。ナイフじゃ傷はつけられないし、当たったら大けがだもん」


「それもこれも魔槍とアスカのお陰だよ。今じゃこれも手放せないよ」


そう言いながらリュートが魔槍をちょっと掲げる。するとキラッと魔槍も光る。きっと魔槍も褒められてうれしいんだろう。


「私も?」


「アスカは忘れてるかもしれないけど、魔槍を抑えてくれたのはアスカなんだよ。だから、アスカも魔槍持てるでしょ?」


「そういえばそっか。というか魔槍は他の人には持てないんだね」


「他の人が持つとバチッてなるんだ」


「そんなんじゃ、一生売れないねぇ」


「僕も手に馴染んでますし、もう手放さないですけどね」


ピィ


魔槍が放出する魔力が気になったのか、アルナが穂先に乗る。


「ちょ、ちょっと危ないよアルナ!」


大丈夫だとアルナはアピールする。どうやら私の従魔扱いされているのか、魔槍も敵意を出さないみたいだ。


「でも気を付けるんだよ。それ、よく切れるからね」


これまでも色々な魔物を倒してきている魔槍だ。その切れ味はすさまじいのだ。


「俺も昔と比べて何本も剣を持つようになったしな。そうそう、聞いてくれよ!この前、グラディスさんがそろそろ引退の準備をするから、剣を売ってくれるって言ったんだぜ!」


「へぇ、あの人もそういう年になったんだな。猛剣も年貢の納め時か」


「猛剣?」


「あの人は昔、そう呼ばれてたのさ。一時期はAランクだったんだ。だけど腕が落ちたからってわざわざ降格をギルドに申請して、アルバに来たんだよ」


「そうだったんだ」


「じゃなきゃ、あんなに部隊の指揮が上手い訳ないだろ。前は傭兵とか大規模パーティーもまとめてたんだよ。売ってくれるっていうならかなり良いものもあるだろうから、頑張んなよ」


「おう!ジャネットは良いのか?」


「残念だけどあたしはこの前、高いのを1本作っちまってね。そんな余裕はないんだよ」


「それじゃ依頼受けなくてよかったのかよ」


「受ける依頼は選ぶんでね。ま、旅に出るまでは何とかするさ」


「ここの薬草は採り終わったよ。次に行こう」


「はいよ」


私たちは話をしながらも目的の薬草を採って次の場所に進む。


「次のポイントは50分ぐらいかかるな。のんびり行くか」


「そうだね。どの道、あと3か所は回るし」


その後もポイントを回ってレディトに着いた時には16時ごろになっていた。




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