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アスカと異変

今回のお話は一応本編ですが、やや趣が異なります。



最近なんだか変な感じがする。そう、アスカは困惑していた。街を歩いていてもなんだか見られている感じがするし、おじさんの店でさえ変な感じなのだ。


「街は前から視線を感じることもあったけど、おじさんの目も変なんだよね~。どうしてかなぁ」


ピィ


アルナたちにも聞いてみるけど、ピンとこないようだ。これは名探偵アスカの出番かな?


「まずは身近なところからだね。となると、エレンちゃんかライギルさんかな?ミーシャさんやエステルさんは確信に迫りそうだしね」


パッと聞けて次の人に繋がりそうな人を選ばなきゃね。


「そうと決まれば。行くよ、アルナ!


ピィ


調査にはやはりマスコットキャラが必要だ。私はアルナを連れて食堂に向かう。


「ねえ、エレンちゃん。ちょっと聞きたいんだけど…」


「おねえちゃんどうしたの?昼のメニュー?」


「いや、それは楽しみにしておくとして、最近なんかみんなの視線を感じるんだけど、なにか知ってる?」


「視線?前からじゃないの?」


「それがここ数日、何か今までとは違うんだよね~」


チラッと横目で聞いてみる。


「へ、へぇ~。まあ、おねえちゃんは人気者だし、知らない間にまたなにかしたんじゃないのかな?気になるならお父さんに聞いてみたら?」


「ライギルさんに?エレンちゃんじゃなくて?」


「そうだよぉ~。大人なお父さんなら分かるかも」


な~んか白々しい気がするけど、ここは一旦引き下がってライギルさんに聞いてみるか。


「ライギルさん、今時間いいですか?」


「ん?なんだ新しいパンのアイデアか?」


「いえ、最近気になってるんですけど、どうも街の人から変な視線を感じるんです。何か知りませんか?」


「あ、あ~。それはだな…」


「あなた!もうすぐお昼ご飯を仕込む時間よ。手を動かしてくださいね」


「ああ」


話を聞けると思った瞬間、ミーシャさんの横やりが入った。仕事と言われては私も引き下がるしかない。でもこれでライギルさんから話を聞けなくなってしまった。しかも、話の流れ的に重要な情報を漏らそうとして、殺される役の発言だった。もう、彼からは情報を得ることはできないだろう。※死にません


「仕方がない。街の人といっても相談できるような人は限られているし、順番に当たってみるか」


なぜか、探偵の知り合いの人が情報を持っているから、こういう時助かる。さっと街行きの服装に着替えるとまずは細工のおじさんの店だ。流石に市場は人が多いし、正直自意識過剰とも取れることを聞くから最後にしたい。


「おじさ~ん、いる?」


「なんだアスカ。仕入れは終わったし、何か見に来たのか?」


「ううん。実は最近変な視線を感じるようになったんだけど、おじさん何か知らない?」


「変な視線?ああ、あの件か。それで最近作ってたゼフィランサスの髪飾りは何で作ったんだ?」


「ん~、何でって言われても。かわいいし、そこそこのサイズでパッと目立つでしょ?色もピンクできれいだし、きっと付けたら綺麗だろうなって」


こっちでハイビスカスは見たことないし、髪飾りとかも傾向としては大きく目立つものより、彩るぐらいのものが好まれる傾向だ。要は飾りそのものに目が行き過ぎないようなものが良いのだ。それを踏まえて選んだんだけど…。


「自分で使って見たかったわけではないんだな?」


「自分で?私はどこにでもいる普通の冒険者ですよ。まあ、街に繰り出すならつけてもいいですけど、中々そんな機会ありませんよ」


容姿・実力・戦果どれをとってもお前が普通であるわけがない!と店主は言いたかったが、あれから毎日のように来る自称客たちの来訪を止めるためにここでへそを曲げられてはかなわないので、発言を我慢した。大体どこの細工師が、『ちょっと必要な魔石があるので獲ってきます』と冒険者ギルドに行くものか。


「それで、視線の意味は分かりますか?」


「まあ、分からんわけではないが、アスカ。お前この前連れてきた少年とはどんな関係なんだ?」


「ロビン君ですか?ワインツ村で知り合った子です。弓が上手くて、私もちょっと指導したんですよ。すごいでしょ!」


エッヘン!と胸をはって答える。


「そりゃすごいが、村のやつならわざわざ街に出てきたのか?珍しいな」


やっぱり、村の人は普段からあまり街には来ないらしい。


「で、そいつとは仲がいいのか?」


「仲はいいですよ。村にいる時は相手の家族と一緒にご飯食べてましたし」


まあ、宿と家で2種類の食事を作るのが面倒だったという経緯からだけど。


「そ、そうか。それでだな、まあ一部では2人で出歩く姿を見て付き合ってるんじゃないかという話があってな」


「ええっ!?ど、どこ情報ですか!」


何と、三件目の聞き込みで謎が解けた!は、良いんだけどどうしてそんな話になったんだろう?どこからどう見ても、街に不慣れな友人を案内する姿だったと思うけど…。


「割と多方面からだ。それぞれ情報元が違うからだろうが、街じゃ色んなうわさが飛び交っているぞ」


「ち、ちなみにおじさんが知ってるうわさってどんなのですか?」


「俺が知ってるのは2つだな。一つが、村にいる時にお互い一目ぼれして少年がついて来ようとしたが、家の跡取りだったため、親に反対された。だが、何とか交際は続けられるように頼み込んで、月に1度会えるようになった。それが1つと、実はあの少年はああ見えて貴族の子息で身分を隠してアスカに会いに来ている。これが2つ目だ」


「えっと、どうして私に貴族の子息が?」


流石にこれは名探偵である私にも理解できない。


「いや、こりゃ以前から宿に通っているやつらが噂しているんだが、アスカはどこかの貴族令嬢だろうという話があってだな」


「その話はどこから出てきたの?確かにそんな感じの話は前にも耳にしたことがあるけど…」


「まずはその魔力と容姿だ。貴族は整った容姿と、魔力が高いものが多い。何より街に来た時から世間知らずではあるが礼儀や食べ方、変わった料理への造詣が多いことから出てきたんだ」


「もう~、結構前に否定したんだけどなぁ」


「まあその辺はフィアルの店によくいるのも関係してるな。貴族はとにかく変わった食材や、美味なものには目がない。いくら細工で儲けているからって、頻繁に通っているから中々話が消えないんだぞ。あの少年が貴族という話もそういうところからきているんだ」


「ロビン君はれっきとした村人なんだけどな」


「まあ、俺も信じちゃいないがワインツ村なら誰も確かめに行かんだろうなぁ」


「そんなにあの村って人気ないの?」


「以前はヴェゼルスシープ捕獲とかで一時期人気が出たんだが、誰も追い付けないってことですぐに下火になった。往復するのに宿がいるし、それならレディトに行くからな」


「そっか。あっ、おじさん、今回のうわさちゃんと否定しておいてね」


「ああ。事情は分かったからな」


私はおじさんに頼むと他の場所にも行ってみた。内容は違うけど、似たようなうわさが広まっていて、1つ1つ否定しておいた。でも流石に市場にはいかなかった。あそこは人も代わる代わるだし、何を聞かされるか分かったもんじゃないからね。幸い、市場にうわさはつきものだ。街でのうわさが消えれば自然に消えていくだろう。


「気分転換に本屋さんにでも行こっかな」


私は食事を済ませるとおばあさんの本屋に向かった。


「いらっしゃいませ!あら、アスカちゃんね。ちょっと待ってね」


店に着くと、まだおばあさんは腰の具合が良くないのか、孫のお嫁さんが店番をしていた。


「おや、いらっしゃい。今日は何の本を探してるんだい?」


「ん~と、弓の解説書とかないですか?」


「弓の解説書?ふむ、弓専門という訳じゃないが、詳しく書かれた本ならあるね」


「ちょっとだけ見せてもらってもいいですか?」


「ああ、もちろんさ。ちょっと待ってな。確かその上だったね」


「おばあちゃん、私が取るわ」


「そうかい、すまんねぇ。全く孫とはえらい違いだよ」


おばあさんの示した場所から、孫のお嫁さんが本を取ると私に渡してくれた。やや埃は被っているもの、破れなどはない。ただ、日焼けの状態などから見ても古い本に分類されるみたいだ。


「何々…王国投射武器解説。うっ、結構難しい本だな。これロビン君読めるかなぁ」


「何だい、アスカが読むんじゃないのかい?」


「はい。最近仲良くなった子にあげたかったんですけど、これを読めるかは分かりませんね」


古い本にありがちな硬い文章や、普段使わない言い回しなどが多く、あまり文字に触れない村の子どもには難しいと思う。


「それなら、これも買っていくかい?」


近くの棚にあった本を持ってきてくれる。


「これは?古今用語集?」


「ちょっと前の言葉と今使ってる言葉を差異を並べたものだよ。後は簡単な単語の辞書にもなってるね」


「へ~、こんな本あったんですね。しかも、まだ新しい」


「当たり前だよ。数十年前の古今用語なんて再翻訳がいるじゃないか」


「それもそうですね。これって2冊あったりします?」


「ああ、王都の言語学者が最近出したばかりでね。もの好きのために数冊取ってある。売れない本は直ぐに絶版になるからね」


「絶版の本ってどうするんですか?」


「著者を捜してもう一度書いてもらうか、譲ってもらうかだね。まあ、探して本が見つからない時点で大体死んでるけどね」


さらに話を聞くと、本を書くのは多くが貴族で、しかも本人の趣味で書くものが多く、死んだら遺族にゴミとして処分されることが多いそうだ。もったいないと思うけど、何十冊も同じ本があっても邪魔だし、逆に在庫が多いから価値が低く見えてしまうんだとか。


「アスカが買ったケノンブレスの本もその口なんだよ」


「えっ!?魔導書なんて価値があると思うはずですけど…」


「まあ、上級や特殊魔法ともなれば価格は当然高額、売れなくて当然だけど書いた本人は魔導ではさほど有名ではない家の生まれでね。誰も続くものがいなかったから価値を知らなかったみたいだよ。あたしが、流れの商人を通じて安く買い上げたのさ」


他にも処分されたおかげで、値上がりした本もあったりしてそういう見極めも本屋の店主の仕事なんだとか。


「それで、どうして2冊も必要なんだい?」


「一つはこっちの本と一緒にロビン君に。もう一つは自分用です。私もよく本は読みますし、旅先だと簡単に手に入るか分かりませんから」


「そうかい、なら合計で金貨3枚だよ」


「うっ…高いですね」


「ちなみに、古今用語集は銀貨3枚だよ」


「分かりました。じゃあ、いつもの通り会計お願いします」


「毎度。アスカは本当に本が好きだねぇ」


「はい!新しい出会いもありますし、旅先で得た知識の実物を見るのが楽しみです」


私は3冊本を買うと、2冊はサービスで包んでくれた。これならプレゼントにもぴったりだ。私はほくほく顔で宿に帰った。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 金貨2枚以上するものをプレゼントってやりすぎでしょ 普段から物作ってあげたりとかしてるけど、金銭感覚狂いすぎ リュックサックだけで充分でしょ
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