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薬草と取引先

私がサナイト草などの取り扱いをしている店としてロビン君に紹介したのはジェーンさんのお店だ。まだまだ開店してから日も経ってないし、今私が知ってる取引相手はフィーナちゃんだけ。そのフィーナちゃんが採取に行くのはアルバ西の林ぐらいまで。あの辺はサナイト草もあんまり生えないから今がチャンスだと思ったんだよね。


「こんにちわ~」


「あっ、いらっしゃいませ」


「失礼します」


店に入るとお客さんが2人ほどいた。かごに入れてるのは中級ポーションっぽい。まあ、初級ならどこでも大差ないもんね。


「アスカ、どうしたの?」


「ちょっとお話があるんですけど…」


「分かった。ちょっと待ってて」


流石にお客さんがいるところで話しは出来ないので、退店したのを待って話をする。


「ん、閉めたから大丈夫」


「すみません。営業中に」


「それで、どうしたの?」


「実はジェーンさんに紹介したい子がいて…」


私はロビン君を前に出して紹介する。


「彼はロビン君です。今日は村から出てきたんですけど、私に付き合ってくれてるんですよ」


「そ、そうなの!?」


「はい!それで、普段はワインツ村で活動してるんですけど、月に一度ぐらいで街に来るので薬草とか引き取ってもらえるとと思って…」


「薬草、フィーナのがある」


「それなんですけど、普通のものじゃなくてサナイト草とか、森でも奥に生えてるようなのとかで」


「ちゃんと採れる?」


「えっと、来年には狩りに行きますから多分…」


「わかった」


「良いんですか?」


「うん。サナイト草とかは今もギルドに仕入れ頼んでるから」


「ありがとうございます」


「アスカの頼みだし」


一応来年からになったけど、今年ももし来れたら納品してもいいということで、ジェーンさんは乾燥して運ぶ方法とかを紙に書いてくれた。


「そうだ。アスカ、開店祝いありがと」


「どういたしまして!でも、お店も人が入ってよかったです」


「うん。お兄さんに感謝」


お兄さんというのは以前から仕入れの商品を持って来る商人ギルドの人だ。何でも店を開くにあたり、これまで他の店で購入していた人に声をかけてくれたらしい。そんなことしていいのって思うけど、そういう人たちは10本とかまとめて欲しいから、商人ギルドに話をして店を紹介してもらってる人らしい。


今まではジェーンさんが店を持っていなかったので、別の店を通じて販売したのを直接の仕事として取ってきてくれたそうだ。


「でも、まだ売れてないんですね」


「まあ、高いものだし」


私がジェーンさんに渡したのは、この前ギルドから貰った材料で作った、自動回復付きのマジックポーションだ。回復量も追加の効果もあるから、販売価格も金貨4枚とかなり高額なポーションなため、販売形態もディスプレイを置いて本物はマジックバッグで保管している。他にもいくつかそういう商品があるみたいで狭い店内には高額商品も多い。


「それじゃ、また来ますね。ジェーンさん」


「うん。そっちの子もまたね」


「はい。色々とありがとうございました」


こうして一通り街を見回った私たちは再び宿に帰ってきた。


「それにしてもジェーンさんもちょっとおかしかったよね。ちらちら私たちを見比べてたし」


「そ、そうですね。でも、薬の乾燥方法とかも教えてもらえて助かりました」


「うん。これでしばらく保管も出来るよね」


「はい。後はこれを運ぶ袋を考えないと。僕が持ってるのって普通のやつでちょっとボロボロなんです」


「そうなんだ。あっ!それなら、モニターやって見ない?」


「モニターですか?」


「うん。商品を実際に使ってみて、いいところとか直して欲しいところを言うの。その代わりにそれをただで使えるんだよ」


「それだけで商品がもらえるなんて、商売になるんですか?」


「もちろん!一見よく見えてもちょっと使いにくいところとかを教えてもらえれば、同じ価格でいいものが出来るし、ライバルが改良したのを出す前に自分で作れるでしょ」


「それなら、自分とか宿の人とかに使ってもらったらどうですか?」


「あんまり普段から顔を合わせる人とだと、直接言い難いってこともあるでしょ?ねぇ、お願い!」


「僕は構いませんけど、ものを見せてもらってもいいですか?」


「分かった。それじゃあ、こっち来て」


私はテーブルの片付けをエステルさんに頼むと、ロビン君の手を引いて案内する。


「さあ、入って入って!」


「いいんですか?」


「入らないと見せられないよ、ほら」


「はい…」


私は部屋に招き入れると、早速先日作ったリュックサック風の袋を出す。気合い入れて作ったものの、自分はマジックバッグを使うので、どうしようかと思っていたのだ。


「確か、机の一番下だったよね。あっ、椅子に座ってて」


「ありがとうございます」


「あった!これがその袋だよ。ちょっと重たいけど、内側はサンドリザードの革、外側は薄くしたガンドンの革だよ。温度変化に強くて丈夫だし、中も滑らかだよ」


「サンドリザードの革ってでこぼこじゃないんですか?」


「それがね。最近、平らに出来るようになったんだよ。ちょっと触ってみて」


「…本当にすべすべですね。でも高いんじゃないですか?」


「まだ、知名度を稼ぐために安く作れるんだよ。もしこれが良さそうなら、仕入れとこうと思って」


ポーションはともかく、細工だと村とかじゃあんまり売れなさそうだからね。この機会に村とか冒険者ショップに卸せる様なものの第一弾として作ったんだ。


「へ~、中の右側に輪っかが4つありますけどなんですかこれ?」


「よくぞ聞いてくれました!これは、この付属する筒をしまうためのものだよ。ロビン君ならこの筒に薬草を2種類まで入れられるって訳。高さもあるし、蓋もきっちりしてるから濡れないし便利だよ」


薬草とかを瓶に入れて運ぶと割れちゃうしね。


「この手前の小さいポケットみたいなのは?」


「そっちはすぐに取り出したいものを入れるところ。手前の引っかけるところにひもをくるっと巻くだけだから楽だよ」


「外の右側にあるへこみはなんですか?」


「これはね~、水筒入れなの。ロビン君は弓を使うから片側だけにしてるから。これは他の人とかは要らないかもしれないから、特に意見が聞きたいかな」


ポーションとかと一緒に腰巻きのベルトに下げてる人も割りと要るからね。汚れやすいし、洗いにくいと思うから要検証だったんだよね。


「じゃ、一度背負ってみますね」


ロビン君が私の作ったリュックもどきを背負う。うん、サイズはちょっと大き目だけどいい感じだ。


「あっ、確かに見た目よりも重いですね。でも、変に伸びないししっかりしてます」


「まあ、その辺はね。今度は下ろして中を開けてみて。実際に何か入れて取り出して見るといいかも」


私は木の筒も2つ渡して色んなものを出し入れする。


「この木の筒を固定するための輪っかは2つずつ付いてますけど、底の部分はないんですね」


「うん。底の型を作っちゃうと、筒を入れない時に邪魔になると思って。底は平らにしてあるから、それでもずれたりしないはずだけど…」


「でも、ちょっと揺れるので筒がそこに当たるなら、型でずれないようにしてあると嬉しいです」


「ふむふむ、なるほどね」


これはきっとロビン君が狩人だからだろう。姿勢を変えた時に出来るだけ背負っているものの重量バランスが変わらない方が好ましいのだ。旅人程度なら気にならないかもしれないけど、狩人や冒険者には今のままでは不向きかもしれない。今から型を接着剤で固定するのも難しい。結局これは、薄い木の板に革を張ってそれを底に入れることで改善した。


「他には今、これといって気になるところはありません」


「よかった~。もっと色々言われるかと思ってたから」


「いえ、ちょっと重たいですけど、肌になじみますしこんなバッグは初めてです」


「なら、とりあえず今貰った意見を反映させて、後は水筒入れをなくしたのを一度売ってみるね」


これで様子見と行こう。その後は食堂に戻って休憩した後、夕食を一緒に食べた。


「今日は色々ありがとうございました」


「ううん。こっちこそ色々連れ回しちゃって疲れなかった?」


「大丈夫です。行くところ全部新鮮でした。また今度、街に来たら訪ねてもいいですか?」


「いいよ。でも、依頼を受けてていないかもしれないけどね」


ロビン君は明日の昼には街を発つらしい。まあ、宿代とかも考えるとなかなか難しいところだよね。次、確実に来れるとしたら、年が明けてからだね。年が明けたらみなしで狩りに参加するって言ってたし、獲物を売りに来るかもしれない。


「その時までしばし、お別れだね」



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― 新着の感想 ―
これロビン君がいい子だから良かったけど、下手に勘違いする俺様系のバカ男なら「もうアスカは俺のもんだぜ!部屋にも入れてくれたしな!」とか吹聴したり襲われそうになったりややこしい事になりそう。 アスカは…
[一言] みんな彼氏紹介かと思ってますよね笑 これアスカ無意識にやってるなら将来心配だな~ ロビン君じゃなくてもアスカのこと好きになっちゃう人は今後も出そうですね。
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