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ロビン君と街案内

フィアルさんの店で食事を注文した私たち。前菜が運ばれてきたのだが、どうにもロビン君が不思議な顔をしている。


「どうしたの?ロビン君」


「いえ、アスカさん。僕にはこれサラダに見えるんですけど…」


「あっ、うんそうだね」


どうしたんだろ?見て分かるのに…。ああ!?ひょっとして。


「ロビン君、コース料理って初めて?」


「多分」


そっか、村とかだと作りながら出すことはあるけど、それを料理店でするなんて考えつかないのかも。


「これはね。コース料理って言って、順番に食べていくんだよ。サラダを食べ終わるころには次の料理が出てくるから安心してね」


「そ、そうなんですね。こういう店での食事は初めてで…」


うんうん。わかるわかる。事前にこういうものですって説明がないとびっくりしちゃうよね。それから安心したようにロビン君がサラダを食べ始める。


「そうそう。それと、ナイフとかは外から順番に使っていけばいいからね。次の料理が来ると食器と一緒に下げちゃうけど、そのままでいいから」


「わ、分かりました」


う~ん、色々緊張させちゃったみたいだし、他の所の方が良かったかなぁ?でも、ここのパンは食べて欲しいしね。


続いてスープと順番に料理が運ばれてくる。そしてメインの肉料理だ。もちろん隣にはパンが置かれている。


「メイン料理だよ。肉とパンだからきっと気に入ると思うよ」


「確かに今までおいしかったですけど、パンと肉ですか」


やっぱりロビン君もパンに関してはちょっと思うところがあるみたいだ。


「まあまあ食べてみてよ。びっくりするから」


「分かりました」


私がこれだけ勧める理由が分からないロビン君は訳が分からないままパンに口を付ける。


「えっ!?」


そうそう最初はびっくりするよね。まあ、私の場合はやっとパンを食べられたって思いからだったけど。


「こ、これやわらかいですよ!アスカさん」


「うん。ここのパンはそれが売りなんだよ。バターもいい香りでしょ?」


「はい!これならパンだけでも食べられます」


そうでしょうとも。こっちのパンはあくまで何かを付けてやわらかくして食べる物だもんね。


「もちろん、こっちの肉とも合うから一緒に食べてみてよ」


「はい!」


ばくばくむしゃむしゃと食べるロビン君。結構、礼儀正しい感じの彼だけど、やっぱり食べてる姿は年相応の少年だね。


「やっぱり街の料理はおいしいですね。こんなパン初めてです!」


「そうでしょ?街に来たなら絶対連れて来たかったんだ」


大満足で食事を終えた私たちのもとにデザートが運ばれてきた。


「これなんですか?」


「アイスって言って凍らせて作るデザートだよ」


「でも、まだ凍るような季節じゃないですよ」


「ふふっ、これはね~魔道具で凍らせてるんだよ。食べてみて!」


「わ、分かりました」


この辺じゃ凍るなんてことはあんまりないし、初めてみるよね。


ぱくっ


「つ、冷たいです」


「でも、甘くておいしいでしょ?」


「はい!」


早速、ロビン君は次々口にアイスを運ぶ。


「あっ!そんなに一気に食べちゃ…」


「わっ!」


ロビン君がスプーンを落として頭に手をやる。


「なっ、何ですかこれ!頭がキーンってするんですけど」


「それはね、アイスクリーム頭痛って言って、冷たいものを急にいっぱい食べるとなるんだよ。気を付けてね」


「先に言ってくださいよ、アスカさん」


「そんなに一気に食べると思わなかったから。ロビン君アイス気に入ったんだね」


「気に入りました!でも、村じゃ食べられませんよね…」


「まあ、魔道具がいるしね。でも、立派な狩人になって村から街に来るようになったら、いつでも食べられるよ!」


「そっか…僕頑張ります!」


うんうん、ロビン君の初めての街での食事は大成功だったみたいだ。


「あ~、美味しかったね」


「はい。でも、奢ってもらってほんとにいいんですか?高かったんじゃ…」


「いいよ。私が街を案内するって言ったんだし、それにどうしても食べさせてあげたかったの」


「ありがとうございます」


「さ、それじゃ細工屋さんに行こっか」


「はい」


私はお腹も膨れたので、細工屋のおじさんの店に案内する。お昼前に行かなかったのはゆっくり見て欲しいからだ。急かされちゃうとどうしてもちゃんと見れないからね。べ、別に自分の作品だからじゃないよ。


「ここが私が作った細工を卸してる細工屋さんだよ。店主のおじさんも作ってるんだ」


「そうなんですね。村だとお土産用とかを暇な時に作るぐらいなんで珍しいです」


「それじゃあ、早速中に入ろう。おじさ~ん、いる~?」


「なんだアスカか。この前、卸したばかりだろう?」


「今日はお客さんを連れてきたんだよ」


「ど、どうも」


「ほう~、ほうほう。珍しいこともあるもんだな」


「でしょ~。ロビン君ゆっくり見ていっていいからね」


ロビン君は見事な細工にしきりに感心している。自分でも弓とか矢を作っていただけあって、こういう細かい作業とかもどれだけ難しいか分かっているみたいだ。


「わっ!これとかどうなってるんですか?水晶の中に模様があるんですけど!」


「ふっふ~ん。これはね、水晶の中に加工した水晶を入れてるんだよ。結構難しいんだから!」


あれからいくつか作ったけど、何度か失敗もしておじさんの店にも今は2個しか在庫がないんだ。


「へ~、すごいアイデアですね。こっちのもきれいだな~」


「どう?何か欲しいものあった?」


「う~ん。どれもすごいんですけど、金属のものが多くて…」


「金属のはダメなの?かぶれちゃうとか?」


そういえば金属アレルギーとかあったよね。そういうのかな?


「違うんです。狩りの時とかあまり音が鳴るものは付けないようにってなってるんで、細工物でも身につけていいのは木製のものだけなんです」


「そっか。それならこっちの方にあるよ」


木製のコーナーを案内する。それにしても狩人も大変だなぁ。そう思っているとロビン君が足を止める。


「どうしたの?」


「おじさん、これっていくらですか?」


「ん?ああ、それは大銅貨3枚だ。欲しいなら今開けるから自分で取れよ」


「良いんですか?」


「何か気になるものあったの?」


「はい!見てくださいこれ!細工は細かいし、温かみを感じるんですよね」


「そ、そう。気に入ったのが見つかってよかったね~」


「そうだな、アスカ。勝手に並べるなと言ったはずだったがな」


「えっ、あ、いや~そこにスペースがあったから」


今ロビン君が持っているのは、この前シェルオークが余ったので作ったペンダントだ。見た目こそ木で彫ったペンダントだけど、実は中に魔石が入っていて本人の僅かな魔力にも反応して動きを補助してくれるんだよね。


「どうしたんですか?ひょっとしてアスカさんも欲しかったとか?」


「う、ううん。私はいいよ。それよりつけてあげる」


「えっ!?はい」


私は恥ずかしさを隠すためにペンダントをロビン君の首にかける。


「うん!よく似合ってるよ。他にも何か見ていく?」


「あ、いえ。予算があまりないので、次行きましょう」


「それじゃ、いい時間だしギルドに行こう」


私たちはおじさんに挨拶をしてギルドに向かう。中に入ると昼を過ぎたころとあってガラガラだ。


「こんにちわ~」


「あら、アスカちゃんいらっしゃ…」


なんだか今日はみんな私が店に来るたびにびっくりしてるなぁ。フィアルさんも挨拶の途中で固まってたし。どうしたんだろ?とりあえず、固まってるホルンさんのカウンターに進む。ロビン君もまじめだし、ここの方がいいよね。


「ホルンさん。この子はロビン君って言って冒険者希望の子です。登録をお願いします!」


「え、ええ、分かったわ。アスカちゃんの知り合いなのね」


「はい。村から出てきたんです。今後もお世話になると思います」


「そうなのね。じゃあ、こっちに来てくれる?」


「分かりました」


ホルンさんの指示でロビン君が登録用の水晶に手を伸ばす。


「とりあえずこれでステータスが分かるから見せるわね」


もちろん、ロビン君に許可をもらっている。アドバイスするには見た方がしやすいしね。


名前:ロビン

年齢:14歳

職業:冒険者Fランク

HP:270

MP:60/60

力:92

体力:93

早さ:110

器用さ:100

魔力:25

運:41

スキル:弓術LV3、連撃(射撃)


「あら?流石はアスカちゃんの知り合いね。ステータスが高いわ」


「私の知り合いというか、代々狩人の家系ですから」


「でもあまり見慣れないスキルがあるわね。ちょっと待ってね、調べるから」


「これって、すごいんですか?」


「ん~、見方によると思うけど登録段階だと高い方だと思うよ。力は私より高いしね。私が最初に登録した時は最高で魔力の70だったし」


「これだとどのぐらいなんですか?」


「そうだね。Dランク位かな?まあ今から延びるだろうからこれからだよ」


「お待たせ。調べ終わったわよ。連撃…連続での攻撃時に急所攻撃や命中率が上がるスキルよ。ただし、カッコつきだからその種類の攻撃方法以外には効果がないわ。ロビン君の場合だと弓や投擲なんかの物理による遠距離攻撃だけね。それでも有用だと思うわ」


「投擲ですか?スキルはないですけど…」


「そうね。これを機会にやってみるといいかもしれないわ」


「良かったね。いいスキルみたいで」


「はい!これを元に頑張ります」


「それじゃ、依頼の受け方とかを説明するわね」


それから、ロビン君はホルンさんに依頼票の取り方とか注意点を熱心に聞いていた。


「最後にこれを渡しておくわ。初心者用の冊子とキノコのすゝめよ。時間のある時に読んでね」


「分かりました。ありがとうございます、お姉さん」


「いいえ、これが仕事ですから。では、また来るのを待ってるわね」


ギルドを出て、次の目的地に向かう。


「いい人だったね」


「うん。ホルンさんは優しいし、鑑定持ちだからきっと勉強になるよ」


「鑑定?」


「そう。薬草の種類とかランクが分かるんだ。銀貨1枚払えば、他のものも鑑定してくれるよ」


「そうなんですね。でも、他のものって何か鑑定が必要なのがあるんですか?」


「う~ん。呪われた装備とか拾った剣とか?」


「そんなものがあるんですか?」


「探せばあるんじゃないかな?よく知らないけどダンジョンに行ったら装備も出るらしいよ」


「やっぱりアスカさんは物知りですね」


「まあ、行ったことないけどね」


「それで今はどこに向かってるんです?」


「知り合いの薬屋さんだよ。前に言ってたサナイト草の買取先にどうかなって」


「どんな人なんですか?」


「行けば分かるから!」


ロビン君を連れて私は最近できた薬屋さんに向かったのだった。



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