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森での探索

翌日、気持ちよく起きた私たちは、朝食を取って森に向かう準備をする。


「それにしても、いい睡眠だったわ。木の香りも強かったし、落ち着いて眠れたわ」


「ああ、まあ出来たてってこともあるんだろうけどな。ありがとなアスカ」


「いいえ。私が使いたかっただけですから」


準備を進めているとふと気が付いた。


「ミネルたちはどうする?森だと危ないかもしれないけど…」


村でゆっくりするつもりだったから連れてきたけど、森に入るのならお留守番してもらった方がいいのかな?


チィ


ミネルとエミールがお留守番でレダとアルナは付いてくるらしい。というかレダは多分、アルナが無茶しないかどうかのお目付け役だと思う。


「それじゃ、ミネルとエミールはヘレンさんと一緒に行動してね。街じゃないから村の人たちが不安がるかもしれないし」


いくら小鳥とはいえ、大した戦力を持たないワインツ村からしたら脅威かもしれないからね。


「出発するか?」


「はい」


私たちはそれぞれの武器を装備して、宿を出た。森に向かう途中で村長さんに出会ったので、挨拶ついでにこれから魔物を捕らえに行くという事も伝える。


「おおっ!早速行って頂けるとは。よろしくお願いします」


「任せてください」


森の入り口に着くと一旦みんな装備を確認して進んでいく。


「この辺はまだ安全ですよ。もし出てきてもウルフですし」


多分、前に来た時よりもこっち側は人の手が入っているのが分かるから、魔物もそう簡単には寄ってこないだろう。


「その様ね。柵とかもついているし、簡単には入ってこないでしょう」


柵といっても木を組み合わせただけの簡単なものだった。でも、人が近くに来ているという事は分かるのでそれが魔物を遠ざけているんだ。


「こっち側だと薬草も採れますし、こっちに行きましょう」


「アスカは森にも入ったことがあるのか?」


「はい。というか森がなければワインツ村に来ることはなかったですね」


最初はライズに会いに、次はリーヌというかライズのお嫁さん捜しだ。どちらも森にヴェゼルスシープがいるから訪れたのだ。


「それじゃ、案内も任せるわね。と言ってもアスカは後衛だから道を教えてくれればいいわ」


「分かりました。じゃあ、そっちを右に行ってください」


森という事もあり、ベレッタさんはやや短めの剣を片手に持って進んでいる。私も杖を持っているし、ヒューイさんも杖だ。


「この辺りはまだまだ魔物の気配も感じないわね」


「そうだな」


それから1時間30分程度進んだところで私のセンサーに反応があった。


「この先に何かいます」


「分かったわ。ヒューイ、準備はいいわね」


「任せろ」


慎重に進んでいく私達。このサイズ感から行くとウルフかな?鼻もいいみたいでこっちに向かってきている。どうやら匂いでこちらの位置も分かっているらしい。


「多分ウルフですけど、こっちに来てます」


「分かったわ」


ベレッタさんも魔物という事で、剣を両手に持って構える。


ガサガサ


前方やや右側から音がする。ヒューイさんが木の陰に、私が広くなっているところに、ベレッタさんが音の正面に立った。


ウォン


草むらから出てきたと思ったら、ベレッタさんに向かって即座に2頭が跳びかかる。


「はぁっ!」


右のウルフを右手の剣で、左側のウルフも難なく左手の剣で受け止めるベレッタさん。ウルフたちは不意打ちに失敗してすぐに距離を取ろうとする。


「アクア」


「ウィンドカッター」


ヒューイさんは水を放ち私はその少し前で、ウルフたちが水を避けた先を狙う。


キャン


1頭は足に傷を、もう一頭は狙い通り顔に命中して倒した。しかし、ウルフは群れのようで続いて何頭か現れる。


「ふっ!」


ベレッタさんがすかさず剣を宙に投げ、懐からナイフを投げ1頭を倒す。そして、そのまま宙に投げた剣を掴んで切り込んでいく。この距離だと支援は難しそうだ。私は移動してウルフが狙えるところに向かう。3頭ほどこっちに回り込んで跳びかかろうとしたので、牽制のために火球を出す。


「ファイア」


急に目の前に火の玉が現れたので、こっちに向かおうとしたウルフがびくっとする。


「アクアスプラッシュ」


そこへ、ヒューイさんが横から攻撃して1体を倒す。私もすぐに火の玉を消して、風魔法で攻撃する。


「エアカッター」


連続で魔法を放ち、ダメ押しにアルナとレダの魔法でこちらに向かってきた3頭を倒す。


「せいっ!」


ベレッタさんも難なく、ウルフの相手をしており向こうは気圧されている。そして、目の前にいた1頭を倒したところで群れは散り散りになった。


「ふぅ、まずはこんなものかしら。ところで魔物を捕らえる件だけど、ウルフにするの?」


倒したといってもまだ息のあるウルフもいる。ただ…。


「ウルフってあんまりおいしくないんですよね。私たちが食べるとは思わないですけど、折角ならボアとかにしませんか?」


「まあ、この調子なら選べるだろう。そうするか」


「分かったわ」


そういうとベレッタさんは残ったウルフにとどめを刺していく。マジックバッグはヒューイさんたちが小を1つ、私が中を1つ持っているので、7体のウルフをとりあえず回収する。


「それにしてもこの辺は普通に魔物が襲ってくるんだな」


「結構村からも離れてますし、普段村の狩人の人たちもここまで来ないのかもしれませんね」


「確かに途中から道もあまりよくなかったものね」


私たちはとりあえずこの死臭につられて他の魔物が来ないかちょっとだけ待つ。


「それにしてもアルナもレダも頑張ったね。でも、危ないから無茶しちゃだめだよ」


ピィ


魔物も近くにいないので、その辺の草を食んでいるアルナたちに呼び掛ける。今回はウルフだったけど、それでも数が多かったし、力というか体が小さいアルナたちにとっては一撃がとても危険だから心配なのだ。ちょっと休憩した後で、再び進み始める。と言ってもあまり奥に行かないようにして、北西に進んでいたのを今は南やや東寄りに進んでいる。


「う~ん。この辺にはボアはいないみたいね」


移動しつつ、たまに現れる魔物を倒しながら進む。森といっても奥地に進んでいないので、安全圏だ。でも、オークとゴブリンとウルフにしか出会っていない。オークも2体だけだったし、やっぱりアルバの西ということもあり、かなり安全な地域のようだ。


「この辺にも薬草が生えてるんです」


「へぇ~、ならまた採っておかないとな」


「それにしてもこの辺はサナイト草が多いわね」


「多分このあたりまではあんまり狩人さんも来ないんじゃないんでしょうか。それに狩人さんの中に薬草に詳しい人はあんまりいないのかもしれません」


サナイト草は季節のものだし、村には薬屋はなかったから薬の形でしかサナイト草を見たことがないのかもしれない。


「なんにせよ。今が儲けるチャンスだな。この辺にはEランクの冒険者は来ないし、採れるだけ取っておこう」


私たちは少しだけ株を残し、どんどん採りながら進んでいく。他にもマファルキノコなどもあってほくほくだ。そうしているとレダが何かを訴えてきた。


「レダ、どうしたの?」


チュン


何やら南西の方で反応があるみたいだ。私もレダに続いて探知をしてみる。


「おおっ!?ちょっと大きいなぁ。ひょっとしてボアかも」


オークというには背が低く、ウルフというには大柄だ。期待を胸にそちらに進んでいく。


ボモォー


鳴き声がする。ボアであっているらしい。


「逃げられないように作戦を立てましょう」


「そうね。私は近接だけどとどめを刺すのは難しいから、威嚇に回るわ」


「いや、倒しちゃだめだろ」


「万が一を考えてよ」


「それなら私がやります。風魔法なら効率よく気絶させられると思います」


「なら、最初は俺が魔法で、次にベレッタが驚かせて動きが止まったところを狙ってくれ」


「分かりました。アルナとレダはそれぞれ2人に付いていて」


ピィ


ボアと思われる集団を見つけた私たちは、徐々に距離をつめていく。


「これ以上は気づかれないで近づくのは難しいと思います」


「分かった。じゃあ、手配通り誘導をする」


それぞれ配置について準備をする。合図はアルナとレダが伝令役として行った。


「よし、行くぞ!」


ガサガサと音を立てながらヒューイさんが出て行く。遠目にボアが見えた。ボアたちは音にびっくりして、反対側に逃げようとした。


「待ちなさい!」


そこへ、ベレッタさんが剣を振り上げて出て行く。完全に逃げ場を失ったボアたちは一瞬立ち止まった後、左右に分かれて逃げようとする。


「今だ!ウィンドボール」


2発のウィンドボールを作り、それぞれの退路の前にぶつけ土煙を上げる。これにパニックを起こしたボアたちはびくりとその身を硬直させる。


「動きが完全に止まった!これなら、ウィンドボール」


今度はボアの腹を狙ってウィンドボールを放つ。5匹いた内のボア3体に当たり、残り2匹についてはまだ体が小さく、狙う前に草むらに入ってしまった。


「うう~ん、これ以上の追撃は無理ね」


「まあ、逃げたのは小さいボアでしたし、次に狩人さんたちが大きくなった後で仕留めてくれますよ」


「そうだな。魔物は1匹でもいいんだし、とりあえず確保するか」


私たちは気絶しているボアの状態を確認する。当たり所が悪かったのか1匹は死んでいる様だが、2匹は生きていた。このサイズなら儀式にも問題ないだろうし、持って帰りますか。


「ところで、どうやってこれを運ぶんだ?マジックバッグには生きてるのは入らないぞ?」


「そうね。気絶してるから私たちには運ぶだけの力もないし、起きるのを待つ?」


「それだといつになるか分かりませんね。私が風の魔法で運びましょう」


ロープを使って前足と後ろ脚をくくって、動きを封じたら後はフライで浮かすだけだ。ボアを浮かせた私たちは村への帰路へと付いたのだった。



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― 新着の感想 ―
今回はこの村限定でちょっとしたチートっぽい感じにアスカが活躍していて微笑ましい。 ベレッタさん達も善い冒険者だし、もしかしたら出会う順番と時期が違えばノヴァ達の代わりにメンバーになっていたのかも。 …
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