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番外編 孤児院の巫女たち

わたしの名前はラーナ。孤児院前に捨てられていた子どもだ。捨て子ってことだけど他の子だと道に捨てられたり、魔物に襲われてみなしごになった子もいるから、安全な孤児院前に捨てられていただけ、愛があったって言われてる。拾われて早3年。もうすぐ9歳になるんだけど、最近ちょっと変わったことがあった。


「こんにちわ~、これどうぞ!」


「あら、アスカ様。ありがとうございます」


今のは最近来るようになったアスカおねえちゃん。何でも、リュー兄やノヴァ兄の知り合いらしい。2人もたまに差し入れを持って来るけど、アスカおねえちゃんのが一番おいしいのだ。それにふわふわして暖かいし。


「ラーナちゃんもこんにちわ。元気だった?」


「元気。おねえちゃんは?」


「私もだよ。シスターさんとの勉強は進んでる?」


「うん。一杯教えてもらった」


「良かったね」


「うん。ちょっと見せたいものがあるの」


「見せたいもの?分かった、ちょっと待っててね」


そういうとおねえちゃんはみんなにもパンを配っていく。このパンもいつも食べてるのと違ってやわらかいし、いい匂いなんだ。宿にお手伝いに行っている子はお昼過ぎに食べられるんだって。いいなぁ。


「お待たせ。どっか場所移す?」


コクリ


わたしはうなづいて庭に出る。


「それで見せたい物って何?」


「これ、ホール!」


わたしがそういうと目の前に何もない空間が出来て、小石を投げるとその空間に吸い込まれる。


「こ、これって…」


「たぶん、空間魔法だと思う」


実はわたしとアスカおねえちゃんにはある秘密がある。それは空間魔法という貴重な魔法の巫女だということだ。巫女と言っても神様の力が弱いからまだ、おねえちゃんは何も使えないみたいだけど、わたしはその魔法自体に適性があって訓練したら使えるって言われたので練習していた。そして、最近ほんとに使えるようになったのだ。


「他には何ができるの?」


「今はこれだけ」


「そ、そう。ちなみに中に入った小石はどうなったの?」


「ちょっと待ってて」


10秒ほど経って空間が消えると、そこからぽとりと小石が落ちた。


「なんともなってない…」


「うん。しばらくの間、さっきの空間に閉じ込めるだけみたい」


「なるほど、これでマジックバッグを作ってるんだね。でも、間違って人とか入っちゃうとまずいし、練習しづらいよね」


「シスターさんが場所を用意してくれるって。セティちゃんといっしょ」


「それなら安心だね」


セティちゃんは私より4歳年上で、私と同じ巫女だ。巫女といってもあっちはシェルレーネ教の巫女で、そのことは今は秘密だけど知名度抜群の神様だ。私の神様はアラシェルっていう新しい神様で今はこの街と隣街ぐらいでしか信仰されていないから、巫女としての力も全然違う。


「ラーナ、どうしたのそんなとこで?」


「セティちゃん、魔法見せてた」


「そう?でも、あんまり見つからないようにね」


「わかってる」


何でも空間魔法って言うのは貴重らしくて、ほとんどの人は使えないらしい。街でも有名なアスカおねえちゃんでも使えないし、使える人は珍しすぎてどこかに連れて行かれちゃったりするらしい。シスターも決して人前で使わないようにって言ってたし、大変なんだって。


「私はあと2年でここを出るけど、ラーナが心配だよ。今度巫女様が来たら相談しておくね」


セティちゃんは巫女なんだけど、まだ、みんなには知らせてないんだって。なんでも、神託で私と一緒にいるためらしい。シェルレーネ様は別の神様の巫女である私のことを想ってくれるいい神様だ。



---


「はい。今日は魔法の練習ね」


そう言ってシスターレティが一歩前に出る。シスターは水以外にも聖属性が使えて、小さいけれど結界が作れるので、私たちはそこで魔法の練習をしている。


「ホール」


私は覚えたての空間魔法を練習する。


「もう発動は問題ないみたいですね。今後は新たな魔法を覚えるのですが、すみません。まだ、空間魔導書を入手できていないのです。何せ希少且つ、入手にも細心の注意が必要なので…」


「ううん。いい、自分で考える」


アスカおねえちゃんも一つの魔法でも色々考えたら、使い方もいっぱいあるって言ってたし、今はホールだけでも別にいい。こうして今日も私は魔法の練習をするのだ。あっ、おやつのお菓子美味しい。




---

ある本屋の変化


「はぁ~、こんな本も知らないのかい」


「すみません。おばあ様」


「もういいよ。次の本を並べといてくれ」


「はい」


「ばあちゃん。いくらなんでもそんな…」


「ああ?あんたもうちに来たんならもっと働きな。商いって言ってもうちの商品は扱う幅も広い本。内容が分かんなきゃ勧められないよ」


「あ、うん」


はぁ。息子がでっかい店を持つと出て行って早数十年。家に誰か来たと思ったら、まさか孫とその嫁とはね。ちゃんと成功したのかと思いきや、数十年務めて小さい商会の副店長止まりだ。そんなんじゃ余裕ある生活という訳でもなく、引退後に孫がどこまでの地位になれるか分からないということで、わざわざうちに送ってくるなんて。


「そんなら、ずっと前から継いでくれたらいいものを…」


それならもっと子供のころから知識も詰め込めるし、販路も紹介できるっていうのに。来る人来る人何でいまさらと正直、孫夫婦への印象も良くはない。とはいえ、腰も痛むようになってきたし、手を貸してくれるのはありがたいのだが…。


「ほれ!またそんな持ち方をして。いくらになると思ってるんだい?」


「べ、別に落とさないから」


「落とす落とさないじゃない。それを客が見て『なんと扱いの悪い店主だ』そう思われることに気が付かないのかい。ほんとに商会に出入りしていたんだろうねぇ」


「それは本当だよ。まあ、商談とかじゃなくて荷物運びがほとんどだったけどさ」


「あんたに物を運ばせてたってろくでもない商会だね。もっと売り物は大切におし!」


「そうよあなた。傷んでしまったら、安く売らないといけないのよ。折角貴重な本なのに…」


「貴重ったって全部が全部じゃないだろ?」


「はぁ…。本自体が貴重なんだよ。あんたはしばらく本は持たずに掃除だけしてな」


「そんな!俺だってこの辺の本ぐらいなら内容も覚えたよ」


「覚えたからって何なんだい。客から疑問を持たれるような荷扱いをする相手には任せられないよ。イタタ…」


「おばあ様。奥でお休みください。ここは私が見てますから」


「すまないね。あんたが孫ならよかったんだけどねぇ」


「いいえ。あの人も本も私が見てますから」


「はぁ。頼んだよ。そうそう、アスカちゃんが来たら呼んどくれよ」


「アスカさんですか?どのような方でしょう?」


「こんぐらいの背のちっさい街娘だよ。お得意様だからね、他のやつに相手させるわけにはいかないよ」


「分かりました。来られたら案内します。ですから休んでくださいね」


「はいよ」


ふぅ、この店もどうなることかと思ったけど、もうしばらくは持ちそうだね。この街に代々続く店の一つだからそれ自体はうれしいけど、どうなることやら。そう思いながら私は奥へと戻っていった。





※今日は短い?明日がめちゃんこ長いのだ。構想1時間、打ち込み2時間半のベタ打ちなのでミスには目をつぶって。

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