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宿の屋根改装

今日はいよいよシュタッドさんと屋根を改装する日だ。昨日たまたま下の部屋は空き部屋だったので、今日と一応明日も空室にしてもらえるようにミーシャさんに話を済ませた。


「よしっ!後は改装だけだ」


待ち合わせはちょっと宿泊客も落ち着く9時半ごろだ。これ以上早いと起こしてしまうし、準備とかをしているので邪魔になってしまう。ちょっとぐらいと思うけど、冒険者は危ない職業だから、忘れ物とかが命取りになりかねないからね。


「おねえちゃん、シュタッドさん来たよ~」


「は~い」


食堂で待っているとどうやら来たらしい。玄関に出て出迎えようとしたのだけど…。


「な、何ですかその荷物は!」


「何って今日使う木材とか金属だろ?」


「何で、全部抱えてるんですか。言ってくれたら手伝いますよ」


「いや、スキルのお陰でこれぐらいなら持てるから心配すんなって」


そういうものの、木材は長い木が10本に金属が詰まった箱も持っている。


「ちょ、ちょっとこの下に置いてください」


私は急いでシートを出してそこに金属だけでも置いてもらう。


「これでいいのか?別に持てるんだが…」


「ダメです!体壊しちゃいますよ。ウィンド」


シートには隅に魔石が置いてあり、風の魔力を流して浮く様になっているのだ。荷物専用の空飛ぶ絨毯だね。と言っても最初にこのシートの上に物を置かないといけないし、あんまり役に立つことはないんだけどね。


「それじゃ、これだけでも持って行きますから」


「なら、頼む」


こうして二人で裏庭まで行く。


リィ


「ごめんね。今日は遊んであげられないの。みんなのお家を作るから」


「待ってな!」


渋々ながらも納得してくれたのか近くの木につかまって遊びだすサンダーバードたち。


「んじゃ、さっさと作っちまうか」


早速、仕事道具を出したシュタッドさんが木を加工していく。切ると持ってくる手間がかかると言っていた通り、すごく作業速度が速い。


「わ、私は何を手伝えば…」


「この図の通りにこれを使って組み立ててくれ。さっきので持ち上げられるなら下で組んでおきたい。それとそこの材料をこの配分で混ぜて金属を作ってくれ。型はこれだ」


ひょいっと地面に型を置くシュタッドさん。しかし、どしんという音がしたんだけど。軽々と持ってるだけですごく重そうだ。


私は先に木を組み立てていく。これは細工でも使うことがあるので、簡単な作業だ。10分ほどで組み上げると、続いては金属の調合だ。


「えっと、まずは水が要って、後はこの粉を順番に量ってと…」


「おっ、早いじゃないか」


「細工とかでこういう作業には慣れてるんです。塗料とかも使いますし」


「それは助かるな。俺も負けてられないな」


私が金属を型に流し込むとちょうど材料を切り終わったようだ。


「よし、後は加熱するだけだが、アスカ出来るか?」


「大丈夫です。料理とかで慣れてますから」


「料理と言っても…ああ、宿の手伝いか。なら大丈夫だな」


私はシュタッドさんの指示通りに温度をあげたり、調整しながら金属を加熱していく。


「よし、後はじっくり冷まさないとな。風は送れるか?」


「大丈夫です」


こうして1時間ほど冷ますのに費やした後は、いよいよ屋根の改修だ。


「まずは屋根をはがしたいから、頼む」


「了解です」


私は風魔法でシュタッドさんを屋根に上げる。ここでも素早く屋根をはがしていくシュタッドさん。


「一旦降ろすぞ。危ないから離れていろ」


「それなら投げてください。魔法で受け止めますから」


「行くぞ。そらっ!」


私はシュタッドさんが投げた板を風魔法でふわりと地面に下ろす。


「オッケーです」


「よし!次は底の部分を作るからその袋をくれ」


「これですね。行きますよ」


こうして何度か必要な木材を上げる。数分ごとに上げた木材を使ってどんどん作業が進んでいく。


「よ~し、土台は完成だ。後は昼以降だな」


「もう完成しそうですけど?」


「ぶっ通しの作業はよくないぞ。こういう時にミスが出て落っこちたりするんだ。余裕があるなら先に休むんだ」


「はい」


何だか、冒険者にも通じる内容だなと感心してお昼にする。もちろん、お昼は宿で食べる。


「あっ、おねえちゃん。もう作業は良いの?」


「うん。一旦休憩だね。でも、そんなにかからないと思うよ」


「そっか。おねえちゃんにしては珍しいね」


「何が?」


「大体、こういう時はいっつも終わらせてから来てたから」


「まあ、今回の作業はシュタッドさん主体だからね」


「それでか~。あっ、お昼は何にする?」


「う~ん。肉中心でいいかな?」


「Aセットだね。シュタッドさんは?」


「もちろん、Cセットだ。大盛でな!」


美味しい食事でお腹を満たした私たちは、再び作業に戻る。


「次は何を上げたらいいですか?」


「そこの木の部品を6つだ」


「これなんですか?」


「そこに屋根の部分を差して固定させるんだ。横から楔を打ち込んで簡単に飛ばないようにする」


「分かりました」


今度の部品は細かいので、人も乗れる風のシートを使って運ぶ。


「アスカは面白いものを作るな。どうして、シートなんだ?」


「それは魔法のじゅうた…こういうのがあればいいなって!」


「う~ん、この前のタンスの工夫といい、アスカは色々気がつくな。そうそう、あの小さい滑車の登録をしたいんだが、何か名前はあるのか?」


「登録?」


「ああ、今までは井戸何かの大きなものにしか使われていなくてな。転用のアイデアを登録することでいくらか入ってくるようになるぞ」


だから、どういうところで使うのか、アイデアも一緒にくれとシュタッドさん。


「名前ですか…すぐには思い付きませんね。使うところは戸棚とか横開きのドアとかですかね?後は重量で引っ込むようにするとかですね」


「引っ込む?どうやって?」


「どうと言われると難しいんですけど、設置するとその重みで、滑車が上に格納されるんです。運ぶ時は持ち上げると降りてくる感じですね」


「なる程な」


うんうんとうなづくシュタッドさん。その間に私は名前を考える。名前か~、こう言うのって自分の名前とかかな?


「う~ん。でも、アスカ滑車だと言いにくいよね。アスカ滑車、アスカ滑車…アス滑車。何てね」


「ん?アス滑車というのか。言いやすいし、良い名前だな」


「えっ!?」


いつの間にかシュタッドさんは思考の海から抜け出ていて、私の話を途中から聞いていたみたいだ。


「あ、あの、アス滑車と言うのは…」


「分かってる。家具とかに使う小さい滑車の総称だろ?俺の方でも思い付くアイデアと一緒に登録しといてやるよ」


そういうと話しは終わりとばかりにシュタッドさんが作業を再開した。私はというと今さらシャレですとも言えず、内心ではアワアワとしていた。


「次、屋根の囲いのをくれ。二回に分けてな」


「は~い…」


気持ちを切り替えて手伝おう。早く家を作らないと!


「よ~し、後は囲いと屋根を合わせるだけだな。アスカも上に来い!」


「はい」


上で作業がまだあるのかなと思って飛んでいく。


「よし、そっち持て」


言う通りに持つと、2人で屋根をはめ込む。と言っても持っているのはほぼ、シュタッドさんで私は手を添えているようなものだけど。


「離して良いですか?」


「おう!これで完成だな」


私要らなかった気がするんだけど…。


「えっと、私はなんで上がってきたんでしょうか?」


「アスカは家を建てたりするのに立ち会ったことないのか?」


「ないですね」


村でも家を建てる時に呼ばれるほど仲の良い知り合いもいなかったし。


「うちじゃ、こうやって最後の仕事は親方と職人の代表が完成をさせるんだ。といってもこれの固定がまだあるけどな」


「へぇ~、そういうのをやるんですね」


「これで、今回の仕事も完了ってな。俺たちもああ、終わったって気持ちになるんだ」


そう言いながら、シュタッドさんは最後に屋根の固定を始める。私はもう終わりそうなので、ここに置くものを持って来る。


「おしっ!これで終わりだな」


「じゃあ、ここにクッションとトイレ用のを置いて。そうそう、排水用の管を付けないとね」


トントンと排水管などを置いていく。これは最後にやらないとずれちゃうからね。


「なんだそれは?」


「排水管です。ここに汁気とかを流して下に落とすんです。洗浄には水を使いますから、定期的にディースさんに頼むつもりです」


「ほう。確かにこうすれば上からも簡単に水が流せるな」


「でも定期的に清掃と交換をしないとつまっちゃうと思いますよ、多分」


「だが、ここだけで使うのはもったいないな。これも一緒に申請してもいいか?」


「構いませんよ。でも、もうあるんじゃないですか?」


「どうだろうな。申請してみて類似のものがあったら諦めるが、まあ物は試しだ」


最後に作った梯子をかけて、とうとう改修工事は完了した。


「ほら、みんなおいで。新しい家だよ」


リィ


木に止まったり、庭でふらふらしていたサンダーバードたちが、待ってましたと言わんばかりに一斉に新しい住処に飛んで行く。


「やっぱり、4羽までのサイズにしたからきついね」


バサバサと7羽が飛び降りたのだけど、スペースの関係で遊びがなくなってしまった。まあ、1家族のみの広さとしては問題なさそうだね。


「このサイズで問題ないのか?窮屈そうだが」


「はい。元々こっちに1家族で孤児院に小屋を作るつもりだったんです。だから、ここに住むのはこの半分何ですよ」


「そういえば、孤児院にも作るとか言っていたな。そっちの予定は?」


「それが全く。一応、院長先生には許可をもらっているんですけど、そっちの方は材料からまだ手付かずで…」


「小屋となると、木を持ってくるところからだな…。う~む、まあ何とかなるか」


「木が余ってるんですか?」


「いや、ノヴァから聞いていると思うが、今仕事場にあるのはレディトに持って行くからな。だが、何とかなるあてがあるから大丈夫だ。明日でもいいか?」


「もちろんです!」


やった。早いうちにこのすし詰め状態から脱却させてあげれそうだ。


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