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アスカは大人気!?

ジュールさんにサンダーバードの件で話をしようと思ったら、何でも私に話があるらしい。特に最近何かした記憶もないので何だろう?


「それで話って言うのは?」


「アスカの方は良いのか?」


「私は後でいいですよ」


「そうか。なら話すぞ。アスカは昇格試験の時に試験官が選べるのは知っているか?」


「ああ、確か紙に書く欄がありましたね。それがどうかしたんですか?」


「実はだな…。今、アルバのギルドのDランクとCランクの昇格試験において、試験官の欄がほぼアスカの名前で埋まってるんだ」


「ええっ!?どうしてですか!私、そんなに冒険者の知り合いはいませんよ」


「まあ、そうだろうな。週に一度、採取や討伐依頼をささっと取って、帰りも報告だけで飯も食わないし、飲み物も飲まないからな。アスカはノヴァやミシディア嬢の試験官を務めただろ?」


「まあそうですけど…。ミシディア?」


「ああ、ミディと名乗ってたんだっけか。あいつだ」


「ああ!ミディちゃんですね。そっか、ミディは愛称だったんですね」


「そうだ。まあ、そこでノヴァがスキルを発現しただろ?調べたんだが、どうやらそのことが噂で広まって、才能があればアスカが目覚めさせてくれるなんて変なことになっててな」


「わ、私そんなこと出来ませんってば!」


「まあ、経験が豊富な試験官ならあり得るかもしれないが、俺もそこは信じてない。だが、重要なのは一部の冒険者が、実際に伸び悩んでいて、もし事実であるならと思ってしまったことだ。それが何かのきっかけになればと、みんなお前の名前を書いているんだ」


「ど、どうしたらいいんですか?」


「そこなんだよなぁ。ギルドがあの欄を設けているのは、それなりに試験を通したいという思惑もあるんだ」


「でも、試験官って一定の強さじゃないんですか?」


「まあ、最低の強さは保証されているが、個人の得意な戦い方ってのがあるだろ?どうしても、ランダムに組まれた場合は自分の苦手相手に当たって実力が発揮できないことがある。そういう人間のための制度だったんだ。知り合いや、同じパーティーの人間なら、十分に戦える姿を見せやすいからな。手を抜くんじゃなくて、実力を見せる形でな」


なるほどなぁ。ギルドとしては強い冒険者は欲しいけど、個別の冒険者をよく見る暇はないから、もし限定的な戦い方をする人は、それが見せられる人を自分で選べるわけか。


「じゃあ、あの欄に書かれると受けないといけないんですか?」


「強制という訳ではないが、そういう経緯があるからギルドとしては受けて欲しいというのはある。もっとも、それはさっき言った理由が通る場合だ。アスカの場合は明らかに別の理由だからな。どっちかというとどんな相手にも対応できる分、本来は選ばれにくいはずだしな」


「色んな戦い方が出来ると選ばれやすいんじゃないんですか?」


「では聞くが、アスカ。お前は近距離ならどうやって戦う?」


「弓を振り回すか魔法ですかね」


「中距離や遠距離は?」


「一緒です。中距離からは矢も撃てるので、同じく弓と魔法ですね」


「一応常識を言っておくと、魔法使いは近距離は通常の場合は短剣か棒術と答える。魔法なんて暴発しかねないものを近距離で使うのを恐れるからだ。それ以外のやつは出来ないから距離を取ると答えるのが一般的だ。アスカ、冒険者が試験官に求めるのは強さじゃない。見せ場を用意してくれる相手だ。弓使いなら剣や格闘術。剣なら遠距離攻撃と自分と相手のレンジが合わない方がいいんだ」


「同じだとまずいんですか?」


「不味くはないが、相手の方が通常は実力は上なんだから、判定員の評価が低くなりやすい。レンジが違えばあれを避けたやうまく攻撃したと、良い点が見つかり易い。そういう意味でお前は一番試験官になって欲しくない相手ともいえる。ギルドとしては一人いれば、その日の全員の相手にいいから助かるがな」


「私やっぱり向いてないですか?」


「そういうことじゃない。いくらランクが下とはいえ、魔法使いに剣士が接近戦で負ける。冒険者にとってはこれ以上ないくらいに判定員の評価が気になるだろう。全てのレンジで戦える試験官は冒険者にとって恐怖なんだ。弱点を突けずに試験に落ちる可能性が高まるからな。現にミシディア嬢は普段近接をしないし、実戦の経験も乏しいから魔法のみにしただろ?制限なしでやってたら、近接で即失格だっただろうよ」


何だか褒められてるのかよくわかんない評価だけど、試験官失格だって言われなくてよかった。


「話を戻すとだ。本来の目的外の理由で指名されている以上、アスカが試験官として受ける必要はない。と言いたいが、全く受けないのもギルドとしてはあの欄が無意味になってしまうので、何件かは受けて欲しい。特にDランクだな」


「どうしてDランクなんですか?」


「Cランクを受けようってやつは戦い方も大体わかってて、それなりに実力もあるからな。Dランクの伸び悩む前に何がいけないのか、どこが足りないのか、実力のある試験官を見て学んで欲しいんだ。アスカには改めて研修を受けてもらってやって欲しいんだが、良いか?」


「うう~ん。結果に責任は持てませんけど、冒険者として必要ならやります」


「そうか!じゃあ、明後日あいてるか?俺がその日は暇だから、研修をしたいんだが…」


「大丈夫だと思います。何時ぐらいですか?」


「目立ってもあれだし、10時ぐらいだな。そのぐらいならほとんど出払っているだろう」


「分かりました。それで私の話なんですが…」


「そうだったな。どうしたんだ?」


「実はですね。今回レディトで遺跡探索の依頼を受けたんですけど、ちょっと困ったことになってしまって、相談なんですけど…」


「こうやって頼ってもらえるのはうれしいからな。聞かせてくれ!」


私は今回の旅の経緯を簡単に説明して、ソニアとサンダーバードたちについて説明した。もちろんソニアについては従魔として契約もしているから問題ないんだけど、サンダーバードたちの扱いが問題ないかという相談をしたかったのだ。


「サンダーバードか…。俺も見たことはあるが戦ったことはないし、生態もよく分からんのだ。危なくないということだがそれを証明するとなるとな。魔法は使うのか?」


「一応使います。使うといってもライトの魔法だけですけど」


「あんな下級の魔法をどうして?確か魔力が高かったはずだが…」


「さあ?でも、遊び感覚で使ってますから、魔力が高いのは確かです。今度ディースさんが契約したいって言ってましたから、その時に分かると思います」


「分かった。そのことはひとまず置いておこう。臆病なのは知ってるが、なにを食べるんだ?」


「野菜とか草とかですね。肉は食べません」


「それならまだ何とかなるか。でも、全部は従魔にしないんだろう?」


「そうですね。元々はディースさんが従魔にしたいと言うとは思ってませんでしたから、全羽未契約になると思ってたんです。従魔にするのも半分ぐらいですね」


「どうにかして脅威ではないと示さないといけないな。確か他の街で魔物の扱いについて前例があったような…」


ジュールさんが立ち上がって書類の山に向かう。ファイリングはされているみたいだけど、色んなファイルに手を付けている。


「おおっ!あったこれだな。何々、魔物使いの冒険者はいないが安全を確認し、定期的に無害であることを示す催しを行い、街の人間に認知させた、か。これなら何とか出来るかもな」


「本当ですか!」


「ああ。ただし、これを行うにはいくつか条件がいる。まずは無害性を示すための催しだが、これを個人で行うことは出来ない。冒険者ギルドなどの組織でないと、安全性の担保にならないからな。だからこれを行う場合はギルド主催となり、費用の負担が発生する。後は肝心の催し物の中身だな。安全性を示すっていってもどうやればいいんだか…」


「つまり、お金と見世物の問題が解決できれば飼ってもいいんですね?」


「まあ、そういうことになるか。なんにしてもディース次第かもな。あいつが契約して従魔にすればもっと単純になるかもしれん」


「なら、また近いうちに相談に来ますね」


「そうしてくれ。こっちとしても別におかしな話じゃないから、相談にはのってやる」


「ありがとうございます」


ジュールさんに挨拶をしてギルドを出る。なんだかみんなに見られていた気がしたのは気のせいだろう。


「ようやく、外での用事が終わったよ。忙しかった。後は本命だね」


一番忘れてはいけないのが、宿の許可だ。これが取れなかったら、別に住処を捜しに行かないといけないなぁ。


「ただいま~」


「おかえり、おねえちゃん。待ってたよ」


「どうしたのエレンちゃん。疲れた顔して」


「おねえちゃんが連れて帰ってきた鳥だけど、お部屋に入れようとしたらポンポン跳ねて大変だったんだよ」


「そうなの?大人しいと思ったけど…」


「珍しいのか、おねえちゃんの匂いが分かるのか知らないけど、みんな元気が良くて。最終的にはうらのお庭に行ってもらったんだ」


「そうだったんだ。ごめんね、大変だったでしょ?」


「まあね。でもミネルとかあんまり触らせてくれないし、ふさふさしてて楽しかったけどね。孤児院の子たちも帰る時は寂しそうだったし」


「おっ、ようやく帰って来たな」


「ライギルさん。仕込みは良いんですか?」


「ああ、エステルに頼んでる。それよりサンダーバードだっけ?そっちの件の方が重要だからな」


「すみません急に…」


「ああ、事情はジャネットから聞いてるから、まあ座れ」


「はい」


カウンター前のテーブルに座って話をする。


「で、あの鳥を飼いたいってことだがな、全部はちょっと難しい」


「難しいですか」


「ああ。リンネと一緒にソニアだっけ?そいつも飼うんだろ?エサは問題ないが、庭はそれである程度埋まるし、小鳥じゃなくてそれなりに大きいからな。鳥小屋となると流石に置き場所がない」


「そうですか…」


「半分ぐらいならまだ何とかなるんだが、全部置くとなると流石にな。どこか、他に飼えそうなところはあるか?」


「分かりません。ディースさんが従魔にしたいって言ってましたけど、あの家も住宅街ですから難しいかも…」


「う~ん、食料の問題はないから俺もディースさんならと思ったんだけどな。確かにあの人の家じゃ周りが何か言ってきそうだな。そういえば、飼う前提で話をしていたが、そっちの方は大丈夫なのか?」


「はい。ジュールさんにも相談してきたんですけど、安全な鳥だとみんなに周知できる催し物をして、ギルドにその費用を払えば大丈夫そうです」


「そりゃよかったな。まずはそっちをどうするか考えてたが、俺達じゃどうしようもなくてな」


ライギルさんたちはただの宿泊客の私に色々気を使ってくれる。今回のことも私のわがままなのに色々考えてくれて、感謝だ。ひとまず、サンダーバードたちの住処を何とかしないと。



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