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遺跡探索

ブリンクベアーの素材も取り終わり、再び進んでいく。


「あと半時間ほどでお昼ですけど、どうします?麓で食べるか、現地についてからにするか」


「あんまり高い山でもないし、上で良いんじゃないかい?下の方はまた襲われそうだしね」


「じゃあ、上がってからにしましょうか。念のため、ちょっと木を持っていきますね」


上の方は太い木も少なそうなので、数本下で切ってマジックバッグに入れて確保する。調査が長引いたら降りてこないかもしれないしね。


「これでよし!それじゃ進みましょう」


簡単な荷物だけを背負って登っていく。小枝や草なんかも多くて足を取られそうになりながら進む。


「わっ!」


ガシッ


「だ、大丈夫、アスカ?」


「うん。ありがとう、リュート。リュートも気を付けてね」


「わかった。よっと」


やっぱり整備されていないせいで、登りにくい。遠足とかで登ったことはあったけど、丸太を敷いただけの道でも、結構違うんだなって思った。


「次はこっちだね。少しだけど溝みたいになってる。遺跡になる前には整備はされてたみたいだね」


「それでもほとんどわかりませんね」


「もしかしたら普段から使っていなかったのかもね。何かの時にだけ使ったとかね」


「そういえば遺跡はあるのに集落はないんですよね?」


「さあね。遺跡の端しか誰も見てないから、奥にあるかもしれないし、全くないかもしれない」


「もしかして、まだ人が居たりしてな!」


「遺跡を放り出して?」


「必要なくなったのかもしれないよ?遺跡だと思ってたのが見張り台だったりしてね」


「成る程~」


そう考えると色んな見方があるんだな。


「そんなに色々言っても、直ぐにわかっちまうけどね」


「ジャネットさん、夢がないです」


「じゃあ、ここで帰るかい?それならさっきの妄想もとっとけるよ」


「それとこれとは別ですよ~」


「ははっ、なら進もうか」


それから私たちは50分ほど歩き続けた。


「着いた~!!」


「ああ、着いたねぇ」


「もっと楽しそうにして下さいよ!」


「アスカは良いねぇ。これを見てもワクワクできて」


遺跡のところまでやって来た私たち。そこで目にしたものは…。


「恐らく小屋だったものがひとつ。ちっさい祭壇跡がひとつ。こりゃ大外れだね」


「言わないで下さいよ~。他にも何かあるかもしれないですよ?」


「じゃあ、ここから先に何が見える?」


「前行った廃村ですね」


「で、あそこで見たような像がある。ここから考えられることは、リュート」


「えっと…何らかの儀式のためにあの廃村の人たちがやって来て、終われば村に戻った?」


「だろうねぇ。小屋のサイズからしても、祭りって感じじゃなくて、本当に祈って終わり程度だろうね。ベッドもなかったし」


そう、小屋の跡には家具の残骸らしきものもなかった。ホントに着替えとかで使うだけのような簡素なものだ。


「とりあえず飯にしようぜ!」


「そうだね。景色は良いし、飯を食いに来たと思えばいいか」


「良くないですよ!調査は?」


「アスカ、諦めてご飯にしよう。その後考えようよ」


「は~い…」


前だって思わぬところから出てきたし、何かあるかもしれないと思いながらもとりあえずご飯にする。


「リンネ、はい」


わぅ


今一番元気なのはリンネだ。大自然の下での食事が嬉しいらしく、尻尾をフリフリしている。街でだらけてても野生生まれなんだな。


「アスカは食事、もう良いの?」


「うん。大丈夫」


簡単に食事を済ませると、私はくつろいでいた。まだまだ動き回る予定だから、腹八分目なのだ。


「それならそっちに野菜くずを捨ててきてもらえる?ちょっと傷んでるのがあったからさ」


「わかった、行ってくるね!」


リュートから、野菜を受けとるとちょっと離れる。あんまり近くに捨てると、魔物が寄って来ちゃいそうだしね。


「この辺までくればいいかな?」


特に遺跡があるわけでもないし、この辺なら問題ないと思った私は早速、野菜を投棄する。


「さあ、みんなのところに帰らないと…」


リィ


その時、鈴のような鳴き声がした。どうしたんだろうと野菜を投棄した方を見ると、何だか見慣れない鳥がいた。私に気付いたのかすぐに草むらに隠れる。でも、動かないと分かるともう一度出て来て野菜にくちばしを当てて食べられるか確認する。


「か、かわいい…」


ちょっと丸っとした鳩みたいで、敵意もなくすごくかわいい。じーっと見ていると、再びこっちに警戒したのかまた離れる。


「やっぱり、警戒心が強いんだね。ティタ話せる?」


「ためしてみる」


ティタがかさっと小さい音を立てて近づく。すぐに鳥は警戒するけど、ティタが話しかけるとやや下がったものの、その場に立っている。それからちょっとしてティタがこっちに戻ってきた。


「どうだった?」


「きがいはくわえない。はなしてきた」


「良かった」


だけど、やっぱり警戒はされているみたいで、食べながらも遠巻きにこっちを気にしている。


「う~ん。食事の邪魔になってもいけないし、帰ろうか」


「うん」


残念だけど、落ち着かないだろうからティタを連れてその場を離れる。それにしても、もしかしたら今のがサンダーバードなのかな?だったらうれしいけど。


「アスカ。遅かったけど、そんなに遠くに行ってたの?」


「ううん。ちょっとね」


「何か見つけたのか?」


「まあ、見つけたというか見たというか…」


私は野菜を捨てに行ったら見慣れない鳥を見たということを伝えた。


「多分そいつがサンダーバードであってるよ。良かったねぇ、滅多に見られないんだよ」


「俺が代わりに行けばよかったぜ」


「警戒心が強いから、ノヴァの前に姿を見せたかねぇ。声を出して逃げられるのがおちだと思うよ」


「確かに、ちょっとの音でも結構反応してましたね」


「戦闘力はほとんどないからね。さてと、十分休んだし調査と行くか」


「はい!」


食事を終え、目的の遺跡の探索を始める。まずは小屋からだ。


「ここを調査って言っても、がれきをどけて終わりそうだね。特に人が入った形跡はないし、あるとしたらこのつぼだけか…」


ジャネットさんが床下にあった壺を振る。音が鳴っているので何か入ってるらしい。


「ジャネット、開けてみろよ」


「そうは言ってもね。これ多分食料だよ。異臭がしても知らないよ」


「じゃあ、向こうでやってくれ」


「まあ、これ以外何もないみたいだし、開けるだけ開けるか」


そう言って、ちょっと離れて壺を開けるジャネットさん。珍しく蓋も陶器で作られているみたいで、ある程度は密封されてはいるようだ。


パカッ


「ん?塩か…。腐ってはいないみたいだけど何だこれ?」


私も気になったので、そっと壺を覗く。


「あれ?この匂いは…」


よく嗅いだ匂いがする。何て言うが主に朝食時に。とりあえず1つ取って口に含む。


「んん。ん~、か、からい!めちゃくちゃ塩分高いやつだこれ!」


まあ、腐ってないということからも予想できたのだが、市販されていたのとはひと味もふた味も違う。


「だ、大丈夫かアスカ!?」


「は、はい。単体で食べたのは失敗でした。ご飯さえあれば…」


「干し肉ならあるけど…」


「それで良いからちょうだい。あっ、リンネ用のやつね」


流石にこの塩分濃度に調味液の干し肉は体に悪すぎる。いつもは食べない味の薄い干し肉と一緒に食べる。それでもしょっぱいし、きつい。これがご飯なら喜んでかきこむのになぁ。


「ふぅ~、ありがとリュート」


「どういたしまして。それで何だったの?迷わず食べたみたいだけど…」


最後に水をもらった私は一息ついて説明する。


「これは梅干しっていって、梅っていう果実を塩で浸けたものなんだ。塩分が一杯入ってるから、腐らないんだよ」


「成る程ねぇ。でも何でここにあったのかねぇ」


「さあ?でも腐らないから、万が一の為に置いてたとかですかね。さ、ふたをして持って帰ろっと」


「えっ!持って帰るのか!?辛いんだろ?」


「そうだけどご飯と一緒なら平気だし、色々使えるんだよ」


それに多分、数百年物だろう。これ程、レアな梅干しは日本にも無かったのではないだろうか。アスカは残りの数を見ながら、大事に食べていこうと封をしてマジックバッグに真っ白な梅干しを仕舞いこんだ。


「なあ、何キョロキョロしてるんだ?」


「梅干しがあるから梅の木はどこかなって。ここで作ってるなら、絶対あると思うんだよね」


花もきれいだし、見つけられたら枝も持ち帰って増やしたいなぁ。


「木になるもんなのかい?」


「そうですね。春にきれいな花も咲くんですよ」


「よく知ってんなぁ」


「村に住む前はよく食べてたんだよ」


「でも、真っ白だったね」


「ほんとは緑なんだけどね。塩が一杯入ってるし、水分も抜けちゃってるからかな?」


それから辺りを探すと、梅の木は無事に見つかった。なんと辺りにはシソまで生えていた!


「シソもみっーけ。これで赤梅に出来るよ」


「赤梅?」


「そう。壺に梅と一緒にこれをいれると、梅にこの赤色がついて、きれいなんだよ。ああ、もう実は落ちちゃってるな。残念」


「枝から増やせるんだろ?」


「そうだけど、大きくなるのには時間もかかっちゃうし、ストックも欲しかったんだけどな…」


「市場で探すしかないね」


「あると良いんですけどね…」


私も梅干しと梅酒以外は知らないし、食べ方知ってる人がいると良いけど。それにしても米といい、梅といい、あの村の人の中にはどこかで日本人がいたのかなぁ。


「シソよし、こっちは結構生えるからちょっとでいいかな?梅は植えたことないから小さい株や枝も持って帰ってと…」


忙しく準備をしていると、ジャネットさんと目が合う。


「どうしました?」


「いやぁ~、アスカはいいね。あたしらと違って収穫があって。ここまで来て、何か得られるものは無さそうだし」


「そうですね。結局、祭壇にも何もなかったですし、遺跡と言うほどでもありませんでしたね」


私には宝があったけど。


「こりゃ賭けは引き分けだね。流石に向こうも何もないだろうし」


「そうなっちゃいますね」


「外れは外れでいい経験とするか。とりあえず飯だ。リュートどんなもんだい?」


「もうちょっとかかります」


今日で探索は終わり、明日からはリンネのお嫁さん探しだ。まさか、こんなに早くシフトするなんてね。



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