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いざ、遺跡へ

食事も終え、宿で休んだ私たちは翌日、早速宿の前に集合していた。


「準備は大丈夫だね。今回の目的をもう一度リーダーから」


「はい。まずは遺跡の探検これが第一。そしてリンネのお嫁さん探しです。分布上だと遺跡のちょっと奥に同種の個体がいるみたいなので、探検が落ち着いたらそっちに行きます」


わぅ


「はぁ、贅沢なやつだな。Cランクの冒険者に嫁探しの手伝いなんて」


「いいじゃないの。街じゃウルフすら見かけないんだしね」


「それどころか、街の近くのウルフじゃ弱すぎて、ダメなんだよね」


「そんなのあるのか?」


「うん。やっぱり野生で暮らしてきたからか、弱い相手だと気が乗らないみたいなんだ」


「まあ、これから何年も宿の警備には不安がいらないってことにしておくかね」


「それじゃ、出発です!」


私たちはスタスタと東門を出て進んでいく。


「まずはいつもの休憩場所まで真っ直ぐですね。そこからはちょっと北側に進んでいきます」


地図を確認しながら今日の目的地の再確認だ。地図って言っても精緻なものではなく。ここにこれがあるから北にとかそれぐらいなものだ。


「あたしもこっちは初めてだから頼んだよ」


「最悪迷子になっちゃったら、リンネに頼りましょう。グレーンウルフの縄張りには詳しいと思うので」


「後はブリンクベアーだね。リンネは臭い分かるかい?」


わぅ~


もちろんだと返事をする。


「ティタは?」


「においじゃ、わかんない。でも、けしきでわかる」


「景色?」


「うん。ふしぜんにゆれる」


なるほど、透明化っていってもまるっきり風景に溶け込めるわけじゃないんだ。だけど、私たちだとちょっと難しいかも。


「こりゃ、リンネとティタに期待した方がよさそうだね」


「そうですね。2人とも頼んだよ」


わぅ


「まかせて」


休憩場所を越えたあたりから、ジャネットさんが先頭を譲り、リンネ、私、ジャネットさんの順番だ。初めて通る道だから結構緊張するな。


わぅ


「ん?リンネどうしたんだ?」


「その先に何かいるって言ってるみたいです」


「早くもかい。全く…」


直ぐに戦闘準備を整える。私も弓を構えて事態に備える。


ガサガサッ


現れたのはやや薄い緑色のウルフ種だ。確か…。


「ソニックウルフ!まずい!アスカ、風の防壁を。あいつらは音を使う」


「はい!」


私もおばあさんにもらった本で見たことがある。超音波攻撃をするウルフで、その声をまともに聞くと動きが鈍くなってしまうのだ。集団戦の多い草原では致命的な敵だ。


「防音結界!」


直ぐに結界を張る。運よく相手は単独なので正面に張れば大丈夫だろう。


わぅわぅ


リンネが吠えて威嚇する。でも、何だか吠える視点がずれてるような…。


「アスカ、ベアー!」


「ど、どこ!?」


ティタの言葉で目の前のソニックウルフから視線を逸らす。ティタの腕の先を見ると、かすかにだけど景色が歪んで見える。


「そこだ!」


弓を引いて2連射する。


ガアァァァ


矢が1本、左肩に当たったみたいだ。血を流しながら、すぐにこっちに来る。


アオォォォ


するとソニックウルフもブリンクベアーに対して超音波で攻撃する。あっちの方がやっかいだと思ったのだろうか?超音波を受けたブリンクベアーは魔法を解いていく。超音波の影響か魔法を使い続けられないようだ。


「今だ!ウィンドカッター」


接近することなくブリンクベアーを倒す。


「ふぅ。退治成功かな?」


「アスカ、まだ前にいるよ」


そうだった。まだソニックウルフがいたんだ。でも、向こうもさっきので戦う気が失せたのか。シュッと身をひるがえしてどこかに行ってしまった。


「行ったか…やれやれだね」


「全くだぜ。まだ、草原に入って時間も経ってねぇってのに」


「文句を言わず、とりあえず素材だけもらっていこう。まだ、始まったばっかりだし」


「しゃあねえな」


「ああ、それなら内臓を取っておくから傷つけないでくれ」


「げっ、ジャネット食う気かよ!」


「バカ言うな。ジェーンが使いたいっていうんだよ。森じゃ意味ないけど、この辺なら魔物避けに使えるんだってさ」


「相変わらずジェーンさんは色んなものを使うんだね」


「たまにはこっちの身にもなって欲しいよ。こんな奴の内臓なんて冒険者でも持ち帰らないんだから」


文句を言いつつもジャネットさんはマジックバッグに臓器をしまった。後は牙を取ったらすぐに埋めないと。こんな臭いのきつい魔物でも食べに寄って来ちゃうからね。サクッと埋めた後はその場を離れる。目的地まではまだ距離があるし、さっさと進まないとね。


「山ってあれかなぁ」


しばらく進むと東の方に山が見えた。どうやらあの山を起点として、その奥に山脈が広がっているらしい。


「目的地はその山のちょっと向こうだね。ちょうどあの村の北にあるみたい」


「へ~、そんなことまで分かんのか。アスカいつ地理なんて覚えたんだ」


「覚えたっていうかここに書いてあるんだよね」


「ちょっと僕にも見せて」


リュートにも地図を見せてあげる。


「何々。ほぼ南には滅びた村もあります。どうですか?これを機にあなたももう一つの探検依頼に挑戦してみませんか?だって」


「ただの宣伝じゃないか」


「しかもこれ、よく見ると手書きですね。この依頼票が何年も眠ってるって聞きましたし、担当者がふたつとも片付けてくれる人を捜していたみたいです」


「はぁ、なんていうか担当者にも同情するよ」


「目的地も見つかったことだし、野営の場所でも決めるか?」


「う~ん。あの山のふもとまではいきたいよね」


「そうだね。この辺だと何が来るか分かんないし」


「んじゃ、もうちょっと歩こうか」


わぅ~


あくびをしながらリンネも歩いていく。草原は見晴らしの悪いところもあるし、山の裾を歩いていく。この辺は低木が多いし、木々も固まっていないのでこっちの方が敵を発見しやすいのだ。それにこの近くはガンドンの縄張りのようで不用意に肉食の魔物も近寄っては来ない。ガンドンは群れでいるから、固まっている時にはそうそう手が出せないのだ。


「それにしてもこの辺は高地でもないのに木が低いですね」


「高いと魔物たちがエサとして食べられないからね。でかい鳥とかでも住んでりゃ違ったかもねぇ」


「そういえばほとんど鳥を見ないですね」


「山の方には何種類かいるけど草原にはいないね。山の方にいるのも大人しいやつだったと思うよ」


「そうなんですね」


そう言いながら本を開いて確認する。この辺の山だと…サンダーバード?


「えっと、全長は60cmぐらい性格は温厚で、普段は草とかを食べる。へぇ~草食の鳥かぁ。ミネル達と仲良くできそう」


「そいつはあんまりお勧めできないよ」


「どうしてですか?」


「そいつ、魔力だけは高い癖にろくな魔法を使えないからね。成鳥なら300ぐらいはあるはずだよ」


「魔力300ってことは毎日150削られちゃうのか。ミネルやティタと合わせて350ぐらい。確かにきつそう」


でも、飼うぐらいなら大丈夫だよね。ライズとかもいるし。


「でも、300もありゃどんな魔法でも結構な威力なんじゃないのか?」


「それがねぇ。ライトの魔法ぐらいしか使えなくて、結局は目くらまし程度しか出来ないんだよ」


「じゃあ、どうして魔力が高いって?」


「ちょうどライトの魔法を使える魔法使いが居てね。そいつの全力のライトと同じぐらいの光量だったんだと。まあ、生息地自体もこの辺の山ぐらいらしいから貴重っちゃ貴重だけどね。臆病だしすぐに逃げるけど」


「じゃあ、見られるだけでもいいですよ」


そう言いながらも道を進んでいく。道と言っても整備はされてない。まあでも森の中を進むと思えばまだまだいい道だ。そして一つ目の山の裾を通って、ちょうど良さそうな空き地を見つけたのでそこで休むことにした。


「ティタ、水お願い」


「はい、いっぱい」


「アスカ、水が入ったらこっちに来てもらえる?ちょっと薪が足りなくて」


「はいは~い」


食事時は私の真価を発揮する時だ。薪作りに火おこし、ティタを連れてる時は水補充と結構やることが多い。


「テントはOKだぞ」


「ありがと、ノヴァ」


「まあ、これぐらいしか俺が手伝えることないしな。でも、アスカのテントって相変わらず重いよな」


「丈夫で温度変化に強いのが売りだからね」


テントはちょっとだけ離れたところだ。ここは調理場に近すぎて変に狙われるのを防ぐためだ。そして、今日の夕食はレディトで買った食材を使うのでまだまだ豪華だ。あと2、3日はこれぐらいのレベルの夕食だな。


「ふぅ、明日はようやく目的地に着きそうだね」


「今日の夜を乗り切ったらね」


「またまた~、そんなに出ませんよ」


そんな会話をこなして今日はお休みだ。テントで服を着替えて、祈りをささげて眠る。ふわぁ~、今日はよく眠れそうだ。



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