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パーティー初の報酬

バルドーさんと別れてしばらく待つ。やっぱり、依頼をこなしているから買取にも時間がかかるようだ。中には受付の人と何やら熱心にやり取りをしている人までいる。買取価格なんかでもめてるのかなぁ?そういう意味でもこのカウンターはいいと思う。ホルンさんの鑑定できっちり分けられるから、いつでも適正価格だしすぐに仕分けしてくれるしね。


「次の方~、あらアスカちゃん」


「はい、ホルンさん依頼票です」


私は朝受付した依頼票を2枚とも渡す。


「それじゃあ、カードも貸してもらえる?」


「どうぞ」


カードをホルンさんに渡すと依頼票の後にカードを通す。


「ふむふむ。ゴブリン9匹に、オークが6体と。確かに依頼票の通りね。後、どこにいたか分かるかしら?」


バッとホルンさんが地図を出してくれたけど、私はあっち側に入ったことがなかったので正確な位置がわからない。仕方ないのでジャネットさんに来て~と合図をする。


「どうしたんだアスカ?」


「あの…東側は初めて行ったので場所が良くわからなくて…」


「ああ、悪かったね。ホルンさんこの辺りだよ。それと、オーク7匹とゴブリン6匹がここね」


ジャネットさんが森の中ほどを指さす。さらにその奥の湖の形の地形を指さした。あそこはこの辺りなんだ…。


「情報通りって訳ね。でも、討伐数と合わないけど逃がしたの?」


「違う違う。アスカの名案で数が多かったオークとゴブリンを同士討ちさせたのさ。なんでちょっと討伐数が少なくなってる」


「へぇ~、まともに討伐したことないのにアスカちゃんやるじゃない」


「えへへ」


褒められてうれしくなりついにやけてしまう。


「それに、かなり優秀だよ。Eランクでも上の方だと思う」


「ジャネットさんが言うなら間違いなしね。ところで、討伐以外のものはない?オークなら肉とか」


「ああ、ちゃんと入ってる。後で解体師のとこに持ってくよ。他にもあるんだよ。な、アスカ?」


「はい!まずはキノコです。多分、マファルキノコだと思うんですけど…」


「へぇ~、あそこにねぇ。じゃあ、ここに入れてくれる?」


ホルンさんが用意してくれたかごに、フィアルさんから貸してもらったマジックバッグの中からキノコを取りだして入れる。


「確かにマファルキノコで間違いないわね。相変わらず混ざりもなしで助かるわ。特に品質の悪いものもないし合計で22本だから大銅貨4枚と銅貨4枚ね。他には何かない?」


「後はムーン草です。多分今回のはいい状態だと思います」


「そう、じゃあ早速ここに入れてみて」


私は再びマジックバッグから今度はムーン草を取りだす。あんまり触れないようにして傷がつかないようにっと。


「全部で30本です」


「じゃあちょっと待ってね。これは鑑定していかないといけないから」


ホルンさんが1本1本並べて鑑定してくれる。


「こ…れは。ライラ!」


「どうしました先輩?」


「実はこの子にこの前の解体の結果を教えたいんだけど、詳細を言ってると列になっちゃうから奥に引っ込むわ」


「そうなんですか?分かりました。後は任せてください!」


「アスカちゃん。前の解体の結果、まだ伝えてなかったわよね。2Fに来てもらえる?」


「あっ、いいですけど。ジャネットさんたちもですか?」


「そうしてもらっていいわよ」


私たちはホルンさんに連れられて2Fへと向かう。ホルンさん・私・ジャネットさん・フィアルさんなのでなんだか保護されてる感じだ。


「マスター。ちょっと借りますよ」


「またか、今度はジャネットともう一人連れてきたのか?」


「今日はパーティーを組んだみたいで。ほら3人とも座って座って」


「で、ホルンさんわざわざ何でこっちに?どうせあそこじゃ混まないだろ?」


「ジャネット、失礼なことを言わないで。そこそこ…割と来ています!」


「それよりもわざわざ解体の報酬説明なんて嘘でしょう。本題をどうぞ」


「そ、そうね。さっき見せてもらったムーン草だけど、2つだけちょっと他より大きいのがあったでしょう?」


「あ、はい。何となくですけど…」


「私の鑑定の結果ではこの2本はSランクよ。他にも11本がAランクで17本がBランク。Cランク以下がないこともそうだけど、これをあの場所で伝えたら他の冒険者たちがこぞって奪い合うわ」


「んん!Sランクが出たのか?」


「ジュールさんどうかしたんですか?」


「アスカ。Sランクは各ギルドで月に1、2本あればいい方なんですよ。特にムーン草のSランクはベル草と並んで高価です。品質のいい万能薬の材料になりますから、冒険者だけじゃなく貴族にも人気がありまして」


「貴族にって…」


ムーン草はまひや毒の治療だから薬を盛られるとかそっち系かぁ。この世界でもそういうのあるんだね。


「魔法とかで治せないんですか?」


「もちろん、魔法でも治せます。ただし、どんな毒かを理解していないで下手に治療を施すと、進行を早める場合もあるので、万能薬の方が主流なんですよ。勿論、状態異常の魔物対策に冒険者にも人気ですけどね」


フィアルさんの説明に身震いする。魔法って便利だと思ってたけど、副作用を及ぼすこともあるんだ…。治すつもりが進行させたなんて大惨事だよ。


「そういう訳で、商人ギルドでも入手したらすぐに売って欲しいって言われてるの。ただ、アスカちゃんは採取専門の冒険者でもないし、ランクも低いからあそこで話をしちゃうと目立っちゃうからこっちに連れてきたのよ」


「ホルンさん助かるよ。30本あってCランク無しなんてあたしらのパーティーじゃ、一度もなかったからね」


「そうですね。取り方も工夫しているとは思いましたが、半分近くがAランクだなんて手伝わなくてよかったですよ」


「全くだね。あたしたちの取ったやつだけCランクってのも情けないしね」


「それじゃあ、鑑定に戻るけどSランク2本とAランク11本、Bランク17本で金貨3枚、銀貨2枚、大銅貨7枚ね」


「うえっ!?」


提示された金額に思わず変な声が出てしまった。


「えげつないね。これじゃあ、依頼報酬なんてかすんじまうね」


「取り方もだけど、群生地も良かったんでしょうね。誰にも言っちゃだめよ、アスカちゃん!」


「は、はひ…」


「それじゃあ、すぐにこれを持って行きたいところだけど…マスター!」


「ああ、明日の朝一で俺が責任もって商人ギルドに持って行く。出どころを聞かれると面倒だからな」


「面倒ですか?」


「囲い込みもそうだし、最悪は定期的に持って来いなんて前例もあってな。商人ギルドの奴ならともかく冒険者ギルドでそういうのは個人の自由だからな。あっちは儲ける。こっちは自由が売りなんだよ」


「助かります。あんまり戦いとか得意じゃないので…」


「そうよ。そういう人もいるんだからなおさらあんまり表にも出せないの。それじゃあ今回の依頼だけど討伐報酬が2つで銀貨2枚と大銅貨3枚。キノコが大銅貨4枚と銅貨4枚。ムーン草が金貨3枚と銀貨2枚と大銅貨7枚で合計は…金貨3枚、銀貨5枚、大銅貨4枚に銅貨4枚ね」


「ほぼ、ムーン草だな…」


「そうですね」


「それじゃあ、報酬はどうすればいいかしら。パーティー用の口座を作る?」


「う~ん、次がいつか分かりませんし各自でいいのでは?」


「そうだねぇ。パーティーがどんなもんか体験みたいな感じだし」


「あっ、でもそうしたら報酬どうしましょう?3分割?」


「そんな訳ないだろ。ほとんど報酬はアスカの薬草なんだから。今日の分はボランティアみたいなもんで貰う気もないよ」


「でも…」


「アスカちゃん。あなたが後1、2年して新人に報酬は半分こなんて言わないでしょ?ちゃんと相手の立場になって考えなきゃだめよ」


…確かに。自分がジャネットさんの立場でじゃあ半分こなんて言ったらやなやつだなぁ。


「それになアスカ。あんまりおいしい思いをさせちゃダメなんだよ。こいつといると儲かる、一緒にいると強い、なんて思う奴ほど身の程知らずで突撃しちまう。そんな奴でも会えなくなるとかわいそうだろ?」


「では、討伐依頼分は分けましょう。そこはちゃんと分けたいです」


「そういうことならした方がいいでしょう。パーティーで割った時の報酬がどうなるかは実際に体験した方がいいですから」


「…フィアルがそういうなら」


「じゃあ、分け方だけど基本的に今回はアスカちゃんが大銅貨8枚。誘い元のジャネットさんも8枚。ついてきたって言うフィアルさんが7枚かしらね。代わりに持って来たオークの肉に関してはマジックバッグのないアスカちゃんが2割。他の2人が4割かしらね」


「まあ、ホルンさんの言う感じだな。フィアルも解体はしたけど1匹だけだし、これも結構するからなぁ」


ぽんぽんとマジックバッグを叩くジャネットさん。


「私も早く欲しいです」


「オークも1匹当たり銀貨1枚程度だし、6匹いても銀貨6枚。アスカだと討伐報酬と足して銀貨2枚だね。1日で見ると結構いい感じだけど、毎日行くもんじゃないし、ここにアイテム使ったら共同費から差し引くし、人数多いともっと少なくなるからね。E、Dランクなら今日だと頑張って銀貨1枚行くかどうかだね」


「そう考えると冒険者ってやっぱり難しいんですね」


「オークの肉があってこれだからね。ゴブリンだと肉が取れないからもっと大変だよ。今日の依頼のゴブリンも報酬は銀貨1枚に満たない位だよ。基本的に討伐依頼は依頼自体が安めでそこから取れる素材がメインだからね」


「そういえば忘れてたけど、この前の解体費の名目で呼んだのだったわ。ええと…合計で銀貨1枚と大銅貨5枚ね。肉は安いのだけど、ウルフの毛皮は中々良かったって言っていたわ」


「道理で今日も肝が据わってると思ったよ。ウルフをねぇ」


「その時は不意打ちを受けたので、今日みたいに待ち伏せするやり方が分かって良かったです」


「そうですね。相手の出方が判ればそういう危険も少なくなるでしょう」


「それじゃあ、そろそろ個人のカードに報酬を入れていきましょうか」


こうして初パーティー報酬は各自のカードに入れられた。ちなみにオーク肉の収入は後日また集まった時とのこと。代わりにといっては変だけど、私はフィアルさんが解体した肉をいくらかもらった。宿のみんなにお土産ができてうれしいな。



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― 新着の感想 ―
ジャネット達が良い人で良かったねぇ 悪質な冒険者だったらまさに「カネの成る木だ!」と囲い込みされて搾取されるのは間違いなかったね。
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