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レディト到着と助けられたパーティー

序盤はリン視点です。


アスカが戦闘を終える頃、馬車では…。


「ジャネットさん!本当に行かないんですか?」


「ああ」


「どうしてですか?見に行くにしては長いです!」


「危ないなら戻ってくるさ。それにあたしらは護衛の依頼中だよ?魔物が出たなら尚更、こっちには戻れないよ」


「リンネがいるとはいえ一人ですよ?」


「だからだよ。馬車が2台。あたしが後ろでリュートが前。ノヴァが遊撃かね?ここから一人出したら馬車が危険だ。ティタだって悠然と構えてるだろ?少しは信頼してやりなよ。一般人には難しいかもしれないけどさ」


「そうだぜ!アスカが無理だと思ったら直ぐに逃げ帰るって。まあ、緊急だとは思うけどな」


「緊急なの!?」


「アスカが連絡してこないですから。僕らに何もなしに奥へいったなら何かあるとは思います。でも、正直に言うと見晴らしの悪い森だと、僕らは足手まといなので…」


「あなたたちがそういうなら大丈夫なんでしょうけど、やっぱり冒険者って危険なのね」


「まあ、あんたらからしたら厨房でフィアルのやつがちょっと忙しくしてるだけさ。手伝うほどでもないし、無理ならあいつも言うだろ?」


「料理と一緒なんて…」


「冒険者にしたら、同じようですよ。私も最初はビックリましたが」


「御者さんは冷静ですね」


「優秀な冒険者に街道近くの魔物ですからね。これがいつもの護衛で盗賊なら私も少しは慌てますよ。あっちは容赦のない相手の時もありますから」


御者さんはきもが据わっていると言ったら、非戦闘員の諦めですと返されてしまった。知り合いも何人か失くしているらしい。


「ただいま戻りました」


「おっ、どうだった?」


「オークアーチャーが3体、後の2体は奥にいて逃げられました」


「アスカが珍しいね」


「代わりにその…」


アスカちゃんが言いよどんでいると、奥から怪我をした冒険者たちが出てきた。リンネが最後尾のようだ。


「彼らは?」


「森でアーチャーに襲われているところを助けました。私を見てちゃんと戦おうとしたので」


そうアスカちゃんが言うと、御者さんもうなづいている。商人ギルドと冒険者ギルド間で、護衛依頼中の相手には討伐依頼の魔物を寄せ付けないこと、という決まりがある。これは広く一般にも知られていて、だからこそ街の人間も冒険者を信頼するし、商人ギルドの馬車に乗るのだ。彼らがそのことをわきまえているのはとても重要な情報だ。


「分かりました。対応ありがとうございます。念のためそちらのパーティー名を教えてくださいますか?報告の義務がありますので」


「…暁だ。ランクはDランクだ」


「Dランクのあかつきですね。もう結構です」


「ば、罰則とかは…」


「大丈夫です。ただ、護衛の頻度やランクを適正に保つため、ギルドに報告しないといけないので」


明らかにほっとする暁の面々。装備からするとCランク冒険者はいなさそうだ。


「あんたたち、もしかして、戦士と魔法使いだけかい?」


「は、はい。Dランクの戦士志望二人に剣士志望一人、もう一人が魔法使い志望です」


「はぁ、気配察知とかは?斥候役はいつも誰だい?」


「ぜ、全員で…」


「はぁ…。責任者が決まってなくて、パニックにでもなったんだろうけど、アーチャー相手にこれじゃここは危険だよ」


「でも、ここ以外では狩り場が…」


「3桁のパラメータは?」


「力と体力なら…」


「力だけなら」


「早さなら」


「魔力だけです」


本来、冒険者同士でステータスは開示しないものだと聞いたが、助けられた手前もあり相手は応じているみたいだ。


「揃いも揃って…。狩り場がどうこう言うならもう少し腕を磨きな!アスカがいなかったら死んでたんだろ?」


「あ、アスカさんですか?どちらに?」


「わ、私ですけど…」


「あなたがあの!知ってます。魔法も若いながらすでにBランクの強さだって!」


「えぇ~、私は知らないなぁ~」


アスカちゃんの噂は尾ひれがついているみたいでどうやら困っているようだ。


「そんな高名な方に助けていただいた何て!これからも頑張ります!」


「言葉はともかく、もう一度ちゃんと役割をはっきりさせてやりなよ。必要ならレンジャー志望も見繕いな。それとほら…」


ジャネットさんが剣をリーダーに投げる。


「こ、これは?」


「あたしが昔使ってたロングソード。鋼でちょっと重たいけどそれよりは良いだろ。これを片手で扱えるように先ずは頑張んな。御者さん、時間かけて悪かったね。出発してくれ」


「わかりました。では、暁の皆さん失礼します」


「あ、有難うございます。そ、そうだ!アーチャーの素材は?」


「時間がないからあんたらにやるよ。アスカもそれで良いね?」


「はい。ただ、逃げた奴もいるので気を付けてくださいね」


「有難うございます。これは助けてもらったお礼です」


そう言って金貨をアスカに渡す。Dランクなら結構な金額だろうに相当恩に感じているのだろう…。


「なら、貸し借りなしですね。それじゃあ!」


アスカちゃんも前を向いて歩きだした。馬車もそれに追随する。


「あの子達大丈夫かしら?」


「さあね。まあ、一回命を拾ったんだ。それを生かすも殺すもあいつら次第さ」


「その割にはジャネットさん、優しかったですね」


「あんな剣、今更売るなんて恥ずかしかっただけさ」


ふふっ、さっきは依頼だから行かないなんて言ってたけど、ジャネットさんが一番アスカちゃんを心配してたのかもね。その後は何事もなくレディトに着いた。


「それではありがとうございました。私は商人ギルドに報告しないと行けませんので。もちろん、御者の件は上乗せいたします。当然ですが襲撃の件も」


「良いんですか?馬車は襲われてませんよ」


「あの距離ならどのみちこっちに来たでしょう。あの冒険者たちでは勝てなかったようですし。なら、当然支払うものですよ。馴染みの方の紹介でもありますし、個人的にも安心して荷を運べるなら安いものです」


「おっ、分かるねぇ。それじゃ頼んだよ」


それに商会の評判が上がれば自分の命も安全になりますしね。そう御者さんは言って、ギルドへと向かった。なるほど、彼が長生きできているのはこの辺もあるのかもしれない。


こうして私は初めての仕入れの行きの行程を終えたのだった。


-----


「それにしても暁だっけ?アスカにやたら感謝してたねぇ」


「まあ、怪我も治しましたし」


「聞いてないよ、そいつは」


「言いませんでしたっけ?服に血がついてる割には元気だったでしょう」


「なにか違和感あると思ってたけどそいつか。そりゃ金貨をくれるわけだ。あれじゃポーション持ってたかも怪しいからねぇ」


その頃、暁は…。


「買取は肉が銀貨6枚に弓が銀貨3枚。牙が銀貨4枚ですね。討伐報酬は…なし?」


「いや、これはその…」


「まあ、オークは大きいですしマジックバッグが一杯なパーティーでもいたんでしょうか?」


「これはアスカ様に助けていただいたんです」


「アスカちゃんに?」


「はい。矢を受けていた俺たちを癒して、そのまま魔物を倒してくれたんだ。ただ、護衛依頼の途中だから素材はいらないと…」


「なるほど、それなら納得です。感謝しないといけませんよ。護衛依頼中なら魔物が近づかないようにするだけでも、構わないんですから」


「はい。像があったら拝みたいぐらいです」


「それなら細工屋に行けば、アスカちゃんが信仰している女神さまの像があるわよ。あの子が作ってるそうだから、お礼も兼ねてどう?」


「本当ですか!すぐに行きます」


パタパタと駆けていく剣士風の冒険者。まあ、あんな子が死ななくてよかったと思いましょう。それにしてもアスカ様ね。はぁ…こっちはもうホルンさんに丸投げしちゃおうかしら。ライラは横にある書類を見る。それらはDランクとCランクの昇格試験の書類だ。その欄の一つが普段は空欄で出されるのだが、最近はほぼアスカの記述が成されている。


「はぁ、どこでスキルを目覚めさせる使徒だなんてあだ名がついたのかしら?試験官指名がアスカちゃんばっかりなんだから」


以前まで空欄だったのは試験官指名欄だ。Dランクは当然として、Cランク昇格試験でもCランクの知り合いなんて珍しい。ましてや試験官に指名するなんてよっぽどのことだ。これまで空欄だったそこは噂が独り歩きしてアスカちゃんの名前1色だ。どう断るかではなく、なぜこうなったか。そこから考えていかなければならないので、一ギルド職員のライラとしては誰かに丸投げしたい案件だった。


「全く、誰がこんな面倒なことの原因よ!」


あるいは自分が無理やりにでもノヴァを言い聞かせていれば防げたなどとは、夢にも思わないライラだった。みな、ノヴァがアスカと戦ってる最中に2刀流に目覚めたという言葉を人づてに聞いて、書いているのである。


これが火魔法であればそこまで話は大きくならなかっただろう。しかし、2刀流はレアスキル。たとえナイフ縛りだろうが、めったにお目にかかれないスキルなのだ。自分にももしかしたら隠れた才能が!?冒険者なら一度は思い描く夢だ。そんな心をノヴァの1件がくすぐったのである。


「本人に話をするのは冒険者としてご法度。だが、昇格試験となれば合法だ。現在、EランクとDランクへのご褒美だ」


そう最初に言ったのは誰だっただろうか?悪知恵の働く者もいたものである。



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