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いざ、目的地へ

頑張って作ったタンスも渡してきたし、今日はいよいよ遺跡探検に向けてアルバを出発する日だ。


「おじさんの細工…昨日渡した。レディトの細工…よしっ。材料よし。後はと…」


ピィ


「ほら、今回はお留守番だよ。ちゃんとお仕事もあるんだからしっかりね」


そう、今回お留守番組のミネルたちはお仕事がある。というのもリンネがいない間、エステルさんや子どもたちの送り迎えはミネルたちの担当になったのだ。リンネと違って接近戦は出来ないものの、魔法は得意なので街の警護ぐらいなら問題ないだろう。


「ミネルはアルナが無茶しないように見ててね。相手にもだよ」


チッ


いくら相手が悪くてもアルナの魔法だとやりすぎる可能性もあるから、きちんと言っておかないとね。まあ、レダやエミールも一緒だし、流石に大丈夫とは思うけど。ほんとはティタもいて欲しかったんだけど、遺跡とかだとティタの知識も必要になるかもしれないから、一緒に行かないといけないし。


「ご飯はエレンちゃんから貰ってね。それじゃ、行ってきま~す」


チッ


チュン


皆に見送られて宿を後にする。


「さあ、リンネも一緒に行こ」


わぅ


思えば散歩とかもみんなに任せっきりだし、街に帰って来てからほとんどリンネと過ごしてない気がする。


「流石にこれじゃ主失格だよね。もうちょっと頻繁に出歩くね?」


わぅ~


面倒だし別にいいというリンネ。それならいいんだけど…。とりあえず、ギルドに行って依頼だけ確認しないとね。


「えっと…依頼はと」


依頼を探そうとしていると、思いがけない人物がいた。


「フィアルさん、どうしたんですか?」


「ああ、早めに来ると思っていましたがこの時間でよかったです。実は今日出発ということでこちらを受けてもらいたくて…」


ぴらっとフィアルさんから渡されたのは依頼票だ。しかも、内容は護衛依頼だ。


「この商会って…」


「ええ、うちで仕入れに使っているところですよ。ちょうど日程が重なるのでお願いしようかと」


「そうだったんですね。依頼料はと…。銀貨5枚、大丈夫です」


「よろしくお願いします。後、出来れば一緒に連れていって欲しいのですが…リン」


「はいは~い。アスカちゃん、こんにちは。店以外だとはじめてだよね?」


「お姉さん!どうしたんですか?」


「いや~、いつも店長が商談とかしてるんだけど、私って副店長なのにそういうのしたことなくて。毎回抜けられても困るし、今回は代わりに行くことにしたの」


「私が行くと言っても聞かなくて。せめて、アスカたちに送ってもらえたら、私も安心できるので。もちろん別に支払いますよ」


「別にお金は良いと思いますけど…」


「そんなことを言うとジャネットが怒りますよ。心配しなくても、今後は誰かに頼むこともありますし、経費ですから」


「ならそうしておきます」


「じゃあ、よろしくね。商会の人には話をして乗せてもらえることになってるから!」


「おっ、アスカは早いね。ん?フィアルか。どうした?」


「ああ、ジャネット。良いところに。今日の依頼ですよ」


「ふうん」


ジャネットさんは直ぐにフィアルさんと打ち合わせに入った。こういう時は長年の付き合いだし、話がスムーズだ。


「ねぇ、アスカちゃん。店長とジャネットさんってやっぱり付き合ってるのかな?」


「えっ、そんなことはないと思いますよ。仲は良いですけど、普通に気の合う仕事仲間って感じです」


「そっか。貴重な情報ありがとね」


お姉さんはチラチラ二人を見ながら立っていた。その内、リュートたちもやって来たので、簡単に説明をして出発だ。


「少し待ってくださいね。今、積み上げ中のようです」


「それなら、そこに行きますよ。場所を教えて下さい」


「そこの角を曲がって少し先です。詳しい場所はリンに聞いてください」


「任せて、店長!」


「では、私は仕込みに戻りますので…」


「今度また割引な!」


「ジャネット…ええ、席が空いていれば」


フィアルさんと別れて、私たちは商会へと向かう。


「ここです」


リンさんに案内された場所では今まさに積込の途中だった。


「おおっ、済まないな。今回は2台なんだが馴れてなくてチェックに時間がかかっちまって」


「これを積めば良いですか?」


「あ、ああ。だが重たいぞ」


「へーきです。ウィンド」


風の魔法を使い荷物を馬車のなかに入れていく。後は4つかな? 手際よく荷物を入れていく。


「済まない。助かったよ」


「いいえ。それじゃ出発しましょうか?リンさんはどっちですか?」


「えっと、いつもはフィアルさんに後ろを頼んでたんだが…」


「えっ、私は御者は出来ませんよ」


「そうか、どうしようか…」


仕入れの時に2台の場合はいつもフィアルさんに頼んでいたみたいだ。


「しょうがない。後ろは私がやるよ。リンも後ろで良いね?」


「本当か?助かる。報酬は後で向こうの責任者に話しておく」


「よろしくな」


ちょっとハプニングはあったものの、リンさんを後ろに乗せ私たちは出発した。前にはリュートが乗っている。リーチが長いし、魔法を使えるので前になったのだ。


「アスカちゃんは歩きなのね。ごめんね」


「いいえ。リンさんはお客さんですから。それにリンネも居ますし」


流石に従魔をほっぽり出すわけにはいかないしね。


「そうそう。それにこいつは疲れたら滑り出すから気にしなくて良いぞ。こっちは歩きだけだってのに」


「滑る?」


「見といてくださいね。ホバー」


私は魔法を使って地面を滑るように動く。一応、ちょっと浮いてるんだけどね。


「すごいのね。これなら疲れないし、私も使いたいわ」


「でも、あんまり使うと体力がつかないので、頑張りますけどね」


魔力だって有限だし、体力が一番低いのでこういう機会は大切にしなきゃ。


「まだ小さいのにしっかりしてるわね」


「もう14歳ですよ。もちろんです!」


えっへんと胸を張って答える。こっちは身長より伸びちゃってるんだよね。夏服買い換えか~。折角、ベルネスで良いの買ったから長く着たかったんだけど…。


「そろそろ休憩にしましょう」


ちょっと早いけど、お昼休憩だ。今は11:30ってところかな?街道沿いとはいえ魔物がやって来ても困るので、時間は20分位だ。みんなそれぞれに持ってきた食事をとる。


「ん~、店長のサンドイッチはやっぱり美味しいわ」


「私もいつも楽しみにしてるんです。ですからこうして仕入れの話をする日が楽しみなんですよ」


商会の人の分もリンさんに渡していたらしく、二人でご飯を食べている。私たちと言えば、私とジャネットさんが宿のパン、リュートたちはそれぞれで持ってきた食事だ。ちなみにリンネも宿のご飯がある。


「はぁ、どうして俺たちの食事は味気ないんだろうな。リュート」


「僕は自分で作ってきたのがあるけど、ノヴァはもらわなかったの?」


「いやぁ、食事係を雇っただろ?朝から大人数のを作るのに忙しいからって俺の分はなしだ」


「まあ、大工の仕事じゃないし、仕方ないね」


「しかもよ~。リンネ繋がりであいつもエステルみたいな起こし方しやがってよ。何がこれが早いだよ」


「でも最近は早くギルドにも来てるし、良いんじゃないの?」


「そうだけどよ。そろそろ家も出ないとな」


「どうして?」


「最近はあんまり仕事もしてないし、ただ飯食らいみたいで気が引けるんだよ」


「でも、子どもみたいに思ってもらってるんでしょ?」


「だからだよ。独り立ちっての?そろそろ安心させてやりてーし」


おかみさんたちは寂しいだろうけど、ノヴァの自立心は応援したいな。


「そろそろ出発です」


「はい!今用意します」


話は途中だけど、今は依頼だ。切り替えていかなくちゃ。後片付けをして、再び進んでいく。一時間ほどは何もなく順調に進んでいた。


ガサガサ


「ん?ちょっと見てきてくれ」


何か横で音がしたので御者さんに確認を求められた。私は早速、横道に入ろうとするが…。


うぅ~


「リンネ!何かいるの?」


わぅ


ジャネットさんに目配せして、戦闘準備をしてもらう。それを確認してから、私はリンネと進んでいく。


ガサッ


「なっ!?冒険者か!ちぃ」


道に入ってすぐ出てきたのは、冒険者だ。しかも、腕を怪我している。


「ひ、一人か?」


「護衛依頼中です」


「馬車に近づけたくない!手を貸してくれ!」


「分かりました。相手は?」


「オークアーチャーが3体。他にもいるかもしれない。奥に仲間が…」


「行きます。リンネ!」


わぅ


先にリンネを回り込ませて、冒険者の仲間のもとへ急ぐ。


「大丈夫か!」


「ああ、なんとか。出られるか?」


「ダメだ。馬車がいる」


「くそっ!ここまでか…」


「諦めちゃ行けません。木を背にしてください!」


「あ、あんたは?」


「応援だ。早く言う通りに!」


「わ、わかった」


奥にいた3人を先ずは木の影にして、状況を把握する。…みんなどこかに怪我があるみたいだ。この距離なら行ける!


「エリアヒール!」


先ずは魔物の対応が出来るよう、怪我を治す。後は敵の位置だ。


「す、すまん。だが奴らもすぐそこに…」


「大丈夫です。私の従魔が相手をしてくれています」


「じ、従魔!?」


「それよりこの木の裏に隠れてください」


「でも、それじゃ狙い撃ちに…」


「大丈夫です。その方が守りやすいです。早く!」


「はい!ほら、お前らも早く」


「ええ」


よしっ!これでこの人たちは安全だ。木にバリアの魔石をはっつけて魔物を倒しにいかなきゃ。


「では、行ってきます!」


「気を付けてくれ」


先へと進むと、リンネとオークたちが戦っていた。リンネは上手く木を使いながら、攻撃より回避に集中している。私が来るから上手く時間を稼いでくれたみたいだ。それに1体は片腕も切り落としているようだ。


「頑張ったね!反撃だよ!」


わん


先ずは私が風魔法で矢を反転させ、アーチャー2体に手傷を負わせる。その怯んだ隙に、リンネが一方を、もう一方は私がウィンドカッターで倒す。最後は片腕のアーチャーが私に向かってきたところを、木を使ったリンネが飛びかかり、首を落としてENDだ。


「他には!?…去っていく」


奥にまだ2体ほどいたが、形勢不利と見て逃げていったようだ。



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