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杖の製作

さて、細工も一通り終わったし、ようやく杖の製作に入れる。ゆっくり考えたいところではあるけど、来週には出発だしそこには間に合わせたい。


「くぼみを作ってはめ込むか、上下から挟むのが良いと思うんだけど、どっちも外れそうで怖いんだよね」


戦闘中に外れるのはもちろんのこと、街なんかで転がっていっても気づかないだろうしな~。かといってピンで挿すと言うのも…。


「加工も終わってるし、割れちゃったらそれこそ大変だ」


硬いと言ってたけど、炭素みたいに衝撃に弱いかもしれないし、直せないしなぁ。


「何より割れました!何て、シャスさんのところに持っていけないよ」


考えた末に、上下で挟む形にして左右にはリング状の細工をして、外れても落ちないようにした。念のため、はめ込み式で追加の輪も作っておく。


「これでさすがに落ちないでしょ!それにしてもきれいな紫色の珠だなぁ。実際は赤色だけどね。シャスさんには感謝だ」


竜眼石の周りを青い石で囲うときれいな紫色になる。この色のも一種の魔鉱石で割りと魔法使いには馴染み深いものみたい。中級者位はこの石が入った杖とかを身につけるそうだ。


「でも、持ち歩くときは気を付けなきゃな。杖の素材自体はシェルオークだし、削れたりしても直せないから」


う~んと考えて、ちょっと不格好になっちゃうけど、オーク材を薄めに削って杖のカバーを作る。ちょっと重くなるけど仕方ないよね。


「それにこうやってオーク材を使えば、丸々シェルオークで作られてるって思わないだろうし」


シェルオーク自体は大きいものが中々流通しないので、こういう風に杖全体より一部分って言うのもあるって聞いたし。


「古木は高いから、高級感も消えて一石二鳥かも」


一応、自分のだしサインもしとこうかな。目立たないように内側もと。


「最後に竜眼石のちょっと奥に光の魔石を置いて…完成!」


出来上がった杖をブンブンと振り回して、感触を確かめる。


「やっぱり、前のより重くなっちゃったな。これなら弓の方が軽いかも。あっちはあっちで矢筒もあるけどね」


体力を考えたら杖を持つか、弓を持つかは微妙なところかな。杖は支えにもなるし、下はオーク材のカバーだから気軽に使えるけど。


「とりあえず、試し打ちにでも行こうかな」


チッ


チュン


「ん?ミネルたちも来るの?い~よ、どうせ西側だしね」


魔法を使いにいくだけだけど、折角だし散歩もするか。


「それじゃ、竿も持っていこうかな。まだ、昼をちょっと過ぎたところだし、時間もあるしね」


下でサンドイッチを買って一緒に持っていく。


「おっ、アスカちゃん。こっちになにか用か?」


「ちょっと散歩です」


「ああ、従魔も一緒か。楽しんできなよ」


「は~い」


門番さんに挨拶をしていざ湖へ。魔法なら水面近くで使っても問題ないだろうしね。


「さあ!釣るぞ~」


久々に訪れたリベンジマッチの機会だ。今日こそは汚名返上だ。竿も2つ持ってきたし、一杯釣らなきゃね。


ツンツン ツンツン


「エミールどうしたの?竿をつついたりして?」


ピッ


「つれるようにゆらしてる。らしい」


「へ~、じゃあ先にどっちにかかるか競争だね」


私も竿をくいっとあげたりして動きを作る。エミールは時折思い出したようにつついている。


「そんな動きじゃ、お魚さんも気づかないよ」


ぽちゃ


その時、エミールの竿が沈んだ。


「わっ、ティタ!」


「はい」


ティタがちょっとだけ大きくなって竿を支える。すかさず私が竿をもって引き上げる。


「よしっ!あとは任せて!」


くいっくいっと竿を持ち上げて最後は一気に…。


バシャッ


おっ!活きの良いお魚だ。サイズは40cm位かな?


「やったね、エミール。でも、勝負は私の敗けかぁ」


ちょっとだけしょんぼりしていると、ミネルが任せろと肩に留まってから飛び立つ。


「何か嫌な予感」


チッ


ミネルが風の魔法を水面にぶつけると、驚いた魚がバシャッと跳ねた。そこをすかさず、エラに風の刃を入れて、横に来たレダがピキッと凍らせる。その後はそよ風でこっちに魚を流してくる。


チッ


誇らしげに肩に捕まるミネル。しかもさっきの魚より大きい。60cmはありそうな大物だ。


「あはは、二人ともありがとね」


どうやら、私が獲物のサイズにがっかりしたと思ったみたいだ。見事な連携で魚を仕留めたその腕は素晴らしいと思う。


「私も負けないようにしなくちゃ!」


結局、二時間ほど粘ったけど、私は釣れなかった。それでもエミールがつついた竿で3匹、ミネルが2匹と、合計6匹になった。最後の1匹は何かって?遊びで空から狙い打ったアルナの釣果だ。


「気を取り直して魔法の練習だ。えっ~と、ファイア」


まずは、そのまま魔法を使う。まあ、こんなもんだね。次は今使ってる杖だ。


「ファイア」


う~ん、威力は変わんないなあ。ちょっとカードを見ながらやろうかな。もう一度、それぞれ使ってみる。


「なるほど、ちょっとだけMP消費が抑えられてるんだ。威力は一緒みたい」


知らずに使っていたとはいえ、良いものだったんだな。


「じゃあ次は、本題の新しい杖だね。ファイア」


新しい杖に持ちかえて魔法を放つ。


「明らかに大きいな。一割増ぐらいかな?消費はと…。何もなしと一緒だね」


次はコントロールだ。これも新しい杖の方がやり易く感じる。威力は強くなるから、低く調整するのはちょっと大変だけど、それ以外は他よりやり易かった。


「うむむ。威力にも慣れないといけないし、今まで使っていた杖は仕舞っておこう。この杖も悪いものじゃないし、捨てるにはもったいないしね。後はこっちの魔石だね」


確かデイリクシルの魔石だったっけ?光らせられるってことだけど、どんなもんだろ?ちょっと木陰に入って魔法を試す。この時のために入門 光の魔法を買っておいたのだ。でも、初級の癖に金貨2枚もしたんだよね。


「ライト!」


びかっと光り、木陰が消滅し辺りに光が差し込む。長時間使ってもあまり消費もないようだ。屋内でも安全に使えるし、光量もバッチリだ。


「お次はアースウォールで暗闇を作ってと…」


壁を作って、閉鎖空間を作るとそこで魔法を使う。


「フラッシュ!」


一気に強い光が瞬くと、光が消えた。


「眩し~、使えるけど目を開けてらんないや」


これは事前にみんなに知らせておかないと、大変なことになりそうだ。そろそろ帰ろうかなと思っていると、ばったりとフィーナちゃんに出くわした。


「アスカ、何やってたんだ?」


「フィーナちゃんにもらった枝で作った杖を試しに。あと釣りをね。フィーナちゃんは?」


「採取の帰り。暇だしゆっくり帰ってたんだ」


「なら、この魚いる?」


「良いのか?」


「うん。私はみんなが捕ってくれたものもあるし」


「サンキュー。うわっ!凍ってるのか」


「しばらくは新鮮なまま持つよ。濡れちゃうけど」


「いや、ありがたくもらうよ」


「引っ越しは順調なの? 」


「まあまあだな。今は一緒にジェーンさんと住んで、使い方とか教えてもらってんだ。こいつも一緒に食べるよ」


「そっか、頑張ってね!」


「んじゃな!」


フィーナちゃんと別れて宿に帰る。


「ただいま~」


「お帰りおねえちゃん。どうだった?」


「うん。良い出来だよ。見た目も強さもね」


「そっちもだけどお魚は?」


「ちゃっかりしてるなぁ、エレンちゃんは。見てこれ!ミネルたちも捕ってくれたんだよ」


「そ、そう。よかったね」


「エミールも当たりを取るまで頑張ってくれたんだよ」


身振り手振りで、どれだけ頑張ってくれたかを伝える。


「そっか、それじゃあこれからも竿は必要だね」


「うん!うん?」


何かおかしなニュアンスだったような…。まあ、気のせいだよね。夕飯は釣ってきた魚のムニエルと、スープだった。こういう時にお造りとか食べたいけど、流石に川魚だしね。はぁ、自分で釣ったお魚の味はやっぱり格別だなぁ。お腹も膨れたし、今日はお風呂に入って休も~っと。



「なぁ、ティタ。アスカは本当に魚を釣ったのか?」


「つった」


「そうか…」


「どうしたのお父さん?」


「いや、アスカが自分で魚を釣って来たって言っててな。アスカには悪いが、ヒューイが大漁だった日にすら釣れなかったんだぞ。何かの間違いかなと思って、ティタに確認したんだ」


「お父さんひどい。アスカおねえちゃんは嘘はつかないよ」


「悪かったよ」


「だけど、エミールがどうとか言ってたしなぁ~。実際はどうだったんだろ?ティタ知ってる?」


「うん」


そうして私たちは改めてティタから状況を教えてもらったのだった。


「驚いた。接待どころの話じゃないな。エミールが持てなかっただけじゃないか。俺も釣れない人に竿を渡して釣らせたことはあるが、それでも自分が釣ったなんて言わなかったぞ」


「つりあげたのはうそじゃない」


「そりゃそうだが。本来釣りってのは竿や糸、それにエサなんかを考えてその時その時で最適な釣り方をするもんなんだがな。まさか、かかった魚をあげるだけとは…」


「お父さん。あの竿、アスカおねえちゃんにはもったいないんじゃない?」


「だいじょうぶ、エミールがつかう」


「そ、そっか」


「だが、ミネルたちも捕れるなら竿いらないんじゃないか?」


「いる。エミ-ルつり、きにいってる」


「そうか。じゃあ、これからも接待よろしくな」


「まかせて」


もうアスカの釣りの話は真面目に聞かないでおこうと思う親子だった。


「あら、ティタ。お話は終わり?あ~ん」


「あ~ん」


そして、ティタはいつものようにミーシャの仕事の疲れをいやすため、かまわれるのだった。



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― 新着の感想 ―
接待も出来る超有能ゴーレム! もうティタもアスカの保護者枠になったか…
[一言] アスカの釣は、もはやスキル…(汗)
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