表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
342/491

アスカの依頼

「ただいま帰りました~」


「あっ、おかえりおねえちゃん。長旅お疲れ様」


「ありがとう。ところでエレンちゃん。次のお休みっていつ?」


「わたし?明後日だよ」


「ほんと?じゃあ、その日ちょっと付き合ってね」


「分かった。楽しみにしておくね!」


「うん。それじゃ、部屋に戻ってるから」


エレンちゃんに約束を取り付けて、私は部屋に戻る。


「みんなただいま~」


チュン


チッ


ピッ


レダたちが出迎えてくれる。いつもならここで私に飛びつくんだけど、流石にミネルは一直線にアルナのもとに飛んで行く。


チッ


魔法で即、扉を閉めるとアルナを部屋の巣箱に押し込んでどうやら説教タイムのようだ。普段温厚なミネルが強い姿勢で臨むぐらい心配していたんだろうなぁ。途中ひょこっと顔を出すアルナだったけど、私はバツ印をして拒否した。


「心配されるうちが花だよアルナ」


知らないふりをして、後はお説教が終わるまでそっちを見ないようにする。しばらくすると、ご飯のお知らせにエレンちゃんがやって来たので、チャンスとばかりに部屋を出る。


「後でご飯持ってきてあげるからね~」


食事を終えて、ご飯を運んでくるとようやく話が終わったのか、巣箱から出てきた。


「お話は終わったの?それじゃ、ごはんだよ」


どうやらライギルさんが旅から帰ってきたということで、急ながらアルナたちのご飯もちょっと豪華だったんだけど、アルナは野菜くずといういつもの食事で、いいところはエミールがすまなさそうに食べている。どうやら罰のようだ。


「まあ、今日は仕方ないよね」


下でちらっと聞いたんだけど、アルナがいなくなってしばらくミネルは落ち込んでて、食欲も少なくなってたんだけど、その内やけ食いを始めてちょっと太ったらしい。


「確かにちょっと真ん丸だね~」


チッ


聞こえていたのか、ミネルが外に出てきて私に抗議する。


「何?」


「すぐにアスカが、つれもどさなかったからだ、って」


「だってもう旅に出てたし…」


「しんぱいしてるの、わかってたのに」


そう言われるとミネルが心配性なのもわかってたし、それなりに魔法も使えるしって許可したのは悪いと思ってるよ。でも、まさかこっちに矛先が来るなんて…。


ピィ


あっ、アルナが私も悪いって顔のぞかせてる。もう~連れてってあげたのに。


「いいよ~。アルナは次はお留守番だからね」


ピィ


すかさず抗議するアルナだったけど、ミネルに振り向かれて部屋に戻っていった。おてんばなアルナには良い薬だ。そんな騒がしい夜もすぐに静かになった。何だかんだで帰ってきたのが嬉しいようで、ミネルは今日は一緒に寝るみたいだ。


「ふわぁ~」


翌日、久しぶりの自分のベッドから起き上がると、スラムに向かう。杖の話をフィーナちゃんにするためだ。


「行ってきま~す」


「気を付けてね」


スラムに着くと、前に聞いた場所を元に寝床を探す。


「だれだ、ねえちゃん」


「えっと、フィーナちゃんはどこにいるかわかる?」


「ねえちゃんはおくだけど、なんのよう?」


この子が前にいってた小さい子かな?大工の女将さんのところで普段フィーナちゃんは働いてるんだけど、弟たちがいるからって、あっちには住んでないみたいなんだ。


「フィーナちゃんに依頼があってきたんだけど…」


「いらい?」


「あっ、お願い事って言うのかな」


「わかった。よんでくる」


ささっと奥に引っ込むと、狭い通路を通って消えていった。あそこ私じゃ通れないかも。


「ほら、早くしろよ」


「何?誰きてんの?」


「知らないよ。でも、どっかのおじょう」


「おじょう?ああ、アスカね」


お嬢から私に繋がるの?そんな雰囲気出してないと思うんだけど。とりあえず、出てきたフィーナちゃんに挨拶をする。


「わざわざ悪いな、来てもらって。で、何だお願いって?」


「実は前に売ってもらった木があるでしょ?それのこれぐらいのちょっと大きめの枝が欲しいの。出来たら古い枝が良いんだけど…」


「何するんだ。古くて長い枝なんか」


「杖を作りたくって」


「つえ?アスカは足悪いのか?」


「そ、そっちの杖じゃなくて、冒険者が持ってる方ね」


「そういえばアスカは冒険者だったな。今はあたいもだけど。ほら見てみなよ」


そう言ってフィーナちゃんがギルドカードを見せてきた。あんまり見せるものでもないんだけどなぁ。どれどれっと。そんなこと言いつつも、ステータスが気になったのでカードを見てみる。私も最初は大したことなかったけど、なんていうか弱い。身を守るので精一杯じゃないかと思う。


「あれ?何でランクがFとEで2つもあるの?」


「ふふっ、気付いた?実はあたいが薬草採ってたとこって、Fランクは立ち入り禁止のとこらしくて。ホルンって人に話したら、リンネがいるときはEランクとして行けるようにしてくれたんだぜ。これも、珍しい薬草を取って来れるからだってよ」


あ~、確かに林とかってウルフが出たりするから、流石にフィーナちゃんじゃ危険すぎるもんね。リンネがいればあの辺だと大丈夫ってことか。実際、オークとか出て来てもバッサリ斬り捨て御免だろうし。


「でもな~、ちょっと困ったことがあるんだよ。その木は持ってきてやるからさ、お願いがあるんだ」


「私に出来ることかはわからないけど、なに?」


「最近、リンネと一緒に薬草を取っててさ、割といい感じにお金がたまってきたんだよね。そこで思い切って家を借りようと思ったんだ。弟たちもいるしさ」


確かにさっきのことかもまだ8歳ぐらいだし、家があると安心できるよね。スラム解消にも一歩前進だし。


「いい考えじゃない!応援するよ」


「ほんとか!でもな~、あたいじゃ家が借りられなくってな」


「どうして?」


「ほら、ギルドで登録したから一応の身分証はあるけど、結構今まで街で色々やって来たからさ、信用できないって断られたんだよ。だからさ、今回の依頼はちょっとまけてやるから、代わりに家を借りてくんない?」


なるほど、フィーナちゃんはお金が出来て家を借りたいけど、良く事情を知らない人から見たら、どっかから盗んだり、臨時収入だからすぐに払えないと思われてるのかな。


「そういうことなら任せてよ。ちなみに家賃はいくらぐらいが良い?」


「う~ん。安けりゃ安いほどいいんだけど、銀貨2枚ぐらいまでで出来たら3部屋以上欲しいな」


え~と、エステルさんの家が一月銀貨3枚で2部屋とダイニングだったって言ってたよね。結構厳しい条件だなぁ。


「分かった。じゃあ、探してみるよ。でも、借主はちゃんとフィーナちゃんにしとくからね」


「だ、大丈夫かよ」


「任せて!」


そう言って、一旦スラムを出る。何か忘れてる気もするけど、忘れるぐらいだから大丈夫だろう。先にギルドに行ってフィーナちゃん指名の依頼を書かなきゃ。


「ホルンさん、こんにちわ~」


「あら、アスカちゃんいらっしゃい。この時間にどうしたの?」


「指名依頼をしようと思って」


「あら、珍しいわね。また、本なの?」


「今度は違うんです」


「じゃあ、とりあえず紙を渡すから分からないところがあったら聞いて頂戴」


「は~い!」


指名依頼の紙を受け取って、欄を埋めていく。


「まずは指定の冒険者名か、ここはフィーナちゃんと。次に依頼品だけどこれって書かなきゃダメかなぁ。ホルンさ~ん。ここって書かないといけませんか?本人には話をしているんですけど」


「なら、依頼品は指名者説明済みと書いておいて」


「そんなんでいいんですか?」


「一応、職員ならだれでも見られるから、あんまり書かない方がいいわね。レアなものなら特にね」


なるほど。確かにシェルオークなんて書いたら、フィーナちゃんも大変になりそうだ。次は依頼期限だ。


「これは2週間ぐらいかな?流石にすぐに次の冒険って訳にも行かないしね。その次が報酬か~。ん?報酬って私、話してないや」


何か忘れてるって思ったけど、報酬について何も話してない。一応ここに書くけど、怒らないよねフィーナちゃん。


「え~と、報酬は金貨4枚で古ければ追加ありと」


一応フィーナちゃんには古い枝が欲しいって言ってるけど、シェルオーク側の事情もあるしね。古いと魔力が宿ってるから、プラス査定にしておこう。


「その書き方で分かるの?」


「大丈夫です。説明してますから」


後の欄も簡単に埋めていって完了だ。


「一応できましたけど、見てもらっていいですか?」


「ええ。と言っても書きながら見てたけどね」


「そういえば、ずっとここ占領してますけど大丈夫ですか?」


さっきからホルンさんのカウンターを独り占めしてしまっていることに気づいた。


「この時間にわざわざ完了報告上げに来るなんて、滅多にいないわよ。いてもどうせ別の受付に並ぶからいいわ」


「ちゃんと見てくれるいいところだと思いますけどね」


ホルンさんのところはほぼ全て鑑定されるから、厳しいって噂になってるけど、ランク分けの基準がきっちりしてて分かりやすいと思うんだけどな。BランクがCランクになることもないし、採取が楽になるのに。他の人のところはいくつか鑑定してその状態を基に振り分けていくから、やっぱり多少ぶれがあるんだよね。


「ちなみに常連さんが最近増えたのよ。はい、書類は大丈夫だったわ。預かって本人が来たときに渡すわね」


「お願いします。常連って誰ですか?」


「フィーナちゃんよ」


「へ~、意外ですね。ホルンさんのところちょっと長いですよね」


フィーナちゃんは結構サバッとしてるから、もっと早く終わるところに行くと思ったのに。


「私の所が列が短くて利用しやすいんですって。それに、全部見てくれるのが安心できるって言ってたわ」


そっか~。確か今までの商人に買い叩かれてたって言ってたし、きちんと一つずつ見てくれる人の方が安心するんだね。そうだ、時間があるならさっきの事も相談してみよう。


「ホルンさんちょっと良いですか?」


「何かしら?」


「実は…」


フィーナちゃんがお部屋探しをしていることを伝える。


「なるほどねぇ。確かに、あそこの子たちは何かしらやってるから、すぐに信頼するのは難しいわね」


「そこを何とかできそうな人、知りませんか?」


「と言っても、ギルドであっせんできるとしたら店舗になっちゃうし。宿とかなら出来るけど、お家はね…」


言われてみれば、ギルドが家を紹介するのってなんか違和感あるなぁ。でも、これは依頼を受けてもらうのに必要なことだから何とかしないと!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >その内やけ食いを始めてちょっと太った さすがに、それは、他人のせいとは…(汗) ギルドカード2枚持ちは、ホルンさんのせいか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ