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初!討伐依頼達成!!

目的地に着くともう一度依頼内容の確認だ。


「一応、確認しとくか。この辺はゴブリンの領域で目標は5匹討伐。だけど、どの辺りから出てきたかともう少しできれば倒しておきたいね。数が増えているのかちょっと手前で少数活動してるのかをはっきりさせたいしね」


「それで問題ないと思います」


「それじゃあ、かかるかね。一先ずその左側の森に入ってみよう」


ジャネットさんとフィアルさんはすーっと当たり前のように入っていく。私は林で襲われたことと初めて森に入るのでおっかなびっくりついていく。


「そんなビビらなくてもあたしたちがいるから大丈夫さ」


「そうですけど…」


きょろきょろと見渡しながら歩いていく。森というだけあって入った瞬間、一気に薄暗くなる。木の配置もばらばらでつまずかないようにしっかりと歩く。


「あれ?ムーン草かな…」


ひょいと近づき2、3本採ってみる。うん、間違いなくムーン草だ。しかも、みずみずしくて品質もよさそう。ちょっとした群生地みたいだからあと30本ぐらい採っても問題ないだろう。


「帰りに寄ろっと」


私はとっさに風魔法で木に目印をつけて後をついていく。


「どうしたんだい?置いてくよ!」


「はい!」


さらに進むといよいよ濃い雰囲気に包まれる。薄い魔力の霧みたいなものだろうか?


「この辺りなら居そうだね…。ちょいと様子を見よう」


ジャネットさんがそういうとフィアルさんが手振りで木の陰に隠れるように促す。私はそれに従って開けたところから木の陰に隠れる。ここでしばらく待ち構えるのだろう。周囲を警戒していると隣の木の根元にキノコがあるのが見えた。遠目だとちょっとわからないけどあれはマファルキノコかな?


「フィアルさん、フィアルさん。あれ採ってもいいですか?」


小声で私はフィアルさんに呼びかける。フィアルさんもキノコに気が付いたようだ。


「いいですが、これに入れて下さい。後は十分注意して下さいね」


フィアルさんから貸してもらったのはマジックバッグだ。私の弓も今はそこに入れてもらっている。さすがに昨日の今日で使う方が危ないとのことだ。私はバッグを受け取ると隣に移ってキノコを採取し始める。


「こういう時に短剣があるといいかも。後で買うか作るかしよう」


木の根元という事で数は控えめだがそれでも12本採れた。私はVサインをフィアルさんに返すと、笑顔で答えてくれる。その時―――。


がさがさ


広場の奥から音がした。野生動物かもしれないと思うけど警戒を強める。しばらくして現れたのは目的のゴブリンだった。3匹で一つの集団となっていて奥にも、もう1グループ居るようだ。


「もう少し隠れて…」


フィアルさんに注意される。確認するあまり体が少し出てしまっていたらしい。確認をフィアルさんに任せて私は木の真後ろに隠れた。その間にフィアルさんとジャネットさんが話をしている。ジャネットさんの声は聞こえないけど、2グループ居ることで対応を考えている様だ。


「…確かに。ですが、手前に気を取られて奥の奴らがさらに呼んできたら厄介ですね」


「だけど……無理はできないよ」


ジャネットさんが私の方を見る。ひょっとして一気に片付けたいけど私を心配してくれているのかもしれない。


「あ、あの…私が風の魔法で後ろのゴブリンを攻撃します」


「できるか?」


「全部倒すのは無理かもしれませんけど頑張ります」


フィアルさんがもう一度ジャネットさんと話をする。ジャネットさんも納得してくれたようでうなずくと作戦開始の合図をする。広場からややジャネットさん側に先行グループが歩き出したところで私は意を決して魔法を放つ。


(風の刃よ、ウインドカッター!)


私が作り出した風の刃は一気に木の合間を縫うようにして上へと上がる。


がささっ


風が急激に流れたせいで、私の周辺で音がする。


グギャ?


音に気付いた先行グループが何事かとこっちに近づいてくる。


「ハッ!」


その隙に木から飛び出したフィアルさんがまずは弓持ちのゴブリンを射る。その矢は正確に脳天を貫き1匹を倒す。それに驚いたところを横から飛び出したジャネットさんの剣が首をはねる。残るは一体だ。その姿を見た後方のグループが下がろうとしたところに私の魔法で出した風の刃が襲い掛かる。


「いけぇ!」


ガサッ


自分たちの上空で音がしたのでゴブリンたちが空を見上げると風の刃がゴブリンたちを一刀のもとに葬る。しかし、勘のいいのが一体いたようで、そいつだけは腕を失いながらも生きている様だ。


「ジャネットこっちは任せる!」


「はいよ!」


無傷のゴブリンの相手をジャネットさんが、傷ついたゴブリンを逃がすまいとしてフィアルさんが後を追う。


ザシュ


ギャ


ジャネットさんは剣を交えることなく、フィアルさんが追ったゴブリンは足もケガをしていたらしく、すぐに追いつきとどめを刺した。


「ふぅ、久しぶりに一緒に組んだけどやっぱりやり易いね」


「ええ、そうですね。それにアスカがいましたから。彼女の魔法はかなり精度が高い。通常なら直線的にしか撃てないウインドカッターをあんな風に使うのはCランクでも難しいですね」


「そうだね。逃がすと面倒だったし、やるねえ」


「でも、2人もすごいです!無駄がなくて。私は最初だけだし…」


「気にしなくてもいいよ。逆にあそこで魔法を使われたら巻き込まれかねないからね」


「そうですね。私たちはそこそこランクも高いですから、あれ以上は逆に危険です。さあ埋めてしまいましょう」


2人が魔物を埋めるというので私が手伝いを申し入れた。


「風よ…ウインド!」


小さく掘った穴に風を入れて一気にぼこっと土を起こす。今日はすでに結構MPを消耗しているから新たに考えた方法だ。


「へぇ~、こんな楽な方法があるなんてね。オーガの始末なんかはアスカに頼みたいぐらいだね」


「そうですね。あいつらは食用になりませんし大きいから掘る穴も苦労するんですよ」


「どうしてもって時でも掘ってたんですか?」


「流石に命の危険があれば別だけどね。それが原因で商人が襲われたり、一般人が死んだりしたら寝覚めも悪いし、最悪はギルドから目をつけられて依頼を回してもらえなくなるからね」


「でも、依頼って誰でも受けられるんじゃ…」


「最後は一旦受付に渡すだろ?あれはそう言うのも兼ねてるのさ。うまい依頼をろくでもない冒険者に受けさせないようにって」


「私も気をつけないと…」


「まぁ、片手間でこんな使い方思い付いてるぐらいなら大丈夫だろ。それよりフィアル、この奥行ってみるかい?」


「そうですね。アスカの残りMPが気になるところですが気にはなります。残りはどのくらいありますか?」


「ええと…」


「ああ、裏見たらちゃんと残りも見れるようになってるよ」


「ありがとうございますジャネットさん」


隠れてステータス!を唱えるとこだった。結構便利なんだなこのカード。ギルドで更新かけられないと能力も変わらないし残りも見れちゃうんだ。


さて残りの残量はと…MP:80/260


「はちじゅうです…」


「それぐらいあれば、大きな群れ以外なら大丈夫だね」


「隠れられるところも何か所か見つけていますし、進みましょう」


そして森を少しずつ進んでいく。フィアルさんたちの話によるとゴブリンたちは奥に行こうとしていたので、どこかに集落や他の魔物と共有している区画があるかもしれないとのこと。


「水辺とかをさほど実力差のない魔物は一時的に共有することがあるんだ。オークとゴブリンの目撃情報が集中しているから可能性はありそうだね」


「私、オークってまだ見たことないんですけど…」


「ゴブリンより大柄で力が強い。ただし、頭の方は悪いから突撃だけ受けないようにしな。アスカなら吹っ飛ばされるよ」


「はっ、はい!」


「警戒はこっちに任せて下さい。水流よ…」


フィアルさんは器用に水を操り、足元に出した水流に乗って木を登り警戒してくれている。


「この先に水辺がある。気を付けて進もう」


少し進むとまた少し視界が広がる。奥には湖面が少し見えた。


「ここで一旦待機だ。様子を見てこよう…」


フィアルさんが単独で奥へと進んでいく。この先は木もないから私だとすぐに見つかってしまうだろう。



「どうだった?」


「やはり、共同で使っています。確認できたのがオーク7体、ゴブリン6体。ただし、ゴブリンの方が小間使いのような感じで見た感じ仲は良くないですね」


「じゃあ、さっきの見廻りみたいなのもオークの指示なのかい?」


「おそらく。あいつら頭は悪いですが、威張り散らしますから」


「…」


「どうしたアスカ?」


「あの…私の矢を使ってもらえませんか?」


「何か考えがあるのですか?」


「はい、あの弓矢は元々ゴブリンのだからもしかしたら、オークに攻撃すれば同士討ちにできるかもしれません」


「それが一番かもね。数は多いけど連携できる器用な奴らじゃないし、最悪何度かに分けるか」


「なら、僕はその矢を三本ほどもらってあちらから攻撃します」


「一人になったら危険だから気をつけな」


「大丈夫。いざとなったら上に逃げますよ」


そう言ってフィアルさんは私たちから離れていく。湖の方は特にざわついている様子はない…。


「いいかいアスカ。私たちはフィアルが攻撃しても何もしちゃいけない。もし、オークたちがゴブリンを攻撃せずにこっちに来たら私たちも引くんだ。数が多いと実力差があってもケガをする。魔物と違って、私たちはきちんと帰らないといけないんだ。それを忘れるんじゃないよ」


「はい!」


ジャネットさんに軽く頭を撫でられて少し湖に近づく。私は杖をジャネットさんは剣を構えて潜む。


コン


近くに石が落ちる。フィアルさんの合図だ…。


ヒュン


矢が1本、湖の奥へと放たれる。その矢はまっすぐにオークの脳天を直撃した。何が起こったのかと驚く魔物たちだが、矢の匂いをオークがかいでいる。周りをキョロキョロと見渡すが自分たちしかいないと思っている様だ。どうやら、人の匂いとゴブリンの匂いの両方を嗅いだためどちらか確かめているのだろう。しかし、周りに人がいないと思ったのか弓を持ったゴブリンに詰め寄っている。ゴブリンは必死に違うといっているように見えるがついにオークの一匹が襲い掛かった。


「かかった。もう少し様子を見るよ」


ゴブリンたちはすぐに身を引いて距離を取る。数は互角でも力では劣ると知っているのだろう。盾を持ったゴブリンが弓持ちをかばうようにして攻撃を始めた。しかし、弓を受けても迫ってくるオークに隊列も崩れ押しこまれる。


オークが1匹倒れたが、ゴブリンはすでに3体が倒れている。


「これ以上は倒させられないね、行くよ!」


「はい!」


私たちは一気に湖へ踊り出る。


ギャギャ


ブルン


2種類の魔物が異変に気付いたようだ。


「遅いっ!」


フィアルさんが弓をつがえ、近い距離にいるゴブリンを2匹射る。


「オークは出来れば頭か足を狙いな!」


そう言いながらジャネットさんは残った最後のゴブリンにとどめを刺す。


「了解です。ウインドカッター!」


風の刃がジャネットさんの上を通過してオークへと向かう。ここは見晴らしがいいので刃を一旦、奥へと飛ばしてからブーメランのように返して一番後ろのオークの足を落とす。


ブギャ


後ろのオークの声を聞いて思わず前のオークが振り返る。


「戦闘中に後ろを見るとは暢気なもんだ!」


前方に来ていた3体のうち1体が止まり、ジャネットさんは2体と剣を交えている。そして振り返った1体の頭には矢が突き刺さる。


「ウインドカッター!」


私は後ろにいるもう一体のオークに魔法を放つ。


ブギャア


3つの刃のうち最初の刃は剣で叩き落されたけど、次の刃でその腕を落とし、無防備になったところを最後の刃で頭を落とす。


「よし!残りは…」


ザシュ


ジャネットさんの振った剣がオークの首をはねる。それは見事なイベントCGのようで横なぎに振るった剣がスパッと頭を落とすシーンのようだった。


「残るはお前さんだけか」


プギュ


見廻して己以外は地に伏していることに気づいたのだろう。逃げ出そうと背を向けた。


「甘いね…」


ヒュン


一気に詰め寄り最後のオークにもとどめを刺すジャネットさん。奥を見ると最初に私が足を切り落としたオークにフィアルさんがとどめを刺している。


「よし!これでゴブリンは9匹、オークは6匹。これにて依頼完了!」


こうして私の初めての討伐依頼は依頼達成で終わったのだった。



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