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竜眼石

無事に稲を勧めることも出来たし、今日は竜眼石を受け取る日だ。


「受け取りって言っても、夕方だから何しようかな~」


遊ぶといっても特にないし、かといって不用意に外に出たら、またフリスビー大会だしなぁ。


「楽しいのは楽しいけど、明日は村を発つ日だしあんまり疲れたくないんだよね~。やっぱり細工かな?」


思えば移動とかも多かったし、野営中も危険度が高かったからほとんど出来てないしね。作るとなると、レディトで即売れるものにしようかな。次にまた行くまで時間かかりそうだし、ちょっと何か置いておこう。


「そうなるとデザインだけど、ここはやっぱり稲穂を出しておかないと。これから、エヴァーシ村の特産になるかもしれないし、コツコツと知名度はあげておかないとね」


デザインだけど、水田にシェルレーネ様が居るって感じにしようかな?う~ん。でも、それだと稲穂が登場しないしなぁ。


「むぅ。何とかして知名度を使って広めていきたいんだけど、どうしようか?収穫期は水がないから、単独で出すのは難しいけど、この大陸での知名度を考えると、シェルレーネ様一択なんだけどな」


他の神様だと、知名度的にちょっとね。稲穂なら太陽の恵みってことで火属性のグリディア様でもいいんだけど、一般市民向けのあの店だと多分売れないだろうしな。


ドーマン商会は貴族と平民向けの商会で、冒険者の来店はわずかだ。もちろん魔道具も納品してるわけだけど、あっち向けの効果は貴族がちょっと気に入って買ってくれるようなのばかりだしなぁ。


「2種類作って、水田と稲穂にデザインを分けて作ろう。あんまり他にアイデアも浮かばないし、まずは作ってみないとね」


そうと決まればどんな感じが良いかなんだけど、流石に田植えのシーンは駄目だよね。


「監督ならともかく、下働きはね~。そうなれば水田に水を入れる感じかなぁ?手から水を田んぼに流し込む感じなら、属性とも合うし問題なさそうだよね」


シャッシャッと絵を描いていく。端っこにあぜを描いて、水田を描いて、後はちょっと浮いた感じでシェルレーネ様が水を与えるっと。


「もう一個は収穫期だから、実りを確かめる感じが良いかな?」


こちらも同様に描いていく。


「う~ん。ちょっとあぜが適当かなぁ。実際に見てこよう」


スケッチブックを持って、昨日行った畑に向かう。このあぜを参考に絵を完成させていく。


「よしっ!これであぜは完成だね。宿に戻って作っていかなきゃ」


ふわりと柔らかい風を受けながら、宿へと戻る。そして、銅を取り出して作っていく。


「あれ、これひょっとして難しいかも」


実際に作っていくと結構草とか稲の部分か細かくなることに気づく。というか一気に作ろうとすると、稲とかの一ヶ所ミスするだけで駄目になりそうだ。


「んん~、何か考えないとな」


しばらく目を閉じて考える。そして考えたのが稲部分の底に穴を開けることだ。


「こうしないと、作ってて割れたりしそうだし、しょうがないよね」


開けた穴に差し込む部分を作り、一ヶ所ずつ出来た稲を差していく形だ。これなら、失敗してもその部分だけ作れば良いから難易度も下がる。


「ただ手間がね~。仕方ないんだけど」


工数が増えるけど、破損や失敗の確率はぐんと減るし仕方ない。特に稲穂の方は米のところの作りを再現すると、失敗が多くなりそうだし他の方法は思い付かない。


「繋げて一気に差し込みたいところだけど、型がないと難しいからなぁ」


これを大量に作るならあってもいいかも知れないけど、今の感じだとそんなに作る予定もないしね。


コンコン


「は~い!」


わざわざノックするなんて誰だろう?


「アスカちゃん、お昼できたわよ」


あら、宿屋のお姉さんだ。もうそんな時間かぁ。細工をちょっと片付けて食事にいく。


「はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


「ところでさっきまで何してたの?全然部屋から出てこなかったけど」


「ちょっと細工をしてたんです」


「そういえば、細工が出来るんだったわね。それじゃあ、もしよければ何だけど。次に商人が来る時で良いから、泉関連のものを何か作ってくれないかしら」


「泉ですか?」


「ええ。アスカちゃんに聞いた通り、午前中にちょっと覗いたら、不思議な感じがしたの。うちって宿屋でしょう?旅の人とか冒険者に興味が持てるスポットにならないかなって」


「ちなみに商人さんが次こられるのはいつですか?」


「確か…来月の中頃かしら」


「まだ、1ヶ月以上ありますね。それなら多分大丈夫です。ドーマン商会の方ですよね?」


「ええ。こんな田舎にも来てくれてありがたいのよ」


「それならいつも卸してますから大丈夫です。デザインの希望とかありますか?」


「そうねえ~、不思議さをアピールしたいから、妖精を一緒に描いてくれると嬉しいわ」


「わかりました。依頼料は?」


「う~ん。あんまりよく分からないのよね。銅だといくらかしら?」


「細かいのだと、銀貨2枚で適当なのだと1枚ですね」


「ちなみに銀で作るといくらぐらいなのかしら?」


「銀だと銀貨7枚ですね」


「銀だと値段は1種類なのね」


「材料の単価が高いですから、細かくないのを作っても意味ないですから」


「それぐらいの差なら、1点物として銀で作ってもらった方がいいかしら?」


「お金は大丈夫ですか?」


「ええ。この村はおしゃれしても見せるところもないでしょう?結構みんなため込むだけで、商人からも生活に必要なものを買うぐらいで、売る方が多いのよね」


「そうなんですか。じゃあ、銀で作ってもいいですか?」


「お願いするわね」


思わず依頼を受ける形になったけど、妖精をイメージかどうしようかな?泉の精霊のシルフィード様はどちらかというと見た目は妖精だけど、流石にそのままとかってどうなんだろう?でも、本人も有名になりたいって言ってたし、ここはひとつ再現しておこうかな。食事も終えて、部屋に帰る。


「ひとまず、今はこれを終わらせないと。まだ、1つ目の途中だし」


それから、ジャネットさんが私を呼びに来るまでずっと細工をしていたのだった。


「やれやれ、自分の何だから時間をちゃんと区切りなよ」


「すみません。でも、結構いいのが出上がりました。まだ途中ですけど」


結局、2つ目の稲穂が出来るぐらいまでで作業はストップした。稲穂を削っていくのが時間がかかったのだ。そこがメインだから仕方ないんだけど、コメのところを作るのがすごく手間だ。


「そいつはよかった。んじゃ、確認に行くよ」


皆と集まってシャスさんの工房にお邪魔する。


「おっ、来たね。ちゃんとできてるから確認してくれよ」


そう言ってシャスさんが私に竜眼石を渡す。すごく、綺麗な赤色の球体に出来上がっている。まだらな部分もないし、宝石のようだ。


「すっごくきれいです。これが竜眼石なんですか?」


「ああ、それとこいつも渡しとくよ」


そう言ってシャスさんはごそごそと一回り大きい球を出した。


「これは?」


「魔力を遮断する材料で出来たものだ。青色で作られてるから、これを外側にすれば紫色の魔石に見えるから竜眼石とは分かりにくくなるだろう」


「ありがとうございます。でも、良いんですか?」


「ああ、たいして高いものでもないからな。そいつがあれば中々見破られないだろう」


「ありがたく使わせてもらいます。弓のことといいお世話になりました」


「こっちこそ鍛冶屋として、いい経験を積ませてもらったよ。またなんかあったら来てくれよ」


「はいっ!」


無事に竜眼石を手に入れられたし、後は帰るだけだ。村の人にもこの間、差し入れとかももらったし、挨拶をして夕食を食べる。


「にしても、結構良いとこだよなここ」


「そうだね。店は少ないけど、暮らしやすいよね」


「あたしはちょっと無理だね」


「どうしてですか?」


「冒険者なら月一度の商人を待つ間、素材を溜め込んでたら、家がパンパンだよ」


「ジャネットさんは冒険者以外になりたい職業はないんですか?」


「なりたいってもね。変に我慢はしたくないから商人もダメ。農業だって半分嫌で逃げるように出てきたしねぇ」


「その割には知識豊富ですよね」


「そりゃ、10年以上住んでりゃ嫌でも身に付くよ。まあ、出来るとしたら御者とかかね。もちろん知り合いの商人限定だけど」


「結局、冒険者っぽいものじゃん」


「うるさいね。なら、ノヴァは何かあるのかい?」


「俺?う~ん。街の衛兵とか?」


「それじゃ一緒じゃないかノヴァ…」


「急に言われてもな~。でも、その点アスカとリュートはいいよな。アスカは細工で食ってけるし、リュートは料理人でも商人でもやっていけるだろ?」


「リュートが商人かぁ。大人しそうな顔して、すごいこと言ったりしてね。『僕を誰だと思ってるんだい?』とかね」


「それはアスカが考える偉い人でしょ。そんなこと言わないよ」


「分かんないぜ。こんな顔して、高利貸しの人身売買にてを染めたりしてな」


「それは違法商人でしょ!」


「やっぱり人身売買は違法なんだね」


「何だよ。アスカは知らなかったのか?まあ、国によるけどな」


「じゃあ、奴隷制の国から禁止してる国にどうやってはいるの?」


「何だ、興味あんのか?」


「ちょっと気になっただけ」


「そういう時は入国手続きの時に仮身分証を奴隷に発行するんだよ。その国にいる間は平民扱いで、主は雇用主になる」


「じゃあ、待遇も変わるの?」


「書面上はな。そこまでちゃんとは変えないが、あまり無茶をすると捕まるぞ、何て言っても、隣の大陸だと渡った先は禁止国だから滅多に来ないけどな」


「なんでだ?」


「安くあげるのに奴隷を買うだろ?禁止国を2つもまたいだら、費用がかさむからな。とはいえ居ないわけでもないから、知っておくと良い」


「は~い」


夕食は教養の授業混じりとなって、終了した。明日は朝一、村を出発するから早く寝ないと。



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