到着、滅びた村
注意、ここからしばらくきつめの表現があります
「こうして無事1日目は終わったのでした。そう続きたかったのに…」
「ほら、さっさと出る!」
「はい!」
これで2度目?3度目だっけ?夜に魔物の夜襲があったのだ。バリアの魔石で被害は出てないんだけど、何が原因で破られるか分からないし、対処は必要だ。
「みんな、正面向かないで!ファイアボール」
とりあえず、火の玉を正面に放つ。これにより、夜間に馴れた魔物の視覚を狂わせられるだろう。
「1、2、3.今です!」
「OK!」
カウント後に火を消し、そこを一気にみんなが駆けていく。相手は急に現れたことにびっくりしたようだ。
「ふぅ。ナイスアシスト、アスカ」
「もう寝たいです…」
「ははっ、まあそうだね。寝直すとするか」
「にしても、ジャネットの時に1回、俺の時に2回なんて、どんだけ元気なんだよ」
「あっちは夜行性だからね。僕もう寝るよ。交代したら寝れないし」
「おう、ちゃんと寝ろよリュート」
「私も寝ます。ふわぁ~」
戦闘も終わり、それぞれテントに帰っていく。これ以上の襲撃は勘弁だよ。何とかその後は襲撃もなく過ごせたけど、まとまった睡眠時間が取れなくて、ちょっとみんなも疲れている。
「今日は村について、安全そうなら昼寝でもするか。もちろん見張りはいるけどね」
「そうしましょう。私も眠くて…」
「僕も。結局、3時間ぐらいかな寝たの」
調査も大事だけど、体が資本だからね。朝食を取った後、テントを片付けていざ村を目指す。2時間ほど進むと、ちらほら空き地のようなものが見えてきた。
「どうやら、結構近くに来たみたいだね。この空き地はわずかだけど、整備の跡が残ってる。人が近くにいた印だね」
「確かにこの辺、石積みの跡が見えますね。一先ず村があって安心しました」
「何だい。あれだけ言ってたのに、存在を疑ってたのかい?」
「疑うというか、やっぱり目で見るまでは安心できませんから。誰も見たことがないんですもん」
「じゃあ、このすじをまっすぐ進めばいいんだな」
ピィ
ノヴァにつられてアルナもちょっと飛んで先を見る。
「ほら、危ないよ。戻ってきて」
再び肩につかまるアルナ。アルナも何度か起きたみたいで、いつもより大人しい。それからさらに1時間ほど歩くと、ついに村が見えた。
「あ、ありましたよ!」
「あった、けどあれは何とも…」
確かに建造物らしき跡はあるんだけど、経年劣化が凄まじく、木の家はかろうじて柱が確認できる程度、石造りの家も、風雨でボロボロだ。それにつたが伸びたりして、家としては使えなさそうだ。
「思ったより、ひどいですね」
「これじゃ、村が滅びた原因も分からないね。木がこれだけ朽ちちまったら、魔物の襲撃なのか疫病なのかさっぱりだ。言い伝えを信じるしかなさそうだね」
「それで、お宝はどこだ?」
「村なら、もっと奥に行かないと村長の家はないよ。そこ以外はまずないだろうね」
ジャネットさんが言うには、基本小さい村はエヴァーシ村みたいに、村長宅が避難所を兼任しており、倉庫などもその近くか、地下にあるという。村の顔にして、生命線なのだそうだ。
「でも、詳しいですね。実は調べてたとか?」
「何言ってんだい。あたしが村の生まれだって、言ったことあっただろ?経験だよ」
そっかぁ。そうして、村の奥を目指して進んでいく私たち。一応家の跡地も見ていくんだけど…。
「なんかあの台、他の家にもなかった?」
「そういえばそうだね。キッチンとかかな?」
「でも、水場は共用の井戸だけど、かまどみたいなのは手前側でしょ?遠くないかなぁ…」
「そう言われると、離すのは変だね。何か意味のあるものなのかな」
「お~い、こっちにもあるぞ」
結局、変な台はどのご家庭にもあった。ただ、魔物なんかにも荒らされた跡があって、そこに何があったのかまでは分からない。とりあえず、村長宅らしき跡地が見つかったので、そっちに行ってみる。調査は後回しだ。
「ここが多分そうだね。石造りでも一番規模が大きそうだ。ちょっと下がってな」
ジャネットさんがマジックバッグから剣を取り出すと、伸びているつたを切って行く。ドアなんかはないけど、視界が悪いので助かった。珍しくこの家は三階建てだけど、2階途中で崩落して3階部分は見る影もない。
「わずかだけど潮の香りもするし、上は浸食がひどいね」
「じゃあ、調査開始ですね」
頑張ればここはテントを置く位は出来そうだし、何とか足場を広げてみる。私はジャネットさんから借りたナイフで、ノヴァは剣、リュートもナイフを出して邪魔なつたや草を刈っていく。
シュパ
目の前の草がバッサリと切られる。
「あっ、アルナ。風魔法はダメ。つたとかに隠れて何かあるかもしれないからね」
ピィ…
手伝ってくれようとしたアルナには悪いけど、出来ることはなさそうだ。
「飛べるから3階のわずかに残ってるところとか見てもらえたらいいんだけどね。飛んでる魔物とかに見つかると危ないし…」
「なら、ティタもいく」
「ほんと?なら安心かな?何かあったらすぐに降りて来てね」
ピィ
お役目が出来てアルナも嬉しそうだ。すぐにティタと一緒に飛んで行って、辺りを見回す。後でティタから報告を聞こう。私たちはその後も入り口に草を集めていく。図らずも崩落してくれたおかげで、結構明るくて暖かい。
「そっちはどうだい?」
「僕の方はぽろぽろ金属らしきものが落ちてますけど、なにかは分かりませんね。鉄のとかは錆び切ってます」
「こっちは多分、食料を置いてたみたいだぜ。つぼとかばっかりだ。アスカの方は?」
「う~ん。何もないなぁ。でも、さっきあった台はここにもあったよ。大きさも同じぐらいだけど」
「同じ?そいつは変だね。その辺を調べてみるか」
「何か変ですか?むしろちゃんとあったってことでは?」
「いや、他の家は大きくないからあのサイズなのは分かる。でも、ここは3階建ての村長宅だよ?それなりの大きさになってしかるべきだろう。なら答えは二つ。サイズが大きくできない理由があるか、別の場所にあるかだ」
「でも、他のエリアなんてないぜ」
「地下があるだろう?この辺の床を探そう」
私たちは一度集まり、台の近くを探す。
「アスカ、この辺は調べたから、ごみとか砂を風で飛ばしてくれないか?」
「分かりました。みんな下がっててね。アルナ~、ティタもちょっと風が行くから気を付けてね」
ピィ
「わかった」
私は小さい嵐を起こして、床にたまった砂やごみを空に飛ばす。
「これで、探しやすくなったな」
「ジャネットさん、こっちちょっと色の違う石がありますよ」
早速、リュートが何か見つけたみたいだ。
「ふむ」
ガンっとジャネットさんが剣を当てて、衝撃を加える。
「ん?空洞があるね。ナイスだリュート!」
「いやぁ」
「私が見つけたかったのに…」
「ほ、ほら、地下がまだあるよ。アスカが先頭で行きなよ」
「うん!」
その地下への道だけど、どう開けるのかが分からなかったので、発見した場所を壊すことにしたんだけど…。
「最後にちょこっとだけ台を見るかな」
ガコン
台の後ろに手を触れると変な音がした。そしたら、色の違う石のところが動いていく。
ゴゴゴゴ
「アスカ、よくやった!これで面倒が1つ省けたよ」
「へへっ、任せてくださいよ」
私はティタとアルナを呼び戻して、一緒に地下への階段を下りていく。
「うわわっ!石がぼこぼこ、みんな気を付けてね」
「OK」
地下はというと、長年使われていなかったので、ところどころ日の光が漏れているし、道もぼこぼこだ。地下とはいえ人が入らないとこうなっちゃうんだなぁ。
ジャリ
「ん?何か踏んだ。何だろ?」
ちょっと薄暗いので、火の魔法で照らしてみる。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!ほ、ほねだぁぁぁあ!!」
ピィ
「うわっ!ってなんだ。ただの骨じゃん」
「ほ、骨。人骨だよ!」
「まあ、そうだね」
「み、みんな怖くないの?」
「とはいえ、割とみてるしなぁ」
「まぁね。何なら、もっと新し目のも…」
「ま、待って、その先は良いから…」
「あ、うん」
ひ、人の骨を見慣れてるって、な、なにか呪術とかしてるの!?
「まあ、街でも外でもそこそこ見るよな。冒険者の亡骸とかさ」
「気持ちのいいもんじゃないけどねぇ。年に何回かはね」
「っていうか、アスカは見ないの」
「み、見たことないよそんなの!」
「運がいいやら悪いやら。そんなことで一々驚くんじゃないよ。ホントに変なところで常識がないね」
「そんなこと言われても。慣れてないものは慣れてないんです」
「別に動きゃしないのにね。うん?」
「な、何かありました?もしかして、しゃべったとか!?」
「な訳ないだろ。どんだけビビってるんだい。これを見なよ。恐らく足の骨だと思うけど、何かが刺さった後だね。形からすると魔物の牙だろう」
「じゃあ、こいつだけ逃げてきたってことか?」
「いや、その先にも骨らしきものが見えるから、傷を負った後、ここに避難してきたんだろう。骨も太いし、もしかすると衛兵か何かだったのかもね」
「なるほど、降りてきたところに構えていたって訳ですね」
「そういうことだ。ほら、奥の方の骨は小さいのもある。子どもとかだろう。こっちの骨は傷がない」
「ということは餓死ですか?」
「もしかしたら、扉の開け方を聞いてなかったかもねぇ。こっち側はおそらく食料の備蓄だろう。つぼとか以外は何もないし」
「あっ、調査なら私がやります」
「はいはい。なら、腰抜かしてないでさっさと起きなよ」
「は~い」
「アスカ、びびり」
「ティタまで。ティタは平気なの?」
「うん。いっぱいみた。せんじょうとかも」
「へ~、今度話を聞かせてくれよ。ティタが見たってことは、近年起きてない国家間戦争だろ?それか、貴族の領地争いだ。興味あるね」
「私のいないところでお願いしますね」
ティタは本当にそのままを話すから、生々しい話になりそうだしね。気を取り直して、他の部屋も見ていく。部屋自体は小さいけど、何部屋かあるようだ。奥から2番目の部屋には、貴金属類があった。中には今でも使えそうなものもあったけど、さっきの死体を見るとちょっと気が引けてしまう。
「せめて、供養してあげてからだね」
そして、いよいよ最後の部屋だ。重い石扉を開けて部屋を見る。
「特に何もありませんね」
「いや、あの台があるよ。それもかなり大きい」
今までは各家、15cmぐらいだったけど今度のは1メートルはある。手前には布?らしきものがある。
「ボロボロだけどこれって…」
何となくだけど、ムルムルや私の巫女服に似ている気がする。服をめくると、そこには銀の像があった。