表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
309/492

ギルドの新制度

岩場で出会ったパーティーのメンバーがけがをしていたので、とりあえずけがを治して事情を聴く。


「おおっ!傷がふさがっていく…。回復魔法なんて久しぶりだぜ!」


「前は治療院に駆け込んだ時だから、まだDランクだったころね。ありがとう、研修生の子?」


「研修生?」


「違うのか?最近、この辺でサンドリザードへの対処法を学ぶために、CランクやCランク間近の冒険者を上位の冒険者が指導してるんだが…」


「あ~、そういやジュールさんに頼まれたねぇ。断ったけど」


「それじゃ、この子たちは?」


「あたしの所属してるパーティーだよ。前に言ったことあっただろ?」


「じゃあ、あなたがアスカちゃんね。ごめんなさい、研修生と間違えたりして」


「いいえ、でもよく私のこと知ってますね?」


「街じゃ有名人だもの。アルバじゃ珍しい魔物使いだし、それに私もハイロックリザードと戦った時いたのよ」


そういえば、水魔法を使ってる人の中にいたような気もする。それで私のこと知ってたんだ。


「アスカはどこでも有名人だな~」


「やめてよ。有名になってもいいことないよ」


「へ~、本当に変わってんなぁ。俺なら有名になったら鼻高々で街をねり歩くってのによ」


「あなた、恥だけはさらさないようにしてよね」


「そうそう、奥でのことなんだけどさ、どんな感じだった?」


「ん~、すぐに逃げてきたからあまり分からないんですが、ちょっと目立つ岩がありましたね。その周辺にみんな固まってました。あんな光景始めてみたので、そこはよく覚えてます」


「なるほどね。集会ってわけかい。にしてもよくそんなにすぐ判断できたもんだ」


ジャネットさんが感心して言う。確かにそんなにすぐ判断するなんて決断力のある人たちだなぁ。


「まぁ、その辺はハイロックリザードを一度見てるからな。あれが無きゃ、無駄に頑張ってたかもしれないな」


「そうね。あれがなければ自分たちで何とかしようって思ったかもね。今じゃ、どんなに頑張っても自分たちだけじゃどうしようも出来ないこともあるって思えるけど」


そっか、素材以外じゃ何にも残らなかったと思ってたけど、研修制度とかみんなの考え方とか、他にもいっぱい残ってたんだね。いい思い出ではないけど、あんなことでも何かの糧になったんだと思うと、ちょっとは納得できるかな。


ケヴィンさんたちのパーティーはけがをしていた人のことが気になるみたいで、これから一応治療院に行ってみるとのこと。


「悪いな。治してもらって何なんだが、こいつの利き手でな。心配なんだ」


「いいえ。私も本職じゃないですからその方がいいと思います」


「必ずお礼に行くからね」


再度、お姉さんにそう言われて彼らとは別れた。


「でも、いいパーティーでしたね。見た目、治ったみたいでも心配で治療院に行くなんて」


「まあ、けじめというか、リーダーなりの責任だね。やっぱり、最終的にパーティーの命運はリーダーの判断だからね。あいつが怪我したのも、元を正せばリーダーの判断ミス。そう思ってるんだろうね」


「でもさぁ、そんなに集まってるなんて行ってみないとわかんなくねぇか?」


「もちろん、そりゃそうさ。でもね、メンバーはリーダーの判断に従うし、リーダーはその行動の責任を負うんだ。見えないものでも、何かあればリーダーの責任でそれに付き合うのがメンバーの仕事だ。いつも通りだけど、今日はここでやめておこう。そういうのも時には必要ってことさ」


「難しいんですね、リーダーって」


「まあ、アスカはまだまだ見習いリーダーだし、みんなに意見を聞くのが一番いいかもね」


「そうします。でも、色んなパーティーがいるんですね。回復魔法が久しぶりって言ってましたし」


「そうホイホイ回復魔法が使える奴がいたら、治療院が成り立たないさ。アスカは行ったことないだろうけど、割と高いんだよ。ケガの大きさにもよるけどね」


「お世話にならないよう心がけます」


「後は、嘘かほんとか知らないけど、美容のために受ける人もいるみたいだね」


「美容ですか?」


「けがを治すってんで、皮膚がきれいになるって思ってる人がいるみたいだね。まあ、実際はどうだか知らないけど」


「でも、効果とかすぐわかるんじゃないんですか?」


「効果ってったって、そんなの本人の思い込みもあるからね。肌の老化が遅くなるっていっても、元々の体質かもしれないだろ?」


「まあ、そう言われればそうですね」


「治療院としてはそれって大丈夫なんですか?」


「いい質問だリュート。治療院はけがの程度で金額が決まってる。もちろん街ごとに違うけどね。そういう連中は安ければいい術師が出てこないから、金を積んでくれるのさ。術師からしたら、そもそも傷を治す体でやってることだから、別に効果がないって言われても知らん顔できるから、いい収入源なんだよ。高いだけに客も少ないしね」


「まあ、俺らも使うならポーションだしな」


「ポーションが大銅貨2枚ぐらいで買えても、治療院だと銀貨1枚からだもんね。すぐに治るのは良いけど、別にそこまで毎日活動しないしね」


「へ~、そんなにかかるんだ。ちなみに治療院って登録制何ですか?」


「おっ、興味が出てきたのかい?残念ながら登録制だね。ちなみに年会費と活動奉仕期間ありだよ」


「活動奉仕期間?」


聞きなれない言葉に首をかしげる。ちなみに話しながらも、サンドリザードの解体をしていたりする。


「要するに、人々を治すのは高尚なことだから、年に2か月は無償で治療しろってことだ。ああ、もちろん治療院でだから相手から金は貰うけどね」


「それって、体のいい無償労働じゃ…」


「そうともいうね。まあ、院の方も冒険者や病人の紹介やらなんやらで、結構金がかかるみたいだね」


「でも、年会費取ってるんでしょう?」


「そっちはあくまで、各街に所属する会員とランクの管理なんかで使われてるって話だ。だから、治療院で働くなら、最低2か月はただ働きで、どっかの街に滞在しないといけないよ」


「じゃあ、いいです。なんだか普通に働いた方が楽そうです」


「ま、わざわざ治療院で働かなくても、小さい村や町なんかじゃやって行けるけどね。その代わり重労働だけどね。昼夜問わず人が来るよ」


「どっちが良いかって話ですか。なんだか、世知辛いですね」


「組織ってなるとどうしてもそうなるんだろうね。でも、貴族のお気に入りにでもなれば楽して暮らせるらしいよ」


「それこそゴメンです。やっぱり、地道に冒険者が良いですね」


「地道にねぇ…。よっと!ノヴァ、そっちは終わったかい?」


「もうちょっと!リュート、バッグに入れてくれ」


「はい、次は?」


「こっちので最後だ」


えらくのんびりとした光景だろうけど、一応ここはまだ岩場だ。ただ、流石に群れで返り討ちにされたから、しばらくは安全だろう。また、この辺にはサンドリザードより強い魔物がいないので、その死臭に惹かれる魔物はまずいない。これが弱い魔物だったら寄ってくるかもしれないけど。


「終わったぞ~」


「は~い。じゃあ、今日はこの辺で」


「そうだね。ぼちぼち収穫もあったし、帰るとするか」


私たちは休憩がてら解体を終え、街に帰ることにした。正直、出会った場所でも普段より巣に近づいてたし、これ以上は成果も期待できそうになかったからね。


「おっ、今日も無事に帰って来たな」


「門番さんお疲れ様です」


「おう、通っていいぞ!」


門番さんたちとも最近はよく話すようになったし、行先も心配されなくなった。私も成長してるってことだね。


「さて、ギルドに行くとするか」


「はい!」


ギルドへまっすぐ進んでいく。改めて街並みを見ると、まだ行ったことのない区画も結構あるんだなぁ。


「あら、お帰りなさい」


「ホルンさん、ただいまです」


「じゃあ、依頼の方を確認するわね。え~と、サンドリザードの生息調査と討伐ね。結果はどうだった?」


「はい。10匹ほどの群れと遭遇して倒しました。あと、別のパーティーの人から聞いたんですけど、岩場のちょっと奥にある大きい岩のところに、集団でサンドリザードが居たそうです」


「そうなの?じゃあ、そっちは簡単でいいからレポートを書いてくれる?追加の報酬を出せると思うわ」


「それじゃあ、後で書いて持って来ますね」


「お願いするわね。後、そのパーティーって言うのは?」


「ケヴィンのところだよ。20匹ぐらいいて、慌てて逃げてきたらしい」


「そんなに!」


「あっ、それさっきケヴィンさんから聞きましたよ。一応簡単に報告だけってことでしたけど…」


「そう。じゃあ、アスカちゃんたちのレポートと一緒に出すから、ちょっとまとめておいてもらえる?」


「分かりました」


「ごめんなさい、依頼の途中で。一先ず、討伐の方が金貨2枚ね。後は、買取の方かしら」


「そうですね。ありがとうございます」


ホルンさんに挨拶をして、解体場に行く。


「おう!アスカか。久しぶりだな」


「クラウスさん、久しぶりです。よろしくお願いします」


私たちはサンドリザードを出して、買取に進む。


「うむ。肉の方がちょっと値上がってるからそれを入れてと。代わりに皮の方が大量に取れたせいで、安いがな」


がははとクラウスさん。結局、買取の合計はいつもと一緒だった。


「あっ、肉の方お願いします」


「おうよ!お前らは?」


「う~ん。買取価格が上がってるからパスで」


「僕もかな」


「俺は土産にちょっとくれ」


こうして、私とノヴァが肉を一部買って、ジャネットさんとリュートは見送ったのだった。


「それじゃあ、今日もお疲れさま」


「アスカも」


「おう!じゃあな」


ノヴァたちとはギルドの前で別れて、私とジャネットさんは宿を目指す。


「久しぶりにお土産ができました!」


「最近はこういう依頼がなかったからねぇ」


依頼も果たせたし、冒険も堪能できた私たちは意気揚々と宿へと戻った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ