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完成と製作

一夜明けて、今日は神像の2体目が完成する予定だ。早速、細工道具を出してと…。


「アスカ、ごはん」


「あっ、まだだった!」


下に降りて簡単に朝食を済ませ、いよいよ本体の制作にかかる。とはいえ、細かい部分が多くて結構大変なんだよね。


「そういえば、村の人にはアクセサリーを作った方がいいのかな?」


司祭様はシスターさんに祈りの時は身につけるようにって言ってたけど、やっぱり村でも必要なんだろうか?


「まあ、材料は余ってるし作っておけばいいよね」


あれば渡せばいいだけだし、無くて作って欲しいと言われるよりはいいよね。そう思って一緒に作ることにした。


「まずはなんといっても神像の方だよね。髪とか細工のところが難しんだよね」


銀を加工すること自体は難しくないんだけど、サイズが一回り小さくなってるから細かいところの難易度が上がっている。かと言って、ワンサイズ上げてしまうと今度は水龍を大きくしないといけない。


「これ以上のサイズになると単価がね…」


今でも、1つ銀貨1枚以上なのだ。ここに加工費と本体の銀の材料費が入る。ワンサイズ上げると石の価格は倍以上になるからそっちだけでも銀貨3枚程度、そこに使用量が上がった銀を加えると材料費だけでも金貨1枚近くになってしまう。


「流石にそれはねぇ。失敗のコストとかも考えるとかなりの金額でないと売れなくなっちゃう」


金貨2枚なら一度失敗すれば材料費だけでほぼプラスマイナスゼロだ。そう言うのは避けたいんだけどな。


「今はきっちり作り上げなきゃね」


気持ちを切り替えて、作業に戻る。羽衣のひらひらした部分は途中ではめ込む形にしている。背中のところに出っ張りを作って、そこにはめ込んで再現するのだ。こうすることで失敗のリスクを下げている。最悪、そこだけ作り直せるようにってね。


「こうしないと、ぎりぎりなんだよね。この部分が本体では一番難しいし」


ひらひらした部分は加工自体が難しい。曲線を描くのが難易度高いんだよね。それに、あまり大きく作ってしまうと服とのサイズ感がずれちゃうし、水龍に当たってバランスが崩れる場合もある。それらを解決するための方法として思いついたのだ。


「ほんとは継ぎ目のないのが一番なんだけどね。旅が終わった後ならいいけど、今はお金も必要だしあんまり無茶できないしね」


旅が終わって落ち着いたら、こういった作品とかも一度作り直したいなぁ。その時は初期と違ってもっと腕が上がって、別物になったりしてね。


「なんて夢のようなこと言ってないで作業作業」


地道に作業を続けていく。こうして、お昼を少し回ったところでようやく完成した。


「終わった~。後はイヤリングとネックレスを作るだけだけど、ちょっとお休み~」


ずっと集中していたのでクタクタだ。私は行儀が悪いけどベッドにごろんと横になる。


「あ~、この瞬間が気持ちいい~。お昼っていうのもポイント高いよね」


夜は寝るためだけど、だらけるためにお昼に入るベッドは格別だ。ああ、そんなこと思ってたら眠くなってきちゃった。


「まだ、とちゅうなんだから~」


そう思いながら私は意識を手放したのだった。


「…ねえちゃん。おねえちゃん。晩御飯食べないの?」


「ふぇ?」


目をゴシゴシこする。目の前にはなぜかエレンちゃんがいる。


「もう、夜だよ?早く降りてこないとご飯無くなっちゃうよ」


「それは困る…」


「だったら、早く着替えてね。流石にそのかっこじゃ下に降りられないよ」


「は~い」


着替えながら、外の景色を見る。どうやらもう夕暮れ時のようだ。とはいえ季節は夏間近。もう19時は過ぎていると思われる。


「私もしかしてずっと寝てたの?」


「そうだよ。14時ぐらいにティタが起きなさそうっていうから、お昼ご飯は見逃したけど、流石に夕ご飯まではダメです」


「ありがとう」


コンビニもないこの世の中じゃ、食べ逃すととても後がつらい。保存食の一つでも持っていなければろくなものにありつけないのだ。


「私の持ってる保存食といえば干し肉だけど、これは加熱しないと硬くて食べられないんだよね。宿じゃ火は使えないし不審者になるところだったよ」


宿の前で干し肉を焼く少女。絶対に衛兵さんに通報されちゃうだろう。


「分かったら早く降りて来てね」


「了解です!」


元気よく返事をして、着替えて食堂へ。


「ん?今日はえらく遅いんだね」


「ジャネットさんこそ今日は今ですか?」


「ああ、レディトまで行った帰りさ。暇なんで護衛依頼に邪魔したんだが、結局何も収穫なしさ」


「まあ、商人さんたちはその方がいいでしょうけど」


「とはいえ、今日日護衛依頼といっても冒険者が余り気味で、売り手市場だよ。一晩宿で休んでうまいもん食ったらほとんど残らないね。アスカは何してたんだい?」


「私はちょっと細工を…。シェルレーネ様の新しい神像にチャレンジしてたんです」


「何でまた?バルドーのおっさんはグリディア様の信奉者だろ。関係ないじゃないか?」


「それがですね…」


私はジャネットさんに神託を受けたことなどを小声で話す。


「何だいそれ?また、妙な依頼を受けたもんだね」


「新しいことにチャレンジできたので、私は別に構いませんけどね」


「それで、今日はぐっすりだろ?体調管理はちゃんとしなよ」


「はい。でも、そんなに体力使った記憶がないんですよね~」


「ひょっとして、魔力の方じゃないかい?従魔の分と金属加工にかなり持って行かれたんだろ?」


「あっ!そっちかも」


そっか、それであんなに眠かったんだな。そういえば、魔道具とかも連続して作らないように気を付けてたから、こんなに集中して使ったの初めてかも。


「はい、お話もいいけどきちんと食べるのよ」


「ありがとうございます」


エステルさんがジャネットさんと私の分の夕食を持ってきてくれた。


「あれ?ジャネットさん私のと違いますね」


宿に泊まってる人は同じメニューじゃなかったっけ?


「まだぼけてるねアスカは。あたしはさっき帰ってきたんだよ。夕食が用意されてるわけないだろ?」


「ああ、そういえば…」


宿を一時開けている時は基本的には夕食は用意されない。運よく夕方の早い時間に帰ってきた時や、材料が余っている時だけ用意されるのだ。こればっかりは食材の調達の関係があるから仕方ないんだよね。


「という訳で、今日は通常メニューさ。その代わり、ちょっと豪華だよ。ほら!」


ジャネットさんの器を見る。確かに私のにはない煮込み料理が追加されてる。宿泊客の夕食はパンとスープと肉が1品だ。そこに煮込み料理かぁ。じゅるり。


「こら、汚いねぇ。欲しけりゃ自分で頼みな」


「ううっ。でも、寝起きであんまり食べられないんです。今日は諦めます」


流石に今起きて肉だけでも重いのに、そこに煮込み料理を食べられる余裕は私にはない。その後もジャネットさんとはこの数日間の動きをお互い話したりして楽しい夕食だった。


「上がったらまた続きをするのかい?」


「はい。後はネックレスとイヤリングを作っちゃえば急ぎの用はなくなるので!」


「無理すんなよ」


「は~い」


返事をしてジャネットさんと別れる。


「さて、細工再開だ!」


銀の小さな塊を取り出すと、再び細工を始める。これさえ出来れば後は自分のペースで作れると思うと、作業も進む。


「ふんふ~ん」


「アスカたのしそう」


「ティタ、そうだよ。あと、エレンちゃんにお昼ご飯のこと伝えてくれてありがとう」


「アスカ、つかれてた」


「そうみたいだね。でも、今は大丈夫だから。ティタも今日は休んでて」


「うん」


そういうとティタは自分のお家に入っていく。月明かりが欲しいらしく、ティタのお家は窓の方を向いている。眩しくないのかなって聞いたら、休むだけで別に寝るわけじゃないから気にならないんだって。ゴーレムってすごい。


「よし、あと少し…」


作業を再開してから早2時間。もう22時ぐらいだろう。結界で音を遮断しているとはいえ、あまり遅くまでしていると、明日以降に差し支えるし、一気に終わらせたい。


「ここをこう、こっちはこうして…出来た!」


ようやく、2セット目の水龍+シェルレーネ様神像と装飾品のセットが完成した。


「これさえ出来れば司祭様の件は片付くし、明日からゆっくり出来そうだ」


明日こそ一日ぐらいは休みたい。そう思って私は眠りについた。



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