表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと二度目の季節、初夏

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

295/495

現世の女神?

 

 そこへ、台座とガラスカバーを持った司祭様が帰ってきた。


「探してきたぞ! ん、それは?」


「アスカ様が私にと。そちらの神像をお作りになられる時に、ご一緒に作られたようですわ」


「そうか、実にいい! 素晴らしい水龍様とシェルレーネ様の像と、それを身につける信徒だな。うむ、今後祭壇に飾るから祈りの際は必ず身につけるように。その方が一緒に祈る信者たちにも判りやすい」


「よろしいのでしょうか? 私のようなものが女神様と同じものを身につけても……」


「何を言っておる。元々、神像のデザインは人によるもの。多かれ少なかれそういうものは存在する。今回のものは全く同じデザインなのだからそれこそ問題ない。信徒が同じものを身につけるという一体感も生まれるしな」


 息継ぎをして更に司祭様が続ける。


「それよりもどの角度が一番映えるだろうか? 祭壇は基本的に斜めから見るからな。一番いい角度が欲しいのだ!」


「それでしたら……」


 シスターさんと司祭様はどう神像を置いたらいいかで話し始めた。ここに居たら巻き込まれそうだし、こそっと出て行こう。


「そうだ! アスカ様、あの神像は一体限りですかな?」


「ひゃっ! 一応、追加で四体ぐらいはと思ってますが……」


「おおっ、四体も! でしたら、ぜひ一体は教会までお持ちくださいませんか?」


「い、いいですけど、どうしてですか?」


「これほどの出来の像であれば、私の出身地の村もきっと気に入ると思いましてな。水龍信仰の要になりましょうぞ!」


「そ、そうですか。ガンバリマス」


 やばい、司祭様の圧がすごい。いったんここは適当に切り上げてしまおう。


「うう~ん、思わぬところで宗教関係者の熱を知ってしまった」


 何とか教会を出た私は部屋に戻って再び細工を始める。


「とりあえず先に追加の一体だけ作っちゃおう。バルドーさんの依頼が後になっちゃうけど、これは先にしておいた方がよさそうだ」


 ないとは思うけど、制作中に聞きに来られても面倒だから先に片付けてしまおう。そうと決まれば細工道具を広げてと……。


「せっかくだしお祈りもしてから作ろう」


 シェルレーネ様にお祈りしてと。じゃあ、作ってくぞ~。



「つ、疲れた~」


 まだ午前中が終わっただけだというのに、かなりの疲労感だ。それもこれも二つ目の水晶体に問題があった。一つ目は全体的に色味も統一されていて綺麗な感じだったんだけど、二つ目のは模様が縦横に走っていて、すごく処理に時間がかかった。さすがにちょっと諦めて、休憩がてらお昼ご飯というわけだ。


「あら、今日は早いのねアスカ」


「エステルさん。ちょっとつまっちゃって……」


「そうなの? 食事は軽めなのにしておくわね」


「ありがとうございます」


「また細工?」


「そうですね。でも、金属と違って水晶とかは模様も全部違うので難しいんです」


「宝石って不思議よね。熱を加えると透明度が増したりするし……」


「そ、その話を詳しくお願いします!」


「詳しくって言っても、聞いただけよ。何でもちょっと熱を加えると模様が安定する場合があるんだって。この前おじさんの店で見てたらそんなことを教えられたわ」


「そうなんですね。加熱……加熱か。ちょうど、削りカスがいっぱいあるし試してみようかな?」


「アスカ、またこぼしてるわよ。考え事をしながら食べないの」


「あっ、はい」


 もぐもぐ


「あたっ!」


「だから、食べる時はきちんと食べることに集中しなさい」


「はい……」


 むむぅ。さすご料理人のエステルさんだ。こういうところはしっかりしてるなぁ。考えるのを諦めて食べることに集中した私はハムサンドとスープのお昼ご飯を食べ進める。

 ハムサンドのハムが薄切りを並べたんじゃなくて、厚めに切ってあるのもポイント高いよね。肉っぽい食感も味わえるし、塩分も調整しやすいしね。


「ごちそうさまでした!」


「はい。無理しないでよ」


「は~い」


 エステルさんと別れて再び部屋へ。ミネルたちは朝からお外に行ってたんだけど……。


「あれ? みんな帰ってきたの?」


 話を聞くと宿の周りしか飛べないので、アルナが飽きて帰ってきたとのこと。


「でも、私もこれから細工だから遊んであげられないしなぁ」


 誰か信頼できてミネルたちを遊ばせられる人かぁ。そうだ! ディースさんに頼もう。


「ティタ、悪いんだけどディースさんのところに行ってくれる? あの人なら遊ばせてくれると思うから」


「りょうかいです」


 ティタが早速、アルナたちと出ていく。あの子たちが生まれてからあまり会えてないし、この機会に私以外の人にも馴れてもらおう。


「この町に住むならディースさんに馴れた方がいいしね」


 この前ちょっとお話しして、子どもたち以外は私が町を出る前に契約してもらうことにしたんだ。大変かなって思ったけど、魔物使いは魔物と契約するまでが一番大変らしくて快く引き受けてもらった。


「子どもたちは将来どうするか決まってからにしてあげたいしね。エミールはともかく、アルナは野生に戻るかもしれないし」


 それはさておき、今は細工だ。まずはこれを片付けないと!


「確か加熱するんだったよね。失敗すると嫌だし欠片を集めてと」


 金属板を用意して、下には半球形の型を置いて溶けたものが流し込むようにする。


「実際にはこんなに加熱しないけど、色の変化とかも見ておきたいしね。それじゃあ、実験スタート!」


 魔法で少しずつ加熱していく。時間が経つと青く透明度も増していく。しばらくすると、青みが薄まっていった。最後に風を送り込んで冷やしていくと……。


「ビー玉?」


 出来上がったのはビー玉のような物体だった。固まる前に形を整えて綺麗な球形にする。


「へ~、こうやって作るんだ~」


 出来上がったビー玉は青みがかった模様で、とっても綺麗だ。エレンちゃんにも見せてあげよう。


「で、加熱の目安はと……」


 さっきの実験結果をまとめて紙に書いていく。一応、今回の絵にも書き足しておくけど、きちんと別で書いておかないとね。


「間違えて色が変わるまで加熱しちゃうかもしれないし」


 削り出しが途中になっている石を出して実際に加熱してみる。今度は大きくて熱の伝わりがよくないみたいで、じっくり行う。


「よし! これで大丈夫だね」


 縦横に走っていた線模様が透明度を増して、目立たなくなった。これならもっと削っても違和感がないだろう。


「じゃあ、進めていこう」


 止まっていた作業がどんどん進んでいく。作業自体は難しいんだけど、今までと違う内容も多く楽しく進んでいき、気がついたら夜になっていた。


「よしっ! 水龍は出来た。本体の女神像は明日にしよう!」


 連続で大作に挑んだので、かなり疲れが感じられる。


「さて、ご飯ご飯」


 いつの間にか帰って来ていたミネルたちと一緒にご飯を食べに下りる。時間もちょっと遅めだし、人に慣れるのも必要かと思って一度試すことにしたんだ。


「嫌だったら上に戻ってもいいからね~」


《ピィ》


《ピッ》


 食堂ではエレンちゃんたちが忙しそうに片づけをしていた。


「あっ、おねえちゃん下りてきたんだね。ちょっと待ってて。今片付けてるから」


「は~い。あっ、今日はミネルたちもここで食べるから、よろしくね!」


「分かった。一緒に持ってくね」


 時間的には夕方開店後、二度目のお客さんが帰るところだ。ここまでは連日大入りなので、結構大変なんだよね。やってくる人も街の人の割合が多いし、メニューもバラバラなんだ。

 ここを越えるとお客さんもみんな疲れてて、一つ注文すると、俺も! 私も! って感じで、同じメニューが続くってエステルさんがこの前言っていた。


「さて、今日は何かな~」


 宿泊者は注文が取られることもなく、みんな一緒のメニューだ。だから、運ばれてくるまで何が来るか分からない。そういうところがワクワクするんだよね。


「お待たせ~。おねえちゃん食べられる?」


「うん、大丈夫だよ。どうして?」


「疲れてそうだから食べられるかなって」


「食事は大丈夫だよ」


「良かった。それじゃ、ゆっくり食べてね~」


「は~い」


 エレンちゃんが持ってきてくれたのはオークカツだった。疲れている時は尚更こういうのが食べたいんだよね。ちゃんと一回食べて、心身ともにリフレッシュしないと!


「あ~ん。ん~、相変わらず柔らかくて美味し~」


「こらアスカ。大口開けて行儀悪いわよ」


「でも、美味しいものは美味しく食べたいです」


「それもそうね。ここ、座るわよ」


「はい」


 夜の空いた時間にエステルさんが食事を取りに来たので相席する。


《ピィ》


「あら、今日は子どもたちもいるのね」


「はい。そろそろ、他の人にも慣れた方がいいかなって」


「そうね。野生で過ごすならともかく、街で過ごすならある程度見分けがつかないとね」


「そうですよね。私にだけ馴れてても駄目ですし」


「意外ね。アスカってばもっと過保護かなって思ってたから」


「私だって色々考えてますよ」


「それで連れて来てみてどうだった?」


「二羽とも大丈夫そうですね」


 もっと周りを気にするか思っていたけど、マイペースにご飯を食べている。


「まあ、今日はまだ週の間だからね。翌日が休みの日は微妙かも。お酒を飲む人も増えるし」


「お酒はよくなさそうですね。当分その日は諦めます」


「それが良いと思うわ。それと、時間帯もね。この時間は結構お酒を飲む人も多いから、早めの方がいいと思うわ」


「なるほど! ありがとうございます」


「これぐらいなんでもないわ。それより、みんなの分の食事は足りてる?」


「えっと……大丈夫みたいです。家には大食漢はいませんから」


「それじゃ、明日の希望は何かあるかしら?」


「明日ですか?」


「ええ、この子たちの食事は先に作っておくから、大体この時間から作るのよ。今日の当番は私なの」


 ティタに通訳してもらって、明日の食事は野菜中心になった。意外にもアルナが好きらしい。


「それじゃ、用意しておくから」


「はい。ありがとうございます」


 食事を終え、エステルさんと別れて部屋に戻る。


「後はお風呂に入って、お祈りをするだけだね。みんなお休み~」


 お風呂に入る前にミネルたちに挨拶をする。まだまだアルナたちは早寝だからね。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ