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現世の女神?

そこへ、台座とガラスカバーを持った司祭様が帰ってきた。


「おお、ようやく探してきたぞ!ん、それは?」


「アスカ様が私にと。どうやら、そちらの神像をお作りになられる時に一緒に作られたもののようですわ」


「そうか!実にいい!素晴らしい水龍様とシェルレーネ様の像と、それを身につける信徒だな。うむ、今後祭壇にこの神像を飾るから、祈りの際は必ず身につけるように。その方が一緒に祈る信者たちにも判りやすい」


「よろしいのでしょうか?私のようなものが女神さまと同じものを身につけても…」


「何を言っておる。元々、神像のデザインは人によるもの。多かれ少なかれそういうものは存在する。今回のものは全く同じデザインなのだからそれこそ問題ない。信徒が同じものを身につけるという一体感も生まれるしな」


息継ぎをして更に司祭様が続ける。


「それよりもだ!どの角度が一番映えるだろうか?祭壇は基本的に斜めから見るからな。一番いい角度が欲しいのだ!」


「それでしたら…」


シスターさんと司祭様はどう神像を置いたらいいかで話し始めた。ここに居たら巻き込まれそうだし、こそっと出て行こう。


「そうだ!アスカ様、あの神像は1体限りですかな?」


「ひゃっ!一応、あと4体ぐらいはと思ってますが…」


「おおっ!4体も!でしたら、ぜひ1体は教会までお持ちくださいませんか?」


「い、いいですけど、どうしてですか?」


「これほどの出来の像であれば、私の出身地である村の長もきっと気に入ると思いましてな。水龍信仰のかなめになりましょうぞ!」


「そ、そうですか。ガンバリマス」


やばい、シスターさんもそうだけど司祭様の圧がすごい。一旦ここは適当に切り上げてしまおう。


「うう~ん、思わぬところで宗教関係者の熱を知ってしまった」


何とか教会を出た私は部屋に戻って再び細工を始める。


「と、とりあえず先に1体だけ作っちゃおう。バルドーさんの依頼が後になっちゃうけど、これは先にしておいた方がよさそうだ」


無いとは思うけど、制作段階とか聞きに来られても面倒だし、先に片付けてしまおう。そうと決まれば細工道具を広げてと…。


「そうだ!折角だしお祈りをしてから作ろう」


シェルレーネ様にお祈りしてと。じゃあ、作ってくぞ~。


「つ、疲れた~」


まだ午前中が終わっただけだというのに、かなりの疲労感だ。それもこれも2つ目の水晶体に問題がある。一つ目は結構綺麗な感じだったんだけど、2つ目のは模様が縦横に走っていて、すごく模様の処理に時間がかかる。流石にちょっと諦めて休憩がてらお昼ご飯という訳だ。


「あら、今日は早いのねアスカ」


「エステルさん。ちょっとつまっちゃって…」


「そうなの?食事は軽めなのにしておくわね」


「ありがとうございます」


「また、細工?」


「そうですね。でも、銀とかと違って水晶とかは模様も全部違うので難しいんです」


「でも、宝石って不思議よね。熱を加えると透明度が増したりするし…」


「そ、その話詳しくお願いします!」


「詳しくって言っても、聞いただけよ。何でもちょっと熱を加えると模様が安定する場合があるんだって。この前おじさんの店で見てたらそんなことを教えられたわ」


「そうなんですね。加熱…加熱か。ちょうど、削りカスがいっぱいあるし試してみようかな?」


もぐもぐ


「ああ、またアスカこぼしてるわよ。考え事をしながら食べないの」


「あっ、はい」


もぐもぐ


「あたっ!」


「だから、きちんと食べるときは食べることに集中しなさい」


「はい…」


むむぅ。流石料理人のエステルさんだ。こういうところはしっかりしてるなぁ。あきらめて食べることに集中した私はハムサンドとスープのお昼ご飯を食べ進める。ハムも薄切りを並べたんじゃなくて、厚めに切ってあるのもポイント高いよね。肉っぽい食感も味わえるし、塩分も調整しやすいしね。


「ごちそうさまでした!」


「はい。無理しないでよ」


「は~い」


エステルさんと別れて再び部屋へ。ミネルたちはお外に行ってるんだけど…。


「あれ?みんな帰ってきたの?」


話を聞くと、宿の周りしか飛べないのでアルナが飽きて帰ってきたとのこと。


「でも、私もこれから細工だから遊んであげられないしなぁ」


誰か信頼できてミネルたちを遊ばせられる人かぁ。そうだ!ディースさんに頼もう。


「ティタ、悪いんだけどディースさんのところに行ってくれる?あの人なら遊ばせてくれると思うし」


「りょうかいです」


ティタが早速、アルナたちと出ていく。あの子たちが生まれてからあまり会えてないし、この機会に私以外の人にも馴れてもらおう。


「この街に住むんならディースさんに馴れた方がいいしね」


この前ちょっとお話しして、子どもたち以外は街を出る前に契約してもらうことにしたんだ。大変かなって思ったけど、魔物と契約するまでが一番大変らしくて快く引き受けてもらった。


「子どもたちは将来どうするか決まってからにしてあげたいしね。エミールはともかく、アルナは野生に戻るかもしれないし」


それはさておき、今は細工だ。まずはこれを片付けないと!


「確か加熱するんだったよね。失敗すると嫌だし欠片を集めてと」


金属板を用意する。その下には球形の型を置いて溶けたものを流し込むのだ。


「実際にはこんなに加熱しないけど、色の変化とかも見ておきたいしね。それじゃあ、実験スタート!」


魔法で少しずつ加熱していく。時間が経つと青く透明度も増していく。しばらくすると、青みが薄まっていく。そこに風を送り込んで冷やしていくと…。


「ビー玉?」


出来上がったのはビー玉のような物体だった。固まる前に形を整えてきれいな球形にする。


「へ~、こうやって作るんだ~」


出来上がったビー玉は青みがかった模様で、とってもきれいだ。エレンちゃんにも見せてあげよう。


「で、加熱の目安はと…」


さっきの実験結果をまとめて紙に書いていく。一応、今回の絵にも書き足しておくけど、きちんと別においておかないとね。


「間違えて色が変わるまで加熱しちゃうかもしれないし」


削り出しが途中になっている石を出して実際にやってみる。今度は大きくて熱の伝わりがよくないみたいで、じっくり行う。


「よし!これで大丈夫だね」


縦横に走っていた線模様が透明度を増して、目立たなくなった。これならもっと削っても違和感がないだろう。


「じゃあ、進めていこう」


止まっていた作業がどんどん進んでいく。作業自体は難しいんだけど、今までと違う内容も多く楽しく進んでいく。気がついたら夜になっていた。


「…。よしっ!水龍は出来た。本体の女神像は明日にしよう!」


流石に連続で大作に挑んだので、かなり体で感じられるぐらいに疲れがある。


「さて、ご飯ご飯」


いつの間にか帰って来ていたミネルたちと一緒に下に降りる。時間もちょっと遅めだし、人に慣れるのも必要かと思って一度試すことにしたんだ。


「別に、上に戻ってもいいからね~」


ピィ


ピッ


下に降りると、エレンちゃんたちが忙しそうに片づけをしていた。


「あっ、おねえちゃん降りてきたんだね。ちょっと待っててね。今片付けてるから」


「は~い。あっ、今日はミネルたちもここで食べるから、よろしくね!」


「分かった。一緒に持ってくね」


時間的には夕方開店後、2度目のお客さんが帰るところだ。ここまでは連日大入りなので、結構大変なんだよね。入ってくる人も街の人の割合も多いし、メニューもバラバラなんだ。ここを越えると、大体みんな疲れてて一つ注文すると、俺も!私も!って感じで、あんまりメニューが変わらないってエステルさんがこの前言ってた。


「さて、今日は何かな~」


宿に泊まっていると別に注文が取られることもなく、一緒の食事だ。ただし、メニューとかを持ってきてもらうことがないため、基本的には運ばれてくるまで何が来るかわからない。そういうところがワクワクするんだよね。


「お待たせ~。おねえちゃん食べられる?」


「うん、大丈夫だよ。どうして?」


「疲れてそうだから食べられるかなって」


「食事は大丈夫だよ」


「良かった。それじゃ、ゆっくり食べてね~」


「は~い」


エレンちゃんが持ってきてくれたのはオークカツだった。確かに、疲れているけど尚更こういうのが食べたかったんだよね。グッと一回食べて、心身ともにリフレッシュしないとね!


「あ~ん。ん~、相変わらずやわらかくておいし~」


「こらアスカ。大口開けて行儀悪いわよ」


「でも、美味しいものはおいしく食べたいです」


「それもそうね。ここ、座るわよ」


「はい」


ピィ


「あら、今日は子どもたちもいるのね」


「はい。そろそろ、色んな人に慣れた方がいいかなって」


「そうねぇ。野生で過ごすならともかく、街で過ごすならある程度見分けがつかないとね」


「そうですよね。私にだけ馴れててもダメですし」


「意外ね。アスカってばもっと過保護かなって思ってたから」


「私だって、色々考えてますよ」


「そうね。それで、連れて来てみてどうだった?」


「結構2羽とも大丈夫そうですね」


「まあ、今日はまだ週の間だからね。翌日が休みの日は微妙かも。お酒飲む人も増えるし」


「お酒はよくなさそうですね。当分はその日は諦めます」


「それが良いと思うわ。それと、時間帯もね。この時間は結構お酒を飲む人も多いから、早めの方がいいと思うわ」


「なるほど!ありがとうございます」


「これぐらいなんでもないわ。それより、みんなの分の食事は足りてる?」


「えっと…大丈夫みたいです。家には大食漢はいませんから」


「それじゃ、明日の希望は何かあるかしら?」


「明日ですか?」


「ええ、この子たちの食事は先に作っておくから、大体この時間から作るのよ。今日の当番は私なの」


ティタに通訳してもらって、明日の食事は野菜中心になった。意外にもアルナが好きらしい。


「それじゃ、用意しておくから」


「はい。ありがとうございます」


食事を終え、エステルさんと別れて部屋に戻る。


「後はお風呂に入って、お祈りをするだけだね。みんなお休み~」


先にミネルたちに挨拶をする。まだまだ、アルナたちは早寝だからね。




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