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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと二度目の季節、初夏

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依頼の消化


 採取依頼のために新たなポイントに着いた私たちは早速薬草を探し始める。


「よしっ! ここはまだ発見されていないみたいだね」


「なら、さっさと採っちまおうぜ」


「そうだね」


 手分けして私たちは薬草を採取する。もう依頼分は達成しているから、みんなで採っても大丈夫だ。


「次のポイントだけど、あそこは以前採っちゃったから、その先へ行こう」


「一応確認しないのか?」


「次行くところが採られてなければ大丈夫なはずだよ」


「OK、それじゃあ向かおう」


 そしてしばらく歩き続け、目的のポイントに到着した。


「やっぱりこっち側は大丈夫みたい。レディト方面だけみたいだね」


「なら、まだ安心だね」


「ひとまずはね」


 ここでも薬草を採っていく。半分以上アルバ側に来ているので、ここでサンドリザードに会うことも滅多にないし、割と安心して採れるのもいいところだ。


「こんなところかな?」


 薬草も採り終えたので、そのまま町に向かって進む。


「なあ、もう街道に出てもいいんじゃねぇ?」


「確かにねぇ。この辺はまだまだ魔物も大人しいし、森を歩くよりは疲れないしね」


 ノヴァの提案で街道まで出て、そこからは道なりに進んでいく。昔は儲けを考えて避けていた街道だけど、最近はここを通ることも多くなってきた。なんだか不思議な気分だ。


「お~い、置いてくぞ~」


「待って~」


 街道では魔物に出会うこともなく、みんなとお喋りしながらアルバに着いた。



「到着~」


 町へ戻るとギルドへ向かい、依頼の完了報告を済ませる。


「ホルンさん。依頼完了しました!」


「あら、お疲れ様。それじゃ、ここに出して」


「それじゃあ、リラ草からお願いします」


 私たちはリラ草からルーン草、ムーン草と順番に出していった。リラ草は少なくて二十本ぐらいだったけど、ムーン草やルーン草は五十本以上あった。


「こんなにたくさん見つけてきたの?」


「はい! 頑張って北と南で採ってきましたから」


「そう、ちょっと待っててね」


 ホルンさんがそれぞれの薬草を取り分けていく。リラ草は八割方がAへ、ムーン草とルーン草は六割から七割ぐらいがAかな? こっちは生育状態がよくないのもあったし、仕方ないよね。


「う~ん、かなり品質がいいわね。これひょっとしてアスカちゃんが全部採ったの?」


「最後だけみんなで採りましたけど、ほとんど私です」


「やっぱり。じゃあ、依頼料込みで合計金貨九枚ね」


「相変わらず、すごい値段だね」


「それじゃ、分けますね~」


 みんなに報酬を分けて今回の依頼は終了だ。


「さて、それじゃあたしはちょっとぶらついてくるよ」


「俺は家に帰るな」


「僕も」


「それじゃ、私も宿に戻るね」


 みんなで挨拶を交わして、今日はその場で解散だ。


「ただいま~」


「あっ、おかえりおねえちゃん。バルドーさんどうだった?」


「しっかり送り届けてきたよ。馬車で王都に向かったから、後一日ぐらいで着くんじゃないかな?」


「そっか、お疲れさま〜」


「エレンちゃん、しばらく部屋の整理をしてるから夕飯になったら呼んでもらえる?」


「は~い」


 エレンちゃんにご飯の時間に来てもらうようお願いして、部屋へ戻る。


「ただいま~」


「おかえり」


《ピィ》


《チッ》


 部屋に入るとティタたちが出迎えてくれた。そして、ミネルとアルナは何故か部屋を飛び回っている。


「今度は何?」


「アルナ、こっそりさきにごはんたべた」


「そっか。それでミネルが追いかけてるんだね」


 狭い部屋だというのに二羽とも飛び回っている。ミネルは注意しているのだろうけど、アルナの方は完全に楽しんでるなあれは。窓から出ようと魔法を使ってもミネルがそれを防ぐので、お互い部屋から出られないみたいだ。


「ほいっ」


 魔法で風の結界を作る。すぐに反応して解除しようとするアルナだけど、残念ながら私に魔力で劣るアルナでは解除できない。すかさずミネルが抑えにかかる。


「ゲームセット! なんてね。あんまりいたずらしちゃだめだよアルナ」


《ピィ》


 せっかくいいところだったのにと抗議してくるアルナだけど、私はミネル派だから諦めてね。


「さて、それじゃ、久し振りに荷物整理でもしよう」


 私はこの間、たまってきた荷物を整理する。本も結構多くなってきたし、まとめて箱か何かに入れておかないと邪魔になってきた。


「この本は滅多に読まないし、こっちの箱へ。これはまだ読むから机にと。ん? これなんだっけ?」


 でっかい突起物が見つかった。どこかで見た気がするなぁ……。


「あっ、これハイロックリザードの牙だ! 加工してもらうの忘れてたよ~」


 確かジュールさんの話じゃ弓に出来るんだっけ?また今度、シャスさんに会いに行かないと……。以前行った時に聞いた村の話も気になるし、どこかでみんなに話して行こうかな?


「まあ、その前にバルドーさんの依頼もあるし、先に細工を終わらせないとね」


 それに来月分の依頼は終わらせてないから、遠出するならその分も先に作っておかないと……。


「となると早くても三週間後かぁ。よし! 間に合うように頑張るぞ~」


 私は早速、細工セットを出して細工を進めていく。とりあえずグリディア様の像を追加で作ってと。今は木像がほとんどだから、銅像とか銀もちょっと作らないとね。


「しばらくは依頼を受けに行かないから、このチャンスにいっぱい作らないと!」


 私は魔道具を用意して加工していった。


「ううん。こんな感じかな?」


 髪のなびく感じがどうにも決まらない。わずかに削って形を整えるんだけど、どうしてもイメージからズレてしまう。


「一瞬の表現って難しいんだな。まあ、わずかでも違うってことが好意的に捉えられるといいんだけど……」


 二体ほど作ったところで六の鐘が鳴り、今日は時間切れになった。


「あっ、もう六の鐘か……。そろそろ畳まなきゃ」


 もうすぐ、ご飯の時間だし今日はここまでだね。


「ほら、エミールに当たってないで反省する!」


《ピィ》


 ミネルに怒られてエミールに当たるなんて……。


「エミールも怒って良いんだよ。アルナはちょっと大人しくならないとね」


《チィ》


 大丈夫とエミールは翼を広げるけど本当かなぁ……。まあ、本人がいいって言ってるうちは見ておくか。それにしても、アルナは暇さえあれば外に出るんだから。

 ちょっと休憩がてら下りたら、リンネの頭に乗っかってたし。リンネもうるさく鳴かなければ気にしないみたいで、何にも反応を返さない。


「みんなアルナに甘くない?」


 じーっとティタが見つめてくる。


「そうですね」


「だよね~」


 ティタとうんうんと頷きながら、ベッドでちょっとゆっくりする。


「おねえちゃんご飯~」


「は~い」


 エレンちゃんが呼びに来てくれたので食堂へ向かう。時間は大体、十八時半ぐらいだ。


「おっ、アスカちゃん久し振り」


「おじさん、お久し振りです。元気ですか?」


「ああ、この前の串屋の肉のおかげかな?」


「あの新しいやつですよね。私も食べました」


「だが、あの味どっかで食べたことあるんだよなぁ」


 まあ、串屋の新しい味は宿のたれを参考に作られてるからね。こっちのより味は濃いめだけど。


「さて、今日は何かな?」


「アスカ、はい」


「エステルさん。ありがとうございます」


 エステルさんが持ってきてくれたのはお野菜のセットだ。最近、肉が多かったから助かるな~。どうしても、旅の途中は干し肉が多くなるからね。今日はミネストローネかぁ。


「いただきます」


 うん、美味しい。野菜の味にキノコも入ってて良い出汁が出てる。


「良かったらこれも付けてね」


「は~い」


 追加で持ってきてくれたのは辛みのある調味料だ。辛いのは苦手だからちょっとだけかけてと……。


「おおっ! ピリッとして美味しい! いくらでも食べられるよ」


「ありがとう、パンはちょっとだけ待っててね。最近、この時間に買って帰る人が多くて……」


「そうなんですね。そういえば、小さい子が店番やってるパンコーナー人気ですね」


「ええ、元気よく挨拶してくれるし、結構人気なのよ」


 パンも新製品を週に一個は出すようにしてるし、入れ替わりも激しいから覗いていく人も増えてきたしね。


「パンといえば、お魚パンはどうなりました?」


「ああ、あれね。何とか形にはなったわ。売らないけどね」


「できたのに売らないんですか?」


「香辛料と油とで煮込んでさらに冷ましてって、工程が多くて。とても、あそこに並んでる値段じゃ出せないの。それに店で仕入れる魚って基本新鮮でしょ? それをわざわざ保存食みたいに油を入れるって言うのもね……」


 そっかぁ、残念だなぁ。ツナとかって缶詰でいっぱい売ってたけど、手間のかかるものだったんだ。そういえば、冷蔵庫がなくて肉の保存がきかないから干し肉もこっちは安かったなぁ。前世じゃ、ビーフジャーキーは高かった記憶があるのに。


「ま、今は食事だね」


 再び、スープを食べ始める。やっぱりこの宿の食事は豪華だ。


「あ~、食べた~。はい、みんなも食べてね~」


 部屋に戻ってくると、ミネルたちにご飯をあげる。ちょんちょんといったんエサを小突いてから食べるエミールに、構わず食べ始めるアルナ。それを眺めつつ食べるミネルに、パクッと食べては周りを見るレダ。みんな食べ方が違ってて面白い。でも、レダは野生の頃を意識しているのか、今でも食べることだけに集中する様子がない。


「みんなのことよく考えてるよね」


《チュン》


 なんだ? という感じでこっちを向くレダ。慣れたとはいえ、初めて部屋に入ってきた時はびっくりしたなぁ。


「さあ、お風呂に入って続きだ!」


 みんなの食事で癒された後は、やる気のままに細工を作っていこうと決意をした。



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