表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと二度目の季節、初夏

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

274/495

ハウスメーカー


 ミネルたちの家を改築する手始めに、おじさんの店でオーク材を買ってきた。


「これからあなたたちの家を広げるわけだけど、何か希望はある?」


《チィ》


《チッ》


「ティタ通訳お願い」


「こどもしんぱい。おくにへやをつくる」


 なるほど、私たちにも見える方が良いかなと思ってたけど、自分たちで見張って外へ出ないようにして欲しいのか。


「それじゃ、連絡通路で新しく作る寝室と今のお家と繋げちゃおう。増築部分は屋根が開かないようにするね」


《チッ》


 ミネルも納得してくれたので、早速増築部分を考える。まずは採光窓だ。これはガラス素材を買ってあるからそれをはめ込む。後は将来のために下りれる通路を作っておこう。後はご飯台も置いてと……。


「うん! これでいったんは改築完了だね。掃除する時用に扉はロック式で一か所にしておいたし、問題ないよね」


 とはいえ、雛の状態の二羽をすぐに動かすわけにはいかない。


「それにクッション材も必要だよね。ふわっふわの生地かぁ……そうだ!」


「ティタ、ちょっと出かけてくるからよろしくね」


「りょうかい」


 ティタにミネルたちを任せて、私はフィアルさんのお店に向かう。お目当てはライズの羊毛だ。


「あれなら吸湿性とかバッチリだし、きっと気に入ってくれるよ!」


 もうすぐ夏だから一回毛を綺麗に切るって言ってたもんね。お世話を任せてるからあの羊毛は扶養資金に充ててもらうことにしてたけど、ちょっとだけ分けてもらおう。


「こんにちは~」


「あら、アスカちゃんいらっしゃい」


「あっ、お姉さん。ライズの毛ってもう剃っちゃいました?」


「今からよ。店長の手がようやく空いたの」


「それじゃ、ライズのところへ行ってきますね」


「は~い」


 お姉さんに見送られて裏庭へ。


「おや、アスカ。どうしました今日は?」


「フィアルさん、こんにちは。ちょっとお願いがあって……」


「なんでしょうか?」


「ライズの毛、ちょっとだけもらえませんか? ミネルたちの子どものベッドにしたいんです」


「ベッドですか? そういえば、ミネルに子どもが出来たんでしたね。良いですよ。どれぐらいですか?」


「ん~、替えも予備で欲しいからこれぐらいですかね」


 私はフィアルさんに欲しい量を伝える。


「分かりました。聞きましたねライズ。嫌がってないで協力してあげてください」


《ミェ~》


 私の話を聞いてライズが力強く返事をしてくれた。


「ライズ、嫌がっていたんですか?」


「どうも刃物が苦手のようですね。昨日は諦めましたよ」


「ライズ大丈夫?」


《ミェ~》


 ライズは大丈夫と言わんばかりにフィアルさんの方へ向かう。良かった、これでベッドが作れるよ。

 フィアルさんに切り立てのライズの羊毛をもらう。


「ありがとうございます。ライズもね」


 二人にお礼を言って宿へ戻る。本当は終わるまでいたかったけど、今は優先したいことがあるからね。


「ティタ、ミネル、レダ帰ったよ~」


「おかえり」


《チッ》


《チュン》


 みんなに迎えられて早速作業開始だ。まずは毛を洗うためティタと一緒に井戸まで行き、水をためて洗っていく。


「ティタ、いったん水替えるね」


「わかった」


 水を捨ててティタに魔法で水をためてもらったら加熱して再び洗う。何度か繰り返して十分に汚れが取れたら後は乾燥だ。


「ここからは私の腕の見せ所だね」


 温度を調整して熱風を送り、乾燥を促進する。


「このぐらい乾燥すれば良いかな? 出来上がった分は早速ベッドのサイズにしてと」


 多めに取った分も成形しておく。これは箱に入れて保存しておこう。こうしておけばすぐに替えられるからね。


「さぁ、ミネル出来たよ。準備したから試してみようね」


《チッ》


 新しく増築した部分にベッドを敷くと、レダがくちばしを使って延ばしてくれる。そこにミネルが雛たちを連れて入っていく。


《ピィ!》


 元気な子の方は興味津々なのかすぐに入ってくれたけど、大人しい子の方はミネルに連れられてようやくって感じだ。性格が真逆で大変そうだなぁ。二羽ともベッドに連れて行くと、馴染むのは早くてすぐに寝始めた。


「これなら今後ともこの子たちの部屋に出来そうだね」


 チッと小さくミネルが返事をしてくれる。それじゃあ、起こさないようにこの場は出て行って次に移ろう。



「というわけで今度はリンネの番だよ」


《わぅ?》


「わぅ? じゃないよ。この前の雨の日も結局濡れ鼠で家に入って、ミーシャさんに怒られてたでしょ? 日中は外にいるんだからお家作ろ?」


《わん!》


 リンネも理解してくれたことだし、ライギルさんから薪用の木を貰って小屋を作る。


「トイレは奥に作って回収しやすいように穴も開けておいて……。小屋の方はシンプルに一部屋を大きく作ってと」


 簡単な線を引いたらティタに風魔法で切ってもらう。細かい継ぎ目は私が作るけど、板にするぐらいはティタにも出来るからだ。


「それじゃ、外側の板は焼いていくよ。ファイア!」


 私は火を起こして板の片面を焼いていく。


《わぅ》


「ん、どうしたの? ああ、ビックリしちゃったのかな」


 そういえばこの前もトレーニングと称してティタと模擬戦をやってたけど、リンネは遠距離からバンバン火球を撃たれてたなぁ。火がトラウマにならないと良いけどね。


「さて、板も焼き上がったし作っていきますか。ティタそっち持って」


「わかった」


 ティタに焼き板の反対側を持ってもらって、小屋を組んでいく。エヴァーシ村でノヴァの作業を見ていて良かった。木組みとかちょっと真似してみたんだよね。


「水漏れが怖いから突き出たところはそのままだけど」


 面を綺麗にしてそこから浸水してきたらきっとリンネが怒っちゃうもんね。その後も作業は順調に進み、一時間もすれば組み上がった。


「後は下に敷くものだね。さすがにこのままだと堅いよね」


《わぅわぅ》


 はいはい、分ってるって。でも。この辺にある敷物ってウルフのが多いんだよね。それはちょっとあれだし、他の皮かぁ……。ガンドンの皮だと固すぎるしなぁ。やっぱりその辺にある毛糸を使った奴がいいのかな?


「リンネ自身はどんなのが良い?」


《わぅ》


「そといるときだから、そこまできにしない」


《わぅわぅ》


「そうなんだ。ん~、でもさすがに最低限は必要だと思うんだよね。そうだ! オークの皮が余ってるからこれを加工しよう」


 良い案を思いついたと私はすぐにバッグからオークの皮を探して持ってくる。ここに加工用の液体を入れて、加熱しながら余分な繊維を取って、後は乾燥するだけだ。


「そっちはティタに任せたよ」


「はい」


 ティタに片側からの温風を任せる。私は逆方向からのやや熱めの温風を送り、二層の温風で乾燥させていく。


「どう? うまく出来てる?」


「まあまあ」


 ティタ曰くまあまあな敷物が出来上がった。私も触ってみたけど、確かに風通しの良い素材のようで、冬が寒くないって言ってたリンネには良いかもしれない。逆に暑い夏を乗り切ってくれそうだ。


「それじゃあ、もう一個小さめのトイレ用を作るからね~」


「はい」


 ティタと協力してもう一枚の敷物を作る。こっちはサイズがさらに小さいので楽だった。


「よし! これでリンネの小屋も綺麗に出来たね。中の敷物も二枚あるし、これで居心地は良いんじゃないかな? 早速入ってみてよリンネ」


《わぅ~》


 作成中の時間で飽きてしまったリンネに使い心地を見てもらう。まずは手前の部分。そしてトイレの部分だ。


《わぅわぅ》


「とてもきにいった、ながくだいじにつかう」


「本当! ありがとうリンネ。ティタにもお礼言っておくんだよ」


《わぅわぅ》


 こうして、リンネとミネルたちの家を一新した私はその日は細工をせずにおしまい。大味な建物だったけど、それでも作業としては時間がかかって疲れたからね。細工は明日から頑張ろう。


「重要なのはうちのみんながより良い環境になったと言うことだよね!」


 ミネルたちだけじゃなく、子どもたちの環境も改善されたし、リンネも外でただ座っているのが、明日からは犬小屋で暮らすことで、より一層この宿の飼い犬だと言うことが広がるだろう。


「リンネは外出までは後一歩なんだから頑張ってね」


《わん!》


 返事は良いんだけどちょっと心配だ。まあ、今できることは終わったから、エレンちゃんにリンネの小屋の説明と、ミーシャさんにミネルたちの小屋の改築に関して話をしないとな。


「エレンちゃ~ん、ミーシャさん。いますか?」


 一緒には見つからなかったので、エレンちゃんにリンネ小屋を、ミーシャさんにはミネル小屋を説明してきた。別に難しい作りをしているわけじゃないから、二人ならすぐに慣れるだろう。


「そういうわけで、私は夕食まで休んでるね」


「は~い」


 エレンちゃんには部屋まで食事を持ってくるのをお願いして部屋に戻る。頑張った後は休まないとね。


「お休み……」


 まだミネルの子どもたちが寝ているので、刺激しないようにゆっくりベッドへ入って、夕飯の時間まで仮眠を取ったのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ