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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと最後の季節、春

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帰郷と買取

 

「う~ん。お風呂とかがあるし、屋外ってことだったら……」


「そうですか……」


 あれから何軒か宿をはしごしたんだけど、やっぱり魔物が泊まれる宿は少なかった。色々な宿で言われるのが庭置き、要は施設に入れないということだ。部屋に入るとベッドで寝たりして毛の掃除も大変だし、清掃も念入りにしないといけないから、そもそも泊まれないことが多い。


「う~ん。結局ここかぁ……」


 たどり着いた宿はペア風呂を作った宿のお姉さんに紹介してもらったところだった。今後も考えると他の候補も欲しかったので、ちょっと回ってみたんだけど、断られるか結構な追加料金がかかるところばかりだった。


「そりゃ、魔物使いが増えないわけだよ。せっかく、従魔と契約してもこれじゃあね」


「そうですね。まさか、ここまで泊まるのが難しいなんて……」


「ミネルたちぐらいの大きさなら良いんだろうけど、リンネは大きいもんね」


「でも、別料金の銀貨一枚は高すぎだよな」


「確かにね。素泊まり大銅貨二枚の宿が銀貨一枚と大銅貨二枚に早変わりだもんね」


「まあ、シーツを交換と部屋の清掃を考えたらそのぐらいの手間かもしれないけど……」


「でも、毎回その値段じゃ泊まれないねぇ」


「そうですね。今回だけならともかく今後も利用したり、旅先でってなると結構大変ですね」


「アスカがどんな従魔を連れていくか分からないけど、最初に町へ着いたら宿の確認だねぇ」


「とりあえず、今日はこの宿ですね」


「だな。俺もう腹減っちまった」


「それじゃ、受付してくるね~」


「二人部屋二つだよ」


「は~い!」


 宿の受付の人にリンネの話をして部屋を取る。ここは素泊まりで大銅貨四枚だ。部屋もちょっと狭いけど、従魔も泊まれるとあってそれなりに繁盛しているみたい。従魔以外にもペットと泊まれるしね。他にも簡単ながら防音の魔法もかかっていて人気みたいだ。


「それじゃあ、食事は出ないのでどこかで食べてきてくださいね」


「はい。ありがとうございます」


 もう一つ珍しかったのは、この宿は食堂がない。簡単な飲み物は置いてあるみたいだけど、料理はつまみもないみたい。酒場併設みたいな感覚でいたからこういう宿は初めてだ。

 逆に食堂がないから、宿自体が静かで女性客にも人気なんだって。部屋を汚さないなら持ち込みも大丈夫だし使いやすいのかも。


「お部屋取れました!」


「そんじゃ、飯に行くとするかね。どこに行く?」


「う~ん。腹減ったし、いつものところで良いんじゃねぇ?」


「そうだね。僕も結構お腹がすいたよ」


「決まりだね。それじゃ出発!」


 ジャネットさんに紹介してもらったお店に今回も出発だ。メニューによって量もかなり違うので、客層も幅広いみたい。ちなみにロールキャベツはかなりの人気だ。特に冬の間に多くの人が頼んで行ったんだって。確かに寒い中、熱いロールキャベツをパクッと口に運べばそうなるよね~。


「こんにちは~」


「いらっしゃいませ。おや、ジャネットさんたちですね。奥の席へどうぞ」


「ああ、ありがとね。そうだ、悪いけど外に従魔を置いてるから何か作ってやってくれないかい」


「分かりました。作って持って行きますね。ではこちらへ」


 案内された四人掛けの席に座る。さて、今日のメニューはと……。


「ん~、割と野菜生活も続いたから今日は肉かな?」


「向こうだと取れたて野菜が多かったから、肉はアクセント代わりに小鉢に入ってる感じだったし」


「そうだね。僕も今日はしっかり食べるよ」


 どうやら私以外にも肉を求める人間がいたようだ。こっちの世界じゃ日常に肉があふれてるし、仕方ないよね。


「じゃあ、私は……オークカツ!」


「俺はどうすっかな~。やっぱここだとロールキャベツだな」


「あたしはと……ん~、このお任せセットだな」


「僕はロールカツにするよ」


 みんな思い思いの注文をしていく。久し振りにこういう店での注文だからテンションも高い。ノヴァが早速飲み物を飲んで、完全に仕事終わりの職人さんになった。


「ぷはぁ~、やっぱりこういうのがないと次の仕事に行けねぇぜ~」


「ノヴァ、あくまでお手伝いなんだけど……」


「細かいこと言うなよリュート。一仕事終えれば、見習いでもそうでなくても関係ないんだよ」


「まあ、いっか。僕も下さい」


 久し振りの店注文で、二人とも財布のひもが緩んでるなぁ。まあ、臨時収入の額も大きかったし仕方ないよね。それから程なくして料理が運ばれてきた。

 ん~、村での料理も良いけど、こうやって雰囲気が味わえるのも良いよね~。外食してま~すって感じで。


「いただきま~す」


 一口食べるとサクッと衣が音を立てる。さらにかかったソースがじわっと口内にしみこんでくる。う~ん、やっぱりこの味だな。ライギルさんの野菜ベースのソースと違って、こっちは果実系のソースでどっちも甲乙つけがたい味だよ。次を食べないと冷めちゃう……。



「ん~、食べたぁ~」


「そうだねぇ。まさか、アスカがおかわりをするなんてね」


「でも、おかわりは通常の半分の量ですから」


「リュートの飯が守られたな」


「そうだね」


「そんな大げさな。ちょっと美味しそうだなって思って見てただけだよ~」


 リュートが頼んだのはロールカツだった。オーク肉に野菜やチーズが巻かれていて、つい見てしまったのだ。


「ちょっと? アスカよだれ垂れてたよ……」


「嘘!?」


 ゴシゴシと口元を拭く。なぁんだ別に何もついてないじゃない。


「リュートが言ってんのは今じゃなくて、おかわりを注文する前の話だよアスカ。まだ食い足りないのかい」


「あっ! えへへ、さすがに今日はもう無理ですよ。なので、ジュース下さい!」


「はい、ただいま」


 追加でジュースを注文する。ここのジュースはフレッシュジュースで美味しいんだ。ちょっと旬には早いけど、ブドウみたいな果物を使ったものなんだよね~。


「はぁ~、美味しい~」


 やっぱり、こういうジュースって良いよね。楽しかった食事も終わり、宿に泊まって今日は終了。また、明日から頑張らないと!



 一夜明けた翌日、別に急ぎの用事もないけどすることもないので宿を引き払ってアルバを目指して町を出る。


「ふわぁ~、今日はゆっくりいこうぜ~」


「そうだね。どうするアスカ? 採取しながら行く?」


「う~ん。最近採ってないからちょっとだけ」


「なら、人気の無いこの時間帯のレディト側にするかね」


「そうですね 。岩場よりに進んでいきましょう!」


 こうして私たちはレディトの南側を経由して、アルバへと進んでいく。


「あったか~?」


「うん。この辺はほとんど人が来てないみたい」


 久し振りの採取の成果はなかなかだ。というのもこっちの方面はサンドリザードが出現しないせいで、狩りに来る人が少なくて訪れる人もいないようなのだ。


「それじゃ、リュートやノヴァも頑張ってね」


「おう! ここまで来たら出来るだけ稼ぎてーからな」


「そうだね」


「手も動かしなよ~」


「は~い」


 三人でムーン草とルーン草を採っていく。ふ~む、結構採れちゃったな。薬湯じゃないけど、疲れも採れるからちょっと自分用にも持ち帰ろう。

 マジックバッグに入れる時に自分用と買取用に分けて入れておく。


「リュートもノヴァも採り忘れはない?」


「うん。僕の方は大丈夫かな?」


「俺も大丈夫だぜ!」


「それじゃ、出発するよ」


 私たちは採取を終えると、再びアルバへの道を進んでいく。思いのほか量を採れたこともあり、半分ぐらい進むと街道へ戻って後は歩くだけになった。


「ここまで来ると見慣れた景色だね」


「そうだよな~。結構アルバを離れてたから帰ってきたって感じがするぜ」


 リュートたちも何だか懐かしそうだ。もちろん私もだけど。


「着いた~!」


 それから一時間半ほど歩いてようやくアルバに着いた。

 早速、宿に帰って一休みと行きたいところだけど、まずはギルドの買い取りを済ませないとね。


「こんにちは~」


「は~い。あら、アスカちゃん久し振りね」


「お久し振りです、ホルンさん」


「細工物が忙しかったの? 最近見てなかったけど」


「いいえ。ちょっと装備を更新しに遠出してたんです」


「そうなの。それじゃ、今日はその帰り?」


「はい。向こうで手に入れた素材を見てもらいたくて」


「それじゃあ、先に解体場へ行きましょうか」


「はい!」


 ホルンさんに連れられて、解体場に向かう。この道も久し振りだ。


「ん? アスカたちか。どうした今日は?」


「アスカちゃんたち、遠出していたんですって。今日はその獲物を出してくれるそうですよ」


「おお、そうか! それじゃ出していってくれ」


「その前に、今回のはちょっと大きいからテーブルをくっつけてくれ」


「おう! お前ら寄せろ」


「はい」


 クラウスさんの指示ですぐに解体場のテーブルが並べ替えられる。


「そんじゃ、アスカも出していきな」


「は~い」


 私とジャネットさんが二手に分かれて、ガンドンを出していく。


「あら、この辺りじゃ見ない魔物ね」


「これはガンドンだな。レディトの向こうまで行ってきたのか?」


「はい。どうですか?」


「見事な大きさだな。こっちで見かけることがないから、こいつらには珍しいだろう」


「それで買取り価格は?」


「レディトぐらいなら銀貨六枚だな。今アルバで買うなら銀貨九枚ってところだ」


「へぇ~、結構値上がんだな」


「まあな。今までこっちで防具といったら、ある程度伸ばして薄くした、サンドリザードのもんだった。それがオーガ種の増加で硬い革鎧も需要が増えたんだ」


「なるほどねぇ。タイミングが良かったってことかい」


「そうだな。レディトでいつも売れるからこっちまでなかなか来ねぇしな。でかい所為もあるだろうが……」


「私たちも依頼を受けないから持ち帰れたわけですしね」


「ま、その甲斐はあったってことだな」


「よし計算するぞ。皮が金貨三枚と銀貨六枚、角が金貨二枚、肉は……銀貨一枚だな」


「やっす!」


 ノヴァが驚きの声を上げる。私も驚いた、あれだけ大きなガンドンの肉がたった銀貨一枚だなんて。


「まあ、筋も多いし味がいいわけでもない上に、大量に獲れるからな。半分は引き取り料、もう半分が買取価格って感じだな」


「一頭で大銅貨二枚ちょっとなんだ」


「それなら私お土産に買います! 一頭分!」


「一頭分!? かなりの重さと量だぞ?」


「はい。何か所かに分けて渡しますから」


「そうか。それじゃ手配するぞ。ああそれと前回のサンドリザードの幼体の買取価格だが、言っていた価格で大丈夫だ。だから払い戻しはなしだな」


 買取してもらった分をそれぞれのカードに入れてもらう。ガンドンとローグウルフで一人金貨二枚と銀貨一枚になり、良好な買取結果だった。今回の買取は生息域から外れたもので、運がよかったってこともあるけどね。


「そんじゃ、また変わったのを頼むぞ!」


「遠出したらですけどね」


 クラウスさんと別れて、再びギルドへ。今度は採取した薬草を売らないとね。



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