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Newアスカ

広場になっているところでみんなで遊んでいると村の人たちがやってきた。


「あら、何をやってるの?」


「円盤でリンネと遊んでいるんです」


「円盤?」


「これのことです」


「へぇ、変わった遊び道具なのね」


「ちょっと見ててくださいね」


私は円盤の使い方を見せながらリンネと遊ぶ。


「面白そうね。子どもたちにも良い遊び道具になるかも」


「そうですね。私の住んでいたところでも子どもに人気でしたよ」


「ちょっと見せてもらっても良い?」


「良いですよ。あっ!」


わぅ


リンネがフリスビーを取られると思ったのか、くわえて走って行ってしまった。


「もう。仕方ないなぁ。ノヴァ、リンネと遊んでもらえる?」


「おう!」


私は仕方ないので近くにあった切り株を一つ持ち出して、もう一つ円盤を作る。


「はい、これです」


「ありがとう、それっ!…あらら」


お姉さんが投げた円盤はぐわんぐわんと軌道を変え、直ぐに落ちてしまった。


「難しいのね…」


「投げる時にちょっと手首を返す感じですね」


「手首を…こう?」


「そうそう、そんな感じです」


何回か投げてお姉さんもコツを掴んだみたいでうまく投げられるようになった。そしてさらにちょっとすると…。


「なんだなんだ?」


「面白そうだな」


村の人たちも興味がわいたようで、次々にやってきた。


「皆さんもやってみます?」


「おお!」


私はすかさず同じように切り株から、2つ、3つと円盤を作成する。


「なんだ、変わったもん作ってんな」


「シャスさん!」


「ブーツが出来たから来てみれば、面白そうなことやってるな」


「シャスさんもやってみますか?」


「良いのか?」


「はい!」


早速みんなに交じってやり始めるシャスさん。でも、何度か投げてコツを掴むと急にじろじろとフリスビーを見始めた。


「どうしたんですか?」


「いやぁ、中々面白い形だなって思って。何か武器に取り入れられそうだなってな」


「ああ、円月輪ですね」


「えんげつりん?」


「あ、え~と、こ、こんな感じで円形なんですけど、ちょっと持ち手がついて中心は空洞ですね」


「へぇ、そんなのがあるのかい。いいねぇ、どうせ次の依頼まで長いしちょっと作ってみるか」


「作ってどうするんです?売れないと思いますよ」


やっぱり普通の剣とか使いやすいものが良いと思うんだけど。


「何を言ってるんだ。アスカのお陰で少なくともこの村じゃ売れる。なんせ子どもが大きくなった時に円形のものを投げる技量は上がってるだろうからな」


「あっ、そういう…」


実際未来がどうなるかは分からないけど、シャスさんは割と発想も柔軟みたいだ。


「それはそうとブーツを合わせにいくぜ」


「はい」


みんなに軽く挨拶してから工房に向かう。


「それじゃ、実際に足入れてみ」


「じゃあ、入れますね」


すぽっ


う…やっぱり大人になった時のことを考えられているせいか、ちょっとごそっとするなぁ。


「やっぱり大きいか、んじゃ今度はこれ入れな」


「はい」


同じく革製であろう補正用の敷物を入れる。こだわって作られてるみたいで、きちんと甲の部分もある。


「あっ、良い感じです。違和感がなくなりました」


「そうか、一応ちょっと薄いのも作っておいたから後で試しとけよ」


「ありがとうございます」


「そうそう、それと風魔法が使えるあんたにはあんまり意味が無いかもしれないけど、魔力を込めると一応、地面を滑るように動けるからね。後は乱用して欲しくないけどアーススパイクを打てるから」


「アーススパイク?」


「ん~、今だとちょうど切り株がまだ残ってるから、試してみるか」


そう言われてシャスさんに外に連れて行かれる。


「んじゃ、まずは装備の説明からだな。当然、ハイロックリザードの皮そのものに魔法がかかりやすいのはもちろん、一応攻撃魔法だから魔石もそれぞれブーツに埋め込んである。これに魔力を流して発動する感じだな」


「へ~、足からでも使えるんですね。手とかで触ってないといけないのかと思ってました」


「ペンダントとかと一緒だ。わざわざ持って発動させないだろ?んで、この発動が地面からだ。跳んでると発動しないから気をつけろよ」


「はい」


「まずは見本を見せるぞ。アーススパイク!」


シャスさんが詠唱すると、地面が割れていき、切り株の手前のところでドゴォと土の槍が地面から生えた。


「まあ、こんな感じだな。あっ、一応言っとくけど外れたんじゃなくて外したからな。切り株だって良い材料になるからな」


「分かりました。私もやってみますね。アーススパイク」


……ん?何も起きない?


「アスカ、イメージが良くない。手から出す感じだろそれ。ちゃんと足から魔石を伝って出るように意識しろ」


「は、はい」


普段から自分では細工以外で魔道具を使わないので、イメージがぼやけていたようだ。もう一度集中して……


「アーススパイク!」


ボコォ


シャスさんのより少し小さいけどうまく出来た。位置は…ちょっと手前だな。


「おう!やるな。後はきちんと位置の調節が出来るようにな。それと使うイメージに気を取られないようにしろ!目の前がおろそかになるからな」


「はい!後は地面を早く動くんだよね。ん~、ホバー!」


土魔法は全然知らないからとりあえずイメージしやすい言葉でと。


ヒュイィィィン


地面すれすれで音が鳴り、滑り始める。


「おおっ!これがホバー移動!確かに飛ぶのとは違う感覚だ~」


なんて言うか風魔法で地面すれすれを動いても浮いてる感覚なんだけど、これはなんとなく地に足がついた感じで、より歩行に近い感じかな?スピードはそんなに変わらないし、場合によって使い分け出来そう。


「いけっ!」


地面を滑りながらそこから風の魔法で跳んでみる。おおっ!違和感なく跳べる!風魔法で同じような動きをしてた時はボンッと変にはねる感じがあったけど、すごくスムーズに移行出来る。


「うん、こっちの方が好みかな?」


「気に入ってくれて嬉しいよ。ただ、アーススパイクは威力が一定以上にはならないのと、他の土魔法は使えないから気をつけろよ」


「は~い。ありがとうございます」


う~ん、意図せず3属性使いになっちゃった。


「これって水の魔石も使ったら、使えるようになります?」


「ああ、水の魔道具を作れる奴がいたらな」


「ほんとですか!」


「でも高い…」


「えっ?」


「水の魔石は高いんだよ。便利なのは分かるんだがなぁ。末端金貨10枚で、魔道具にするだけで金貨20枚以上。最終販売価格は金貨25枚から30枚が最安値だよ」


「た、高いんですね」


「ま、実際水があれば出来ることって多いからな。分かるんだが、それじゃ人を雇う方がよっぽど安い。屋敷でも人を一月雇って、銀貨8枚から金貨1枚ちょっとが相場だ。臨時ならもっと安い。元取るまでが大変だな」


「やめときます」


「それが賢明だろ。商人とか人数抱えて動くならともかく1パーティーじゃとても割に合わないぜ」


「はあぁ~」


自分で作れるならともかく、魔石の値段も色々なんだね。まあ、最悪その辺の水を煮沸消毒すれば良いからなんとかなるか。


「そういえば、今更なんだがアスカたちは冒険者だよな?」


「そうですけど…」


「今回は滞在期間も結構経ってるから難しいかもしれないけど、興味があるなら南西にある村跡に行ってみたらどうだ?」


「村の跡ですか?」


「ああ、何でも数百年前に魔物に襲われて壊滅したって話だ。だけど、その南となれば海が広がってるだけだから人も寄りつかないし、何かあるかもな」


「そういうのっていいんですか?」


「良いもなにも廃村扱いなんだから構わないだろ?まあ、何もない可能性もあるけどな」


「なのに薦めるんですか?」


「まあ、こんな村にしか伝わってないし荒らされてることは無いだろうからね。数百年前ってことは今は無い何かがあるかもしれないだろ?」


「今は失われたものですか…すごいですね!」


今から…は流石に無理か。もう1週間近くアルバを空けてるし、いったん戻らないといけないよね。となると…来月ぐらいかな?ちょうど夏場だし、草原は魔物も多いけど風が気持ちいいから良い機会かも。アルバに戻ったらみんなに話してみよう。


「そこまで期待されるとつらいな…。話半分で聞いとけよ。それじゃ、後は明日だな。明日にはきっとグローブも作っとくからな」


「はい!お願いします」


村まで戻るとみんなまだ円盤をやっていた。パイオニアであるリンネはというと…。


くぁ~~


口を開けて眠そうだ。


「リンネ、今日はよく動いたしもう休む?」


わん


「は~い。それじゃ、一足先に戻ります」


「おう!楽しい遊びをありがとな」


村の人たちに挨拶をして先に宿に戻る。


「さあ、洗おうね~」


わぅ


最初のお風呂が気持ちよかったのか、リンネはお風呂と聞くと嫌がる様子もなく寄ってくる。


「珍しい犬だよね~、リンネは」


わしゃわしゃと洗ってやると毛並みもさらっとする。最後に温めの温風で乾かしてあげれば完了だ。


「はい!終わりだよ」


ああ~、こういう生活も良いなと思った一日でした。



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― 新着の感想 ―
風呂好きな犬(ウルフ)とは珍しい ペット飼う時の一番大変な要素が「風呂に入れる事」だから、リンネはかなり飼いやすい性格だね
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