表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
265/492

ミッションコンプリート

「ふわぁ~、あ~よく寝た」


昨日は久しぶりにお風呂にも入れたし、すっと寝れていい朝だ。


「今は何時ぐらいかな?」


ちょっと外に出てみる。まだ薄暗いから、6時から7時前ってところかな?


「そういえばレンガはどうなったんだろ?」


ちょっと気になったのでかまどへ見に行く。


「おや、アスカさんじゃないですか。どうしたんですこんな朝早くに?」


「レンガがどうなったか気になっちゃって」


「そうですか。今はまだ冷ましている状態ですから触れませんが、良いできだと思いますよ」


「ほんとですか?」


「ええ、きっとアスカさんたちの努力のお陰ですよ。私たちもこれに負けないようなものを作らないといけませんね」


「あはは、頑張ってくださいね」


「はい。今回のレンガと家づくりだけでもかなり村は助かりました。今後はこの経験を元に村でもっと多くのことが出来るように頑張っていきたいです」


よく見たらこの人、家づくりの時からメモ取ってた人だ。熱心にメモ取ってると思ったけど、こんな真面目な人がいるならこの村も安心だね。


「それじゃ、レンガも無事確認出来たし、私は戻りますね」


「ええ、ここは任せてください!」


男の人と別れて、宿に戻る。朝ご飯まではもうちょっと時間があるし、ゆっくりしようかな?


わん


「ん?リンネどうしたの?」


リンネが遊んで欲しそうだったので、朝ご飯までの時間は一緒に遊んで過ごしたのだった。


「あ~、食った食った」


「よく食べるわね。その調子で頑張ってね」


「おう!おばちゃんの期待に答えないとな」


ノヴァは直接村の人と関わることが多いので、この数日で人気者になっていた。本人も楽しそうだし、この村に来て一番嬉しいのはノヴァかもね。


「アスカ行こうぜ!今日はいよいよ、屋根の完成と壁を作るんだからな!」


「えっ!屋根はもう出来たよね?」


「板に防水性の液体を塗っただけじゃねぇか。液体が剥がれたら直ぐに腐っちまうし、上からもう1枚屋根をかぶせるんだよ。こっちはこまめに張り替えないといけないけどな」


「大変なんだね」


「まあ、こまめにって言っても数年は持つからそこまでじゃないけどな。あっ、そうそう壁の方は頼んだぜ。まだ、全部焼き終わってないだろ?」


「うん。それじゃ、朝一番にそれをやっちゃうね」


「おう!冷めるまでの時間もあるからたのむな~」


ノヴァは一足先に手を振りながら現場に向かっていった。


「んじゃ、僕も手伝ってくるね」


「リュートも頑張ってきてね。それじゃ、私も…」


宿を出て一路、家横の木材置き場に向かう。板状には昨日したから後は焼いていくだけだ。


「今から板焼きするので気をつけてくださいね~」


「お~う」


みんなに呼びかけてから板焼きを始める。残念ながら一気に焼ける数に限りがあるから、テンポ良く行かないとね。


「はい。8枚完成!じゃあ、次に移りま~す」


焼けたらちょっと待って冷ましてから、村の人たちに運んでもらう。そうして、第2陣、第3陣と焼いていく。こっちは火加減は大事だけど、1回ごとに数分休めるし案外楽な作業だ。


「そうそう。そうやって下と横だけ柱から突き出させて、間は板を上から落としていくんだぜ~」


「この溝に入れれば良いんだよな?」


「おう!こうすれば間がびっしりしまって、水も入ってこなくなるぜ。板の下側を出っ張るようにしてたらもっと良いぜ」


「なるほど。わしも何軒か建てたものだが、今はこうやっておるのか」


「ああ。簡単に潰れた方が大工としては儲かるんだけどな!」


「ノヴァ、変なこと言わないの」


「へいへい」


ノヴァもだけど、リュートもかなり村になじんでるなぁ。私?私はちょっと遠巻きに見られることが多いかな?建ててる家の人からは拝まれたりしてたし。建ててるのは実質ノヴァなんだけどね。


「アスカさん、次お願い出来ますか?」


「はいはい、今行きま~す」


そうだ、今度いつこんなことになるか分からないし、どれぐらいの火力で何分やったか書いておこう。何事も経験と記録だね。それからしばらくして、板の方も焼き終わったので私の作業は中断だ。レンガに関してはもっと数が必要だから、これからもっと数を焼いていくって話だし、今度来る時にはもっと色んな家が出来てると良いなぁ。


「ん?アスカいたか」


「シャスさん。こんにちわ」


「ああ。いったん上は出来上がったから着けに来てくれ」


「分かりました!それじゃ、私はちょっと工房に行ってきますね」


「はい。こちらは任せてください」


村の人に挨拶をして工房に向かう。


「うう~、何度見ても恥ずかしいなぁ…」


何が悲しくて自分の像を前に着替えなくてはいけないのか。


「これ、きちんと後で処分してくださいよ」


「なんで?あんたが成人後もこの型は有効なんだから奥にしまっとくよ?」


「ええっ!そんなぁ…」


「それよりほら早く着替えな!手直しが必要か見ないといけないんだ」


「はい…」


型を着けてその上から出来上がったばかりの、鎧を着ける。


「思ったより薄いですね。それに軽い!」


「ああ、元々十分な強度のある皮だからな。その厚みで十分普通の金属鎧程度の堅さがあるよ。それと…」


「なんですか?」


「魔力を込めたら、さらに硬化出来るぞ」


「へ~、私重武装出来る体力がないので助かります」


「んで、着け心地は?」


「バッチリです。この下に着けてるののお陰でずれませんし。でも、ほんとにここまで伸びますかね?」


「たぶんな。まあ、伸びなかったら調整してやるから。んじゃ、後はグローブとブーツだな。ブーツは型取りは終わってるから、多分明日か明後日には終わるぜ」


「ありがとうございます。でも、ちゃんと休んでますか?」


「ぼちぼちな、多分あんたたちよりは休んでるよ」


「良かったです。ご飯時もあんまり見ないから…」


「まあ、飯なんて寝て起きて食べてって感じだからな。決まった時間には食べなくてな」


「気をつけてくださいよ。それじゃまた明日来ますね」


「ああ、またな!」


シャスさんと別れて再び村へ戻る。


「そっちの端は固定出来た~」


「おう、完了だぜ!」


「んじゃ、後は塗るだけだな」


「それじゃあ、それは僕らがやりますよ」


「そうか?んじゃ頼むな~」


「ノヴァ、リュート。作業はもう終わり?」


「おう!後は壁を全部はめ込んで、部屋の仕切りを作ってくだけだな」


汗を拭きながらノヴァが答える。


「そっか、まだ仕切り出来てなかったんだね」


「といっても、筋交いを作って間に土を入れてくだけだけどな。見栄えもあるし木をはめ込むけど、流石にそこまでやってたら日にちがかかるからやってもらうけどな」


「そうなの?」


「流石に乾燥に時間がかかるからな。塗るのも1回じゃダメだしな」


「なら、作業はほとんど終わり?」


「そうだな~。2階はまだちょっと作業途中だけど、壁が出来てないとやりづらいだろうしな」


「でも、簡単な間取り図はあるんだよね?」


「まあな。だけど、実際に出来たのを見ると気持ちが変わったりするしな」


「そういうものなの?」


「そういうもんなんだよ」


「2人とも~、お茶しない?」


「あっ、リュート。どうしたのそれ?」


「宿のおばさんに厨房借りたんだ。即席であまりうまく出来なかったけど、一応サンドイッチのつもり」


「お~、リュートもパン作れんのか?」


「あんまりうまく出来ないけどね。火加減とかこね方がまだ安定しなくて」


「頑張ってね!おいしいパンが外でも食べられるの待ってるから」


「わ、分かったよ」


ぱくっ


うん。本人の言ってる通りちょっと堅いけど味はまぁまぁかな?それより付け合わせの野菜ジュースがすっごくおいしい。えぐみもないし、味も濃厚だよ~。


ティータイムを満喫した私たちはしばらくのんびりする。考えてみれば村に来てから初めてのゆったりした時間かも?ひょっとしてのんびり田舎生活って忙しかったりするのかな?そんなことないよね。一抹の不安を覚えながらも自分の将来を考えてみる。


「う~ん。まだまだろくに思いつかないなぁ~」


「何が?」


「将来の生活について」


「アスカは旅に出た後、どこで暮らすか決まってるの?」


「ううん。旅に出た時に気に入ったところを見つけたら、終わってから住もうって漠然と考えてるの」


「なら、アルバには戻ってこないのか?」


「ううん。きちんと戻ってくるよ。でも、住むかは分からないかなぁ。ノヴァたちは?」


いい街だけど、なんとなくそんな感じがするんだよね。


「そっか。俺はどうすっかな~。生活出来りゃどこでも良いんだけどな」


「それじゃあ、もっと朝きちんと起きれないと難しいね」


「うっせ~な。リュートはどうすんだ?」


「僕は…旅に出てからかな。そこで何か見つけられたら良いし、見つからなかったら街に戻るかな?」


「なんだよ、アスカより適当じゃないかよ」


「そうかもね」


わん


「ん?どうしたリンネ」


「まだ、遊びたりないんじゃない?村でも退屈そうだったし」


「いつもはおとなしいのにね」


わんわん(たまには体動かしたい日もあるんだよ。早くしろ)


「そうだ!犬といったら…」


私は近くにある木の端を持って来て加工する。


「アスカなにしてんだ?」


「ちょっと、犬と遊べるおもちゃ作り」


木を円形に加工してと、ちょっとくぼみを作って…。


「出来た~!いくよ~。えぃ!」


私が出来たおもちゃを投げると、見事にリンネが口でキャッチした。


「なにそれ?」


「木を円盤状に加工したものだよ。さっきみたいに飛ばして遊ぶの。子どもとか犬とかに人気があるんだよ」


「そんなんあったのか、初めて見たぜ」


「この辺じゃ珍しいかもね。もう一回いくよ、リンネ!」


わぅ!


こうして、円盤投げ大会が幕を開けたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
フリスビーってどっかの会社の登録商標だから使わない方が良いかもね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ