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目指せ帰還

ティタたちと休憩した後はこっちからも少しだけ調査してみる。こっち側は本当にいなくなっているみたいで、何もなかった。


「これだったら、今日の野営はティタのいたところの岩場がいいですね」


「でも、水とかはないですよ?」


「今回に限っては私が出せるから問題ありませんよ」


「それじゃあ、フィアルさんお願いします」


ノヴァとリュートがテントを設営して、私が森側で枝を取ってくる。別に火の魔法だけでもいいんだけど気分もあるしね。後は夜の見張りの時は結局必要なのもあるけど。


「うんしょ、うんしょ」


「アスカ。そのぐらいでいいんじゃねえの?使うのって見張りの時だけだろ?」


「焼いたりするのにも使うけど?」


「そうそう。ノヴァももう少し料理を覚えてよね」


「な~んだ。ならもうちょっと俺が持って来てやるよ」


「周りが見える量にしとくんだよ!」


「へ~い」


ノヴァがリュートの言葉を意に介さず枝を拾いに行ってくれたので、私はその間に大きい倒れた木を切って行く。このまま放置しておけば薪になるだろう。小屋とまではいかないけど、置き場だけちょっと奥に作っとこう。これからも色んなパーティーがここを使うだろうしね。


「アスカ―。準備できたよ」


「は~い。リュート今行くね」


日も落ちてきたので、早速料理を作る。今日の当番はフィアルさんとリュートだ。と言ってもフィアルさんは本職なのでリュートは指示を受けて、切ったり煮たりする補助的立ち位置だ。


「そこで、干し肉を入れてください。後、たれは煮立ってからです。灰汁を取った後だと無駄になりません」


「はい」


「こうなると俺たちはやることないよな~」


「私は火力調節があるから…」


「それも今はティタがやってんだろ?」


「じゃあ、監督役!」


「無理に仕事にしなくてもいいよ。たまには俺と手合わせしないか?」


「ノヴァと?う~ん、でもなぁ…」


「1回だけだから」


「ほんとに?ならいいよ」


ノヴァと模擬戦をすることにしたので、みんなから離れてノヴァとも距離を取る。


「いい?」


「おう!」


「炎の矢よ…」


まずは弓を取り出して魔法矢を連続で放つ。流石にこのぐらいだとノヴァも問題なく回避していく。その間にウィンドカッターを出して、足元に火の魔法を放って動きを制限する。


「ファイアー!」


「うわっと!だけど!」


すぐに気持ちを切り替えてノヴァが迫ってくる。そこに上と左右からウィンドカッターを向かわせ、自分は弓で狙う。ノヴァは今までこんなウィンドカッターの動きは見たことないはずだ。


「なっ!両側から…」


「せーの!」


矢を数本放ちさらに逃げられないように後ろにファイアウォールを作り出す。


「ま、参った。やっぱりアスカはつええなぁ」


「う~ん。最初から距離があるんだから当然かな?ノヴァだと私に向けて物は投げられないでしょ?」


「確かにそうだけどよ、それでもアスカだって矢は魔法の矢だけだろ?」


「一応撃てるってことを考えれば、やっぱり最初っから有利だよ」


「だけど、戦う時って最初は離れてるだろ?やっぱり強くなるって難しいんだな」


「なんか悩み事?」


「悩みっていうか、この前の戦いでも思ったんだけど、ほんとに相手と離れてると何も出来ないんだなって思ってよ」


「そっか…ならもうちょっと投擲を頑張るのと、小さめの盾とかどう?相手に近づくのに役立ちそうじゃない?」


「邪魔にならねぇかな?」


「だから腕につけられるぐらいので、魔法もはじける奴ならいいんじゃない?」


「それって高いだろ絶対!」


「あはは、そうだと思う」


「…ありがとな。アスカのお陰で俺もリュートもずいぶん助かってる」


「何いきなり」


「いいや。一応言っとこうと思ってな」


「私も2人に助けられてるよ」


「はぁ。じゃあ、もっと頑張んなきゃな」


「応援してるからね」


「へ~へ~」


それっきり会話も模擬戦も終わりで、2人と合流した。


「2人とも向こうで何してたの?」


「ん~、ちょっとだけ相談に乗ってもらったんだよ」


「へ~、ノヴァが珍しいね」


「まあ、俺でもたまには相談もするぜ」


「それよりティタの魔法は大丈夫だった?」


「ええ、きちんと火の魔法をコントロール出来てましたよ。元々魔法を使うゴーレムは珍しいのですが、ここまでコントロールできるとは思いませんでした。料理補助としても問題ないレベルですよ」


「頑張ったんだねティタ」


「ホメテ」


「よしよ~し」


あ~、なんてかわいんだろう。しかも、ティタには悪いけどこのままだったら小さいままなんだよね。はわ~、この愛らしさを子々孫々まで伝えていかなければ。


「アスカ~。そろそろできるよ」


「あっ、じゃあ用意するね」


料理が出来るということは器を用意しないといけない。ここは私の風魔法の出番だ。くるっと丸く深めの器を作ると、料理に合わせて適切な大きさにする。さらに温風で乾燥をして出来上がり。


「はい。とりあえず4つ作ったから入れていって」


「了解」


大きめの器2つと普通のが1つ、最後に小さめのが1つだ。フロートの中ではジャネットさんとノヴァとフィアルさんが大食い。リュートが普通で私がちょっと少ないぐらいが目安の食べる量だ。そのため器も各自に合わせて作る。その方が混ざっちゃったりしないしね。そういうこともあって、配膳係はもっぱらノヴァかジャネットさんだ。2人のは混ざるけど、私たちのは混ざらないから最後に自分のを入れれば、どちらのかがよく分かるという訳なのだ。


「じゃあ、今日の配膳はノヴァだね。よろしく」


「はいよ。しかし、アスカはいつも思うけど少食だな」


「そうかな?」


「アスカはまだ平均的だと思うよ。ノヴァたちが食べ過ぎなんだって」


「そういえばフィアルさんも結構食べますよね?」


「私ですか?元々はリュートと同じぐらいでしたよ。ただ、料理を作っているうちに味見をすることが多くなってしまって、気付いたらこうなっていましたね」


なるほど。確かに新メニューとか作るまでは良いけど、自分だけで作ってたりしてたら1人で食べなきゃいけないもんね。ほんとに料理出来るんだなフィアルさんは。


「さあ、そんなことを言っている間に行き渡りましたね。ではいただきます」


「「いただきま~す」」


皆で一斉に食べ始める。今日のメニューは干し肉を使った野菜スープだ。一応、ここに来るまでに魔力を結構使ってしまったので、中には薬草も入れてある。たまたまだけど昨日ギルドで売らなくてよかった。一応今日の内に一旦、能力も開放しとこう。まだ、ちょっと危ないかもしれないし。


「にしてもこういう料理ってどうやって考えるんだ?野営の時に持っているもんなんて分からねえだろ?」


「ああ、その為に2、3種類のたれを持っておくのですよ。そして、手元の食材に合うように混ぜるか単品で使うんです。特に出発数日は食料も確保できてますからかなり楽ですね」


「へ~。じゃあ、他のパーティーもそうなんだな」


「まさか、他のパーティーは干し肉に最初はパンなどの日持ちがあまりしないもの。後は冒険者ショップに売っている日持ち腹持ちの良いものを持っていくのが普通です。食事と言うのはもっぱら現地調達とその携帯食の繰り返しですよ」


「私、あの変なパンみたいなのは嫌ですよ!」


「慣れれば合理的でいいんですけどね」


フィアルさんから意外な意見が出た。あれだけ料理をするフィアルさんが、食への冒涜のようなあの食べ物に理解を示すなんて。


「いや、私もおいしいとは思っていませんよ。あくまでパーティー行動をする時に合理的だと思うだけです。アスカみたいに利益より快適さを重視していいなら当然持っていきませんよ」


「私まだ何も言ってませんよ?」


「アスカ、顔がすごく語ってた」


「ほんと?」


「うん」


むむ、もう少しクールさを身につけるために気をつけなくちゃ。そんな、わいわいとした食事も終わり見張りを決める。


「じゃあ、折角4人いますし交代でしましょう。今が大体20時前後ですから最初の人と最後の人が3時間で後の2人が2時間ずつですね」


くじ引きの結果、私は最初だった。やった!これで最初に見張りをした後はぐっすり眠れる。その後はノヴァだ。


「それじゃ、みんなお休み」


「「おやすみ」」


「おやすみなさい」


テントには私謹製の結界の魔道具を使用して守りと音を遮断する。


「アスカ、ナニスル?」


「そうだね。折角ここに居るんだからティタでも彫ろうかな?」


これまではゴーレムといっても単なる立像だったけど、あれだけ街のために戦ってくれたんだから、サンドリザードとの戦いを描いたものにする。題名は…『人と共に戦うもの』だ。今日サンドリザードは見たし、前回も嫌と言う程見たのですぐに出来るだろう。砂時計を動かして作業を始める。途中でティタが色々と質問してきたので、お話しながらするのも楽しかった。細工をするときはいつも一人か部屋だし、ミネルたちとは会話が出来なかったからね。


「アスカ、ジカン」


「えっ、もう?」


砂時計を確認するとすでに時間が経っていた。う~ん、あとちょっとなんだけどな。


「ティタ、オコス」


「あっ、お願いできる。私は完成させちゃうから」


ティタに起こしに行ってもらう。あれ?確かティタの起こし方って…。


結界が消えているので、小さくぐぇと声がした。ああ~、起こし方も教えないとね。


「ひどい目に遭った」


「ごめんね。今度までに起こし方教えておくよ」


「そうしてくれ。なにが起きたかと思ったぜ」


「じゃあ、結界張り直すね」


「ン、ハッタ」


「ティタ、張ってくれたの?」


「ン」


へぇ~、魔力の扱いがうまいとは思っていたけど、魔道具を使ったり出来るんだね。込めすぎると壊れたりするのに。その後、少しだけノヴァと話して30分だけ粘って像を完成させた。


「それじゃ、お休みノヴァ、ティタ」


「おう!任せとけ!」


「オヤスミ」


さあ、明日は帰ったら今日の像を量産しなきゃ。アルバ中にティタの雄姿を見せないとね!



「ティタは寝ないのか?」


「ゴーレム、ヤスム、ネナイ」


「へ~、便利なんだな。あっそうだ!聞いてくれよ~…」


こうして朝までみんなの話相手をするティタだった。



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