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【3巻発売中!】転生後はのんびりと 能力は人並みのふりしてまったり冒険者しようと思います  作者: 弓立歩
アスカと最後の季節、春

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鍛冶師捜索依頼


 食事を終え、フィアルさんに案内された宿の部屋を見て私たちはびっくりしていた。


「うわ~、ふっかふか」


「なんだか悪いね~。まさかフィアルの奴、宿を別に取ってるなんてね」


 食事後に案内された宿はノヴァたちが鳥の巣と一緒ぐらいの宿。ただし、こっちの方が町なので大銅貨三枚ぐらいとのこと。

 その後に私たちが案内されたのは銀貨一枚以上(ジャネットさん談)の宿。ベッドも大きくもちろんツインでクッションもいいし布団もふかふかだ。あ~気持ちい~。


「こらアスカ。そんなだらしない顔して。明日は交渉なんだからもう少しシャキッとしな!」


「でも、ジャネットさんも似たような顔ですよ~」


「ま、まあ、確かにここは良い寝心地だけど……。宿のベッド替えようかな?」


「ちょ、そんなことしてもいいんですか?」


「持っていくことは出来ないんだから別にいいだろ? 引き払う時にそのまま置いてきゃいいよ」


「それって宿代変わりませんかね?」


「……そん時は泊まった部屋の運が良かったって思ってもらうしかないね」


 実にアバウトだ。でも、こんなベッドなら私も欲しいなぁ……。いけないいけない今は金欠だった。旅の資金も必要だし、しばらくは我慢我慢。その後は宿備えつけのお風呂にも入って、リラックスして眠った。



「さあ、起きな!」


「嫌です。まだまだこのお布団は私を欲しがってます」


「そうかい? なら、飯はいらないね」


「うっ、それは……」


「分かったらさっさと出る!」


「きゃっ!」


 布団に包まってたら一気に引きはがされて、その勢いでベッドから落ちる。ただし、その寸前でティタに助けてもらう。


「アスカ……オキル」


「あ、ありがとティタ」


 瞬時に巨大化したティタに受け止めてもらった。


「全く、こんなことでティタに巨大化を使わせるんじゃないよ」


「は~い」


 仕方ない。もうちょっと堪能していたかったけど起きよう。そうと決まればパッと着替えてご飯ご飯~。


「はぁ、あんたの主人はどうしてああ極端なんだろうね?」


「サア?」


 あっ、二人とも腕組んでる姿がかわいい。まあ、ティタの場合は腕が短いから振りだけど。


「はい、おまたせしました」


 運ばれてきた朝食は簡単なスープに野菜などを使ったサラダだった。パンについて聞いてみると、あんなものを出すのは一流の宿じゃないって言われちゃった。確かに前までのはまずかったけど。じゃあ、美味しくすればと思ってしまう。


「ふむ。朝食としてはいいね。野菜も新鮮だし。前に泊まったところはしなびてたからねぇ」


「そうでしたね。あれならいっそスープに入れて欲しかったです」


 あれはちょっとなかったな。スープに入ってればパンをつけてまだ食べれそうだったけど、ちょっとえぐみもあったし。そんな話をしながらの食事も終えてリュートたちと合流する。

 ちなみに朝ご飯はちょっと遅めの九時だ。商会なら仕入れの関係で店も開いてるので、食べてすぐ行けるこの時間になった。


「おはようアスカ、ジャネットさん」


「おはよう、みんな」


 リュートたちと合流して商会に行こうとした私たちだったが……。


「それよりちょっと露店見てもいいか? 腹減っちまって……」


「朝ご飯食べなかったのノヴァ?」


「そんなんついてねぇよ。まさか、アスカたちの宿は付いてたのか?」


「えっ、うん」


「俺もそっちが良かったな~」


「ははは、そこはランク差ですよ。ノヴァやリュートはまだDランクでしょう? Dランクの内はあの宿がいいですよ」


「ちぇ~」


「それで宿が別だったんですね。フィアルさん」


「え、ああ、まあ……」


 あ、フィアルさんがリュートに褒められて困ってる。あれは適当に返事をしたな……。


「まあ、それじゃあリュートたちは朝食を食べてから商会に来てください。私たちは先に行ってますから」


「おう! それじゃ行こうぜリュート」


「はいはい」


 リュートたちと別れ、私たちは商会へ。


「そういえば、フィアルさんは朝ご飯いいんですか?」


「ああ、私はすでに食べましたからね。携帯食は基本ですよ」


「一緒に食べればよかったのに……」


「アスカにとっては初めての交渉事ですからね。一応保護者が必要かと思いまして」


「むむむ。きちんと出来ますよ」


「では、お手並み拝見させてもらいますよ」


 何か引っかかるけど、そのままドーマン商会へと向かう。


「いらっしゃいませ! おや、アスカ様。今日はどのようなご用件で?」


「えっと、納品とちょっとお願いが……」


「そうですか。では、奥の方へ」


 店長さんに恒例となっている奥の部屋へ通される。別に商品を見ながらでもいいんだけど、いつも部屋まで通してくれるのだ。奥だとお菓子も食べられるから、気に入ってるけどね。


「ではまずは商品の方から……」


「はい。まずはこちらですね。魔道具なんですが、せっかくいつも二個ということで今回は対になってます。片方が短槍、もう片方が盾を作り出すものです。ちょっと特殊で槍はその人の込めた属性が出ます。盾は逆に風属性固定になってます」


「ふむ。魔力さえあれば攻撃にも防御にもできるものですね。短槍はネックレス、盾はブレスレットなので違和感なく付けられますね……。価格としてはセットで金貨八枚ですね」


「次に細工物の方ですけど、アラシェル様の像が二体とシェルレーネ様の像が六体、グリディア様の像が二体です。他にはササユリのコサージュなどの髪飾りですね」


「どれも素晴らしいですね。査定結果はしばらく時間をいただきますので、その間にお願いとやらを聞かせていただいてもよろしいですか?」


 渡した細工を鑑定するためお付きの人に渡した後、店長さんから話を切り出してくれた。


「はい。実はアルバの近郊にハイロックリザードが現れたんですけど、ご存じですか?」


「もちろんです。大変な被害だったとか」


「そこでその素材が手に入ったんですけど、加工するのに知り合いの鍛冶師がいなくてですね。どなたかお知り合いの方はいないかなと……。あっ、分からなかったら別のところに聞きに行くので大丈夫ですよ」


 う、う~ん。ちょっとわざとらしかったかな?


「なるほど、事情は分かりました。しかし、鍛冶師ですか……ふむ。少々お待ちください。時間がかかりますのでしばらく店内を見ていってもらえますか?」


「はい。じゃあ、少し見させてもらいますね」


 そういうと店長さんはすぐに部屋を出て行った。私たちは勧められた通り、店内で商品を眺めている途中で、ノヴァとリュートも加わった。


「ん~、これなんかよくね?」


「本当だね。でも、ノヴァが買うにはかわいすぎない?」


 ノヴァが私に見せてきたのはどう見ても女物だった。


「はぁ、なんで俺が付けること前提何だよ!」


「そ、そうだよね。でも誰に渡すの?」


「誰だっていいだろ」


「こらアスカ。そういうことに首を突っ込むんじゃないよ」


「あ、はい」


 ちょっとぐらい聞いたっていいと思うけどなぁ?


「それよりアスカは自分用に何か買わないのかい?」


「私の分ですか? う~ん。休日にしか付けませんしね~。この前買ったのもまだ数回使っただけですし、今は良いかな?」


「おやおや、そんな調子では一生冒険者のままになってしまいますよ」


「あ~、それはちょっと……。さすがにどこかに定住したいですね」


「じゃあ、どんなとこがいいんだい?」


「ん~、暖かいところがいいですね。こう優雅にカクテルを転がしながらベランダで……」


「えらい具体的だね。知り合いにそういう人がいたのかい?」


「う~ん。知り合いにはいませんね」


 でも、南の島でバカンス気分な一生もいいと思うんだ。そんな益体のない話をしていると店長さんが戻ってきた。


「お待たせしました。奥の方へどうぞ」


 案内されて奥の部屋に戻ると、セーマンさんが座っていた。


「どうも。お久し振りですな」


「あっ、お久し振りです」


「申し訳ありません。いつも商談ばかりで留守にしてしまって……」


「いいえ、いつも店長さんにお世話になってます」


 お互い顔を合わせるのは久し振りなので、どちらも頭を下げるところから始まった。


「そう言っていただけるとうちもありがたいです。ところで今回は鍛冶師をお探しと伺いましたが?」


「そうなんです。貴重な素材なので信頼できる人に探してもらってお願いしようと……」


「なるほど。それならば任せてください! さすがに素材的にすぐにとはいきませんが必ず近いうちに手紙を渡しますので」


「よろしくお願いしますね!」


 とりあえずすぐには無理そうだったので、話だけして今回はおしまい。その間に残りの査定分のお金と鍛冶師を探すのにサンプルの素材を渡しておく。これがあると探しやすくなるってジュールさんから貰った物だ。


「では、必ず見つけてまいりますので」


「はい」


 店を出るとフィアルさんに話しかけられた。


「いやぁ、アスカは思っていたより交渉事が出来るかもしれませんね」


「そうだね。あたしもあそこまでは言えないねぇ」


「えっ? 何か私言いました?」


 二人から褒められたけど、そんな覚えはないのになぁと思っていると理由を説明された。


「普通鍛冶師を紹介して欲しいと言うと『腕のいい鍛冶師を見つけて欲しい』と言うんです。アスカはどう言ったか覚えていますか?」


「ん~『貴重な素材を使うので』って言いました」


「重要なのはその後だよアスカ。あんた、『信頼できる人に探して欲しい』って言ってただろ?」


「そうでしたっけ?」


「そうだよ。だから、商人からしたらあなたたちになら貴重な素材を預けられるし、優秀な鍛冶師を探せると思ってますってうまく乗せたんだよ。商会長の方は表現がかなり気に入ったみたいだね」


「ええ、あれは見ものでしたね。今後アスカがお願いするたびに嫌とは言わないでしょう」


「なら、後は待ってても大丈夫だな。俺も剣を何本か探さなきゃな~」


「ノヴァはまずその剣のお金が先でしょ?」


「でも、これ無属性だから属性剣も一本ぐらいはだな……」


「それなら折れた剣を短剣にしてアスカに魔剣にしてもらったらどうだい?」


「えっ、そんなことできんのかアスカ?」


「私も初耳だけど……」


「ん? 前にアスカに魔法を込めてもらったことあっただろ。あの剣、あれから魔力を込めると火属性になるんだよ。ちなみにフィアルに使わせたら水にならなかったから、火属性に限られてるだろうけどね」


 じゃあ、ランクアップ前に模擬戦した時の剣ってあの時のだったんだ。


「なら、俺は風がいいかな~。あっ、でも俺って風の魔力ないんだったな。そういうのもできるのか?」


「う、う~ん。それ自体初めて聞いたからやってみないと……」


「それよりノヴァ。まだ借り物の支払いがあるのにそんなことして大丈夫?」


「何言ってるんだよリュート。って金取るのか?」


「当たり前だろ。なんで、ただでやってやらないといけないんだよ。普通は結構かかるんだよ?」


「そうですね。特に後付けの場合はもう一本とは言いませんが、付与師に頼めば金貨三枚ぐらいはかかります」


「じゃあ、どうするんだよ!」


「まあ、アスカの付与もうまくいくとは限らないし、一回金貨二枚でどうだい? ねえアスカ」


「私は別に構いませんけど、ノヴァが大丈夫ですか?」


「金貨二枚か。いやでもアスカならいけんじゃ……」


 何だか不穏な発言が聞こえた気がする。みんな私のこと誤解してないかなぁ。一応、アルバに帰ったら私もノヴァも検討するということで一致した。



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