表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/491

修正そして完成

「このちぐはぐな状態だけは何とかしないと……」


 とは言うものの、名案もなく立ち上がろうとするとふらついた。


 くらっ


「あ、あれ?」


 いきなり立ちくらみに襲われた。いったいどうしたんだろう、そんなに疲れてないと思うんだけど……。


「これで分かったりするかな。ステータス!」


 MP:10/240(1240)


 異常状態:急激なMP使用による疲れ


「うう~ん。さっきは135あったMPが今は10まで一気に減って疲れてるってことかな? 確かに一気に体から力が抜けた気もするし、今後は使い方も気をつけなきゃ」


 このままでは納得いかないので修正したかったけど、さすがにこの体調ではできないので今日は大人しく休むことにした。


「それにしても最初は35の消費だったのに、合わせて使ったら一気に125もMPを使うってことは両方使うのは慎重にしないと。助かるのは細工物の魔道具は外で使うことはないから、そこは安心できるってことだね」


 これが武器使用なら肝心な時に役に立たないところだった。明日に回すとなればあとはのんびりエレンちゃんが来るまでベッドで休もう。それから三十分ほど時間をつぶしているとエレンちゃんが訪ねてきた。


「おねえちゃ~んあけて~」


「はいは~い!」


 ガチャリ


 私はドアを開けてお湯とタオルを持ったエレンちゃんを迎える。


「ありがとう~、待たせちゃった?」


「ううん。ちょっと疲れたから休んでたの」


「あっ、その服……」


「ああこれ? ちょっと作業してたから着てみたんだ。どう?」


「すっごく似合っててかわいいよ。妖精さんみたい!」


「妖精さんかぁ。嬉しいけどそれならどっか飛んでっちゃうね」


「だめ~!」


「ふふっ、そういえばミーシャさんは何て?」


「おやすみならいいよって。代わりに明日はよろしくって。でも、お昼の後の仕込みにはまだお父さんがいるから、時間になったら呼ぶからね」


「そうなんだ。何だか悪いなぁ」


「いいよ~、今までは二人で大変だったんだから。閉めればいいのにって言っても聞かなくって」


「そういえば宿は休みの日とかはないの?」


「たま~に臨時であるよ。そういう日はギルドに店番を依頼するんだ。ただ、泊まってる人とかにも説明しなきゃだから面倒なんだよね」


「そうなの? でもこの前、ご飯食べに行くって言ってたし近々あるかもね」


「だったらうれしいなぁ。三人で出かけるのって久し振りだよ~。あっ、それじゃあまた来るね」


「お願い」


 受け取ったお湯とタオルで今日も身体を拭く。何とか一度お風呂に入ってみたいなぁ。この町だとどこかにあるのかな? それより火の魔法は自分で使えるから、浴槽だけ作れれば何とかなるかなぁ。かといって、のぞかれるのもやだしね~。

 そんなこんなで今日も一日が過ぎる。明日はこの中途半端な像を完成させなきゃ。




「ふわぁ~」


 今日もいい目覚めと言いたいところだけど、なんだか疲れがたまってるみたい。昨日の作業のがまだ残ってるのかな? 一応確認しておこう。


「ステータス!」


 ふむふむ、特にパラメーターの変化はないなぁ。MPはどうだろうか?


 MP:200/240(1240)


 完全には回復してないみたいだ。これは明日の作業が不安だなぁ。ん~、でも何か忘れてる気がするんだよね~。そういえばこの()って何だっけ……そうだ! 能力を抑えてるんだった。これを元に戻して作業すれば絶対うまくいくよ! よ~し、そうと決まれば今日の仕事をちゃちゃっと終わらせよう。


「おはようございま~す」


「おはよ~おねえちゃん」


「おはよう、アスカちゃん。なんだか元気ね」


「悩みが一つ解決したんで!」


 元気に挨拶して今日も朝ごはんを食べる。ん~、悩みも解決したしすっきり。でも、それなら昨日のうちにできたんだよね。まあいっか、きっとすぐにできるし。


「そういえばごめんなさいね。今日は夜まで手伝ってもらうことになって」


「いいえ、明日は私もお休みもらいますから。あっ、そういえばミーシャさん。この辺りでお風呂入れるところってあります?」


「お風呂なら町のちょっと北のところにあるけど、割と高いわよ。確か一回大銅貨一枚だったかしら? それに大勢で入るところだから盗難とかもあるんですって」


「……結構するんですね」


「まあ、薪代もかかるし魔法使いを雇ったとしても、別に料金がかかるからどこも高いわよ」


「昨日思ったんですけど、私ならお湯とか簡単に沸かせるし浴槽と場所さえあればと思ったんですけど……」


「建物の中ならともかく、外はやっぱり問題が多いから。うちも、もう少し広かったらいいんだけどね」


「そうですよね……」


「でも、良い案ね。協力してくれるなら主人にも話してみるわ」


「本当ですか?」


「ただアスカちゃんもいつか旅に出るなら、宿としても難しいところになるから期待はしないでね」


「あっ……」


 ミーシャさんの言う通り、私はいつかこの町を出たいと思っている。その時のことを考えたら難しいよね。さっきも言ってたように薪だって結構高いんだもん。


「今はまだまだ先だと思うけど。当分、外にも行かないんでしょう?」


「そうですね。次に行くのは四日後です。約束しているので」


「そうそう、この前言っていたジャネットに紹介してもらったお店のことだけど、五日後にどうかって話していたの。その日はお昼が終わった後の店番だけでいいから留守番頼めるかしら?」


「いいですよ。表の方は締めるんですよね?」


「そうよ。できたら前日に張り紙をして朝から人が来ないようにしたいわね」


「おねえちゃ~ん。もう食事終わった~?」


「もうそんな時間? ミーシャさん、それじゃあまた後で」


「頑張ってね」


 ミーシャさんと別れてエレンちゃんと一緒にシーツを集めていく。


「ほいほ~い」


「はい、すぐ持ってきますから」


 もう慣れたもので、パッパッと回収していく。泊まっている人は初めての人もいれば、バルドーさんみたいになじみの人もいるのでちょっと時間に差は出るけど。


「よし! 回収終わったね」


「それじゃあ、エレンちゃん。洗ってくるね」


 最近は雨も少ないから楽でいい。雨の日はできるだけ温風を当てとかないと生乾きになったりして気持ち悪いもんね。


「今日も元気にぐ~るぐる~」


 八枚洗った後はいつもの魔法タイム。ここまで来たらあとは簡単なので歌も歌うというものだ。


「あ~、おねえちゃんまたやってる……」


「へっ?」


 エレンちゃんがいたことにも驚きだけど、指差された向こうを見ると、たらいから出た水の玉が空中に浮き、その中をシーツがぐるぐる回っていた。いつの間にこんな大道芸みたいなことに。


「最近、気を抜いたらいっつもそうなってるよ。魔法の扱いに慣れてきたからじゃない?」


「え、そうなの? 気づかなかったよ」


「ここも結構、塀が高い方だけど気を付けた方がいいよ、ほんとに」


「注意します」


「もう終わるよね。食堂に行こっ!」


「はいはい、すぐ終わりま~す」


 浮いていた水の玉をたらいに戻し、残りのシーツを一気に洗う。そして洗い終わったら魔法でぎゅっと絞って物干し台へ掛けて、後は温風をちょっと送れば自然に乾燥してくれる。


「終わったよ~」


「じゃあ、いこっ」


 洗濯も終わり、エレンちゃんと並んで食堂へ戻る。


「あら、二人ともお疲れ様」


「ほんとに最近はおねえちゃんのおかげで楽ちんだよ。前はお昼ぎりぎりまでかかってたし」


「そうなの?」


「だって、お客さんが泊まる日はこっちじゃ選べないからたま~に、少ない日と多い日が別れちゃって大変なことがあるの。だけど、途中でやめちゃったら今度は次の日のシーツがなくなるから先にやっちゃわないとだし」


「確かに洗い終えていればあとは放っておくだけでいいもんね」


「そうそう、だからせめてそこまではって思ってやるんだけど、そうなるとお昼ごはんが遅くなるんだよねぇ~」


「それは大変だ」


 ゴクゴクとジュースを飲みながら相づちを打つ。


「おねえちゃんってば他人事みたいに言わないでよ。しかも、ジュース飲みながらだし……」


「さあ、それを飲んだらお昼の準備よ。いつまでも愚痴らないの」


「はぁ~い」


 ジュースを飲み終えた私たちはてきぱきと昼の準備を終え、いざ開店へ。


「「昼の部開店で~す」」


 今日も今日とて大人数をさばいていく。最近は雨も少ないから人の入りも多くて大変だ。しかも、最初のころより多い気がするんだよね。何にせよ頑張らないと。


「アスカちゃん、こっちはAセット大盛で~」


「こっちが先だよ。Bセットで」


「お二人とも喧嘩しないでくださいね。今行きますから」


 注文も多く取る分、間違えないようにしないと。ひそかに注文を取る時に頭の中でテーブルに番号を振っているのは秘密だ。忙しいと対面で取ってるつもりでも実際はテーブル番号で覚えてるんだよね。



「エレンちゃん今日もお疲れ様」


「おねえちゃんもね……」


 ようやく昼の部に目処がつく。このやり取りも何回目だろうか。本当に昼は疲れるなぁ。人気店はつらいというやつだ。


「はい、お昼ごはんを持ってきたわよ」


「ミーシャさんありがとうございます」


「お母さんありがとう」


 何時ものように先にお昼を頂く。この時間が一番この宿にいて休まる時間かもしれない。


「ああ、そうそう。アスカちゃん一応今日でお部屋の期限切れるけど、また泊まっていくでしょ?」


「あれ、もうそんなに経ってます? じゃあ、今月分払っちゃいますね」


「残りは十日だから最初と同じ銀貨二枚ね」


「じゃあ、これで」


「そっか~。結構長くいると思ってたけどまだ十日なんだね」


「そのうちあっという間に過ぎるわよエレン。さあしばらく二人は休んでなさい。今日の本番はこれからなんだから」


「じゃあ、ちょっと部屋に戻ってますね」


「それなら私が時間になったら迎えに行くね」


「お願い。エレンちゃん」


 私は二人と別れて部屋へ戻る。この間に神像の修正作業をしてしまおう。まずは準備をして………。


「さて、着替えたし、あとは像全体のイメージを頭に叩き込めばできるはず」


 よし! アラシェル様のお姿をもう一度しっかり頭の中に思い描いて。


「発動!」


 シュシュシュ


 これまでよりも細やかな動きで風の刃が削っていく。ただし、像全体はイメージしているものの、実際に刃が向くのは先に作業をしていた下半身に集中している。最後にバランスを取るため、上半身を少し削って作業は完了した。


「ふぃ~、何とかちゃんとしたのができたかな?」


 それに昨日と違ってくらりとも来なかったみたいだし。ただ、一応確認はしないとね。


「ステータス!」


 名前:アスカ

 年齢:13歳

 職業:冒険者

 HP:63

 MP:60/240(1240)

 力:11

 体力:20

 早さ:24

 器用さ:65

 魔力:80(290)

 運:50

 スキル:魔力操作、火魔法LV2、風魔法LV3、薬学LV2、細工LV1、魔道具使用LV1、(隠ぺい)


 おおっ! また、器用さが上がってる。肝心のMPは200からだと結構減ってるけど。大体毎日洗濯やらなんやらで50ぐらいは使ってるから90ぐらいがさっきの作業かな? これなら明日は大丈夫そうだ。


「それにしても……我ながらいい出来だ!」


 これならちゃんと表情も見えるし、祈りがいがありそう。実際に祈るための像はまだなんだけど。


「エレンちゃんが来るまでまだ時間もあるだろうし、掃除してベッドに寝転がっとこ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ