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親睦会!?

 思いのほか市場見学で時間を取ったので、後は私が卸している細工屋のおじさんの店に行って、教会へ戻ることになった。


「そういや、次の依頼は休むって言ってたね。それも魔道具関係かい?」


「はい。ちょっと、宿に置きたいものがあって……」


「う~ん。二日後には出発しないといけないから悔しいわね。アスカが次に何をするのか見たかったわ」


「トラブルみたいに言わないでよ」


「でも、お風呂の時もちょっとした騒ぎになっただろ?」


「カップル風呂のことですか?あれは別に……」


「何々、面白そうじゃない。聞かせてよ!」


「え~とね……」


 私はレディトの宿で提案した二人風呂のことをムルムルに説明した。


「……アスカってばエッチだったのね」


「ち、違うよ。そういう考えもあるかなって」


「でも、普通はすぐに出てこないわよ」


「違うもん。ぽろっと口から出ただけなんだから」


 確かに、恋人ができたら一緒に入りたいなぁとかは考えてたけど……。


「ほらほら、言い合いしてないで店に着いたよ」


 細工屋のおじさんの店には色々な飾りもあるから、ムルムルがお土産を買うならいい場所だろう。


「おじさんいる~?」


「ん、なんだアスカか。そろそろ閉めようかと思ってたんだがな」


「そうだったんだ。今日は友達を連れてきたんだ」


「こんにちは、遅くからお邪魔します」


「おお! 別嬪さんだな。いやいや、あんたなら大歓迎だ。さぞ、細工も光るだろう」


「それじゃ、店を見させて貰うわね」


 ムルムルは私の説明を受けながら、おじさんの店を廻る。私は普段からここに商品を持ち込むけど、商品を見て廻ることはほとんどないからちょっと新鮮だ。


「ねえ、アスカ。ここのはアスカが作ったの?」


「ううん。これはおじさんのだよ。最近はこういうのも作ってるんだって」


 ムルムルが見つけたのは持ち手に花の細工物が結わえられているかごだ。花は金属でゆらゆら揺れて、遠目にもキラッと光っているのが受けているらしい。


「へぇ~、王都に行くこともあるけど、こういうデザインのものはないわね。これ買おうかしら」


「お友達のは?」


「そうねぇ……あっ、こっちのグローブがいいかしら? とってもかわいいし、綺麗な編み込みね」


「え~、そうかな~」


「ひょっとしてアスカの作品?」


「うん。よく分かったね」


「その反応じゃ、誰でも分かるだろうよ」


「あっ、ジャネットさんも何かいいもの見つけました?」


「ん、ああ。自分のじゃないけどね。ジェーンにも少しぐらい飾りっ気のあるものをと思ってね」


 確かにジェーンさんが身に付けてるものって、魔法や薬品の調合に効果のあるもの以外はさっぱりだったからなぁ……。どくろだろうが骨のデザインだろうが、効果があれば良いって言ってたし。


「小さいネックレスだけどヴィルン鳥の羽根のデザインだろ? わずかでも幸運があればと思ってね」


「まあ、それなら普段からつけてくれそうですね」


 嘘も方便。幸運の鳥の効果で成功率も上がるかも何て言えば普段から身に付けるようになってくれるだろう。 作っておいてよかった。

 事実、アスカも知らなかったが、ヴィルン鳥のアクセサリーを作る時に幸運の鳥というキーワードと、ミネルを思い浮かべながら作っているので、僅かながら幸運に作用するアクセサリーとなっていた。

 後日、ジャネットがジェーンに渡した時は、気づいたジェーンが細工だと偽ってくれたと思い、大層感謝したとか。


「このグローブもいいけど、そのネックレスも素敵ね。私もお揃いで買おうかしら?」


「あ~、でもそれデザインは微妙に違ってるんだよね……」


「そうなの?」


「うん。細工は一点物が多いから、他の人と被りにくいように花とかもわざと角度を変えたりしてるんだよ」


「へぇ~、アスカって気が回るじゃない。だけど、それならやめたほうがいいかな? ほかに一緒のデザインのものはないの?」


「う~ん。一緒だとバーナン鳥の番の細工かな? あれは、番の細工だからあんまり角度をいじれないんだよね」


 そっぽ向いてる番の細工なんて作っちゃいけないしね。


「ならそれにしよっかな。バーナン鳥なら都合もいいし……」


 結局、私の卸し先を見に来たはずが、ムルムルは自分用にかごを、お土産にグローブが二つとお揃いのバーナン鳥の番のネックレスを三つ買っていった。ジャネットさんもジェーンさんにプレゼントを買っていったし、おじさんとしては満足な売り上げだね。


「アスカは買わないの?」


「私はこれにしようと思って……」


 さっきから気になってたのは、リラ草のブローチだ。身近なものだけど綺麗な細工で、かわいい花が付いている。私たちはその花が開く前のものを採ってしまうので、あんまり見ることはないから新鮮だ。小さな花が頑張って咲いた感じでとてもかわいいデザインだ。


「それ何の花なの? 私も見たことあるけど……」


「リラ草のお花だよ。可愛いでしょ。私たちは冒険者だから、普段は咲く前に採っちゃうけどね」


「これがそうなんだ、見たことなかった。ポーションなら神殿でいっぱい扱ってるのに」


「リラ草の花はちょっとだけど毒があるからね。あんたたちには触れさせないだろうね」


「えっ! そうなの?」


「うん。魔物用の薬の材料になるけど、取り扱いも難しいから普通は野生のものを採ったりはしないんだよ。専用の薬草園とかで作ってるみたい」


「勉強になるわね……」


「あはは、今日はお休みでしょ。ほら教会に帰ろう?」


「そうね。楽しみにしてる夕食だものね」


 私たちはおじさんに挨拶をして教会へ戻った。今日はムルムルに住んでいる街を案内できて嬉しかったし、明日は巫女として街へ行くから同行できないけど、楽しんでほしいな。



「さて、今から食事に行くわけだけど、アスカはその格好で行くの?」


「もちろんだけど……ムルムルは着替えるの?」


「一応、お忍びとはいえ護衛も連れていくんだし、そこそこの格好をしていくわ」


「ふぅ~ん。大変だね」


「何言ってるのよ。アスカも一緒に行くんだから着替えるわよ?」


「ええっ!? 私も?」


「ジャネットは護衛に見えるけど、あなたはそう見えないでしょ? だから、護衛対象側よ。いわば妹の立場ね」


「別にいいよ。私も護衛だし……」


「いいえ、護衛ならなおさらよ。見た目そう見えないのが良いわ」


 たしかに、姉妹だと思ってたら実は護衛でしたって方がいいのかも。じゃあ、着替えるしかないか。そう思っていたんだけど……。


「ちょっと、これドレスだよ。ムルムル、恥ずかしいよ!」


「駄目よ! 私がドレスなのにあなたがただのワンピースだなんて、私が嫌な姉みたいでしょ!」


「だけど、動きにくいし落ち着かないよ。それに絶対浮くって!」


「あら、あの店はドレスでも違和感がない店よ。作法はうるさく言わないから気にしないでいいわ」


「ううっ……何でこんなことに」


「そうねぇ、あえて言うならあの店がおしゃれだからね。酒場みたいな雰囲気が少しでもあれば流石に着ていかなかったわよ。自業自得ね」


 結局ムルムルのお付きの人に着替えさせてもらった。


「あら、本当にお似合いですね。ムルムル様とご一緒すれば誰も護衛とは思いませんわ!」


「それにこの綺麗な髪を見れば、この子が巫女だと思うかもしれないわね」


 そういってぱちりとウィンクするムルムル。分かってて言ってるなこれは。


「しかし、いつもお手紙のやり取りをしているとお聞きしておりましたが、安心しましたわ。このような可愛らしい方で。てっきり、ゼス様以外に気になる殿方が出来たのかと……」


「そ、そんなこと思ってたの!」


「はい。お手紙を書いてる時のムルムル様が大層嬉しそうでしたのでよもやと……」


「そ、そんなことないわ! ほら、もう出かけるからあなたも準備しなさい!」


「はい」


 にっこり笑って出て行く付き人さん。二人は仲がいいんだなぁ。


「もう、何見てるのよ! さっさと行くわよ」


「はぁ~い」


 ぐいっと手を引かれて出発場所に向かう。ちなみに今日の移動は馬車だ。セレブ体験だと言ったらジャネットさんに「さんざん、護衛依頼で乗ってるだろ!」って言われちゃった。でも、ああいう荷馬車と違って、今日は客を乗せる馬車なんだから。物語でしか見たことのない世界だよ!


「では、出発致します」


 カラカラカラと馬車に揺られてフィアルさんの店に着いた。私とムルムルの他には護衛の人が二人と、ジャネットさんとシスターとさっきのお付きの人だ。お付きの人とシスターは最初は断っていたけど、一団として来ていることと、シスターはこの街で世話をしてもらっているから当然と連れてきたのだ。


「さあ、入りましょうか!」


「いらっしゃいませ。ご予約の方ですね。上に案内いたします」


 案内役の人に二階へ連れていってもらうと、以前は個室だったのがどういうわけか大部屋になっていた。


「前は個室だったんですけど、模様替えしたんですか?」


「いいえ、こちらの部屋は個室と大部屋に切り替えられるようになっているんです。大きい予約はほとんどないので普段は個室ですけどね」


「へぇ~、こりゃあたしも知らなかったね」


「そんなことよりさっさと座りましょう」


 私たちは大部屋となった二階の席へ順番に座っていく。席は長テーブルで対面になっており、その間に料理を運ぶためのスペースが開いている。ムルムルが当然メインなので左奥に座る。

 そこからせっかくだからと私は横に座った。ムルムルの向かいはジャネットさんで、その横にはお付きの人。そしてシスターが私の横に座った。護衛の人は一つ空けて外側へ座る。最初は立っているといっていたけど、この状況で護衛は必要ないと説得されて、しぶしぶ座ったのだ。


「それじゃあ、再会とこの街での出会いに乾杯ね!」


 簡単にムルムルが挨拶をして、グラスを当てて乾杯する。ん~、お酒じゃないけど雰囲気もあって美味しい!


「あら、結構美味しいわねこのお酒」


「えっ! ムルムル……さんお酒飲むの?」


「神殿というか教会では当たり前ね。水の神様を祭ってるからかしら? 飲み物を中心にかなり制限が緩いのよ」


「そ、そうなんだ。私のいたところはもっと大人にならないと飲めなかったからなぁ……」


「とか言って飲んでたんじゃない?」


「そ、そんなことはないよ。私いい子だから」


「ははっ、アスカが言うとそれっぽく聞こえるねぇ」


「ちょっと、ジャネットさん。どういう意味ですか?」


「まあまあ、アスカ様もいただきましょう。こちらも美味しいですよ」


 料理はコース方式で少しずつ持ってきてもらえる。美味しいのはもちろんのこと、みんながゆっくり食べてくれるので食べるのが遅い私でも平気だ。久々に来たけどやっぱり美味しいよ~



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