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レディトで商売

 食事も終わり片づけを終えた私たち。後はいよいよ見張りを立てて寝るだけなのだけど、ここで火に当てて燻製みたいにしていた肉の感触を確かめる。


「うん、外側は食べられるし柔らかめだね。だけど、中心部はもうちょっとかな? まだまだ焚火の時間はあるし、肉を替えながら順番にやっていこうかな」


「そうだね。どうせ焚火はするんだし、その方が有益だね」


「それじゃ、残りの肉の交換よろしく。私は幾つか吊るせるようにセッティングしてくるから」


 リュートにそう言って切り倒した木から良さそうな部分を取りに行く。後に残った木は小さめに切って魔法で乾燥させ薪にする。そうすれば次のパーティーが使ってくれるだろう。


「薪を拾うのもしんどいし、置いといたらいいよね」


 そしてリュートのところに戻った私の目の前にはたくさんのオーク肉が並んでいた。


「あはは、こんなにあったんだ。大丈夫だと思うけど念のため分けて肉を吊るす支えを作ろうかな」


 火の中に入った肉を救うため、ススや灰だらけになるのは避けたいからね。


「アスカごめん。ちょっと作りすぎたかな?」


「私たちには多いかもしれないけど、最悪誰かにあげればいいんだし、スープの材料にも使えるからいいんじゃない?」


「そうそう、そんなに考えてばっかだと疲れるぜ」


「そう言うノヴァはちゃんとジャネットさんが説明してくれた野営の設営の仕方聞いてた?」


「ま、まあ、何度かやってりゃなれるだろ」


「はぁ、しばらくは二人一組だけど、その姿勢がうらやましいよ。全く」


 リュートに言い返され、たじろぐノヴァにちょっと呆れた顔でジャネットさんがツッコむ。みんな、いいコンビネーションだ。


「まあまあ、ジャネットさんは私の後なんですよね。肉の番よろしくお願いします」


「ああ、たまにひっくり返せばいいんだろ。任せときな。こう見えて火の取り扱いには慣れてるからな」


「二人も一気に火力を上げないように注意してね」


「わかってるって!」


 それじゃあとみんなとは別れて外で見張りをする。話し相手もいないので、簡単に作ったイスとテーブルを使って細工をしよう。音が漏れないように魔法を掛けてと。

 自分側に掛けると見張りの意味がないので、テント側にかけて音が入らないようにする。ついでに不測の事態に備えて防護魔法を掛けておく。


「ここで魔力を使うのもあれだし、このぐらいなら魔石で代用できないかな?」


 何を作ろうか考えてたけど、ひとまず思いついたものを作るようにしよう。まずはグリーンスライムでもちょっといい魔石を用意して。


「テントだとかけるところはないし、外の布の部分に挟み込むようなものがいいかな」


 魔石を磨いて形を調節する。品質の悪いものはこ形を変えるとすぐに力が落ちてしまうけど、これぐらいのものならそんなこともない。

 後はデザインだけど、長細く丸い形で金属の型にはまるようにして、挟み込めるように型をつけたら後は……。


「固定はスライドさせて挟む形にしよう。これなら、布とかだけじゃなくて服とかにも付けられるし」


 デザインも決まったので早速作り出す。こういうのは実用性第一だから、凝ったデザインにしなくていいから助かる。ルンルン気分で作り始め、気づくと横には四つも出来上がっていた。


「もう大分時間が立ったかな? うっ、まだ一時間しか過ぎてない……」


 ちなみに時間は簡易式水時計で測っている。五百ミリリットルのペットボトルぐらいの大きさで、下には小さい穴が空いており、水が減っていってその残量で時間が分かるというものだ。

 いちいち水を入れないといけないし、時計欲しいなぁ。だけど、時計ってかなり精巧な物だよね。私の知識じゃ作れないや。


「調子に乗ってバリアを張る魔道具を結構作ったけど、これって他の人も使えたりするのかな?」


 まあ使えなくても私が使えばいいんだし、一応作っておこうかな。今はグリーンスライムの魔石だけど、評判が良かったら他の魔石を使えばいいんだしね。気を取り直して私は早速四つほど追加しておいた。明日、レディトの商人さんのところに持ち込んでみよう。


「後はどうしようかな? まだ見張りの時間は二時間以上あるけど、魔力を使い続けるわけにもいかないから残りの時間は木の材料にしたいんだけど……」


 そういえば商人のおじさんが、細工物なら木でも引き取りますって言ってたっけ。アルバのおじさんのところで売れ行きの良い木彫りって……シェルレーネ様の像かぁ~。この国にもかなりの信者がいるので、基本的に売れ続ける商品だ。

 普通なら家に飾って終わりと思うかもしれないけど、子どもの成長に応じて感謝を込めて天へと返す儀式、いわゆる焚き上げを行うので、定期的に需要があるんだよね。


「だけど、他の人と一緒っていうのも芸がないし、ちょっと考えてみようかな。可愛い女の子になって欲しいのと、このご時世だし強い男の子になって欲しいって親もいるよね」


 その考えを元に型を作る。まずはワンピース姿のシェルレーネ様。それとは別に杖を掲げて祝福を与る姿の二種類を作ってみる。


「うんうん。結局魔法も使ったし、思いのほか集中しちゃったけどこんな感じかな? 時間は……わわっ、お水切れちゃってる。じゃあもう交代の時間だね。ジャネットさんを起こしてこよう」


 こっそりテントにもぐりこみ、ジャネットさんを起こす。二人は私より不慣れな野営だしぐっすり寝てるみたいだ。


「ジャネットさん。それじゃ、あとはよろしくお願いします」


「はいよ。ちゃんと寝なよ」


「はい」


 こうして私は入れ替わりにテントに入って寝たのだった。



「アスカ、起きて」


「ん~、はぁ~い」


 ん~、いつもより眠る時間はちょっとだけ短いけど十分だ。ジャネットさんは間に起きてたけど大丈夫かな?


「ほら、朝ごはんの用意はもうできてるよ」


「あ、ありがとうございます」


「そ・れ・と・きちんと魔道具を使う時は教えな」


「ふぇ?」


「交代でテントに入ろうとしたら見えない壁に阻まれたんだけど。魔力が切れたみたいですぐに消えたけどね」


「あっ」


 風の魔道具付けたままだった。私も入る時に同じようになって一度、外してから入ったんだった。眠くて忘れてたよ。


「そうだぜ、あれなんだよ」


「風の結界でテントを覆う魔道具だよ。ほら、私って野営の時は細工するけど音が漏れないようにテントに結界張るから、万が一テントが先に襲われてもいいようにね」


「へぇ~、結構便利そうな魔道具だね」


「今回使ってたのはグリーンスライムの魔石だから、私とリュートにしか使えないけどね。汎用性があれば売れるかもしれないけど、今度は値段が高くなっちゃうんだ」


「なるほどねぇ。でも、風属性があればいいなら商人は飛びつくかもね。要は護衛かその商人が風属性を持ってればいいんだろ? ゴミみたいな魔石に値が付くようなら大歓迎だろうさ」


「そうだといいんですけどね。そう思ってちょっと作っちゃいましたし」


「それって簡単に作れるの?」


「うん」


「じゃあさ、一回強度を見てみようぜ」


 確かにノヴァの言う通り強度が分かればもっといいかもしれない。


「それよりまずは朝飯だろ。ほら」


 ジャネットさんが私の分を取り分けて置いてくれる。ほわぁ~、朝からいい匂いだ。結構私たちって豪華な野営だね。それはそうといただきます!


「ん~、リュートの料理美味しいね。これからもよろしくね」


「う、うん。ありがとうアスカ」


「あっ、アスカ。お前、リュートをおだてて楽しようと思ったな」


「ち、違うよノヴァ。変なこと言わないでよね。私はただ本当に美味しいから言ってるんだから」


「まあ、結果は一緒だけどね」


「ジャネットさんまで」


 ぷくーっと膨れて見せるも全くみんなには通じないみたいで、仕方なく食事に戻る。ん~、やっぱり美味しいなぁ。


「それじゃ、準備も済んだしレディトへ向かおうか」


「はい!」


 私たちは目的地のレディトへと歩みを進める。森は相変わらず危ない感じだけど、みんなもいるし大丈夫だと思って進んでいく。時間的には後三時間ぐらいで着くはずだから昼には着くかな?


「にしても、二人は何してたんだ? 俺たちは話しができたけど、二人は一人ずつだっただろ?」


「私はいつも通り細工してたから、あっという間だったかな?」


「あたしはちゃんと警戒してたよ。そんなに気配察知も高くないからね。後は剣を磨いたり確かめたりしてたね」


「だけど剣を見るぐらいすぐに終わるだろ?」


「一本だったらね。何本か見てるからそれなりに時間は立つよ」


「へぇ~、僕も時間を使える何かを探さないとね」


「まあ、それも大事なことだね。ランクが上がるほど時間の使い方が重要になってくるんだし」


 そんな話しをしながら森を進んでいく。次のチェックポイントまではもう少しだ。そこは以前、薬草が結構あったけど今はどうだろう?


「着いた~。けど、薬草ないね」


「こりゃ無理そうだね」


 着いた先には誰かが採り尽くした跡があった。それも数日中だ。これはしばらくは駄目だなぁと思いながら通り過ぎていく。結局今日のところはその後何もなく無事レディトに着くことができた。


「レディトに到着~。ということで私は食事のあと商人さんのところへ行くけどみんなはどうする?」


「俺は武器屋を覗いてみるかな。後は適当にしてるよ」


「アスカ、僕もついていっていい? 何か時間をつぶせそうなものがあるかもしれないし」


「いいよ。ジャネットさんは?」


「ノヴァについてってやるよ。目利きでだまされないようにね」


「そ、そんなん大丈夫だよ」


「まあ待ちな。帰ったらマジックバッグを買うんだろ? きちんと計算しないと大変なことになるよ」


「分かったよ」


「それじゃ、予定も決まったしひとまずご飯ですね。前のお店ですよね?」


「ああ、だけど騒がしくしないようにな」


「はい、分かりました」


「は~い」


 カランカラン


「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」


「悪いね団体で」


「いいえ、かまいませんよ」


「そうだ。後でちょっとだけ時間貰えるかい?」


「構いませんが……」


「ちょっと見せたい料理があってね。アスカ頼んだよ」


「はい。でも、まずは食事ですね」


「分かってるよ」


 私たちはメニューを見てそれぞれ決める。私は日替わりの定食、リュートは魚の定食にノヴァが肉の定食。ジャネットさんは野菜の定食だ。本当にここだとジャネットさんは肉を食べないんだなぁ。


「おっ、ここの料理うまいな」


「本当だね。魚もとっても美味しいです」


「そりゃよかったよ。だけど、もうちょっと綺麗に食べられないもんかねぇ」


「そんなこと言ってもな」


「将来、活躍した時に最低限出来ないと苦労するかもね」


「そんときゃそんときさ」


「ノヴァは前向きだね。ん~、これもおいしい」


 食事を堪能し私の料理を教えることに。とは言っても手際はよくないので口頭で説明するばっかりだ。そしてさすがは野菜料理に重点を置いている店だ。きちんと巻けそうな食材もある。


「ここをこうして……こうやればばらけないんです。最初に巻きづらかったら熱を加えると簡単になると思います」


「なるほど。味は時間がかかるから工程のみですが、様々な料理に使えそうですね。アスカさん、ジャネットさんありがとうございます」


「あたしは紹介しただけだよ」


「いいえ、このようなことは考えませんでしたから、まだまだ修行中だという事を思い知らされます」


「それじゃあ、私たちはこれで」


「はい、ぜひまたお越しくださいませ」


 無事、料理も教えたのでおじさんと別れる。


「さて、それじゃ二手に分かれようか。十六時になったら宿で落ち合うでいいね。いったん依頼を済ませないといけないしね」


「そうですね。じゃあ、ここで」


 私とリュートはジャネットさんたちと別れて商会へと向かった。



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― 新着の感想 ―
アスカは気付いていないっぽいけど、たぶんリュートはアスカに惚れてるよねぇ 何気なく「これからもよろしくね」の一言で心臓バクバクしてそう 青春やねぇ~少年!
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