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依頼達成とお買い物

 私はホルンさんたちに、シェルオークのところでオオカミと戦ったことを説明する。


「……魔物と戦って勝ったのはよかったけど気をつけなさい」


「はい」


「まあまあ、ホルン。それぐらい元気がある方が大成するぞ?」


「本人も大成したいとは思っていないのに勧めないでください。それじゃあ解体場所に案内するわね」


 いったん薬草などの素材はギルドの奥に預けて、解体場所へ案内してもらう。場所はギルドの裏手から少し進んだところだ。


「離れていてごめんなさいね。近くだと大通りだからにおいとかで色々言われるのよ」


 確かにゲームじゃないんだから異臭を放つ魔物とかいたら、解体時にクレームが来るよね。ホルンさんの説明に頷きながら案内されたところへ向かう。

 ちなみにジュールさんは書類仕事が残っているのでそのまま残った。


「ここよ。今回はウルフだからこの小さい台の上においてちょうだい」


「分かりました」


 私はマジックバッグからウルフを二体取りだす。ううっ、見慣れないからちょっと気分悪いな。


「あら、きれいな断面ね。これなら査定はいいわよ」


「本当ですか! ってホルンさんは魔物の死体を見ても大丈夫なんですね……」


 私は気分が悪いのに受付のホルンさんは大丈夫みたいだ。


「ああ、魔物の死体だったら今回みたいに案内する時に見て慣れているわ。それに、臭いのきついものでもないし。泊まりがけの冒険者だったら、行きに仕留めた獲物なんかは傷んでいることも多いしひどいわよ」


 笑って言うホルンさんだけど私は耐えられるかなぁ。できるだけ早く持ってこれるようにしよう。


「マジックバッグには入れてても腐っちゃうんですか?」


「外に出すよりは温度の変化もないからましだけど、それでもねぇ」


「ん、客か?」


 私たちが話をしていると奥から体格のいいおじさんがやってきた。体には傷も見え、いかにも歴戦の勇士のようだ。


「クラウスさん、こんにちは」


「こ、こんにちは……」


 おじさんは足が悪いのかちょっと動きづらそう。


「ほう? 新人が来て案内してたのか。同じ冒険者ギルドなのに挨拶もせずに最近の奴は……」


「クラウスさん、お客さんはこちらの子ですよ」


「よ、よろしく」


「ん、なんだお前さん。新しい受付じゃないのか?」


「クラウスさん、受付には制服があるでしょう。この子が倒したウルフをお願いしたくて」


「言われたらそうだったな……ウルフだな? ここに置け」


「あっ、もう出してるんです。これです」


 私はクラウスさんに台の上においてあるウルフを指差す。


「これぐらいならすぐに終わるな。見ていくか?」


「えっと……」


 見たい気もするけれど正直、耐えられるかどうかわからないので困った顔をしていると、ホルンさんが助け船を出してくれた。


「クラウスさん、か弱い少女がそんなの見られるわけないでしょう」


「だが、冒険者なんだし解体できると便利だぞ? わしが冒険者の時も大忙しだったわ」


「じゃ、じゃあ……」


「いいのよアスカちゃん。向き不向きもあるのだから。もっと遠くに行くようになったら、そういう人とパーティーを組めばいいのよ」


 またもや、ホルンさんが助け舟を出してくれる。正直言ってありがたい。私には頑張っても無理そうだ。


「まあ、そうだな。わしの時も他に一人いたが、腕が悪いから触らせなかったしな。だが、どの部分が重要かはわしらのような解体師に聞いておいた方がいい。例えばこのウルフだが、牙は言わずもがな毛皮も使う。だから、お前さんの持ってきたやつのように大きな傷のないものがいい。剣で切り刻んだやつはつぎはぎだらけで使うことになるから値もうんと安くなる」


「そうなんですね」


「うむ。足は別になくても良いが、できれば下腹部を一撃で仕留めると良い。もちろん貫通させずにな」


「へえ~、ありがとうございます。教えていただいて」


「う、うむ。だが気をつけろ。いい状態に素材を保とうとするよりも命が大事だからな。見誤るなよ」


「はい!」


 解体時のことを考えて倒すかぁ。冒険者って魔物を倒すだけかと思ってたけど、結構色々考えないといけないんだ。薫陶を受けて、クラウスさんにあとはお願いしてギルドに戻る。


「じゃあ、解体の報酬については後日になるから今度依頼を完了した時にでも一緒に渡すわ」


「分かりました」


「それじゃあ、カードを預かるわね」


 道すがら頼んでおいた通り、今回の報酬もカードに入れてもらう。こうしておけば無駄遣いせずに済むしね。


「あっ、ホルンさん。最近、銅貨が少なくなってきたんですけど両替ってどこかでできますか?」


「両替? そういうのは特にないわね。屋台とかだとそこそこ必要だと思うけど、商人ギルドの商店は基本カードが使えるから」


「じゃあ、今日行く店ではできるだけ端数が出るように買おうかな……」


「あら、今日はお買い物に行くの?」


「そうなんです。この前、行こうとしたんですけど雨が降ってしまって……」


 ホルンさんに宿の手伝いのことも話す。冒険者っぽくないとここでも言われてしまった。


「まあでも、その方が似合っているかもしれないわね」


 割と楽しんでやっていた手前、言い返すこともできない。


「そういえばアスカちゃんは今回で依頼五件達成ね。昇格の処理とステータスの更新もやっておくわね」


「昇格って依頼二件しか受けてませんよ?」


「アスカちゃんが言っているのは二回ね。依頼自体はリラ草が二件、ルーン草二件、ムーン草もついでに受付しておいたから二件で計六件達成よ」


「そうなんですね。じゃあ、お願いします」


 ガシャン


 ホルンさんがカードを挿して、しばらくするとカードが出てきた。


「はい、これで今からアスカちゃんはEランクよ。それとステータスは……確認してもいい?」


「はい!」


 ずっとお世話になっているし、今更なので元気よく了承する。


 名前:アスカ

 年齢:13歳

 職業:Eランク冒険者

 HP:55

 MP:120/220

 腕力:9

 体力:16

 速さ:22

 器用さ:30

 魔力:75

 運:50

 スキル:魔力操作、火魔法LV2、風魔法LV2、薬学LV2


「あら、ちゃんとステータスが伸びているわね。特に魔力が伸びているから、このまま上がればもっと上に行けるわよ」


「あははは……」


 私は気のない返事で返し、そろそろ買い物に行くことを告げる。


「それじゃあ、買い物楽しんできてね」


「はい! 行ってきま~す」


 ホルンさんに見送られギルドを出ると宿へと向かう。まずはこの枝を置いてこないとね。ちなみに葉っぱも売れるということで、三つに分かれた枝のうち二つは売ってしまった。全部で葉は二十五枚あり銀貨二枚と大銅貨五枚だ。そこまで高くないけど、特に何もせずに手に入ったにしては、なかなかの値段だ。



「ただいま~」


「おねえちゃんおかえりなさ~い」


 宿に帰るとエレンちゃんに迎えられる。木の枝を持ってる私をいぶかしんでいる様だけど気にしない気にしない。


「エレンちゃんこれお土産ね」


 マジックバッグから移しておいたコークスキノコをエレンちゃんに渡す。


「いいの? やったぁ!」


 うんうん。喜んでくれると嬉しい。私は小枝用に小さい花瓶がないか聞くと、あるとのことだったので借りて水を入れ窓際に置く。


「とりあえず小枝はここに入れてと」


 ぱきりと折った枝を花瓶に入れる。緑と黄のラインが美しい葉だ。これでちょっとは生活感も出たかな? あとは、買い物に不要なものは置いていった方がいいよね。バッグの中身を確認して不要なものを机に置いていく。


「準備完了!」


 私は階段を降りエレンちゃんに言づけてから出ていく。


「それじゃあ、買い物に行ってくるから」


「は~い」



 私は初めての街へと繰り出した。ちなみに冒険者ギルドは町の中央よりやや下で解体場はそこから外郭へ向かったところ。鳥の巣はギルドの南側にある。商店は王都からの往来が多い東側に集中しているけど、冒険者向けの店に関してはギルド周辺にあるので、西側にも案外店はある。


 今日買いたいのは服とかの日用品が中心なので東側へと向かう。一軒ずつ見て回ろうと思ったけど、時間が時間でもう閉まる店もある。ゆっくり見るのは今度にして部屋着みたいなのを先に買ってしまおう。


「いらっしゃいませ~」


「こんにちわ。部屋着やちょっと街行きの服なんですけど……」


「あらかわいいお嬢様ですね。どこかの貴族様でしょうか?」


「い、いえ冒険者ですけど……」


「まあ、それはもったいないです。こちらの服などいかがでしょう?」


 案内されたのはドレスとかフレアスカートがいっぱいあるところだった。いやいやそんなところに案内されても使う予定ないし。


「あの、本当に普段着でいいんで……」


「そうですか。いつでも、案内しますからね。ではこちらです」


 渋々案内するお姉さんに連れてこられたのは探していた服のところだ。ちょっと短めのスカートとハーフパンツのようなものもある。動きやすそうだしとりあえずこの二つは買おう。上着はまだ寒くないから七分ぐらいの丈の服と半そでの服を二着ずつ。ひとまずはこのぐらいでいいかな。……あとは下着もいるよね。


「服はこれとこれ、下はこれとこれをお願いします。そ、それと……」


「下着ですね。こちらですよ」


 ちょっと見えにくいよう奥に飾られたところへ案内してもらう。さすがにサイズは分かるから後はデザインだけど……。


「王都から流行りでちょっと派手目のものも来ていますの。どうでしょうか?」


「う、薄っ。そして、布面積が少ない……」


 値札から考えて少ない生地でどうしてこんなにというぐらい高い。もうちょっと普通のがいいな。


「こ、こっちのをお願いします」


「これ、ですか。分かりました。ちなみに洗剤などはお持ちですか?」


 そういえば洗剤の値段聞いてなかったな。高いのだろうか、とはいっても必要ではある。


「いくらぐらいですか?」


「では、お試しでお付けいたします」


「いいんですか、助かります!」


「はい、代わりといっては何ですが、聞かれたらで構いませんのでうちで買ったと言っていただければ」


 それぐらいならお安い御用だ。別に聞かれたらでいいんだし。お店の名前はべルネスか……。さすがにどこどこの角の店とは言えないからね。


「じゃあ、お会計お願いします」


「はい、合計で銀貨四枚と大銅貨六枚ですね」


「銀貨五枚でお願いします」


「……確かに。ありがとうございました。また来てくださいね」


「はい!」


 お姉さんに見送られて店を出る。買ってから思ったけれど、マジックバッグがない今だと結構な荷物だなぁ。


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