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アスカと女神の神託

感想・誤字脱字の指摘いただきありがとうございます。

コピペ+再チェックしているのに色々あって嬉し恥しです。

めげずにどうかお付き合いくださいませ。


『これは……大変です! アスカに知らせなければなりません!!』



「アスカ、アスカ起きるのです……」


「ふわぁ~、誰ですか~?」


 頭に声が響く。確か私は酔ったジャネットさんを介護しながらベッドに着いてそのまま寝たはずだけど。


「私です。アラシェルです」


「ん? アラシェル様!」


 ガバッと布団をめくって起きる。が、めくったはずの布団も何もない。


「どういうことだろう?」


「ここは現実ではありません。言うなれば夢の世界のようなものです」


「あっ、そうなんですね。でも、また会えてうれしいです! もう会えないと思っていました」


「私もですよ。本来、会うことはありませんでしたから」


「えっ、ならどうして?」


「そのことについて今回お伝えしたいことが二点ほどありますので、よく聞いてください」


「はい」


 何だろう。私が何かやっちゃったのかな? だって、会えないはずのアラシェル様が会いに来たんだもんね。


「まず、なぜ私があなたの元に現れることが出来たかですが、あなたが私という存在をこの世界に広めてくれたおかげで末席ですが、新たにこの世界の神の一柱として分霊を遣わすことができるようになりました」


「え~と、私が広めたって言っても数人だと思うんですけど……」


「ええ、確かに規模は大きくありません。ですが、皆さん私に対して信心深く、中にはシェルレーネ様の巫女の方やグリディア様の熱心な信者もいらっしゃるでしょう? そのおかげか通常より早くに存在できるようになったのです」


「そうなんですね。でも、分霊って?」


「平たく言うと転生の間にいる私の中から別れた存在ですね。魂では繋がっていますが、能力は全く違う存在です。そしてここからが本筋なんですが、あなたにまずは謝らなければなりません」


 そう言ってアラシェル様が私に頭を下げる。


「い、いえ、頭を上げてください。どうしたんですか!?」


「あなたが転生する時に魔法を使いたいとのことで、私が転生させる時に全ての属性の力を授けたことを覚えていますか?」


「は、はい。今は火と風以外の属性は封印してますけど……」


 だって、全属性持ちなんてろくなことにならないだろうしね。


「あなたに授けた全ての属性ですが、実は私が元々持っている力ではありません。自分で言うのもなんですが、私の本体は転生を司るかなり高位の神です。そして職務を果たすため特別に権限を強化され、転生者に数多の力を授けることができるのです」


「要するに、アラシェル様は偉い神様という事ですよね?」


「あ、まあその認識で構いません。しかしですね、アスカによってこのアルトレインに生まれ落ちた私は当然その権限を持っていないので、本来の属性しか持ち合わせていないのです。そして、同時に同じ神の力が付与される場合は、より近い世界の方が優先されます。これは神格に依らず決定されてしまいます」


 う~ん、なんだか難しい話になってきた。要するにアラシェル様からの加護が弱まったってことなのかな?


「でも、何か影響があるんでしょうか? 私はもうこの世界の住人ですし……」


 最近は特にそんな思いが強くなった気がする。今では前世のこともただの物語のように思うこともあるぐらいだ。


「私もこのようなことがなかったので、影響は限定的だと思っていたのですが、どうやら違うようでして。まずはあなたの中に眠っている他の属性の力はもう発現しません」


「えっ!?」


 いつでも力が目覚めるようにって話しだったはずなのにどうしたんだろう?


「この世界の私が司っているのは一つの属性だけです。その力もまだ弱く、人に授けられるほどではありません。そして、分霊の私の影響力が優先されてしまうので、転生の間にいる私の加護が届かなくなったのです。よって、今使えている属性やスキルについてはそのままですが、新たに属性を習得することはできません。本当に申し訳ありません」


 改めて頭を下げるアラシェル様。


「いいえ、私は転生させていただきましたし、その時に色々な力を貰いました。感謝はしますけど怒ったりはしません! だから、頭を上げてください……」


「アスカ、ありがとうございます。それと二点目なのですが、本来は神が人に会うのは不可能なのです」


「えっ、でもこうして会えているわけですよね? もしかして、夢でなら会えるとかですか!」


 それなら定期的にお話ししたいなぁなんて……。


「いえ、ここは夢に近い空間ですが夢ではありません。例外的に神に会うことができる人間がいるのです。アスカも知っているでしょう?」


 おや? なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ。これはなんだか大変な流れかも。私の不安をよそにアラシェル様は言葉を続ける。


「人が巫女と言う存在です。今はアスカを巫女と認定し、神託という形で会っているのですよ」


「私なんかが巫女だなんてご迷惑では?」


「何を言うのですか。アスカがいなければ私はこの世界に生まれてはいませんでしたよ。胸を張りなさい」


 そう言われるとそうなのかな? ちょっと照れ臭いけど。


「ちなみに巫女になると何かあるんですか?」


「それなのですが……」


 ちょっとためらってからアラシェル様が口を開く。


「巫女となると才能とは別にその神の属性を取得します。水の神の巫女が水を扱えないのは変ですから」


「確かにそれはまぁ。あっ、でもアラシェル様の属性って何なんですか? 火ですか風ですか?」


 他の属性が使えなくなるんだから、どちらかの属性なんだろうか?


「それがですね。私の属性は空間なのです」


「く……うかん? えっと、魔導書に載ってなかったんですけど?」


 この間、お金に少し余裕もできたので、魔導書を買って読んだけど、何処にも載っていなかったはずだ。


「はい。マジックバッグを作る者などが極々少数もつ属性です。遺伝もせず確認も難しくて、これまでは司る神すらいなかった属性です。所有者も身を隠したり、各王家に保護されたりして存在が秘匿されています」


 そんなことになってたんだ。確かにマジックバッグの作り方は不思議だと思ってたけど、秘匿された属性だったなんて。


「でも、私もそんなすごい魔法が使えるんですね!」


 他の属性が使えなくなっちゃったのは残念だけど、そんな器用に使えないし、珍しい魔法が使えるなら別にいいや。


「使えなくはないのですが、巫女になって覚えた属性というのは基本的にその信仰する神の力に拠るのです。私は誕生したばかりの神ですから、その……力はほぼゼロなのです」


「えっと、それってスキルとしては持っているけど使えないってことでしょうか?」


「そうなりますね」


 またまた、アラシェル様の顔が申し訳なさそうになる。


「ちなみにちゃんと使えるにはどれぐらいの信仰が必要なのでしょう?」


 私は希望を持って聞いてみた。


「基本的に神の力というのは誕生してからの年月か、信者の信仰心に拠ります。これも数の力が大きいですから、シェルレーネ様の巫女を参考にすると、実用的な魔法に至るには最低でも数万人が必要ですね」


「数万人の信者……私にできるでしょうか?」


「アスカなら不可能ではないと思います。ただし、人生のほぼすべてを捧げなければいけないとは思います」


 信仰している神様からまさかの授かった属性が使えない宣言をされてしまった。とはいえ、今のままでも十分だし不満はない。それより、巫女の仕事について聞いておかないと。


「あの、ちなみに巫女になった私がすることってありますか?」


「特にはありませんよ。そもそもあなたの存在があって初めてこの世界の私が存在するので、自由に過ごしてもらって構いません。巫女にしたのもこの場を設けるためのものです」


「でも、それじゃあ私が死んだら、アラシェル様も……」


「それは分かりません。ですが、元々私は分霊です。消えたとしても元の魂に戻るだけですので」


「そんな! せっかく、こっちに来てもらえたのに、そんなことにはさせませんから!」


 私が呼び寄せたなら、責任をもって広めないとね! アラシェル様みたいな神様の存在が知られていないなんてもったいないよ。この世界だけでなく他の世界の多くの人が助けてもらってるんだから。私は信仰を広めることを決意した。


「最後にあなたの魔力ですが、今回の件とは関係なくもうほとんど伸びないでしょう」


「ふぇ!?」


 いきなりのことで変な声が出てきた。確かに最近魔力が350になってから変化がないなぁと思っていたけど。


「何か理由があるんですか?」


「はい。元々アスカの願いは魔法を使いたいと世界中を回りたいという事でした。ゆえにこれ以上の魔力は過剰という事でこれから身体の成長とともに少しは伸びますが、ほとんど上昇しないでしょう」


 なるほど。これだけの魔力があれば安全に世界を回れるという事だったのかな? でも、確かにホルンさんも魔力の数値だけならAランクの数値がそれぐらいって言ってたし、多いくらいだよね。


「じゃあ、上げる方法はないんですか?」


「巫女であるアスカは信仰によって私の加護を得ることで上げられます。というのも、巫女たちのほとんどが生来は大きな魔力を持っていません。それを信仰によって引き上げているのです。ですが、これも人数が関係するので、上げるためには努力が必要でしょう」


「分かりました。でも、今のままでも大丈夫だと思います」


「折角の転生だったのに、あなたには苦労を掛けてしまいます」


「いいえ、もう一度こうして会える……ううん。巫女となってまた会えるようになったという事が私は嬉しいです!」


「アスカ。これからもつらいことがあるかもしれませんが、頑張るのですよ」


「はい! 絶対に何があっても負けませんから!」


 私はぐっと拳に力を込めて返事をする。


「その元気があれば大丈夫でしょう。ああ、ちなみに魔力以外のパラメータはあなたの頑張りそのものですよ。それらの伸びはこれからのあなた次第です」


「そうだったんですね。ありがとうございます!」


 その話を聞いて私は嬉しくなった。腕力も体力も器用さだって私が頑張ったから伸びたんだなって思うと感動だよ。それじゃあ、これからも細工物は頑張らないとね。私の一番の才能なんだから!


「さて、あなたの体にも負担が大きいですから、今回はこれまでですね。アルトレインの神となった私はいつでもあなたを見守っていますよ。もちろん、転生の間の私も気にかけていますからね」


「ありがとうございます! また、会ってくれますか?」


「まだまだ、私は神として未熟ですが会えるように頑張りましょう。では……」


 すぅっとアラシェル様の姿がかき消えていく。そして同時に私の姿も歪んでいく。この空間が消えていくんだろう。


「これが空間の力か~」


 なんて、消えゆく空間で私は何とものんびりしたことを考えていた。




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― 新着の感想 ―
際限なく能力がインフレしちゃう主人公ばっかりだから制約出来て良かったと思う
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