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今日はどうするんでしょう?

 部屋に戻った私は今日の分の細工を始める。


「ちょっと話をしてたから開始の時間が遅くなっちゃったけど、まだまだ大丈夫かな?」


《チチッ》


「ミネルたちはどうする? ここにいる?」


《チュンチュン》


 どうやら昨日は遅くまで遊んでいたからか、今日は部屋でゆっくりすることにしたみたいだ。しかも、小屋を見るといつの間にか巣が広がっていて、三羽が眠れるぐらいになっていた。だけど、季節的なものを考えるとちょっと暑そうだね。


「そうだ、グリーンスライムの魔石!」


 割と質のいいものを前におじさんから譲ってもらったんだった。なんでもこれぐらい質が良いと繰り返し使えるらしい。ただ、質はいいけど出力が小さくて使い道に困るんだって。これが火の魔石だったら火種として最適だったのにと悔しがっていた。


「これに風の魔法を込めて、さらに一定の間隔で強弱をつけてと。完成! リズム風扇風石。首振り機能とタイマー以外は完備だよ。タイマーは魔力が切れたら止まるけどね」


 風を一方向から送り続けるようにするのと、強弱をつけてまるで扇風機のような働きの魔石を作る。これならミネルたちも涼しいだろう。


「はい、ここに置いておくから使ってみてね。でも、ミネルは風の魔法を込めちゃだめだよ。壊れるかもしれないからね」


《チッ》


 涼しい風が来て、思いのほか過ごしやすいらしく、すぐに三羽ともうとうとしてきた。


「後は起こさないように風の魔法でと……」


 小屋の周りに音が入りにくくなるように結界を張って準備完了! 私は残りの作品作りにいそしむのみだ。



 熱心にやっていると時間の立つのはあっという間で、ふと気になって窓の外を見ると辺りは夕暮れ時だった。始めた時間からすると四時間近くはやっているのだろうか?


「ミネルたちは……まだ、気持ちよさそうに寝てる」


 私は起こさないようにいったん作業を止めて下に下りる。


「あっ、おねえちゃん。食事?」


「うん、ちょうど切りがいいから。先にお風呂沸かしてくるね」


「おねがい」


 私はお風呂場に行って水を貯める。浴槽がいっぱいになったら、次は火の魔法で温度を上げる。冷めることも考えて一応、横に小さいお湯入れがありそっちは熱湯だ。


「さて、後は女湯の方だね」


 こっちも同様にお湯を作る。ただし、こっちにはお湯入れがない。女湯はいつでも温めに行けるからね。


「こっちも完了っと。それじゃあ、食堂に戻ろう」


 食堂に戻った私は早速用意された食事を食べる。


「ん~、お肉も美味しいと思ったけど、野菜を食べてると安心するよ」


 どっちかというと前世も野菜の食事が多かったからね。お肉ばっかりのこの世界にはちょっとまだ戸惑いもある。


「ごちそうさまでした」


「は~い。片付けます」


 エレンちゃんに片づけてもらい、私はすぐに部屋に戻ってお風呂の準備をする。お風呂は予約制であんまり時間をずらせないからね。


「はふ~、今日も一日頑張りました、なんてね」


 実際にはまだ二体ほど作れてない物があるので、この後も作業なんだけど、気分というものがある。かけ湯をしてしっかり洗った後に入るお風呂は最高だ。


「それに明日もし、泊まりがけなんてなったらしばらく入れないだろうし、きちんと洗ってさっぱりしておかないと!」


 入れる時に入る! まさにこの精神だ。ジャネットさんの受け売りだけどね。


 お風呂から上がって、次の予約の人に伝えて私は部屋に戻る。お風呂も最近人気が出てきた。安いのもあるんだろうけど、木の匂いと個人風呂ということも割と気に入られてる理由みたいだ。


「さあ、作業再開だ!」


 私は改めて作業服に着替えて作業に戻る。残るは二体。後一時間ちょっとすればできるだろうか?



「ん~、完成!」


 ようやく作業を終えた私は伸びをしてくつろぐ。ちょっと体を休めたいのでそのままベッドにダイブ。


「ちょっとはしたないけど、疲れを抜くのが先だよね」


《チチッ》


「あれ、ミネルたち起きたんだ。ごはんにする?」


 少しベッドでくつろいでいるとミネルたちが起きだした。ご飯と聞くと小屋の屋根のところまで一気に飛び上がる。


「はいはい。ちょっと待っててね。今日は肉と野菜のブレンドだよ」


 夕食を食べている時に、この世界はお肉が豊富だから、ミネルたちの食事も私が思っている以上に肉食寄りかもしれないと考えていた。だから、今日のブレンドもお肉がやや多めになっている。

 こういう生態をまとめた図鑑ないかなぁ。あったとしても高そうだけど、ミネルたちのためだしね。


「美味しい? それじゃあ、ゆっくり食べててね。私は明日の準備をするから」


 小屋から離れてバッグの中身を整理する。あんまり保存が必要なものはないから、いらないものは置いていかないと。まずは弓矢をチェック。これは戦闘で使うものだから一番重要だ……よし異常なし。


「続いては食料。期限なんて書いてないから匂いでチェックとちょっとだけ食べてみてと……うん、大丈夫そうだね。残りは予備の食料と道具だね。煙玉やポーションも異常なし! 最後にいらないものはないかな?」


 今度はいらないもののチェックだ。これには細工道具や作品の作りかけ、その材料が当たる。普段なら見せる機会もあるかもしれないと、作った物も入っているんだけど、持ち帰る素材もあるし出しておかないとね。


「結構中身もすっきりしたし、これで十分かな? 後は普通のバッグの方もチェックしてと。こっちはおやつ代わりの干し肉と水筒とポーション類だね。これも問題なさそうだ。水だけは明日入れないと……」


 忘れないように水筒は机の上に置いておく。こうすればさすがに忘れないだろう。


「うん、準備完了~。私は明日冒険に行くからもう寝るね。ミネルにお友達も、おやすみなさい。それと、明日のご飯は宿の人にもらってね」


《チチッ》


《チュンチュン》


 遅めの食事をしているミネルたちにあいさつをして私は眠りについた。その日見た夢はミネルたちが飛んだり跳ねたりして私の周りをぐるぐる回っている夢だった。



「ふわぁ~」


 目が覚める。今日は昨日早く寝たおかげか自分で目が覚めた。ミネルたちに起こしてもらうのもいいけど、たまには自分で起きるのも気持ちがいい。


「じゃあ、準備をしていかないと」


 水筒を手に取ってバッグを腰にマジックバッグは反対側につけて、いざ食堂へ。


「おはようございます!」


「おはようアスカちゃん。今日は早いわね」


「一週間ぶりの冒険の日ですから」


「そうしてる分には冒険者ね、アスカも」


「エステルさん! 今日は早いですね」


「今日はメニュー開発の日なのよ。今からちょっとずつ作業を前倒しして、午後から新しいメニューに取り掛かるの」


「大変ですね」


「そうでもないわ。これで新しい料理に出会えるかと思うと楽しみよ」


 相変わらずこの人は料理好きだなぁ。


「帰りを楽しみにしてますね」


「ええ、絶対いいものを思いつくわ。アスカも気を付けて行ってきてね」


「はい、今日は帰ってこないので、また今度ですけどね」


「そうなの?」


「今回は隣町まで行くのでさすがに日帰りは無理ですね」


「それなら仕方ないわね。無理しないようにしなさい」


「分かりました。それじゃ行ってきます! あっ、もしミネルたちが来たらご飯をお願いしてもいいですか?」


「分かったわ、行ってらっしゃい」


 私はミーシャさんたちと別れるとギルドへと向かう。


「おはようございます」


「あら、おはようアスカちゃん。今日は依頼を受けに来たのね。だけど、ノヴァからは昇格試験って聞いてるけど……」


「ノヴァとリュートが昇格試験で、私たちは用事で隣町まで行くんです」


「そうなの? じゃあ、今日中に帰るのは無理ね。頑張ってね」


「はい」


 私はいったん、テーブルに着きジャネットさんたちを待つ。数分後にフィアルさんが、十分後にジャネットさんが来たので依頼を選ぶことにした。


「まあ、護衛依頼があればいいけど都合よくはないねぇ」


「それはそうですよ。大人しく調査依頼にしましょう」


 二人で掲示板を見ているけど、護衛依頼は残っていないようだ。この一週間の間に活動的なパーティーは商人との専属契約にこぎつけたところも多いみたい。それじゃあ、残ってないよね。


「まあ、あたしらは一週間ぶりだし、単独で受けさせてくれるかと言われるとねぇ」


「そうですね。今回は調査で良しとしましょう。アスカもそれでいいですか?」


「はい!」


「じゃあ、調査依頼ですね。今回は町の北側を進むルートですがいいですか?」


「ああ、かまわないよ」


 依頼を受けていざ出発だ。門を出ていつも通り進んでいく。


「今日のうちに隣町に入るんですよね? 明日はどうするんですか?」


「うん? あたしそんなこと言ったっけ?」


「えっ!?」


「北側のルートは斜面や崖、迂回路が多いから調査をしながら日没までに町へ着くには、前日に依頼を受けて朝早くに出発していないとだめだね」


「じゃあ、今日って……」


「まあ、野宿だね!」


 あっけらかんというジャネットさん。いきなり野宿って言われても心の整理が。


「そんなに構えなくても大丈夫です。見張りも交代ですし、私は気配を探るのも得意ですから」


「そうそう。だから、安心してとまではいかないけど大丈夫だよ」


「フィアルさんはいいんですか? 急ぎなんじゃ……」


「急ぎは急ぎですが、依頼を疎かにするなら冒険者としては失格ですよ。ここは依頼がメインです」


「そういえば、帰りも依頼を受けるってなったらアスカは初めて向こうのギルドで受けるんだね。ちゃんと探しなよ?」


「だ、大丈夫ですよ多分……」


 そうか。確かに考えていなかったけど、往復で依頼を受けるから向こうで受けることになったら、初めての人なんだね。緊張しないで言えるかなぁ。


「さあ、分かったら進む進む。あんまりゆっくりしてると、明日の到着が遅れるからね」


「は、はい」


 一抹の不安を覚えながら私はジャネットさんの後をついていくのだった。



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