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飾り付けと大?即売会準備

 飾り付けの道具を求めて私が行った場所はドルドだ。やっぱりこういうことは雑貨屋さんだよね。


「こんにちは」


「いらっしゃい。今日は何だい?」


「こう……簡単でいいんですけど、飾り付けをしたいんです。それでそういうのに使えそうなものがあればと思って」


「それなら、よく使われるのはそこら辺のボロ布とか端切れとか、ちょっと高いけど紙のテープなんかだね。テープの方は普段は長さを測ったりするのに使われてるやつだけどね」


「なるほど……」


 そう思って目を向けるもののやっぱり価格がネックだ。紙ともなれば使い回しに向かないだろうし、この価格では今の設定価格で売ると赤字になりかねない。他のもので代用しよう。


「他に使えそうなものといえば……これにしよう!」


 私は端切れと値段も手ごろなそれを選ぶとカウンターに持っていき購入する。


「あんたぐらいお金を持ってりゃ本物が買えるだろうに」


「いいえ、今回はこういう物の方がいいんで。それじゃあ、ありがとうございます」


 おばさんに挨拶をして、部屋に戻る。


「よ~し、後はもうほとんど材料はないけど、ちょっとだけ追加しちゃおう。ということで、もう余りがないかどうかチェックだ~」


 部屋の掃除も兼ねて私は使えるものがないか探す。すると思った通り使えそうなものが出てきた。


「ああ~、最初の頃に仕舞う場所がないって、ここに置いていたんだ。ちょっと複雑」


 そこは服をしまう箱の中だ。そんなに着ている服が大きくないから、空いたスペースの一番奥に銀の欠片を突っ込んで忘れていた。まあ、見つかったら嬉しい物ではあったし、早速これを使って細工物を作ろう。


「追加する細工物はオーソドックスに花かな?」


 私は小さい欠片でも作れそうな花を図鑑から選んで作る。寒冷地のためか分からないけど、小さめの花も結構載っている。そこから六種類ぐらいを選び作っていく。とりあえず三つ作ったところで休憩とお昼を取り、残りをお昼の後に作成した。


「ふぅ~。とりあえず三種類作ったけど、ミネルたちは夕食まで帰ってこないみたいだね。もう十五時ぐらいだけど一向に帰ってくる気配はないし。異種とはいえ友達が出来たんだもん仕方ないよね。私もこっちを頑張らなきゃ!」


 休憩も取り、やる気を回復させて再び細工に取り掛かる。この調子なら夕食までには今日の分の加工が終わるだろう。その後も作業を続けた私は予定通り、十八時には三つが新たに作成できた。これで追加は六つ。明日を含めると九つぐらいは作れそうだな。


「全部で四十個近い作品数になったね。これなら色んな人に見てもらえそう。後は当日の飾りつけと事前の宣伝だけどどうしようかな? 飾り付けはともかく宣伝は当てがないなぁ」


 一番の問題である知ってもらうことが出来ないんだよね。やっぱり店とかに頼んで貼り紙とか貼るんだろうか? それだったら市場でやれとか言われそうだよね。

 宣伝のことはライギルさんかミーシャさんに聞いてみよう。この時間だったらミーシャさんかな? 今日はみんないるからお仕事は大丈夫だろうし、ちょっと聞きに行こう。


《チチッ》


《チュンチュン》


「あれ、ミネルたち帰ってきたの? 今日はずいぶん遅かったね。ちょっと夕食食べてくるけど、あなたたちも食べる?」


 ミネルが首を縦に振るので先にご飯を用意してあげる。


「は~い。今日はお魚とお野菜です。お友達も一緒にどうぞ! それじゃあ、私は下に行ってくるから」


 ミネルたちに見送られながら私は食堂へ下りていく。


「おねえちゃん、こんばんは」


「こんばんは、エレンちゃん。ミーシャさんって今、時間大丈夫かな?」


「大丈夫だけど、ご飯は良いの?」


「もちろん食べるけど、先に聞きたいことがあって……」


「わかった。おか~さ~ん、おねえちゃんが呼んでるよ〜」


「はいはい、どうしたのアスカちゃん?」


「あの、ちょっと教えて欲しいんですけど……」


 私は細工屋の一件を話して、今後の宣伝をどうしたらよいかをミーシャさんに相談する。


「なるほどね。確かに今まで個人として店を開かなかった人が出すんだものね。それなら、うちでも貼り紙を出してあげるわ。他に出来そうな店にも声をかけてあげる。だけど、低価格なのはいいとして、実用性が低いなら冒険者ギルドの方は無理そうね。まあ、うちなら結構お客さんも来るしいい宣伝になると思うわ」


「本当ですか? よろしくお願いします」


 これでどのくらい話が広がるかは分からないけど、ひとまずは安心できそうだ。後はいつ開くかだけど二日後は冒険に出るし、その後の日もちょっとつらいとなると……五日後ぐらいかな?

 次の冒険は泊まりになるかもって言ってたし、これぐらい余裕があれば大丈夫だろう。そうとなれば、貼り紙は今日中に作ろう。


「それじゃあ、お夕飯頂いたらお湯沸かしますね」


「あら、本当? それじゃあ、お願い」


「明日には貼り紙を渡しますからよろしくお願いします」


「はいはい。無理しないでね」


「は~い」


 それから食事も終え、お風呂も上がった私は貼り紙のデザインを考える。


「時間もないし、簡単なものにしよう。まずは中央に字が大きく描かれていて、上に日付で下には時間と枠飾りを描いて、隙間のスペースには鳥の絵かな? ミネル~、ちょっと来て〜」


《チチッ》


 お友達と遊んでいたミネルを呼び寄せてちょっとモデルになってもらう。というかこの子たちは今日はお泊まりなのかな?


「はい、ちょっとしばらくそのままでいてね」


 ミネルが止まっている間に絵を仕上げてしまう。その間になんだなんだと二羽も来たので、一緒に貼り紙に描いておいた。


「よ~し、これを後はコピーするだけだね。ありがとう、ミネルとお友達も」


 三羽にお礼を言って私は貼り紙をコピーしていく。ああ、コピー機の偉大たるや。探せばドルドや商人ギルドに複写用紙もあったかもしれないのに……。


「あれならこの作業が一気に短縮だったのになぁ。まあ、今からじゃ仕方ないし今度までに探しておこう」


 こうしてこの日の夜は更けていった。



《チュンチュン》


「ん?ミネル?」


 いつもと違う声で起きた。何だろうなと思って机の方を見てみると、どうやらお友達の方だったみたいだ。


「時間は……ちょっといつもより早いのかな? ミネルはまだうとうとしてるみたいだし」


 ちょっとこの子たちの方が早起きなんだね。それはそうと起こしてもらったので、私は早速着替えて支度をする。


「今日は久しぶりに宿の手伝いの日だし、しっかりやらないとね」


 最近は本当に午前中だけとか、お洗濯の溜まった時だけになっているので、こういう機会に勘を取り戻さなきゃ。


「おはようございま~す」


「おはようおねえちゃん。今日は気合入ってるね」


「まあね。最近は通しで入ることも少なくなったし、こういう機会を大事にしないと」


「うちは助かるけど無理はしないでね」


「大丈夫だよ。明日には冒険に行かなきゃならないんだから無理はしません!」


「それじゃあ、一緒に頑張ろうね!」


「うん!」


 エレンちゃんに出してもらった朝食を食べ、早速仕事に取り掛かる。今日はエレンちゃんと私とエステルさんだ。リュートは明日が昇格試験の日だから、今日は目いっぱい準備するんだって。だけど、昨日その話をしている時にジャネットさんがいたんだよね。リュートたち呼び出されてはいないよね?


「まさかだよね。前日に疲れさせるわけないか」


 そう思い直し私は仕事に移っていく。慣れたとはいえ手を抜くことはできない。特にお洗濯は洗剤の質自体があまりよくないから、キチンと浸透させないと落ちが悪いからね。手でやると破れる可能性も高くなるし、なかなか難しいのだ。



「おねえちゃん、お昼前の休憩だよ」


「もうそんな時間なの? じゃあ、行こっか」


 二人で食堂へ向かうと、すでに食事の下準備を終えていたエステルさんが座っていた。


「アスカ、今日はちょっとゆっくりね。いつもは私の作業の方が遅いのに」


「エステルさんの料理の腕が上がってるんですよ」


「アスカがお世辞を言えるようになるなんて成長したわね」


「ええ~、ひどいです。お世辞じゃないですよ」


「そうそう、おねえちゃんがそんな気遣い出来るにはまだ五年は早いと思うよ」


「エレンちゃんまで……」


「はいはい、そこまで。これでも飲んですっきりしなさい」


 ミーシャさんがジュースを運んで来てくれる。そういえばこのジュースもしばらくぶりだ。この時間までお仕事をすることも少なくなったからなぁ。


「ミーシャさん、今日はお出かけだったのでは?」


「そうだけど、すぐに用事は終わったから。ちょっと前まで話をしてたんだけど、向こうも都合があるからね」


「そうだったんですね。あっ、貼り紙ありがとうございました」


 ミーシャさんにお願いして今日の朝から、入り口と店内に二枚の貼り紙をしてもらった。これで少しでも周知できると嬉しいな。後は知り合いの店とエステルさんが帰る時に孤児院へ持って行ってくれる。他にも教会へ持って行ってもらえるらしい。私としては教会はどっちでもよかったんだけど、孤児院に支援をしてくれている手前外せないそうだ。

 後は街中に数枚貼ってもらえればってところだけど、さほど名も売れてない人間の即売会でここまでできたら十分じゃないだろうか?


「うんうん。高望みする前にできることからコツコツとだよね」


「急にどうしたの?おねえちゃん」


「ううん。色々みんなに手を尽くしてもらってるなぁと思って。だから、あまり結果にはこだわらないようにしないと」


「あら、アスカは自己評価がまだ十分ではないようね」


「そんなことはないと思いますけど……」


「じゃあ、当日を楽しみに待っておくことね」


 意味深なエステルさんの言葉を胸に、私はお昼のお仕事を頑張るのだった。



「疲れたぁ~。こればっかりは冒険で体力つけてもあんまり変わらないね」


「そういえば、おねえちゃんってパンの持ち帰り始めてからほとんど入ってないよね?」


「そのせいかぁ~、疲れると思ったよ~。慣れない作業のせいだね」


「あそこは私もちょっと苦手。普段はリュートにやってもらってるとこだし」


「へぇ~、エステルさんにも苦手なものがあったんだね」


「うん、やっぱり食べてる姿を見られると安心するのかな? パンは持ち帰りがほとんどだし」


「じゃあ、そこは優秀な店員を育てないといけませんね」


「そうね。後々生きてくるかも……って気が早いわ」


「そう言っててもすぐかもしれませんよ?」


「もう、アスカにまでからかわれるなんて」


「ひど~い」


 そんな話をしてお昼過ぎの時間を過ごし、仕事を終えた私は部屋に、エステルさんとエレンちゃんは午後のお仕事に向かっていった。



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