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納品と場所の確保

 食堂へ下りた私は早速料理を注文する。最近はずっとイレギュラーなメニューが続いたので、通常メニューに戻ってなんだかほっとした。


「どうしたのおねえちゃん。そんなにかみしめるように食べて?」


「ここのところずっと、特別なメニューだったでしょ? なんだか懐かしくなっちゃって」


「そうなんだ。私はそっちの方が良いよ。食べ慣れてるからね」


「ふふっ。エレンちゃんも、もう少ししたら分かるよ」


「なにそれ~」


「さあ、ミネルも贅沢とはお別れだね。はい!」


《チッ》


 ミネルも野菜中心のご飯を食べる。ここのところどうしてもお肉が多めだったから、明日からは野菜とかお魚中心にしよう。お友達の分ももらっておかなきゃね。


「にしても、お客さんの入りすごいね。前まで夕食時は泊まりのお客さんの利用は三分の二ぐらいだったのに」


「そうだねぇ~。あっ、早速コースター? って言うの使ってみたよ」


「どうだった?」


「う~ん、思ったよりは水を吸わないけど、確かにテーブルに付く水は減るから助かるかな? だけど、乾燥とか使い回しのことを考えたら、数が足りないね」


 確かにテーブルだけでも今あるコースターの数よりあるし、破損とかも考えたらもっといるよね。ストックしておくのに、すぐ意見をもらえたのはありがたい。無駄ではないと分かったしね。

 店は兎も角、家庭でも使えるなら模様も増やせば、ゆくゆくはおしゃれな店にだって使ってもらえるかも。そんな期待を胸に私は部屋へと戻る。


「今日はここまでだね。やりすぎも体に毒だし、ミネルもお休みしようね」


《チチッ》


 とはいえまだまだ早い時間だ。お風呂を使わせてもらおう。お湯は沸かしてと……準備万端。


《チチッ》


「ミネルはお湯ダメでしょ。お水用意してあげるね」


 私は大きめの器を使ってそこに水を張る。容器自体はちょっと傷んでいるから問題ないだろう。ただし怪我をしないように周りを綺麗に削ってと。


「はい、準備完了だよ。存分に水浴びしてね。気が済んだらそこのタオルに包まるんだよ」


 それじゃあと言って私はお風呂へ入った。そしてお風呂から上がると……。


「ミネル、本当にそんなにぐるっとならなくてもいいんだよ……」


 タオルがちょっと絡まったのか、ミネルは白い巻き寿司のようになっていた。羽根が傷まないよう丁寧にほつれを外す。


 ばさばさ


 タオルが外れると残っていた水分を一気に吹き飛ばすミネル。まったくもう……。


「ほら、もう寝ようね」


《チィ~》


「アラシェル様、お休みなさい」




《チィー》


「うん、おはようミネル」


 今日もミネルのおかげでいい寝起きだ。なんだかミネルに起こされると寝起きがすっきりするんだよね。


《チュンチュン》


「ん、今日もお友達がいるんだね。こんにちは」


 二羽にも挨拶をして着替える。今日は出かける予定もあるし、今のうちに準備しておかないとね。ちょうど備蓄の食糧もなくなってきたし、仕入れにも行かないと。


「みんな待ってね。すぐにご飯用意するから」


 着替えも終わり、マジックバッグからお野菜を出す。それをご飯台に置き私は食堂へと下りていく。昨日の調子だとお友達の相手はもうミネルに任せておけば大丈夫だろう。


「おはようエレンちゃん」


「おねえちゃんおはよう」


「今日はエレンちゃんが配膳やってるんだね。いつもので」


「はい、少々お持ちください。そうなんだよ。どうもお母さん、ちょっと調子が悪いみたいで……」


「それは心配だね。あっ、ありがとう」


「お父さんは大丈夫だって言うんだけどね」


「まあ、しばらくは様子を見ないとね。そうだ! ちょうどドルドに行くから栄養のあるものを買ってくるね」


「ほんと! ありがとうおねえちゃん」


「うん、任せて!」


 朝食を終え部屋に戻った私は早速準備を終えてドルドに向かう。


「ミネルたちはお留守番をお願いね」


《チチッ》


《チュンチュン》



「おはようございます~」


「おや、いらっしゃい。今日は早いね、これから冒険かい?」


「いいえ、今度出かけるので先に用意しておこうと思って」


「はあ~、相変わらず殊勝な心掛けだね。他の冒険者も見習ってもらいたいもんだよ。今日は何にするんだい?」


「日持ちのするものを少しと、後はドライフルーツなんですけど……」


「それならこっちだね」


 おばさんに案内してもらって、そこから栄養価の高そうなフルーツを選ぶ。


「確かビタミンCがいいんだっけ? じゃあ、ちょっと酸っぱそうだけど、このビルベリーみたいなのかな?」


 私は自分用とミーシャさん用のお見舞い品を買って帰る。


「ただいま~」


「おねえちゃん早いね」


「まあね。買いたいものは決まってたし」


 そもそも朝早くから行けたのも、元々は冒険の日だったから予定が空いていたからだしね。


「それよりこれ、効くかは分からないけど渡しておいてね」


「うん! ありがとうおねえちゃん。これで後はエステルさんとリュートさんが来れば、宿は大丈夫だから」


「そう? 何かあったら言ってね」


「は~い!」


 嬉しそうに袋を抱えてミーシャさんに持って行くエレンちゃん。自分からは宿を離れられないから、持って行けて嬉しいんだろうな。


「さあ、私は私でやりますか」


 店が開く時間まではちょっとあるし、昨日評価を受けたコースターをもう少し作っておこう。


「型に沿って切り取ってと、ふう~これで五枚完成っと。ん? どうしたの」


 みんなが私の肩に止まる。その後、ミネルが窓へ向かって飛んだ。


「外に出たいの?」


 そういうと他の二羽も一緒に窓へ。


「はいはい。お昼か夕方には戻ってくるんだよ」


 毎食食べる必要もないだろうし、町でも少しぐらい食べるだろうと思った私は、そう言うと窓を開けてあげた。


「じゃあ、私もそろそろ出かけるからね。お昼ぐらいには帰ってくると思うけど」


《チッ》


 ミネルたちが出て行ったところで私も準備をする。昨日までに作ったものと今日作ったコースターを持って、おじさんの店に行かないとね。


「場所とか貸してくれると嬉しいなぁ。何より雨とかの心配がなくなるしね」


 冒険にも出かけるし、会場を押さえることで時間を使いたくない。それに今後も使わせてもらえるなら、それこそ以後の手間も省けるし、とってもありがたいのだ。


「そうと決まればいざ出発!」


 今日はちょっとだけ冒険者っぽい感じで出かける。元々冒険の日だったから、雰囲気だけでもね。


「おじさ~ん、おはよう」


「おうアスカ。今日は納品の日だったか?」


「ううん。ちょっと相談があって……」


「アスカから相談なんて珍しいな。なんだ?」


「実は今度、これまで作成した材料の余りを使った即売会みたいなのを行いたいんです。もちろん余りの材料だから、いつもの物より全体的に安めで品質もちょっと悪いんだけど」


「そこでここを使いたいんだな?……う~む、一日ぐらいなら構わんが、それなりの数を作れるのか? 大体、再利用って言ったって、あまりに出来が悪いと評判にも繋がるぞ?」


「そこは多分大丈夫だと思うんですけど、とりあえずいくつか見てもらえますか?」


 私はマジックバッグから何点か取りだした。


「おおっ! いつも通りこれは見事な……ってこれはいくらにする気なんだ?」


「本当に余りものなので大体銅貨六枚から八枚で考えてます」


「俺にはいつもの奴とほぼ変わらないように見えるがな? この鳥の翼の色の混ざり具合なんかは難しかっただろう」


「あ~、それは失敗した物を使っただけなんです。だから、元々は失敗作なんですよ」


「別に元が失敗だといってもこうなったら立派な作品だろ」


「とはいえ、そこにお金はかかってませんしね……」


「まあ、アスカがいいというならいいが、何点ぐらい出せそうだ?」


「う~ん、三十点以上は出せますね。今がそれぐらいですけど、開くまでにはもうちょっと増やせそうです」


「目玉とか大きいものはあるか?」


「目玉品はあるにはあるんですけどあまり目立つところに置きたくなくて……。それに高くても大銅貨二枚までですよ? もちろん、余りものですから大きいものもありません」


「それならこの棚ともう一つ奥の棚を使おう。ただし、俺の方も店は念のため休みにしておこう。アスカは店を開いたこともないし、おかしな奴が来るかもしれんしな」


「おかしな奴?」


「お前は最近名が売れてきてるからな。金の卵として見ている奴もいるかもしれんからな」


「そうなんですね。なんだか大変そうです」


「まあ、俺の店と知って入ってくるバカはいないだろうが念のためだ」


「それじゃあ、そこはお任せします。売り上げの一部はお渡ししますね。とはいっても元々大した金額ではないのであまり渡せませんけど」


「それは別にいい。だから、今度開くものに出すものを全部見せるんだ! また、新しい作品のイメージが浮かぶかもしれんからな」


 相変わらずここのおじさんは店主と言うより職人なんだなと思った。細かい打ち合わせはもう少し作品が揃う今度にするということで店を出た。



「後は……飾り付けかな? やっぱり安いってこともあるけど、パッと見で色んな作品があるよって見せたいし、外から興味が出るようにしないとね」


 ここにお金をかけてもと思うけど、使い回しもできるだろうし。今回のものは原価から考えても元々利益率が低いので、売り切れなければ後々に響いてくるだろう。それに売れなければ、今後こういうことをしても意味がないということになってしまう。


「そしたら、余り物は引き取ってもらうしかないんだけど……木材はまあ燃料替わりでいいけど、金属は再鉄所に持っていくんだよねぇ」


 再鉄所とはこの世界のリサイクル施設だ。金属のごみを集めてある程度の大きさに再加工する。ただし、引き取りは有料なので出来ればあまり利用したくない。

 最初この場所のことを聞いた時はおおっ進んでる! って思ったけど、有料なところまで似なくても。まあ、分解不要の状態で持ち込まれることが多いから再生率はいいらしいけどね。


「さて、それじゃあ、目的地に行こう!」


 私は飾り付けの物を買いに目的地へと向かった。



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― 新着の感想 ―
売れ残るつもりでいるらしい……………… ( ̄_ ̄)甘いな
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