エピローグ Blue Moon
ブルームーン…それはひと月のうち、二回目に訪れる満月。
数年に一度しかない、稀の月…それは、小さな奇跡といえる。
頼都「もうすぐ満月か…それでこの宴も終わるな」
巡「せっかく頼都さんや『Halloween Corps』の皆さんとまた再会出来たのに…残念です」
頼都「フッ…相変わらずだな、お前は。どこまでも無邪気で、こっちの調子が狂いやがる」
巡「頼都さんこそ、変わりませんね。ニヒルなのに、どこか人がいいというか」
頼都「昔から万聖節前夜の夜は、人をおかしくさせるのさ。誰も彼も漏れなくな」
巡「確かに今年も色々とおかしかったですよねw」
頼都「ったく、年々度が過ぎてくのも考えもんだぜ」
巡「きっとこの月のせいかも知れませんね」
頼都「?」
巡「知りませんか?今夜は満月。ブルームーンですよ」
頼都「二回目の満月…か」
巡「次はいつ見ることが出来るんでしょうね?」
頼都「さぁな」
巡「次のブルームーンも、きっときれいですよね」
頼都「…」
巡「今夜の夢も、きれいでキラキラしてたと思います。だから…次もまた、きっと」
頼都「そういうところも相変わらずか」
巡「?」
頼都「皆でお手々つないで大団円…なんて夢をまだ追ってやがるのか?」
巡「はい」
頼都「コイツ…臆面もなく、即答かよ」
巡「だって、それが『僕』ですから」
頼都「よう、夢見がちな公務員。あの月を見ろ」
巡「きれいですよね」
頼都「そうだ。じゃあ、何で綺麗だと思う?」
巡「…」
頼都「お前が追い掛けることなく、遠くから静かに見ているからだ。下手に追い掛けても、絶対に近付けないし、手に触れることもない」
巡「頼都さん…」
頼都「…と、言ったところで、お前は絶対に変わらないし、まだまだ諦めないんだろ?」
巡「…ええ」
頼都「前も言ったが、お前のその頑固さがどこまで続くのかを、俺は見てることにしたんだ。今後もせいぜい頑張るんだな」
巡「はい!ありがとうございます!」
頼都「礼はいい。俺には時間が腐る程ある。お前の足掻きは、その暇潰しにはまあまあ使えるからな…さて、と」
巡「あ、もう行くんですか?」
頼都「おう。次の『仕事』がある…お前が大嫌いな怪物狩りの任務がな」
巡「…」
頼都「早く止めさせたいなら…せいぜい気張るんだな」
巡「そうします。そうして、いつか貴方に怪物達の良さを叩き込んでみせますよ」
頼都「ハッ、上等だ」
巡「またお会いしましょう。次も負けません」
頼都「そいつはこっちの台詞だ。じゃあな…!」
天空には真円の月が満ちた。
その光は、まるで幻想のヴェールのようだった。
夢幻の輝きの中で、つながっていた道は、再び静かに分かれていく。
青い月は、その上を歩み行く者達を、静かに照らしながら見つめていた。
いつまでも、いつまでも…
【END】