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オタクな俺がポンコツ美少女JKを助けたら、お互いの家を行き来するような仲になりました  作者: 木嶋隆太


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第51話


 治は奈菜とともに、部屋の掃除をしていた。

 奈菜が来て、まっさきにしたことは髪を切るではなく部屋の掃除だった。

 すでに三十分ほどが過ぎ、綺麗になった部屋を見て、奈菜が満足した様子で息を吐いた。


「まったく、好きな人ができたとかいうけど、こんな汚いんじゃ部屋にも呼べないでしょ? ちゃんと綺麗にしておかないと、カップルが別れる原因の一つはこういった私生活の行き違いなのよ?」

「……カップルじゃないし。というか、好きかどうかだってまだ確定してないし」

「うっさい。気になるってのは好きってことと同じでいいの。それで、少しでも好意を持ったのなら積極的にアピールしないとね」


 奈菜に恋愛理論の披露に、治は首を傾げた。


「……そういうものなのか? というか、好きってどんな感じなんだ?」

「少なくとも、あたしはそうね。好きだって言ってもらえれば嬉しい気持ちになれるわね。あんただって、その人に好きって毎日ささやかれると思ってみなさいよ? 悪い気はしないでしょ?」

「……まあ、そうだな」


 治は咲に毎日「おはよう、おやすみ」と言ってもらえる状況を想像し、嬉しさを覚える。

 遅れて頬をじんわりとした熱が包んだ。


「それなら、あんたはその人のこと好きよりなんだと思うわよ? まったく、恋愛小説家なんだからもうちょっと敏感になりなさいよ」

「そうはいってもな。自分のことをそんな冷静に分析なんて、できないだろ?」

「ま、それは同意ではあるけど。ところで、その子の写真とかってあるの?」


 奈菜が嬉しそうな顔とともに治へと近づいた。治はすぐに首を横に振った。


「……いや、ないな」

「まったく。写真でも撮ったら今度見せなさいよ? それじゃ、髪切っていきましょうか。浴室に行くわよ」

「あ、ああ」


 奈菜は鞄からシザーケースを取り出し、部屋にあった椅子を一つ持って浴室へと向かう。

 その後を追いかけるように治もついていく。


 浴室についたところで奈菜が、椅子を鏡の前に置いた。

 その前に治は腰かける。


「服脱ぎなさい」

「……はいはい」


 普通であれば、クロスを首に巻くが、面倒だからという理由で治の髪を切るときはいつもこうだ。

 治は下着姿となり、それから奈菜がハサミを取り出し、治の髪を切っていく。


「今回は前髪もばっさり切っていいわよね?」

「……任せる」


 普段、人と目を合わせたくなかった治は基本的に前髪は目が隠れるほどまで伸ばしていた。

 だが、今回はすべて奈菜に任せることにしていた。

 目を閉じるとすぐに髪が切られていく。落ちた髪が肌に張り付き、くすぐったい。

 髪を切る音だけだった浴室に、奈菜の声が響いた。


「治が誰かを好きになったのってこれが初めてだっけ?」

「……だろうな」

「その子ってどんな子なの?」

「どんなって言われてもな。真面目で、優しい子だな。それに感情表現が豊かで、ちょっと見栄っ張りだ」


 自然と咲をほめる言葉が出てきた。


「へぇ、そうなんだ。綺麗系? 可愛い系?」

「……黙っているときは、綺麗だな。ただ、口を開くと……可愛い感じ、だと思う。だから……たぶん、俺なんかじゃ到底無理だと思うけどな。それでも、諦めたくなくて――」


 治がため息をついたときだった。思いきり背中を叩かれた。


「い、いってぇ……何するんだよ!」


 じんわりと熱を帯びた背中、目を開けると鏡越しに奈菜が睨みつけていた。


「そう情けない顔しないこと。自分に自信がない奴のことを誰が好きになるのよ? 恋愛と就活は自己アピールをいかにうまく出来るかで勝負が決まるのよ?」

「……自己アピールか」

「そういうこと。あんたの顔立ちはかなり整っているわよ。それは父さんと母さんの子どもならわかるでしょ? ほら、あたしだって可愛いでしょ?」

「……そう、ですね」


 バシバシ、とさらに二度叩かれた。


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